第10話.次女テルマからのレポート

その事件から2年後、当時サンパウロ大学で生化学と薬学を学んでいたテルマは、エステル・デ・カマルゴ教授の「中毒学」を受講した後、父カルロスに農薬の取り扱いに関する注意事項を事細かく書き込んだレポートを送った。

カルロスの次女テルマ(左から3人目)現在、カンピーナス大学教授
カルロスの次女テルマ(左から3人目)現在、カンピーナス大学教授

農薬の運搬と保存について

  • 農薬散布時における人体保護機材として、手袋、長靴、自然ゴムでできた前掛け、帽子、長袖シャツ、防水性の作業着、防塵用マスク、保護眼鏡を必ず使用すること。
  • 使用後、全ての機材はきれいに洗い、安全な場所に保管すること。
  • 農薬説明書をよく読み、その指示に従うこと。
  • 農薬の調合は密閉された室内で行わず、屋外で行うこと。農薬散布は風下に向かって行い、また、強風のときは行わないこと。
  • 農薬が肌に着かないよう充分注意し、粉、あるいは噴霧液を吸い込まないようにすること。
  • 散布後は、石鹸と水で手を洗い、その他の部分で農薬に触れたところもよく水洗いすること。
  • 農薬のかかった作業着はただちに取り替えること。
  • 農薬の詰まった噴霧穴を口に近づけ、息を吹き掛け掃除をしないこと。作業が終わったら必ず石鹸を使い、冷水のシャワーを浴びること。
  • 農薬を包んだ紙や包装物は焼却すること。
  • 農薬の入っていた缶やビンは穴を掘り埋めること。
  • 散布時には仲間の作業者が近くにいないかよく確かめること。
  • 作業中、あるいは作業終了後、農薬散布地に子どもや動物を近づけないこと。

このレポートを読んだカルロスは、「農薬の使用は生産者にとっても消費者にとっても自然環境にとってもよくない」と判断した。そして、まずジャカランダ農場で働くスタッフたちを危険にさらしたくないという理由から、1978年からコーヒーの耕作地における農薬の使用を減らし、2年を経ずして完全に停止させ、農道に繁る生命力の強い牧草の処理に使っていた除草剤も、1983年を境に全く使われなくなった。

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「ジャカランダコーヒー物語」

ブラジルにて「不可能」と言われていたコーヒーの有機栽培を丁寧な土作りと「いのちを大切にしたい」という想いから成し遂げたジャカランダ農場。農場主の故カルロス・フランコさんとジャカランダ農場の軌跡をお伝えします。

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