第34話.日が暮れて

ジャカランダ農場での作業は、途中、昼食と休憩を挟んで、午後4時に終了する。

農業学校に通うアイルトン
農業学校に通うアイルトン

スタッフはそれぞれの家に戻り、夕食までの間、シャワーを浴びてくつろぎ、自家菜園の手入れをしたりする。

午後6時には陽が傾き、虫の音が響き渡る。煙突からは煙が立ちのぼり、食卓には必ず上がるフェジョンという豆料理の匂いが風に漂う。

夕陽に照らされた空が、次第に紫へと移り変わるにつれて、家々の窓にはオレンジ色の灯りが浮かび始める。1日の労働が終わった後に訪れる、ジャカランダ農場がもっとも安らぐ時間。そのなかに、入道雲のような背中をゆらしながら家路をたどるマリアーノ(47)の姿がある。

マリアーノは、収穫されたコーヒーの実の管理を担当している。

コーヒーの実から外皮を取り除いてコーヒー豆に加工するまでの処理は、コーヒーの味を決める重要な作業だ。完熟した実が醗酵するとコーヒー豆の味が落ち、品質も損なわれる。それを防ぐために、収穫したコーヒーの実はその日に天日乾燥場に広げられる。5日から10日の間、太陽の光を当てて自然乾燥させ、夜間は1ヶ所に集めてシートをかぶせ夜露から守る。雨にも濡らさぬよう注意しなければならない。

コーヒーの実の外皮には400種類にも及ぶ成分が含まれているが、こうした作業を経て、それらの養分がコーヒー豆へと移動し、コーヒーの味を高めていく。

マリアーノは、実を丹念に乾燥させ、陽が暮れた後もコーヒーの加工機械のなかに身を縮めて入り、納得のいくまで整備を続ける。高品質なコーヒー豆に仕上げるために、絶えまなく注意を向けておかなくてはならない彼には、土曜日も日曜日もない。

が、それにもましてマリアーノはこよなく仕事を愛しているのである。彼がコーヒーの仕事を始めたのは12歳のとき。電気、建築関係の技術を、本を読み、またカルロスに教えてもらいながら、ほとんど独学でマスターした。機械の整備、家屋の建築など、自らの仕事を探し、学び、創ってきた。彼の働きっぷりのよさは、その結果なのだ。

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「ジャカランダコーヒー物語」

ブラジルにて「不可能」と言われていたコーヒーの有機栽培を丁寧な土作りと「いのちを大切にしたい」という想いから成し遂げたジャカランダ農場。農場主の故カルロス・フランコさんとジャカランダ農場の軌跡をお伝えします。

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