2020/02/17

トセパン協同組合を訪問! トセパン基金へ寄付を届けてきました

2017年からスタートしたトセパン基金への支援。2回目となる寄付を、現在(2020年1月末?)、現地訪問中のウインドファームスタッフがレオナルドさんに届けてきました。今回は、古本募金きしゃぽん、トセパン基金プレゼント付き寄付、個別でのご寄付等による皆さまからのご支援と、ウインドファームからの支援を合わせ、1,000ドル(約11万円)を寄付することができました。
トセパン基金は、新たにジェシーさん、フェリシータさんという地元の女性2人をスタッフとして迎え、支援活動も広がっています。レオナルドさんとともに基金で中心的に活動しているアドリアナさんは、残念ながら不在で今回会えませんでしたが、彼女は現在、地震被災地サンタクルス村での今後のプロジェクトを主にサポートしています。
レオナルドさん、ジェシーさん、フェシリータさんから、支援いただいた皆さまへのメッセージをご紹介します。

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日本の皆さん
いつも温かいご支援、本当にありがとうございます。
トセパン基金として、感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。
基金では、これまでの学校(教育)や医療サービスプロジェクトへの支援に加え、若者の未来プロジェクトへの支援にも力を入れており、今回の皆さまからのご寄付は、この若者のプロジェクトにも使わせて頂きたいと思っています。
そしてこれからも、私たちの取り組みの様子をお伝えしていきたいと思います。
どうもありがとうございました。
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私たちウインドファームスタッフからも、ご支援いただいた皆さまに改めてお礼をお伝えしたいと思ます。暖かいご支援、本当にありがとうございます。
今後も引き続き、トセパン基金の活動を応援するとともに、プロジェクトの情報をお届けしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします!

★古本募金きしゃぽんについてはこちら
https://www.windfarm.co.jp/tosepan-fund/

★トセパン基金 プレゼント付き寄付についてはこちら
https://www.organic-coffee.jp/tosepan-fund/


トセパン基金ディレクターのアドリアナさん(左)とレオナルドさん(右)


寄付を手に微笑むジェシーさん(左)、レオナルドさん(中央)、フェリシータさん(右)

2020/01/17

メキシコが国策として森林農法を推進、植林エリアを拡大

HAPPY NEW YEAR 2020
年始にあたって、今年も皆さまと共に歓びを分かち合いたいことがあります。
昨年の年始ごあいさつで「メキシコの新しい大統領が国策として、森を再生する森林農法(アグロフォレストリー)をメキシコ全土に広めると表明したこと。それを推進する大臣として、私たちが長年フェアトレードで提携してきたトセパン協同組合スタッフのマリア・ルイサさんが就任したこと」をお伝えしました。


真ん中のA.M.ロペスオブラドール(愛称アムロ)大統領の左がマリア・ルイサ厚生大臣


マリア・ルイサさん


先住民の圧倒的な支持を受けるアムロ大統領夫妻

森林農法を拡大する「センブランド・ヴィダ(いのちの種をまく)」と呼ばれるプロジェクトは、100万ヘクタール(東京、神奈川、千葉を合わせたより広い面積)で森林農法の森を増やすという壮大な計画であり、「本当に実現できるのか」という声もありました。

しかし、実際にプロジェクトが始まると、参加を希望する先住民や小農民が予想以上に多く集まり、目標の年間50万ヘクタール(2年で100万ヘクタール)植林する予定が1年も経たないうちに、およそ60万ヘクタールも植林されたのです。

【いのちの種をまく「森林農法プロジェクト」100万ヘクタールをさらに拡大】
さらにうれしい出来事が起こっています。近年、メキシコも含めた中南米から米国への移民問題が大きくなっていますが、「センブランド・ヴィダ」が始まったことでメキシコを離れることを思い留まり、プロジェクトに参加する人が増えています。また、貧困や治安の悪化により近隣諸国からメキシコに逃れて移住している人たちの参加希望も増えています。
彼らの多くは南部のチアパス州に暮らしており、困難な状況にある彼らにもプロジェクトに参加してもらいたいということから、チアパス州に割り当てられていた植林面積に加え、新たに20万ヘクタールを植林予定面積として追加しました。

いのちの種をまくプロジェクトに参加した人たち(生産者)は、25名で1つのグループをつくり、各グループには技術指導者が1人、ソーシャルワーカーが1人加わって、グループごとに定期的に役所へ現状報告を行います。生産者には給与としてひと月に5000ペソ(約3万円)が振り込まれ、そのうち500ペソは貯蓄されます。これはトセパン協同組合の銀行「トセパン・トミン」をモデルにしています。

【森林農法プロジェクトが中米に広がる】
さらに、このプロジェクトは、国連の協力も得ながら移民問題の対策として、グアテマラやエルサルバドル、ホンジュラスにも広がり始めています。これらの国々においては、特に雇用を増やすことで貧困や治安悪化の状況を変えることを目指していますが、森が増えることで気候変動の抑制に貢献するという目的もあります。

特に、エルサルバドルでは、気候変動の影響だと言われる火事が頻繁に起きており、国土が荒廃してきています。これら3ヶ国はコーヒー生産国でもあるため、特に森林農法の広がりと雇用を生む「センブランド・ヴィダ」によって、小規模なコーヒー生産者がより安定した収入を得られることが期待されています。

ロペス・オブラドール大統領は、「センブランド・ヴィダは生産性と収入をもたらすだけではない。生まれた場所で働き、家族と共に生活し、幸せに暮らすことができる」と人々に伝えています。


(前列左から4人目)アムロ大統領とマリア・ルイサ大臣(前列右から4人目)

「いのちの種をまく」プロジェクトは、経済的に貧しい人たちや小規模生産者を助けるための政策であり、森林の再生を柱として、農地の再生、地域社会の再生、地域経済の活性化をも目指しています。※2019年12月14日 大統領はプロジェクト予算が2019年の130億ペソから2020年は260億ペソ(約1500億円)になると発表

植林は森林農法を基本として、何をいつどこに植えるかを短期、中期、長期の3つの段階に分けて計画しています。最初に植えるのは、伝統的な「ミルパ」と呼ばれる農法で、自分たちが食べるためのトウモロコシ、豆、カボチャを中心とした野菜類を植えます。次に植えるのは、3~4年で実をつける果樹(ここにコーヒーやカカオも含まれる)が植林され、最後に生育期間が長い木材となる樹木が植えられます。

このプログラムで実施される森林農法とミルパにより得られる農作物は、主に地域における流通と生産者の食糧になります。次の段階においては、トセパンのような組合を設立し、トセパン・トミンのような小規模金融(マイクロクレジット)システムも取り入れ、販売の知識なども学びながら地域経済を活性化させていきます。つまり、政府はトセパン協同組合がやってきたことをモデルにしてこのプロジェクトを推進しているのです。


アムロ大統領とマリア・ルイサ大臣

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トセパン協同組合で働いていた頃のマリア・ルイサさん


後列右から2人目がマリア・ルイサさん


前列中央がマリア・ルイサさん(赤い服)

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【パトリシアさんの夫が環境大臣に就任】
そして、もう一つ驚きの出来事がありました。私たちに森林農法の重要性を教えてくれて、トセパンを紹介してくれたパトリシア・モゲルさんの夫であり、私たちの友人でもあるビクトルさんが、メキシコの環境大臣に就任したのです。
2019年5月27日、ロペス・オブラドール大統領は定例記者会見において、環境・天然資源大臣として、ビクトル・マヌエル・トレドを任命したと発表しました。ビクトルさんは、メキシコ国立自治大学で博士を取得し、先住民と生物多様性の関係を主な研究分野として、これまでに200件以上の研究を発表しているほか、12の著書を出版しています。大統領は、ビクトルさんが豊富な経験を有する専門家であることに加え、公共政策を行う上で最も必要な誠実さを兼ね備えていると評価しています。


アムロ大統領(左)とビクトル環境大臣

一年前に大統領に就任したロペス・オブラドール大統領は、素晴しい就任演説を行いました。
「私たちは自然を破壊することなく生産性を向上させる森林農法を推進します。遺伝子組み換え種子の導入および使用は認めません。フラッキングのように、自然に影響を及ぼし、水源を枯渇させるようなガス、石油あるいはいかなる自然資源の抽出産業も認めません。環境に影響を与える経済、生産、商業は認めません。土壌、水および空気の汚染はくい止めます。動植物は保護します。水は民営化させません」と明言しました。

この演説にある自然保護政策を中心的に担っているのがビクトルさん率いる環境省になります。そして、森林農法の研究者としても著名なビクトルさんは、パトリシアさんと共にセンブランド・ヴィダ(森林農法)の推進、普及にも協力しています。


センブランド・ヴィダ発表:(左から)アムロ大統領(1人おいて)マリア大臣、ビクトル大臣

じつは、昨年11月にパトリシアとビクトル夫妻を日本に招待する予定だったのですが、ビクトルさんが環境大臣に就任したため来日できなくなりました。しかし、パトリシアさんは約束通りに来日してくれて、九州、関西、関東で講演や対談を行いました。

最初に訪問したのは熊本でした。その理由は、熊本で長年フェアトレードの普及に努め、熊本市を「アジア初のフェアトレードシティ」に導いた明石祥子さんを応援するためでした。
明石さんは2016年の熊本大地震で被災し、ようやく再建した店舗兼住宅を2018年の火災で全焼してしまいました。
そんな度重なる苦難にもかかわらず、今も焼け跡にテントを張ってフェアトレードの普及活動を続けています。その姿に感銘を受けたパトリシアさんは、2年続けて「フェアトレードシティくまもと」で講演してくれたのです。


(左から)パトリシアさん、明石さん


(2019年11月5日朝日新聞)

横浜の明治学院大学で開催された「しあわせの経済 国際フォーラム」では講演だけでなく、対談も行われました。タイの先住民カレン族のスウェさんと先住民ナワット族の祖父を持つ生態学者のパトリシアさん、そして、フェアトレード会社を経営する私の3人で「森林農法と地域経済」という鼎談も行ないました。


(左から)スウェさん、パトリシアさん、中村

今、世界中で貧富の格差が広がり、農村地域の貧困が深刻化する中で、生態系の破壊と汚染が広がっています。タイでは、巨大企業が進める遺伝子組み換えトウモロコシと農薬使用がセットになった農業が、これまで自然と共生してきたカレン族の村にも広がってきています。そうした状況に危機感を抱いたスウェさんは、カレン族の村々で、「トウモロコシの単品大量生産ではなく、森と共生しながら多様な食物を栽培できる森林農法をベースにして、コーヒー栽培を加える形で地域経済を活性化させていこう」と呼びかけ、2年前から有機コーヒーをフェアトレードで輸出し始めています。


 タイ・カレン族のノンタオ村にて、村人に呼びかけるスウェさん(背中)

一方、メキシコでは先住民ナワット族が42年前に設立したトセパン協同組合が近代農業によって破壊された自然を森林農法で再生してきた実績があります。1年前に誕生したメキシコの新政権は、それを高く評価し、メキシコ全土で森林農法の拡大プロジェクトを展開しており、「22万人を超える先住民や小農民がプロジェクトに参加している」というパトリシアさんの話は、スウェさんを大いに勇気づけました。

パトリシアさんの話を聞いた感想を問われたスウェさんは、「私の先生になってほしい」と答えました。

【今秋、メキシコで「しあわせの経済 国際フォーラム」を開催】
こうした流れを受けて、今年11月にメキシコで開催される「しあわせの経済 国際フォーラム」には、スウェさんも参加することが決まりました。メキシコの森林農法や環境政策、協同組合の取り組みなどから多くの学びが得られることでしょう。
ウインドファームでもその時期に合わせてスタディツアーを企画します。国際フォーラムへの参加とトセパン協同組合の訪問、そして「いのちの種をまくプロジェクト」に参加している地域を訪問する予定です。(※追記:新型コロナウイルスにより開催延期になりました)

帰国前日に、ウインドファームの社員に対して、およそ3時間に及ぶ特別講義と質疑応答に応じてくれたパトリシアさんは、帰り際にこう話してくれました。「おそらくビクトルやマリア・ルイサもメキシコでのフォーラムに参加してくれると思います」と。

パトリシア・モゲルさんと私が初めて出会ったのは22年前、1998年のコロンビアでした。
中南米で初めて開催された「国際有機コーヒーセミナー」に招かれた私は、ブラジルのカルロスさんとのフェアトレードについて講演したのですが、私自身がそのセミナーで最も学ぶことができた講演が、パトリシアさんの「森林農法の重要性」でした。


コロンビアの国際有機農業センター(CIAO)にて 


パトリシア&ビクトル夫妻と

その出会い以来、私たちは互いの国を何度も訪問し合って交流を深めてきました。2000年にはブラジルで、2002年にはエクアドルで開催した「有機コーヒーフェアトレード国際会議」に招聘して、森林農法の重要性について講演してもらいました。

パトリシアさんの素晴しさは、優れた森林農法研究者であるだけでなく、メキシコの先住民や世界の生産者と共に「行動する学者」であることです。


「しあわせの経済 国際フォーラム」に参加したゲストと交流するパトリシアさん(右側中央)
(横浜市戸塚・善了寺にて)立っている2人は、左が辻信一さん、右が成田住職

ウインドファームは今年で創業33年になりました。
年を重ねるほどに「持続可能な地球を子どもたちや未来世代に残したい」という思いが強くなっています。

皆様と共に、今年も有機農業や森林農法、フェアトレードを通してそうした取り組みに参加できることを有難くうれしく思っています。

ありがとうございます。

株式会社 ウインドファーム
代表取締役 中村隆市

2019/11/19

トセパン基金 ディレクター アドリアナさんからのメッセージ

アドリアナさん

アドリアナさん

親愛なる日本のサポーターの皆さんへ

いつもトセパン基金をご支援いただき、どうもありがとうございます。

私たちトセパン協同組合は、先住民族やこのシエラノルテの地域に住む人たち「皆が幸せになるために、よりよい暮らしを作っていく」ことを最大の目標として活動しています。その取り組みをいつも温かい心で支援し、思いやってくださる日本の皆さんに深い感謝をすると同時に、応援してくださることをとても幸せに感じています。

私たちの学校(教育)プロジェクトに最初のご支援をいただいてから地震被災地支援に至るまで、日本の皆さんは私たちトセパン協同組合の目標を常にサポートし続けてくれている素晴らしい友人であり、心強い仲間だといつも感じています。日本はメキシコから遠い場所にありますが、皆さんは私たちと同じ方向を見つめ、歩み、つながり続けてくれる存在でもあります。

皆さんのサポートのおかげで、組合の教育プロジェクトが進み、地震被災地支援(住宅建設)のプロジェクトを達成することが出来たこと、心から感謝しています。

実際に、これまでの組合の活動で、下記のような成果が生まれています。

・何世紀にもわたって沈黙してきた先住民族が自分の意見を言えるようになった
・組合への参加を通し、コミュニティの一員としての自信と安全が高められた
・組合のような社会的組織が、皆をより強くするという考えが広まった
・組合員の自己管理と自立が可能となった
・利益が生産者の手元に残るようになった
・オルタナティブな社会(経済優先ではない社会)を作ろうと取り組んでいる組織間で、
 ネットワーク作りができた

このように、皆さまからの温かいご支援によって、私たちは自然を守り、よりよい暮らしを作るためにさまざまな活動に取り組むことができているのです。また、それができることにとてもワクワクしています。

これからも続く私たちの取り組みに、ぜひ皆さんもご招待したいと思っています。
今後も、心を寄せていただけると嬉しいです。

心を込めて

アドリアナ・デ・ラ・ペナ(トセパン基金ディレクター)

2019/11/18

トセパン基金 ‐現在の支援プロジェクト その2 ”医療・福祉プロジェクト“ (2019年11月)‐

メンバー

メンバー

トセパン協同組合の中にある8つの小さな組合のうち、医療や保健衛生の分野を行うのが、「トセパン・パフティ」 です。現在トセパン・パフティでは、伝統薬の見直しとして、伝統的にこの地で利用されてきたハーブを使用した薬の知識を復活させる取り組みと、組合員への医療サポートの実施に取り組んでいます。伝統薬については、プロモーターと呼ばれる指導員が各家庭を訪ね、ハーブを植えるスペースがある家にはそれを推奨し、利用法を伝えています。

プロモーター

プロモーター

また医療サービスについては、同じく定期的にプロモーターが家庭訪問する中で、血圧測定やメキシコで問題となっている糖尿病予防の指導などを行っています。また、1世帯(5人家族)で年間200ペソ(およそ1,080円)支払えば、トセパン・パフティが提供している医療サービス(病院での診察や低価格で薬の処方を受けられるなど)を受けることができます。

皆が幸せに、そして生活の質を高めていくためには健康が欠かせません。健康であれば、生活を変えていけます。現在は4,000世帯がトセパン・パフティの活動に参加していますが、年200ペソすら払えずこのサービスを受けられない家庭もあり、トセパン基金ではこうした生活状況がより厳しい家庭への財政的支援を行うことで、できるだけ多くの組合員たちがこのサービスを受けられるよう取り組んでいます。

健康診断

健康診断

ただ、そのための支援も含め、トセパン・パッツィ全体として年間に400万ペソ(およそ2,100万円)が活動資金として必要で、なかなか取り組みを広げていくのは難しい状況です。

例えトセパン基金がすべての組合員をサポートできないとしても、健康に関する意識を変える、また健康に関心を持たせるということは全体として大きな目標となっています。

2019/11/17

トセパン基金 ‐現在の支援プロジェクト その1 “教育プロジェクト“(2019年11月)‐

 トセパン協同組内には、ナワット語で“私たちの学校”を意味するトセパン・カルネマクスティロヤンという学校(幼稚園から中学校まで)があります。組合員の子どもたちが通っていますが、メキシコ国内で行われている教育に先住民文化を取り入れた学校教育のシステムを作ろうと、教育プロジェクトをスタートさせました。それは、先住民族としてのアイデンティティや自信、幸せを高めると同時にチームワークを促し、自然を敬い、自分たちの土地に根ざし、これを守ることによってすべての人の中に教育の価値が置かれるというものです。教科書づくりはこのプロジェクトで取り組む課題の一つで、先住民の文化や知識を学べる辞典も作成したいと考えています。

小学校のミカエラ先生

小学校のミカエラ先生

 トセパンの学校は公的な援助を受けていないので、運営していくことが大きな課題です。現在は、幼稚園から中学校までおよそ150名の子どもたちが学んでおり、それぞれの段階に応じて適した教材を作るサポートをしています。 具体的には、以下の取り組みを行っています。

・小学校と中学校の間の連携を促すことで、効率よく教育上の問題を解決する
・2019年から2020年に学校で学ぶ子どもたちの数を増やす
・子どもたちの創造力をさらに育むための教育上インフラ(雨水取水装置の導入、農地の聖地など)を
 提案に基づき進める
・ナワット語の教材の充実と教室内での活用

ナワット語の教材

ナワット語の教材

 これまでもこの教育プロジェクトには日本の皆さんからもご支援をいただいてきましたが、引き続き取り組むとともに、新たなかたちでこのプロジェクトを広げていきたいと思っています。

 実は、トセパン協同組合があるシエラノルテ地方では、この数年、若者による犯罪や暴力が増え、地域で大きな問題となっていました。組合内での会議でもこの問題は議題に上りました。組合としては、若者が犯罪活動からの誘いを拒絶できるよう、より良い機会を与えていくためのステップを明らかにし、出来る行動をとっていくことを考えています。

 こうしたことから、私たちは今年2019年を“若者の年”とし、私たちが大切にしている価値観を高めていくことを目指しています。しっかりと検討された提案に沿って、組合内の教育プロジェクトを推し進めていくことは、下記の2点を強化するための基礎になると考えています。

1 組合内の学校において、より多くの目標、めあて、大切な言葉などを掲げ、それが実行できるよう
 行動すること
2 「団結、連帯」という文化的な価値に焦点を当てた道徳教材を制作していくこと

授業風景

授業風景1

授業風景2

授業風景2

 これと共に、2015年からスタートしている音楽プロジェクト“セカンバ・イェクネメリス”への支援も強めていくということも決まっています。このプロジェクトは、トセパン協同組合とメキシコの公的機関「オーケストラ音楽の研修センター」との連携で行われており、若い人たちにコミュニティの中で音楽教育に関わってもらうものです。コミュニティの一員であるというバックグラウンドの中で、音楽的な基礎に関心を持つことにより、自分たちの文化の価値を見直し、文化的活動を発展させていくことにつながります。また、その中でプロモーターやリーダーとしての経験を積んでいくことを促すことにもつながります。現在、6歳の子どもから26歳の若者まで50名がこのプロジェクトに関わっています。

2019/11/16

トセパン協同組合の活動を支える「トセパン基金」

 2019年に設立から42年を迎えたトセパン協同組合は、今や約35,000世帯以上の組合員を抱えるまでになっており、その活動も、有機農業、教育、エコツーリズム、持続可能な住居、医療福祉、マイクロクレジットなど多岐に渡ります。実際、トセパン協同組合の中には、それぞれの活動に特化した8つの小さな組合があり、年々それらの組合の取り組みも増えています。組合が活動を続け、それによって多くの組合員(その家族も入れるとさらに多数)が自然を守りながら自立した生活を送るためには、継続的な資金が必要です。

 そこで、トセパン協同組合は、必要な融資や寄付を受ける窓口として、2012年に「トセパン基金」を設立しました。つまり、組合の「皆が幸せになる」という目標を実現するための取り組みを支えているのが、「トセパン基金」なのです。では、その集まった資金はどのように使われるのでしょうか?

 トセパン協同組合には、その時々で組合が重視する取り組み、緊急を要する取り組みがあります。どの活動を優先するべきか組合と基金担当者で話し合いが行われ、それに基づいて支援先(支援すべき活動、プロジェクト)を決めるかたちになっています。

 そこで、私たちウインドファームも、コーヒーと合わせ、トセパン基金を通したトセパン協同組合の活動支援を継続して行っていきたいと考えています。

 皆さまにもぜひトセパン協同組合へのご支援をいただけると幸いです。どうぞよろしくお願い致します。

2019/07/24

トセパン基金支援の報告ー100棟完成

2017年にメキシコ中部地震が発生して以降、トセパン協同組合が取り組んできた被災地での住宅再建プロジェクトに対しては、皆さまから多くの温かいご支援をいただいてまいりました。再度、心よりお礼申し上げます。


メンバーの集合写真

当初の予定より遅れましたが、先日ようやく目標としていた100棟が完成いたしました。

このプロジェクトは、トセパン協同組合とプエブラ自治大学の主導により、地域の資源を活用しながら地震・火山にも耐え得る住民に寄り添う復興事業として実施されてきたものです。トセパン協同組合では、タマケパリスプロジェクト(「タマケパリス」はナワット語で「兄弟へのサポート」を意味する)と呼ばれています。


針金で止める間隔を以前より狭くして、耐震化をすすめた

100棟目の完成に伴い、先日、ポポカテペトル火山の火口から15kmに位置するクアウトマティトラ村の中央広場にて、その100棟目の住宅登記書類引き渡しの式典が行われました。

この式典には、地方議員や、技術提供を行ったプエブラ自治大学の専門家、トセパン協同組合代表のパウリーナ・ガリード氏、アドバイザ―のアルバロ・アギラール氏、レオナルド・ドゥラン氏が出席しました。

(2018年)9月19日の地震の震源地から51kmのクアウトマティトラ村における書類引き渡しの際、多くの個人や団体、そしてバノルテ銀行から1000万ペソの寄付があったことが紹介されました。また、メキシコ国立自治大学のカルロス・ゴンザレス氏、プエブラ自治大学のカルロス・ブストス氏により、建設技術が提供され指揮された功績が称えられました。

被災者へのタマケパリス・プロジェクト適用条件として、住宅を受け取る被災者が可能な限り、住宅再建への作業に関わることを掲げていました。住宅の設計は専門家の建築士が、基礎工事は大工が行いましたが、住宅を受け取る家族も週末にはセメントをこねてブロックを積み重ねる作業をしたり、事務作業を行ったりもしてきました。


家づくりを手伝う家族

トセパン基金のメンバー(レオナルド氏など)が、被災地の主要メンバーに、書類作りや、建築材料の在庫管理、地元住民との調整方法なども教えていました。


トセパン基金のメンバーから書類作りについて習う様子


建材の在庫管理方法などもトセパン基金メンバーから習って管理

被災地の住民からは、「トセパンのような活動を地元に根付かせたい」という声も出ていて、今後の広がりが期待されます。

2019/07/01

ウインドファームのコーヒーが飲める「お寺のカフェ」横浜市戸塚

善了寺の境内にOPEN!オーガニックなカフェ「ゆっくり堂」でカラダにやさしい時間を (2017.12.14 戸塚新聞)

こんにちは、主婦ライターです。

皆さま、良いお正月を過ごされましたか?

事務所でも風邪が流行って、私はすっかり寝正月。

今年は健康第一!に過ごしたいものです。

さて、戸塚のNEWなカフェにいってきました。

カフェゆっくり堂
戸塚駅の程近く「善了寺」は浄土真宗本願寺派のお寺。

その境内にある建物「聞思堂」内に今年の10月

「カフェゆっくり堂」がOPENしました。

戸塚駅東口から東海道沿い(1号線)を吉田大橋方面

へ歩いて行くと、左手に善良寺の入り口があります。

善了寺の境内に入っていくと。。。右手に「聞思堂」

「聞思堂」では、宗教法人善了寺とNPO法人カフェ・デラ・テラとが協力し、地域のつながりを軸とした活動を行ってきました。設立10年になるNPO法人カフェ・デラ・テラの理事を務めるのは文化人類学者、環境運動家、明治学院大学国際学部教員でもある辻信一氏。夏至・冬至のキャンドルナイトなど様々なイベントが企画され、地域に開かれたコミュニティスペース。戸塚新聞もキャンドルナイトの取材にお邪魔したことがあります!

一見カフェっぽくない外観で、ここ入ってイイの?

と感じながらも、靴を下駄箱に入れて上がります。

基本、お堂ですからネ!

“太陽と、木とわらと土の力を借りてゆっくり呼吸する聞思堂”

設計の段階で東日本大震災が起こり、震災復興支援のために宮城県栗原市の「栗駒木材」を使用。そして、那須に「非電化工房」を構える環境発明家の藤村靖之さんと健康住宅を提唱する「天然住宅」の相根昭典さんらにより多くのアドバイスを頂き、循環型社会を目指す「スローデザイン」建築として、多くの人々の想いが詰まったお堂が完成しました。大量生産・消費社会という現在の暮らしを見つめ直し、健康的で持続可能な社会に向かっていこうという強いメッセージを受け取ることができます。

「命とつながる大地のお堂」と称されるだけあって、

エコロジカルな空間に身を置いていると、

本能が感じるんです、自然が生み出す心地よさを。

「聞思堂」では太陽光発電の電力でまかない、寒い冬の時期は自然環境にやさしいペレットストーブで暖をとります。(この日は試運転中ですっごく暖かかった・・・イヤ、暑かった・・・)天然木の床(床暖房までペレット!)や土壁といった自然素材のおかげで、快適な室内環境を保つことができているんだとか。

はじめ店内に入ると、その照明の暗さに面食らいますが、

しばらくいると暗さにも慣れ、ホント落ち着きます?。

座席は12席+奥に8席。

素朴なあたたかみのあるテーブルとイスが置かれ、

さりげなくナチュラルなインテリア。

スタッフ:
「駅からちょっと離れただけですが、この辺りは飲食店が少ないので、ご近所の方々が喜んでくださって。どちらか言うとランチにいらっしゃるお客様が多く、カフェタイムは比較的のんびりです。」

カフェゆっくり堂では、安らげるひとときが待っていますよ?。

体にやさしいごはん2種類
塩こうじグリル野菜のランチプレート
塩こうじグリル野菜のカレーライス
ランチ+300円でコーヒーセットにでき、

紅茶やカフェインレスコーヒーも選択OK!

戸塚新聞:
「お寺ということで、菜食メニューなのですか?」

スタッフ:
「良質な魚・肉が手に入りにくいこともあり、野菜はそられに比べ販路がひらけているので、このような形になりました。」

戸塚新聞:
「今日は野菜のランチプレートをご用意いただきました。内容をご紹介いただけますか?」

スタッフ:
「自家製の塩こうじに、5?6種類の季節の野菜をあえてグリルしたものです。かぼちゃスープは塩こうじと胡椒のみで仕上げています。お米は福岡県鳥越ネットワークの有機米を使用しています。」

スタッフ:
「自然食レストランは薄味で物足りなさを感じたり、素材の味がうまく引き立っていなかったりしているという意見を聞くので、素材の持ち味を活かすような調理を心がけています。万人が美味しいと感じるものを目指しています。」

戸塚新聞:
「調味料も厳選しているようですね。」

スタッフ:
「トランス脂肪酸、シリコンゼロの圧搾抽出のなたね油で、かつ天然由来のオメガ3が摂取できる高品質のものをアメリカから取り寄せ、日本の伝統的な調味料では、昔ながらの製法で丁寧に作られた安心・安全なものを選んでいます。
いずれは自家製を使いたいですね。味噌、醤油、みりん等は発酵が必要なので、今すぐというわけにいきませんが・・・本来は家庭で作るもの。昔の暮らしはそうだったと思います。でも女性の社会進出や核家族化といった時代背景もあって、当たり前にやっていた季節の手仕事が継承されていかないんですね。簡単に買えるものは傷んだら捨ててしまうけれど、自分で作ったものなら大事に使うはず。そんな気持ちも大切ではないでしょうか。」

善了寺は敷地内にて少人数制デイサービス「還る家ともに」を運営していますが、カフェゆっくり堂から週に3日、レシピ+食材提供するというボランティア活動も行っています。誕生日や季節行事に由来したメニューをとり入れるなど、なかなか外食に行かれないという利用者の方々にとても喜んでもらっているそう。

環境を守り、人を守る。
カフェで出すコーヒーは株式会社ウィンドファームのもの。「有機栽培」された安心安全なコーヒーを、顔と顔が見える関係「フェアトレード」で輸入し、自社で焙煎しています。また、豊かな生態系や生産者の暮らしを守る「森林農法」を推進。

※「森林農法」とは?
一般的な農園は森林を伐採してコーヒーだけを栽培、作業効率に優れる反面で、不作の場合は生産者の生活が不安定になることも。一方、「森林農法」では、森の中にコーヒーや果樹等を植え、生産者にとっては多様な収入源を確保することが可能に。作業効率は劣るものの、現地の環境や経済面にプラスとなります。

より自然に近い状態で育つコーヒー。スタッフによると、いわゆる有機栽培とはまた風味が違い、まろやかさが持ち味だとか。

ゆっくりブレンド1.5cup
ウィンドファーム自慢のブレンドコーヒー。

まずはこちらをどうぞ。

フレンチプレスで提供され、たっぷり楽しめます。

ストレートで飲むのがおすすめ☆

有機栽培コーヒーならではのやさしく繊細な味わい。

豆のえぐみや渋みは感じられず、スッと口に入ってきます。

後味もよく、とても飲みやすいコーヒーです。

お砂糖やミルクなしで、おいしくいただけます!

(欲しい方には牛乳のかわりに豆乳をご用意)

ゆっくりブレンド1cup
生産地ごとに多種類のコーヒーを揃えています。
「カルロスさんのコーヒー」「カフェインレス」、何種類もあるコーヒーからスタッフがセレクトした「本日のコーヒー」に加えて、有機栽培の紅茶やオーガニックなジュース類もメニューにあり、みんなにやさしいドリンクが揃っています。

スタッフ:
「有機栽培のカフェインレスコーヒーといえば、ウインドファーム!というくらい広く認知されています。独自の製法で化学薬品を使わずにカフェインを除去しているので安全性が高く、コーヒーの味わいと香りを残したマイルドな口あたりが特長です。妊婦さん・授乳中のお母さんたちにはもちろん、カフェイン入りのコーヒーを飲むと眠れなくなってしまう・・・というコーヒー好きの方たちにも好評の商品です。」

適度なカフェインは身体にいい作用をもたらす

と言われていますが、過剰摂取はよくありませんよね。

自分の体質や体調をみながら上手く楽しみましょう★

自家製スイーツ
左:チョコレートとくるみのビスコッティ(2本)
中:米粉のブラウニー
左:米粉のバナナパウンドケーキ
ヴィーガン仕様(動物性材料不使用)です。

パウンドケーキとブラウニーは米粉使用につきグルテンフリー。

自然な甘みがやさしい手作りスイーツはコーヒーとの相性抜群。

食物アレルギーをお持ちの方も安心して召し上がれ!

つながりから生まれる
そもそも「ゆっくり堂」は、ウィンドファーム代表の中村隆市氏が代表取締役を務め、文化人類学者、環境運動家、明治学院大学国際学部教員でNPO法人カフェ・デラ・テラ理事の辻信一氏が取締役の会社。
善了寺のご住職と辻信一氏とのつながりもあって、「聞思堂」でスタートしたカフェなのです。それを思うとナルホド!このカフェがもつ環境にも人にも優しい、エコロジカルなコンセプトと結びつきます。

スタッフ:
「店頭でウインドファームのコーヒー販売もしており、ご自宅用や贈り物に好評です。いずれは焼き菓子を加えたギフトセットも扱いたいと考えています。私たちがレシピ提供と指導を行い、別のNPO法人に製造を委託する仕組みを検討中です。」

「ゆっくり堂」で“ゆっくり”過ごす
お寺は本来、地域に根差した存在。仏事はもとより、習い事や集会などで色々な世代が利用するコミュニティのような役割を果たしていました。(主婦ライターもその昔、お寺の書道教室に通っていましたヨ・・・)地域の活性化に積極的に取り組み、さまざまな思いを発信している善了寺に、新たにカフェができたことには大きな意味があるのだなあと感じた今回の取材。

こだわりのコーヒーやフードを楽しむもよし、カフェ運営に携わる人たちの深い想いを感じて交流に参加するもよし。みんなが気軽に訪れ、それとなく元気をチャージしてまた日々の生活に戻っていく・・・そんな交差点のような場として発展していくといいな?と思います。

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カフェゆっくり堂

住所:横浜市戸塚区矢部町125善了寺内

TEL:090-6013-0451

営業時間:11時半~17時
(ランチ~14時半、L.O.14時/カフェ14~17時)

定休日:日月

www.yukkurido.com

www.facebook.com/CafeYukkurido

株式会社ウインドファーム

住所:福岡県遠賀郡水巻町下二西3-7-16

TEL:093-202-0081

https://www.windfarm.co.jp

2019/01/24

森林農法で地球の緑 未来へ パトリシア・モゲルさん(2019年1月17日 毎日新聞)

森林農法で地球の緑 未来へ パトリシア・モゲルさん
(2019年1月17日 毎日新聞)

「樹木や果樹との混植でコーヒー豆を育てることで、森を守ることと経済的な自立の両立が図られる」と強調するのはメキシコの生態学者、パトリシア・モゲルさん(62)。東京で昨秋、開かれた「しあわせの経済」フォーラムで、先住民族らが実践する森林農法を紹介した。

 メキシコ中部プエブラ州の山岳地帯で、先住民族らが運営するトセパン協同組合のアドバイザー。組合には約3万5000世帯が加盟し、森林農法でコーヒー豆も栽培している。日本では、福岡県水巻町の有機コーヒー販売会社「ウインドファーム」が輸入し、同社代表の中村隆市さん(63)は生産者やモゲルさんと交流を重ねてきた。
 
 メキシコのロペスオブラドール大統領は「国の政策として森林農法を推進する意向」と伝えられ、閣僚に起用されたマリア・ルイサ・アルボレス・ゴンサレス福祉相はトセパン出身という。モゲルさんは「日本にも環境や貧困の問題はある。大切なのはそれぞれが行動し、緑の地球を未来に残すこと」と語る。【明珍美紀】

2019/01/07

メキシコの新政権が国策として森林農法を推進

新年明けましておめでとうございます。
年始にあたって、皆さんと共に歓びを分かち合いたいことがあります。
それは、ウインドファームの創業から32年目の昨年12月に起きた奇跡的な出来事です。
長年、有機コーヒーのフェアトレードで提携してきたメキシコのトセパン協同組合のスタッフであり、私たちの友人でもあるマリア・ルイサ・アルボレスさんが、なんと、社会開発省の大臣に就任したのです。そして、トセパン協同組合が設立された40年前から取り組んできた森林農法(アグロフォレストリー)がメキシコ全土で推進されることになったのです。


マリア・ルイサさん


トセパン時代のマリア・ルイサさん(前列左から2人目、後列右が中村)


真ん中のロペスオブラドール大統領の左がマリア・ルイサ社会開発大臣

大統領に就任したロペスオブラドール氏は、素晴しい就任演説を行いました。
「私たちは自然を破壊することなく生産性を向上させる森林農法を推進します。遺伝子組み換え種子の導入および使用は認めません。フラッキングのように、自然に影響を及ぼし、水源を枯渇させるようなガス、石油あるいはいかなる自然資源の抽出産業も認めません。環境に影響を与える経済、生産、商業は認めません。土壌、水および空気の汚染はくい止めます。動植物は保護します。水は民営化させません。」と明言しました。

Sembrando Vida(命の種をまく=持続可能な地域社会づくり)』と名付けられたメキシコの新政権が推進する「森林農法プロジェクト」というのは、具体的には100万ヘクタールの土地に森林農法を展開するのですが、それを実施するのがマリア・ルイサ率いる社会開発省です。
この政策は大きく2つの課題の解決をめざしています。一つは「農村の貧困」、もう一つは「環境破壊」です。そして、農地の再生、地域社会の再生、地域経済の活性化を目指しています。まずは19の州において、1万ヘクタールの植林を行いますが、そのプロセスは、段階的に実施されます。建材となる樹木、果樹を植林して、森林農法(アグロフォレストリー)の森をつくり、森の豊かさを取りもどします。そして、ミルパ(トウモロコシ栽培が主体の伝統的な農法)と、果樹を組み合わせていきます。

『Sembrando Vida』における基本モデルは、次のとおりです。
各生産者は、2.5ヘクタール(7500坪)の農地を耕作し、地域の25名で生産者グループをつくることで、有機栽培や苗床づくりなどの援助を受けることができます。そのため、各グループには農業技術指導員などが任命されて、生産者を支援します。

このプログラムで実施される森林農法とミルパにより得られる農作物は、主に地域における流通と生産者の食糧とします。次の段階においては、組合を設立し、小規模金融(マイクロクレジット)システムも取り入れ、各種研修を受けて、販売の知識も学びます。
その結果、40万人の正規雇用を創出することで、家計収入の増加、販売力の増強、森林の再生、地域社会の誇りを取り戻すとしています。

2019年は、チアパス州、ベラクルス州、タバスコ州、カンペチェ州の22万人の生産者が、55万ヘクタールの耕作地の再生に取り組み、その4州の結果を踏まえて、2020年以降は、残りの15州でも同様に実施する予定です。
(スペイン語翻訳:井上智晴、和田彩子)


マリア・ルイサさんと肩を組むロペスオブラドール大統領

つまり、トセパン協同組合が長年取り組んできたことをメキシコ全土で展開していこうとしているのです。

近年、世界各地で「気候変動」が大きな問題になっています。日本でも昨夏、国内最高気温41.1度を記録して熱中症が過去最多となったり、観測史上例のない規模の集中豪雨や台風の「逆走」や記録的な風速も観測されています。

2015年、国連本部において「国連持続可能な開発サミット」が開催されました。150以上の加盟国首脳の参加のもと、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、行動計画として掲げた目標が「持続可能な開発目標(SDGs)」でした。

そのSDGsの目標は「貧困や飢餓をなくし、すべての人に健康と福祉と教育を、人や国の不平等をなくし、自然環境を守り、気候変動に具体的な対策を、平和と公正を全ての人に」といった17項目ですが、そのほとんどがトセパンによってこの40年間に取り組まれてきたことです。

森林農法について2006年にNHKが放送した<地球環境の旅 コーヒーを育てる恵みの森 メキシコ>という番組は、森林農法とドン・ルイス(ルイス・フスティニアノ・マルケスさん)のインタビューを紹介したものでした。その一部をピックアップします。

[ ナレーション ]30年前(注:1976年)メキシココーヒー協会が農家に配ったテキスト。コーヒーの木の周りは、草を刈るように書かれています。また、化学肥料を使ったり、農薬を撒いて害虫を駆除するように教えていました。こうした、森を切り開いてつくる農園をプランテーション農園と呼び、これが世界のコーヒー作りの主流なんです。


農薬散布

しかし、この方法は、収穫量が増えますが、自然を破壊する恐れがあります。コーヒー以外の木が切られると、露出した地面は荒れてしまいます。下草の生えない地面には虫はいなくなり、鳥などの生き物たちも姿を見せません。ルイスさんも一度はプランテーション農園にしましたが、収穫量は減っても自然に優しい森林農法に切り替えたんです。研究機関の教えも受け、ルイスさんは、町中に森林農法を広めました。

ドン・ルイス「収穫量がもっと上がれば、森林農法を選ぶ人は世界中に広がり、自然を守る意識も高くなると思います。私たち農家が森を守らなければ、誰が守るというのでしょうか。」

今日は、番組でふれていない協同組合の設立経緯や主要な歴史についてもご紹介します。

メキシコに協同組合をつくり、森林農法を広めた先住民ドン・ルイス
42年前、大農園主や仲買人、高利貸しなどが利益を独占し、先住民の大半が極貧状態にあった地域に協同組合を設立したドン・ルイスは、多くの先住民に敬愛されています。その理由を森林農法の生産者が語っています。

「ドン・ルイスの一族は、かつて裕福でした。なぜなら仲買人をしていたからです。地域の貧しい農民たちは、遠く離れた町まで農作物を運ぶことはできませんでした。道路事情が悪い上に、輸送手段がなかったのです。そのため、トラックを持つ仲買人に買い叩かれていました。地域の発展のため、ドン・ルイスはその仲買人の仕事を辞めようと、家族に提案したそうです。もちろん、家族は大反対でした。兄弟はその後、ドン・ルイスと口をきくことは無かったそうです。」

1977年に設立されたトセパン協同組合は、日本の農協と生協が合体したような協同組合で、初代組合長がドン・ルイスでした。彼は、小さな土地で農業を営む先住民と共に森林農法を地域に再生し、適正価格で生産物を買い上げ、生活必需品を安価で販売することで、生産者の暮らしを極貧状態から少しずつ脱出させていきました。

「みんなのお金」という名の銀行
そのころ銀行は、先住民にお金を貸しませんでした。そこで彼らは、1998年に自分たちで「トセパントミン(みんなのお金)」という銀行をつくりました。

その銀行は、一般の銀行より預金金利が高く、借入金利が低くなりました。先住民が持ち寄ったお金は、10年も経たずに50倍以上に増え、そのお金を銀行は、女性たちの新規事業に優先的に融資しました。

主食のトルティーヤ屋さん、パン屋さん、衣服や食品の販売店など女性たちは次々に開店し、地域を活性化させていきました。「トルティージャ屋や民芸品の販売を始めるまでは、1日17時間ぐらい働いていたの。朝4時から薪運びをして、火を起こしてとうもろこし粉をつくり、水をかけてトルティージャを何枚も焼いていたわ。家族の食事をつくり、もちろん洗濯もするのよ。夜には布を織って、刺繍を加える。時には、明け方まで続ける日があったわ。トセパンの生産プロジェクトは、グループの女性だけを助けるのでなく、地域社会の全ての助けとなっているわ。」

こうして、それまでは男性の陰に隠れていた女性たちがだんだん自信を持つようになり、組合設立から40年目の一昨年、トセパンに初めて女性の代表が誕生しました。


中央の女性がトセパン協同組合のパウリーナ・ガリード組合長

トセパンでは、6年に一度、組合の代表を決める投票が組合員によって行われます。
パウリーナさんは、子どもたちの教育支援を目指すトセパン基金を提案した人で、これが多くの人の評価を得ました。

トセパンでは、組合内に自らの幼稚園、小学校、中学校を設け、言葉、文化・伝統、宇宙観など先住民としての教育と国の教育カリキュラムを合わせた独自の教育プログラムを行っています。自然を大切にする農業も学んでいます。そして、これを充実させるために設立されたのがトセパン基金でした。


トセパンの小学校


トセパン小学校での農作業の授業

また、「みんなのお金」銀行は一昨年、長年続けてきた先住民の住宅改善プロジェクト(雨が家の中に降り込まない住宅やカマドの煙で肺や目を悪くしない改良カマドの設置など)の取り組みが高く評価され、「ヨーロッパ・マイクロファイナンス・アワード2017」を受賞しました。


賞状を持つトセパンのアルバロ・アギラルさん

40年前に姿を消した鳥たちを呼び戻したドン・ルイス
子どもの頃から鳥が大好きだったルイスは「70種類の鳥の鳴き声を聞き分けられた」と言われていますが、そのルイスが1970年代にある異変に気づきました。「コーヒーの収穫量が増える」というコーヒー協会の指導に従って「農薬と化学肥料を多用する近代農法」が地域に広まるにつれて、鳥が激減していったのです。

「鳥がいない人生ほど寂しいことはない。鳥がいなくなる農法は間違っている」と確信したルイスは、鳥を呼び戻すために勉強し、森や森の生き物たちと共生する森林農法を地域に広めました。40年後の今、この地域の森には、渡り鳥もたくさん飛来し、年間200種類ほどの鳥を見ることができます。

森林農法が普及し豊かな自然が広がる中で、国内外からエコツアーのお客さんも増え、地元の竹で素晴しい宿泊施設も作られています。竹を使った建設技術は、住宅改善プロジェクトやメキシコ地震被災者の仮設住宅建設にも生かされています。(トセパンは、政府の援助が届かない被災者に仮設住宅を建設して支援しています)

いまメキシコは、大きく変わろうとしています。そうした変化のルーツをたどると、そこには、人間だけでなく全ての生きものや未来世代の幸せを願ったドン・ルイスとその仲間たちがいました。同様の思いを持ったメキシコ全土の先住民、農民、市民がいました。そうした力が結集して、昨年12月ついにロペスオブラドール新大統領が誕生したのです。

トセパンを訪ねるといつも満面の笑みで出迎えてくれたドン・ルイスは、2013年3月9日、鳥たちの鳴き声に包まれて82年の生涯を終えました。


ドン・ルイスと中村隆市(2003年)

組合創立期から今日に至るまで、トセパンは様々な困難を乗り越えてきました。地域の権力者鉱山開発など外国企業との闘い、「みんなのお金」銀行のお金が盗まれたこともあります。そして今も全ての問題が解決したわけではありません。

しかし、「人間だけでなく全ての生きものや未来世代の幸せを願ったドン・ルイス」の精神は今も若い世代に引き継がれています。今後、メキシコでは森林農法によってオーガニックの農産物が大量に生産されるようになってきます。ささやかながらもウインドファームは、これまで以上にメキシコの生産者と協力してフェアトレードを広めていく思いを強めています。そして、気候変動や生物種の絶滅を抑制し、飢餓や貧困を解消していくためにも、世界に森林農法やフェアトレードを広げていく必要があると考えています。

皆さんと共に、今年もこうした取り組みに参加できることを幸せだと感じています。
ありがとうございます。 

ウインドファーム 
代表 中村隆市

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