パトリシアからのメッセージ

*日本の消費者のみなさんへ

世界で最初に有機栽培のコーヒーを生産したのはメキシコです。この有機栽培という生産システムは、地域レベルで見ても国際レベルで見ても、環境に対して多くの利益をもたらしています。例えば、生物多様性の保全、土壌の保全、気候の改善、地球温暖化の影響の削減、洪水、火災といった自然災害の軽減といったことです。

また、メキシコでは、有機栽培に基づくコーヒー生産は、毎年300万に近い雇用を生み出しています。
例えば、有機栽培でコーヒーを生産する場合、慣行栽培よりも多くの土地を耕作する必要が出てきます。
平均して1ヘクタール当たり160日間の雇用が必要となるのです。

パトリシア2
 パトリシア・モゲルさん

 しかし、私が日本の消費者のみなさんにお願いしたいのは、メキシコでのコーヒーの有機栽培(これは、伝統的に日陰樹を利用した栽培方法を取り合わせたもの、アグロフォレストリーシステムを含む)を、単に環境にやさしいとか、お金や雇用を生み出すものとしてだけ見ていただきたくないということです。

これはどういうことかと言いますと、コーヒーの有機栽培には、さまざまな文化や信念、そして知恵や知識が凝縮されており、社会や文化面から見てもその利益、恩恵は計り知れないということです。

メキシコでは、約32族もの先住民がコーヒー生産に従事しており、彼らはそれぞれに伝統や慣習、代々受け継がれてきた人生観などを持っています。つまり、コー ヒー生産の周辺地域では、それぞれの先住民族が織りなす文化の多様性を見ることができるのです。

こうしたことから、先住民族が伝統的に行ってきたアグロフォレストリーを維持し、その生産物であるコーヒーをフェアに取引するということは、単に生物多様性や環境を保全しているというだけでなく、先住民族が現在まで守り続けてきた文化の多様性を保護することにもつながるということです。

そして、この文化の中には、「分かち合い」、「協力」、「尊敬と連帯」といった言葉に代表される先住民の考え方や姿勢も含まれています。近頃、メキシコでは、生物多様性の保全に関してその重要性を指摘する研究者は多くいます。
しかし、こうした文化の多様性に目を向けている研究者はいないのではないでしょうか。重要なのは、生物だけでなく先住民族たちの文化の多様性をいかにして守り続けていくかということなのです。

そして、これができるのは、フェアトレードやこれと似たような取引―自由貿易に取って代わる貿易―を通してだけだと私は思うのです。このためには、生産者と消費者の連帯を築いていくことが必要となってくるでしょう。

生産者と消費者がお互いの立場を理解し、共に協力しあっていくことが大事なのです。 私は今回、中村隆市さんと一緒に2つの生産者グループを訪ねました。彼らは常に「協力し、分かち合う」という姿勢を大切にしていました。彼らのこうした姿勢は、フェアトレードに取り組む上で、また、さまざまな社会問題と闘っていく上でとても大切な考え方だと思っています。

最後に、もう1つ聞いていただきたいことがあります。私が今まで述べてきたコーヒーは、単なる”オーガニック(有機栽培の)コーヒー”ではありません。確かに生産方法としては有機栽培です。しかし、前にお話しましたように、この生産方法には生態系や環境だけでなく、先住民族の文化や信念をも持続的に守り続けていこうという姿勢が含まれています。

そこで私は、このコーヒーを確信を持ってこう呼びたいと思っています。
“サステイナブル(持続可能な)コーヒー” と。これには、次に述べる4つの要素が含まれています。まず環境の豊かさ、2つめが生活や人生の豊かさ、そして3つめが生産物の質の高さ、4つめが精神的な豊かさです。この”サステイナブ ル”という考え方は、とても大切なことなので、ぜひ皆さんに知っておいていただきたいと思うのです。

今後は、研究のみならず、消費者の立場にある中村さんとともに、協力しあい、同じ経験を分かちあいながら、メキシコの生産者と日本の消費者のみなさんとの連帯を築いていきたいと思っています。それが、私の夢なのです。

2005年4月
パトリシア・モゲル

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