2015/01/10

原発事故による健康被害の現状と 「9歳の小学生の願い」

東京電力福島第一原発事故から3年10カ月、福島県では様々な病気が増えてきていますが、マスコミが報道しているのはその一部だけです。

甲状腺検査 112人(今回4人含む)がんやがんの疑い 対象38万人中30万人受診 

通常、子どもの甲状腺がんは、100万人に1人、未成年の甲状腺がん年間発生率も100万人に2~3人と言われていました。2006年の統計では、甲状腺がんと診断された20歳未満の人は、【全国で46人】でした。これは【未成年2250万人に46人】であり 【100万人に2.0人】です。
しかし、2014年に福島県では【38万人に58人】も甲状腺がんと診断されています。

福島 子どもの甲状腺がん

日本の全人口の約1.5%の福島県で、通常の全国の発生数より多い58人が甲状腺がんという異常事態です。原発事故当時 0歳から18歳までの子どもたちは、この3年間で84人が甲状腺がんとなり、「がんの疑い」28人を加えると112人になっています。

3年間の子どもの甲状腺検査結果を見て心配なのは、福島原発事故の後、甲状腺がんが増えただけでなく、がんになる可能性がある結節やのう胞が年ごとに急増していることです

罫線入り表 甲状腺 結節のう胞 H26年6月30日現在

5ミリ以上の結節がある人が、0.5% → 0.7% → 0.9% と、この2年で1.8倍に急増し、のう胞がある人も、36.2% → 44.7% → 55.9%に増加。精密検査が必要な子どもは1.8倍になっています。

子どもの甲状腺がんで特に心配なことは、転移が早いことです。
がんを手術した54人のうち8割超の45人は腫瘍の大きさが10ミリ超かリンパ節や他の臓器への転移などがあり、2人は肺に転移しています。
チェルノブイリ原発事故で大きな被害を受けたベラルーシの国立甲状腺がんセンターの統計では、15歳未満は3人に2人がリンパ節に転移し、6人に1人が肺に転移しています。

ベラルーシの統計 甲状腺がんの転移 リンパ節67.5% 肺16.5%

チェルノブイリ原発事故の健康影響調査に関わった山下俊一氏も福島原発事故が起きる前は、「大人と異なり、小児甲状腺がんの約4割は、この小さい段階(1センチ以下、数ミリの結節)でみつけてもすでに局所のリンパ節に転移があります」と話しています。

1990年代に医療支援のために度々チェルノブイリ原発事故の汚染地を訪問していた私は、ベラルーシに福祉作業所(工房)をつくったナターシャさんという女性に出会いました。彼女は2人の子どもをガンで亡くしていますが、息子さんは9歳で被ばくし、甲状腺がんが肺に転移して21歳で亡くなっています娘さんも胃ガンが全身に転移して亡くなっています

このような状況で、「未成年の甲状腺検査は2年に1回」というのは、少な過ぎます。チェルノブイリのように毎年行い、津田敏秀教授が「市民科学者国際会議」で提言されたように原発事故当時19歳以上の人たちと福島県外の汚染地での健診も早急に開始する必要があります。

福島で増えている病気は、甲状腺がんだけではありません
福島県立医大で治療数が増えている病気」を見るとチェルノブイリでも増えた病気が増えています。

*膀胱腫瘍が2倍(66 → 79 → 138)
福島県立医大で治療数が増えている病気

『チェルノブイリ膀胱炎』 尿から内部被ばく
(2011年9月14日 東京新聞)
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「福島県立医大で治療数が増えている病気」
*心臓弁膜症が3倍(35 → 54 → 103)
福島県立医大:弁膜症の増加

体内にセシウム 心臓疾患まねく ゴメリ医科大・元学長
ユーリー・バンダジェフスキー博士の研究データから セシウムが甲状腺や心筋(心臓を構成する筋肉)に多量に蓄積している
心筋や甲状腺にセシウムが蓄積する

「福島県立医大で治療数が増えている病気」
*「胆のう、肝外胆管の悪性腫瘍」が3.5倍(32 → 94 → 115)
福島県立医大:胆のう、肝外胆管の悪性腫瘍の増加

一つの病院のデータだけでは、福島県で実際に病気が増えているのか判断できないので、他の都道府県と比較してみました。2013年の人口動態統計で、全国平均より福島の死亡率が1.4倍以上高い病気は、内分泌・栄養及び代謝疾患(1.40倍) 皮膚がん(1.42倍 ) 脳血管疾患(1.44倍) 糖尿病(1.46倍) 脳梗塞(1.60倍) 特に、急性心筋梗塞、結腸がん、腎臓病、消化器系の疾患などが原発事故の後に急増しています

2012年福島県の死因ワーストランキング
   (表は宝島から拝借 クリックで拡大できます)

チェルノブイリと同様に最も急増しているのが、セシウムが蓄積しやすい心臓の病気で、急性心筋梗塞の死亡率が全国平均の2.40倍慢性リウマチ性心疾患の死亡率が全国平均の2.53倍で、どちらも全国1位になっています。

福島県の急性心筋梗塞死亡率 2009~2014.3
*2010年以前から全国1位。原発事故が起こった2011年から急増 2014年1~3月 福島の477人は、3か月間に急性心筋梗塞で亡くなった人の実数。全国の実数は、12,436人。福島県の人口は、全国の1.53%なので、12436×0.0153=190人 全国平均なら福島は190人ですが、その2.51倍の477人が亡くなっています。

原発事故以前から全国1位という数字を見て思い出すのは、原発周辺では事故を起こさなくても白血病やがんが多いというドイツ政府やフランスでの発表福島には原発が10基もあったこと、そして、2011年の原発事故前から「小さな事故」が多発していたこと、さらに事故の隠ぺいが日常化し、29年間も臨界事故が隠されていたほどですから、どれだけの放射性物質が放出されてきたか分かりません。

同じ心臓病の「慢性リウマチ性心疾患」は、急性心筋梗塞より1年遅れの2012年から死亡率が急増しています。

福島県の「慢性リウマチ性心疾患」 死亡率

グラフにするとその急激な増加がよくわかります。
赤色が全国平均、紺色が福島県です。

慢性リウマチ性心疾患のグラフ

こうした状況にありながら日本政府は、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアが制定している被ばく線量を減らすための法律(「チェルノブイリ法」)をつくろうとしません。年間1ミリシーベルト以上は、「避難の権利」があり、5ミリシーベルト以上は「移住の義務」があることを柱としている「チェルノブイリ法」は、移住のための費用や医療費などの手厚い補償があります。移住を選んだ住民に対して国は、移住先での雇用を探し、住居も提供。引越し費用や移住によって失う財産の補償なども行われています。

*衆議院チェルノブイリ原発事故等調査議員団報告書

チェルノブイリ法の基準

日本にもできるだけ早く「チェルノブイリ法」をつくる必要があります。ところが、原発の輸出や再稼働に熱心な安倍首相は、健康影響を無視するだけでなく、東京五輪招致に当たり、福島原発事故による健康への影響について「今までも、現在も、将来も問題ないと約束する」と、信じられない発言をしました。

安倍首相「健康問題については、今までも現在も将来も問題ないと約束する」

安倍首相に同調するかのように原子力規制委員会も「年20ミリシーベルト以下は健康影響なし」と発表。被ばく対策が進むどころか、避難した住民を20ミリシーベルト以下の放射能汚染地に戻そうとしています

日本赤十字社は、原子力災害時の医療救護の活動指針として、累積被ばく線量が1ミリシーベルトを超える恐れがあれば退避するとしています。

ロシア科学アカデミー会員で、報告書『チェルノブイリ―大惨事が人びとと環境におよぼした影響』(日本語訳書『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』岩波書店 2013年発行)をまとめたアレクセイ・ヤブロコフ博士はこう言っています。
偽りのないデータというのは、1キュリー/平方km(年約1ミリシーベルト)以上に住むすべての人々に何らかの健康被害が出ていることです。5キュリー(5ミリシーベルト)に住む人はさらに被害が増大します。健康被害は汚染レベルが高くなるにつれ明確に増大します

ヤブロコフ博士「自然放射線も含めて年約1ミリシーベルトに住む全ての人に健康被害が出ている」

また、1985年にノーベル平和賞を受賞した米国の「社会的責任のための医師団(Physicians for Social Responsibility)」も次のように警告しています。

PSR ノーベル賞受賞 医師団

「日本で危機が続く中、人に発がんの危険が生じるのは最低100ミリシーベルト(mSv)被曝したときだという報道が様々なメディアでますます多くなされるようになっている。これまでの研究で確立された知見に照らしてみると、この主張は誤りであることがわかる。100 mSv の線量を受けたときの発がんリスクは100人に1人、10 mSv では1000人に1人、そして1 mSV でも1万人に1人である」

そして、2011年4月に内閣官房参与の小佐古敏荘・東京大学教授(放射線安全学)は、年間20ミリシーベルトを基準に決めたことに「容認すれば私の学者生命は終わり。自分の子どもをそういう目に遭わせたくない」と抗議の辞任をした会見で、「年間20ミリシーベルト近い被ばくをする人は原子力発電所の放射線業務従事者でも極めて少ない。この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」と発言しています。

福島民報:20ミリ以下、健康影響なし

そして、「20ミリシーベルト以下は健康影響なし」とした原子力規制委員会が川内原発1、2号機を審査し、「新規制基準に適合している」と判定。国民の同意がないままに「原発の再稼働」が決定されようとしています。

私たちは、ベラルーシ科学アカデミーのミハイル・マリコ博士の言葉に謙虚に耳を傾ける必要があると思います。
チェルノブイリの防護基準、年間1ミリシーベルトは市民の声で実現されました。核事故の歴史は関係者が事故を小さく見せようと放射線防護を軽視し、悲劇が繰り返された歴史です。チェルノブイリではソ連政府が決め、IAEAとWHOも賛同した緩い防護基準を市民が結束して事故5年後に、平常時の防護基準、年間1ミリシーベルトに見直させました。それでも遅れた分だけ悲劇が深刻になりました。フクシマでも早急な防護基準の見直しが必要です

※ウクライナでは、年間被ばく線量が5ミリシーベルト以下の汚染地帯に事故以来25年以上、約500万人が住み続けていますが、「Safety for the future 未来のための安全」と題されたウクライナ政府報告書によれば、そうした汚染地帯で心臓疾患や膠原病(リウマチその他)など、さまざまな病気が多発し、特に心筋梗塞や狭心症など心臓や血管の病気が増加しています。福島県の病気のデータは、ウクライナに似てきています。

ウクライナ政府報告書 未来のための安全

子どもの健康悪化も深刻で、2008年のデータでは、チェルノブイリ原発事故後に生まれた子どもたちの78%が慢性疾患を持っていました。「子どもや妊婦さんまで含めて、年間20ミリシーベルトまで安全」としている日本の汚染地に住む人々は、どうなるのでしょうか・・・こんな人体実験は、決してやらせてはならないと思います。

「年20ミリシーベルトを超えない」として南相馬の避難勧奨を解除 住民反発

◆避難勧奨、最後の解除・南相馬
(2014年12月29日 河北新報)から抜粋

 南相馬市内の152世帯が指定された東京電力福島第1原発事故に伴う国の特定避難勧奨地点が28日午前0時、解除された。福島県内の勧奨地点は全てなくなった。市によると、指定世帯の約7割が現在も避難を続けている。国の決定を「一方的だ」と非難する声も強く、地元ではさらなる環境改善を訴えている。

 国は全世帯が指定基準の年間20ミリシーベルト(毎時3.8マイクロシーベルト相当)を下回り、「健康に影響ないレベルになった」(高木陽介経済産業副大臣)として解除に踏み切った。指定時に平均毎時2.4マイクロシーベルトだった線量は、除染で同0.4マイクロシーベルトに下がった。しかし、同1マイクロシーベルトを超える世帯もあり、地域には原発20キロ圏内より線量が高い場所が散見される。

 勧奨地点があった行政区長は、再除染と住民の被ばくを管理する健康手帳の発行などを国に求めてきたが、実現しないまま解除を迎えた。解除に伴い、慰謝料は来年3月で打ち切られる。避難の継続は家計の負担増にもつながる。

 地区30世帯の半数を超える17世帯が指定されていた同市原町区の大谷行政区の場合、指定世帯だけでなく、非指定世帯の避難者もいる。藤原保正区長(66)は「まだ空間線量が高く、特に若い住民の不安が消えない。解除は納得できない」と憤る。

 藤原区長は、国の対応次第では法廷闘争も辞さない構え。住民らと解除差し止めの訴訟についても検討しているという。

 原町区の自宅が勧奨地点になり、子ども3人と新潟市に避難する杉由美子さん(45)は「子どもに不必要な被ばくはさせられないので、慰謝料がなくなっても戻れない。解除で周囲に『戻れるんでしょ』と思われるのがつらい」と話した。

原発は事故を起こさなくても周辺住民の病気を増やしている
(2014/11/13 風の便り)から抜粋

「原発は事故を起こさなくても(日常的な放射性物質の放出によって)周辺住民の病気を増やしている」ということが、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、韓国などでの調査でわかっています。

ドイツ政府の調査では、原発から5km圏内の小児ガンは全国平均の1.61倍、小児白血病は2.19倍となっており、フランス国立保健医学研究所の発表では、15歳以下の子どもは白血病の発症率が1.9倍高く、5歳未満では2.2倍高くなっています。

韓国の調査では、原発から5キロ以内に住む女性の甲状腺がんの発生率は、全国平均の2.5倍になっています。

こうした「原発の日常的な放射性物質の放出」によって周辺住民に病気が増えている中、福島では原発事故が収束していない(通常の運転中より多量の放射性物質を放出している)状況で、危険な地域に住民を戻しています。

加えて原発は、燃料のウランを掘る段階で採掘地の環境を破壊し、放射能で汚染して、鉱山作業員と住民に被曝させ原発で働く人たちの被曝労働や海の生態系を破壊する温排水吸水の問題核燃料再処理工場からの膨大な放射能の排出問題。さらに、100万年後まで毒性が消えない「放射性廃棄物」の問題を原発は生み出しています。

原発問題 神様知恵をください 小学生9歳

原発問題 神様知恵をください
小学生 藤澤 凛々子 (東京都武蔵村山市 9 )
(2012年7月14日 朝日新聞 投稿欄)

この前、ギリシャ神話を読みました。
人間に火を与えた神プロメテウスに、全能の神ゼウスは言いました。
「人間は無知で、何が幸せで何が不幸かわからないからだめだ」

私はずっと人間は他の動物よりかしこいと思っていました。
火を使い、便利で幸せな生活を送っているのは人間だけだからです。

でも、大い原発が再稼働したというニュースに、
ゼウスの言う通り人間は無知なのかもと思いました。
福島第一原発事こは、まだ終わっていません。
放しゃ能で大変な事になってしまうのに、
この夏の電力や快てきな生活を優先したのです。
大い原発は幸せな未来につながるのでしょうか。
私が大人になるまでに日本も地球もだめになってしまうのではないかと心配です。

神様、どうか私に目先の事だけでなく未来のことまで考えて
何が幸せで何が不幸かわかる知恵をください。
その知恵で人も他の動物も幸せにくらせるようにしたいです。

2015/01/09

甲状腺がんに関する 2009年の山下俊一氏の発言

福島原発事故が起きる2年前の山下俊一氏の発言
日本臨床内科医会会誌(第23巻第5号 2009年3月)に記載

2009年山下講演1

(講演録から一部抜粋)

 日本では思春期を超えた子供の甲状腺がん
 まれにみるぐらいです。
 その頻度は、年間100万人に1人といわれています。
 これは欧米、日本、ほぼ変わりません。

 大人では、結節をさわるとだいたい100人に1人か2人に
 がんの可能性がありますが、子供の場合には約20%が
 がんでした。

山下俊一「小児甲状腺がんの約4割は、リンパ節に転移があります」

「大人と異なり、小児甲状腺がんの約4割は
 この小さい段階(1センチ以下、数ミリの結節)で
みつけてもすでに局所のリンパ節に転移があります」

(中村コメント:この発言は、山下氏が小児甲状腺がんは転移しやすいことを理解している重要な発言です。ベラルーシ国立甲状腺がんセンターの統計では、15歳未満は3人に2人がリンパ節に転移し、6人に1人が肺に転移しています。今、福島の子どもたちの甲状腺がんがリンパ節や肺に転移していることが分ってきた中で、甲状腺の検査が2年に1回というのは、少な過ぎます。)

放射線と健康影響を考えるときに、
広島、長崎の外部被ばくの様式と異なり、
この地域(チェルノブイリ)の一般住民には
内部被ばくの放射線影響があることを示唆しています。

いったん被ばくをした子供たちは生涯続く甲状腺の
発がんリスクをもつということも明らかになりました。

山下俊一「5000例の子どもの甲状腺がん手術、早期発見と早期診断を続けていく必要がある」

 これからもがんが起こりうるハイリスクグループの検診
 活動、早期発見と早期診断を続けて行く必要がある
 考えています。

 チェルノブイリの原発事故後の甲状腺がんの遺伝子
 変異の特徴が明らかにされつつあります。
 小児甲状腺がんのほとんどは、染色体が二重鎖切断
 された後、異常な修復で起る再配列がん遺伝子が原因
 だということがわかりました。

山下俊一「10~100mSvの間で発がんが起こりうる」

主として20歳未満の人たちで、過剰な放射線を被ばくすると、
10~100mSvの間で発がんが起こりうるというリスクを否定できません

(中村コメント:山下氏は、原発事故後は一転して「100mSvまでは安全」と言い続けています)

以上、山下俊一氏の発言は日本臨床内科医会会誌
(第23巻第5号 2009年3月)に記載されている

山下俊一講演「放射線の光と影」2009年3月 日本臨床内科医会

山下俊一講演「放射線の光と影」その3

2009年山下講演4

2009年山下講演5

2009年山下講演6

2014/12/12

寂聴さんと文太さんからのメッセージ

「表面上は普通の暮らしなのに、軍靴の音がどんどん大きくなっていったのが戦前でした。 あの暗く、恐ろしい時代に戻りつつあると感じます。自民党の改憲草案では自衛隊を『国防軍』にするとしました。日本は戦争のできる国に一途に向かっています。戦争が遠い遠い昔の話になり、いまの政治家はその怖さが身にしみていません。私は、残りわずかな命を秘密法反対に捧げます。でも、私たちのように戦争を生き残った一握りの人間たちだけだと、とても戦えません。若い人たちこそ、歴史の過ちをもう一度振り返ってみてほしい。そして、『これは間違っている』と立ち上がってほしい」

瀬戸内寂聴

秘密法反対「残りわずかな命を捧げる」 瀬戸内寂聴さん
(2014年1月11日 朝日新聞)から抜粋

「若い人たちのため、残りわずかな命を反対に捧げたい」

  表面上は普通の暮らしなのに、軍靴の音がどんどん大きくなっていったのが戦前でした。あの暗く、恐ろしい時代に戻りつつあると感じます。

 集団的自衛権の行使容認・・・自民党の改憲草案では自衛隊を「国防軍」にするとしました。日本は戦争のできる国に一途に向かっています。戦争が遠い遠い昔の話になり、いまの政治家はその怖さが身にしみていません。

 徳島の実家にいた母と祖父は太平洋戦争で、防空壕(ごう)の中で米軍機の爆撃を受けて亡くなりました。母が祖父に覆いかぶさったような形で、母は黒こげだったそうです。実家の建物も焼けてしまいました。

 自分が死ぬと知りながら戦闘機に乗り込み、命を失った若い特攻隊員もたくさんいました。

 私は「生き残っているのが申し訳ない」という気持ちを心の底に抱えて、戦後を生きてきました。だからこそ、戦争を再び招くような法律には絶対反対なのです。

 日本人はあまり自分の意見を言いません。「お上の言うまま」という感覚が身についていて、「辛抱するのが美徳」とする風潮もあります。でも、もっと一人ひとりが、こういう風に生きたい、生きるためにこうしてほしいと心の欲求を口に出すべきです。

 私は、残りわずかな命を秘密法反対に捧げます。でも、私たちのように戦争を生き残った一握りの人間たちだけだと、とても戦えません。若い人たちこそ、歴史の過ちをもう一度振り返ってみてほしい。そして、「これは間違っている」と立ち上がってほしい。

日テレとNHKが菅原文太の反戦・脱原発発言を自主規制で封殺!?
(2014年12月6日 LITERA)から抜粋

 高倉健と菅原文太。相次いでこの世を去った二人の映画スターが自分の死を伝えるテレビニュ―スを見ていたら、いったいどんな感想を抱いただろう。もしかすると健さんは自分のイメージが守られたことに安堵したかもしれない。だが、文太兄ぃのほうは対照的に、相当な不満を感じたのではないか。

 なぜなら、多くのテレビ局が故人のプロフィールについて自主規制をかけ、彼のもっとも伝えたいことを伝えなかったからだ。

 菅原文太といえば、後年は俳優というより、むしろ市民運動に精力的に取り組んでいた。メインテーマは反戦、憲法改正阻止、反原発。集団的自衛権や特定秘密保護法、原発再稼働にもきっぱりと反対の姿勢を見せ、安倍政権を徹底批判していた。その情熱は、死の1ヶ月前に病身をおして沖縄県知事選の翁長候補(新知事)の総決起集会にかけつけ、演説で戦争反対を語ったことからもうかがいしれる。

 ところが訃報当日、こうした姿勢をきちんと伝えたのは『報道ステーション』(テレビ朝日系)と『NEWS23』(TBS系)のみだった。フジ系の『ニュースJAPAN』は夫人のコメントを紹介して、反戦への思いは伝えたものの、脱原発や集団的自衛権反対など、具体的な問題にはふみこまなかった。

 さらに、日本テレビの『NEWS ZERO』にいたっては、映画俳優としての功績を紹介しただけで、政治的な発言について一切紹介なし。最後にキャスターの村尾信尚が「晩年、社会に対して発言し続けた」と語っただけだった。

 また、NHKは沖縄県知事選での演説を一部流して、社会活動に関心をもっていたことはふれたものの、なぜか夫人のコメントを一部割愛・編集していた。

 実際の夫人のコメントは以下のようなものだった。

〈七年前に膀胱がんを発症して以来、以前の人生とは違う学びの時間を持ち「朝に道を聞かば、夕に死すとも可なり」の心境で日々を過ごしてきたと察しております。
 「落花は枝に還らず」と申しますが、小さな種を蒔いて去りました。一つは、先進諸国に比べて格段に生産量の少ない無農薬有機農業を広めること。もう一粒の種は、日本が再び戦争をしないという願いが立ち枯れ、荒野に戻ってしまわないよう、共に声を上げることでした。すでに祖霊の一人となった今も、生者とともにあって、これらを願い続けているだろうと思います。
 恩義ある方々に、何の別れも告げずに旅立ちましたことを、ここにお詫び申し上げます。〉

 ところが、NHKはこのコメントから「無農薬有機農業を広める」というくだりと「日本が再び戦争しないよう声を上げる」というくだりを丸々カットし、以下のように縮めて放映したのだ。

〈「落花は枝に還らず」と申しますが、小さな種を蒔いて去りました。今も、生者とともにあって、これらを願い続けているだろうと思います。〉

 これでは、どんな種を蒔き、何を願ったのか、まったくわからない。いやそれどころか、「これら」が「落花は枝に還らず」という言葉をさしているように解釈されてしまう。少し前、川内原発再稼働の報道をめぐって、原子力規制委員会の田中正一委員長の発言を編集した『報道ステーション』がBPOの審議対象になったが、もし、あれがBPO入りするなら、このNHKの菅原夫人コメント編集も明らかにBPOの対象だろう。

 いったいなぜこういうことが起きてしまったのか。

「例の自民党からの通達の影響です。公示期間中なので、選挙の争点に関わるような政治的な主張を取り上げると、後で何を言われるかわからないと、各局、びびってしまったんでしょう。ただ、日テレの場合はそれを利用した感じもしますね。読売はグループをあげて、安倍首相を応援していますから、通達を大義名分にして、自民党に不利になるような報道をやめさせたということでしょう」(民放関係者)

 しかも、この自主規制は翌日のワイドショーをみると、さらにひどいことになっていた。日本テレビ系の『スッキリ!!』や『情報ライブ ミヤネ屋!』が一切触れないのは予想していたが、TBS系の『ひるおび!』でも映画俳優としての足跡のみを特集し、政治活動については全く報道しなかったのだ。

「前日の夜に『NEWS23』と『報ステ』が『菅原文太の死を政治利用している』『反戦プロパガンダだ』と大炎上したんです。抗議も殺到したらしい。それでTBSはビビったのかもしれません」(前出・民放関係者)

 驚いたことに、テレビの世界では「護憲」「反戦」がタブーになっているらしい。いっておくが現時点では日本国憲法が日本の最高法規であり、戦争に反対するというのは大多数の国民の願いでもある。ところが、それを軽視することがタブーになるならまだしも、逆に尊重することがタブーになってしまっているのである。

 おそらく、こうした状況に一番、無念な思いをしているのは当の菅原だろう。強いものにすり寄ることしかしないこの国のヘタレマスコミによって、命をすり減らしながら叫んだ言葉が葬り去られてしまったのだから。

 だったら、その無念の何百分の一でも晴らすために、最後に菅原が雑誌の対談やインタビューで語った発言を紹介しておこう。

「憲法は変えたらダメだと思っている。戦後68年間、日本がどこの国とも戦争をしないで経済を発展してこれたのは。憲法九条のおかげだよ。九条は世界に誇れる日本だけが持っている宝ですよ。」(カタログハウス「通販生活」)

「戦争を知らないバカどもが『軍備をぴっちり整えなくちゃダメだ』とか言いはじめている。そういう国情って、まったく危ういですよね。それを防ぐためにはやっぱり、筋金入りの反戦家が増えてこないといけないし、それが大きな力になると思うんです。」(小学館「本の窓」2012年9・10月号)

「安倍さんの本当の狙いも集団的自衛権というより、その上の憲法を変えることにあるのかと思うのだけど(中略)拳を振り上げ、憲法改正を煽りたてる人たちは、いざとなったとき戦場には行かない人たちじゃないですか。
 出て行くのは無辜の民衆だけで、その結果、沖縄戦で二〇万人。広島と長崎で三〇万人、戦地では何百万人とも言われる有為の青年たちが命を落とした。それを繰り返すのではあまりに情けない。」(「本の窓」2013年6月号)

「安倍首相が『日本人は中国で何も悪いことをしていない』というようなことを言ってるんだから。(中略)日本はドイツと違ってすぐに過去を忘れて、ニワカ民主主義者が反省もなく生まれて、戦後ずっと来てしまったじゃないですか。上がそうだから、若い連中まで『虐殺はなかった』なんて言ってる。なぜ謝罪をしないのだろうか?」(「本の窓」2013年7月号)

「まさに戦争を知らない安倍、麻生、石破の内閣トリオは異様な顔ぶれだね。この異様さに、国民も、マスコミも、もっと敏感になってほしいよ」(「本の窓」2013年12月号)

「平和憲法によって国民の生命を守ってきた日本はいま、道を誤るかどうかの瀬戸際にあるのです。真珠湾攻撃に猛進したころと大差ありません。」(「日刊ゲンダイ」2013年8月29日号)

 おそらく、これから先、日本は菅原が危惧した方向にどんどん向かっていくだろう。国民がそれに抗することができるかどうかはわからないが、少なくとも菅原文太という俳優が最後まで警鐘を鳴らし続けたことは心に刻んでおきたい。

菅原文太 日本は今、真珠湾攻撃をした時と大差ないよ

2014/12/09

鹿児島県で、「川内原発の再稼働反対」が年々増えている

川内原発の再稼働について、鹿児島県民の世論調査が行われ、再稼働反対が初めて50%を超えて55.7% 再稼働賛成は38%に減少。鹿児島県では、年々再稼働に反対する人が増えてている。

       2012年12月  2013年7月  2014年12月
再稼働反対   47.3%    48.7%    55.7%
再稼働賛成   40.7%    45.2%    38.0%

西日本新聞:鹿児島55%再稼働反対

川内原発再稼働、鹿児島の有権者55% 反対
(2014年12月5日 西日本新聞)から抜粋

 地元同意手続きが完了した九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働について、同県の有権者の55・7%が反対の考えであることが、西日本新聞社が衆院選公示に合わせて2〜3日に実施した電話世論調査で分かった。反対の比率は2012年の前回衆院選時、昨年の参院選時より増えた。伊藤祐一郎知事は同意の理由に「県民の一定の理解が進んだ」ことを挙げたが、立地県の有権者には不安がなお根強いようだ。

 調査によると、再稼働に「反対」は35.9%、「どちらかといえば反対」は19.8%。「賛成」は18.1%、「どちらかといえば賛成」は19.9%で計38.0%。反対派が賛成派より17.7ポイント多かった。

 12年12月の前回衆院選時は「政府が安全性を確認した原発の運転再開」を調査し、反対派は47.3%で、賛成派は40.7%。昨年7月の参院選時は「原発再稼働」を尋ね、反対派が48.7%、賛成派が45.2%だった。

——————————–記事の抜粋は以上————————-

再稼働反対と賛成の数字を整理すると以下のようになります。
2012年以来、すべての世論調査で再稼働反対が賛成を上回っています。
そして、世論調査をする度に再稼働反対が増えています。

       2012年12月  2013年7月   2014年12月
再稼働反対   47.3%    48.7%     55.7%
再稼働賛成   40.7%    45.2%     38.0%

伊藤祐一郎・鹿児島県知事は、再稼働同意の理由に
「県民の一定の理解が進んだ」と言ったが、間違いは訂正した方がいい。

「再稼働に反対する県民が増えて、過半数を超えた。県民の意思を尊重する知事として、県民が支持しない再稼働を強行することはできない」と。

2014/11/28

国連科学委報告書 「信頼性低い」 福島事故で専門家

福島)「国連科学委は非科学的」 元WHO欧州地域顧問
(2014年11月25日 朝日新聞)から抜粋

 旧ソ連・チェルノブイリ原発事故の健康影響調査などに携わってきた英国出身の放射線生物学者キース・ベーバーストック博士(73)が24日、東京都内で朝日新聞記者の取材に応じた。東京電力福島第一原発事故後のがんの増加に否定的な報告書を出した国連科学委員会(UNSCEAR)を「透明性、独立性を欠き非科学的」と批判し、「解散すべきだ」と訴えた。

 博士は取材に対し、科学委が今年4月に発表した福島第一原発事故の影響についての報告書で「被曝(ひばく)によるがんの増加は予測されない」などとしたことに、報告書が掲載している被曝線量でも「がんの過剰発生が予測される」と反論した。

 たとえば報告書は事故から約1年半後までに原発敷地内で働いた作業員で10ミリシーベルト以上被曝した人は1万人近くいるとしており、これだけで50人近くのがんが増えると主張した。

*2013年5月の記事
福島でがん増加「考えられない」 原発事故受け国連科学委調査
(2013/05/31 共同通信)

 【ウィーン共同】東京電力福島第1原発事故の健康への影響を調査している国連科学委員会は31日、放射性ヨウ素による周辺住民の甲状腺被ばく線量(等価線量)について、影響を受けやすい1歳児でも最大数十ミリシーベルトで、ほとんどが50ミリシーベルトを大きく下回ったとする推計を発表した。将来、事故による被ばくを原因とする「がん患者の増加は考えられない」とした。

 委員会は事故当時、周辺住民が素早く避難したことで、被ばく線量が10分の1程度に減ったと指摘。放射性物質で汚染された食品の摂取が早い段階で防げたことも被ばくの低減につながったとした。


国連科学委報告書「信頼性低い」 福島事故で専門家
(2014/11/20 共同通信)

国連科学委報告書「信頼性低い」 元WHOスタッフ ベイバーストック 
           (2014.11.24 福島民友)

第4回 市民科学者国際会議 
(2014年11月22日‐24日 国際放射線防護シンポジウム)から抜粋

キース・ベーヴァーストック講演
環境科学、 放射線生物学
東フィンランド大学環境科学学科

100 mSv未満の線量における放射線リスク

講演概要から抜粋

UNSCEARの線量評価は、日本でフォールアウト(放射性降下物)の影響を受けた地域のほとんどの住民の実効線量を、最初の1年で10 mSv未満とし、今後80年にわたって20 mSvを超えないとしている。しかし、外部被ばくの実効線量が年間20 mSvに下がった避難区域への帰還が実施されれば、実効線量はUNSCEARの推計値よりもはるかに高くなってしまう。

ここでは、100 mSv未満への被ばくのリスクについての疫学的証拠、および100 mSv未満でのリスクに関する理論的議論を考察し、100 mSv未満の被ばくが「安全」であるというのは科学的ではなくむしろ政治的な決断であり、科学的に正当な意味がないことを示す。

結論
100 mSv未満と100 mSv以上で、100 mSvあたりのリスクが量的・質的に異なるという仮定は、科学的に支持できない。十中八九、リスクの線量依存性は、ゼロ線量から上方に線的である。すなわち、線形しきい値なし(LNT)関係が適用される。
そして、公衆衛生政策を目的とするリスク推定においては、たとえどんなに微量であろうとも、集団が被ばくするかもしれないすべての線量を考慮することが不可欠である。

現在、事故後3年半経ったが、事故により一般市民に必然的に伴うリスクの細部にわたる実態は、いまだに完全に理解されていない状態である。

福島事故・国連科学委会報告をどう読むか
安心するのは早い 疫学調査の積み重ね必要

(2013年6月15日 東京新聞)

安心強調は早計 国連科学委

 福島原発事故の健康影響について、国連科学委員会は先月末、「被ばく線量は少なく、健康への明確な影響はないとみられる」ことを骨子とする報告書案を発表した。これまでも、世界保健機関(WHO)や民間団体が影響の推測をまとめてきたが、今回の報告は他と比べても「安心」の度合いが高い。この報告書をどう読むべきか。京都大原子炉実験所の今中哲二助教らに聞いた。(出田阿生、中山洋子)

 「国連科学委の報告書案に記された数字で計算すると、福島原発事故により、少なくとも日本全体で2050人のがんによる死亡が増えることになる。これを多いとみるか、少ないとみるか」

 京都大原子炉実験所(大阪府熊取町)の今中哲二助教はこう語る。今中助教は、原発事故直後から福島県飯舘村に入って放射性物質の測定などの調査を続けてきた。

 今中助教が注目したのは日本全土でどれだけ被ばくしたかを表す「集団実効線量」の推計だ。甲状腺の集団実効線量は11万人・シーベルト(生涯の被ばく線量)、全身でみると4万1000人・シーベルトとなっている。

 国際放射線防護委員会(ICRP)は「1万人・シーベルトで500人のがん死が起きる」とみている。全身の集団線量に当てはめると、がん死の増加は2050人だ。

 この数値をチェルノブイリ原発事故後の旧ソ連や欧州諸国の約六億人分のデータと比較すると、福島原発事故による被ばく量は甲状腺は約20分の1、全身が約10分の1という結果になる。

 「大したことはない」と安心したくなるが、こうした一連の数字をどう読むべきだろうか。
 「無視できる数とは言えない。当てはまった人は、事故という人為的な原因で死を迎えるのだから」(今中助教)

 健康影響を語る際、被ばくとの因果関係が明白ながんや白血病のみを取り上げがちだ。この報告案もそれを踏襲する。

 しかし、被ばくによる健康影響には、いまも不透明な部分が大きい。チェルノブイリ原発事故後には、子どもの免疫低下や心臓疾患の発生が見られた。今月初旬、ウクライナを視察してきた今中助教は「被ばくの人体への影響は多様だと実感している」と話す。

WHO報告は対照的な視点

 国連科学委の報告書案と対照的なのが、今年2月末にWHOが発表した報告書だった。

 「大半の福島県民にがんが明らかに増える可能性は低い」と結論する一方、一部の乳児は甲状腺がんや白血病などのリスクが生涯で数%から約70%増えると推計。15年後は1歳女児の甲状腺がんの発生率が浪江町で約9倍、飯舘村で約6倍になると予測した。

 WHOは前提条件を「計画的避難区域で事故後4カ月避難せず、県内産の食物だけを口にした」とした。この想定は論議を呼んだが、飯舘村では近い実態もあった。
 「想定は過大評価になるかもしれない。だが、過小評価よりも良い。過小評価の危険を最小化したかった」(WHOの公衆衛生環境担当マリア・ネイラ氏)という。

 国連科学委の報告書案でもう一点懸念されるのは、この推計の根拠とされたデータの信頼性だ。一例として、子どもの甲状腺被ばくについての数値がある。

 この数値は政府が2011年3月下旬、飯舘村や川俣町、いわき市などで、事故当時に県内に住んでいた15歳以下の子ども1080人を対象に実測し、まとめた。

 今中助教は同時期に飯舘村に入って調査していたが、空間線量を測定すると村役場の屋外で5マイクロシーベルト、室内で0.5マイクロシーベルトだった。ところが、政府の調査で子どもの首に測定器を当てて測った数値は「0.01マイクロシーベルト」などと記されていた。

 今中助教はこれほど周囲の放射線量が高い場合には、そうした微量の放射線は測定することは不可能だと指摘する。

 甲状腺に集まる放射性ヨウ素の半減期は8日。事故直後に測定しないと測れなくなる。今中助教は「真っ先に取り組むべきは、最も影響を受けやすい子どもの甲状腺被ばくなのに、検査数があまりに少なすぎる。旧ソ連でさえ、約40万人の子どもの甲状腺被ばくを調べた」と振り返る。

 健康影響に否定的とみられる報告書案だが、一方で100ミリシーベルト以下の低線量被ばくでも「がんの増加について科学的根拠が不十分でも、調査を長期間継続すべきだ」としている。今中助教は「被ばくの影響が完全に解明されていない以上、この姿勢は重要」と話す。

 「国連科学委員会は厳密さを追求する組織。だが、行政には健康を守るための予防原則が求められる。科学的な厳密さより、これからどんな影響が出てくるか分からないという視点が大切だ」

<デスクメモ> 「白黒つけずにあいまいなままにしておくこと」。復興庁参事官がツイッターに書き込んだせりふだ。時間がたてば、国民はフクシマを忘れるという「解決策」が政府の本音と感じてはいたが、実際そうだったわけだ。その先にあるのは今秋からの再稼働だろう。都議選、参院選は忘却との闘いである。 (牧)

<国連科学委員会> 被ばくの程度と影響を調べるため、国連が設置した。各国の核実験で放射性物質が拡散し、被ばくへの懸念が高まっていた1955年に発足した。関係者の間には「核実験の即時停止を求める声をかわす目的だった」という指摘もある。報告書はICRPの基礎資料になる。ICRPのメンバーと重複する委員もいる。


福島事故の甲状腺集団線量「チェルノブイリの1/30」
(2013年5月27日 朝日新聞)から抜粋

 【医療・被曝(ひばく)担当=大岩ゆり】東京電力福島第一原発事故について、国連科学委員会が報告書案をまとめた。集団でみた日本国民の総被曝(ひばく)線量(集団線量)は、甲状腺がチェルノブイリ原発事故の約30分の1、全身は約10分の1と推計した。個人の被曝線量も推計し、多くが防護剤をのむ基準以下で、健康影響は「(6千人の甲状腺がんが出た)チェルノブイリとは異なる」「(がんの発生は少なく)見つけるのが難しいレベル」と結論づけた。

 報告書案は、国連科学委員会の専門家ら約85人が2年かけてまとめた。27日からウィーンで始まる科学委員会総会で議論され、9月の国連総会に提出される。

 朝日新聞が入手した報告書案によると、事故は、米スリーマイル島などの事故より「はるかに深刻」とした。ただし、チェルノブイリに比べて、放射性ヨウ素131の総放出量は3分の1未満、セシウム137は4分の1未満で、ストロンチウムやプルトニウムは「非常に微量」と評価した。

『福島原発事故被害は過小評価されてる』 国連科学委員会(UNSCEAR)ベルギー代表
mardi 20 août 2013 Canard Plus)から抜粋

原子力事故や放射能の被害を評価する任務を負う国連機関 UNSCEAR内部で議論に火花が散っている。UNSCEARは最近ウィーンで開催された会議において用意された暫定報告書を、各国専門家の議論に委ねた。この報告書がベルギー代表団を激怒させたのだ。ベルギー代表団メンバーによれば「報告書全体が福島原発事故の被害を過小評価するために執筆、作成されている感が否めない。チェルノブイリやその他の研究から得られた情報のレベルからさえも後退している。」と言う。

ベルギー代表団を構成しているは、モル核エネルギー研究センターやさまざまな大学の専門家たちである。他国の多くの専門家たちとともに、彼らは五月にウィーンで開催された会議に参加した。UNSCEARは来秋、国際連合総会に報告書を提示しなければならない。

ブリュッセルに帰国後、ベルギー放射線防護協会(ABR)でのプレゼンテーションにおいて、代表団団長ハンス・ファン=マルケはUNSCEARの暫定結論に対する非常に批判的な意見を明らかにした。この批判はグリーンピースや反原発派からではなく、”原子力推進派内部”から噴出しただけに衝撃的である。我々の得た情報によると議論は過熱を尽くし、ベルギー代表団のショックはあまりに大きかったため、報告書への署名拒否さえちらつかせているそうだ。また何人かのメンバーは会議からの退場も考えたと言う。ベルギー代表団の発言と、またイギリスの専門家やその他何人かの専門家の発言の行われた結果、彼らの見解も改訂版を編集するうえで考慮に入れられる可能性はあると言う。しかし過去の歴史からこの手の組織においては、プログラムや文書の最終的な方向性は事務局と報告官によって決定されることがわかっている。最終稿が議論をきちんと反映しているかどうか、最大の注意が支払われることになるだろう。

批判

地上への放射性物質降下量は無視できる量ではなく、従って住民の健康や将来への被害も無視できるものではない。その上、放射性物質の降下は福島市や郡山市(人口30万人)のように人口密度の高い地域で起こっている

UNSCEARの報告書が提示しているデータの多くは不完全であり、また提示の方法に問題がある。一般市民が受けた被曝量は不適切な方法を使って少なく見積もられている。これは事故現場で働いている作業員数万人の被曝量に関してもまったく同様である。そして日本政府も東電もこの件に関する詳細の公表を拒んでいる。安定ヨウ素剤が配られなかったことも明白であり、甲状腺検査の実施は一般に遅すぎた。そのために現時点でUNSCEARの報告書が主張しているように将来事故の影響はほとんど現れないだろうと断言することはできない。

またUNSCEARによる分析は、速断で胎児や遺伝を脅かす潜在的な危険を強制的に除外してしまっている。発癌リスクに関しては、明白な病変を引き起こすには放射線量が低すぎるため、懸念をする必要はないと評価している。このような仮説はベルギー人も含め多くの専門家を激怒させた。というのも上記の通り、一方では被曝量の評価が適切でないうえ、他方ではチェルノブイリの情報や近年行われた数多くの研究から低い線量でも健康に影響の現れ得ることが示されているからである。

しかしながらUNSCEARはこのような放射線科学の発展から明らかに後戻りをしようとしている。各国からの代表者たちの一部は、今回の会議においてだけでなく、ここ数年間繰り返し、年間100ミリシーベルトという敷値の下ではいかなる健康被害も起こらないという考えを通そうと試みている。

しかし国際放射線防護委員会(ICRP)は、平常時においては一般市民は年間1ミリシーベルト、原子力産業従事者は年間20ミリシーベルトの被曝量を越してはいけないと勧告しており、また事故時においては、一時的な基準の超過は大目に見られるものの、超過は持続的であってはならないとしていることを今一度確認しておきたい。

最新の研究では様々な分野において年間10から100ミリシーベルトの間の低線量被曝でも、健康に影響のあり得ることが示されている。被害は癌だけではない。胎児への影響、遺伝のかく乱、心臓血液疾患や白内障なども問題となる。

チェルノブイリと同じ被害の否定が福島でも行われるのか?

いくつもの報告書が机上にあり、完成を待っている。そのひとつは子供たちについての報告書だ。子供は被曝が起こった場合、特別に保護し、監視しなければならない対象である。この子供たちについての報告書はフレッド・メットラー教授率いるアメリカチームが請け負ったのだが、メットラー教授と言えば、チェルノブイリ・フォーラムで公表された報告書の著者の一人である。当時の報告書はチェルノブイリ事故被害を過小評価しているとして、大変に議論を沸かし、批判を浴びたものである。彼はまたも臭いものに蓋をしようとしているのか? 少なくともメットラー教授による今回の子供についての報告書では、低線量被曝が子供たちにもたらす健康被害に関する一連の研究や発見、論点が先験的に除外されてしまっている。このテーマに関する欧州原子力共同体(ユーラトム)の専門家グループによる報告書さえ、メットラー教授は考慮に入れようとしなかった。

もうひとつ関連する報告書の中で無視され、ほとんど議論されていない非常に重大な問題がある:それは持続的な慢性被曝のケースである。これは例えばある身体器官が内部から被曝を受ける場合に起こるものだ。実際、放射性物質が体内に均等に分散するか、あるいは逆に特殊な部位に蓄積するかによって、現れる健康被害は異なるらしいことがますます明らかになっている。つまり同じ被曝量でも被曝が起きている部位によってその影響は異なるということだ。このことは既に何年も前にチェルノブイリ事故における数々の影響を研究したベラルーシの科学者ユーリ・バンダジェフスキーが発表した仮説と一致する。

分裂・・・

福島原発事故(そしてチェルノブイリ原発事故)の被害を過小評価し、放射線防護に関する最新研究がもたらした結果から後戻りしようとする試みはいったいどこから発生しているのか? それは主にロシア、ベラルーシ、アメリカ、ポーランドそしてアルゼンチンの専門家によって構成される派閥からなのである。彼らの多くはUNSCEARだけでなくIAEA、そしてICRPの中心人物でもある。その一人、アルゼンチン人のアベル・ゴンザレスの就いている役職はアルゼンチン国内の原子力産業のものも含めて数知れず、前回のセッションでは、ベルギーの専門家が利益の混同を批判する書面を送ったほどである。

しかしUNSCEARはこの批判書を議事録に記載することを拒否した。ゴンザレス、メットラー、ロシアのベラノフ(元IAEA職員であり、UNSCEAR報告書の一つの編集長)それに数人のポーランド人が、フランスのチュビアナ教授に代表される派閥とダイレクトにつながって、低線量被曝が起こしうるあらゆるネガティヴな影響に関する考えを頑なに拒絶しているのである。彼らは一丸となってこの路線を堅守しようとし、非常に活発な国際的拠点を築き上げている。彼らはUNSCEARやIAEA(UNSCEARの会議はIAEAの建物内で開催される)の事務局における戦略的なポストを占拠している。そして今日では日本人も彼らと見解を分かち合うようになっている。福島原発事故による影響を最小限に抑え、停止中の原発を再稼動させるのに懸命だからだ

かくして、一石を投じたのはベルギーの専門家たちだったのだ。イギリスの専門家たち、それにオーストラリア人の議長が彼らを支持した。またユーラトムの会議に参加しているヨーロッパの専門家たちは、UNSCEARの《過小評価派》に比べて、低線量被曝の影響をずっと気にかけている

いったいこれらの問題についての議論や科学的疑問はどこに行ってしまったのかと思わざるを得ない。少なくとも低線量被曝の影響を否定する一派は、来秋提示されるUNSCEARの報告書に彼らの見解が反映され、国連によって有効とされることを熱望している。それに対してベルギー人をはじめとするその他の専門家たちにとっては、それは放射線防護知識に関する最新の進歩に対する許しがたい後退を表すことになるだろう。

マルク・モリトール記
Marc MOLITOR
ベルギーRTBF(フランス語圏ベルギーTVラジオ局)

2014/11/22

低線量汚染地からの報告―チェルノブイリ 26年後の健康被害 (NHK)

福島原発事故から3年8カ月、政府統計でも病気と病死が増加するなかで、もう一度、チェルノブイリの「低線量汚染地域」の健康被害を再確認したいと思います。

シリーズ チェルノブイリ原発事故・汚染地からの報告 ウクライナは訴える

2012年9月にNHKのETV特集で放送された
チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告 ウクライナは訴える
この番組紹介には、福島原発事故後の日本にとって大変重要なことが書かれています。

2011年4月、チェルノブイリ原発事故25周年の会議で、ウクライナ政府は、汚染地帯の住民に深刻な健康被害が生じていることを明らかにし世界に衝撃を与えた。チェルノブイリ原発が立地するウクライナでは、強制避難区域の外側、年間被ばく線量が5ミリシーベルト以下とされる汚染地帯に、事故以来26年間、500万人ともいわれる人々が住み続けている。

公表された「Safety for the future未来のための安全」と題されたウクライナ政府報告書には、そうした汚染地帯でこれまで国際機関が放射線の影響を認めてこなかった心臓疾患や膠(こう)原病など、さまざまな病気が多発していると書かれている。特に心筋梗塞や狭心症など心臓や血管の病気が増加していると指摘。子供たちの健康悪化も深刻で2008年のデータでは事故後に生まれた子供たちの78%が慢性疾患を持っていたという。

ウクライナ政府報告書 未来のための安全

2012年4月、私たちは汚染地帯のひとつ、原発から140キロにある人口6万5千人のコロステン市を取材した。この町で半世紀近く住民の健康を見続けてきた医師ザイエツさんは、事故後、目に見えて心臓病の患者が増えたことを実感してきたという。

学校の給食は放射線を計った安全な食材を使っている。しかし子供たちの体調は驚くほど悪化。血圧が高く意識を失って救急車で運ばれる子供が多い日で3人はいるという。慢性の気管支炎、原因不明のめまいなど、体調がすぐれない子供が多いため体育の授業をまともに行うことができず、家で試験勉強をして体調を崩すという理由から中学2年までのテストが廃止された。

チェルノブイリ原発事故から26年たった現地を取材し、地元の医師や研究者にインタビュー、ウクライナ政府報告書が訴える健康被害の実態をリポートする。

この番組制作に関わった馬場朝子氏と山内太郎氏が番組の内容をより詳しくまとめた本『低線量汚染地域からの報告書―チェルノブイリ26年後の健康被害』は、福島だけでなく東北、関東に広がる「低線量汚染地域」のこれからを考える上で、非常に重要な本です。その一部を抜粋します。

『低線量汚染地域からの報告―チェルノブイリ26年後の健康被害』

P.27
 私たちが取材をしたコロステンという町は、移住勧告地域と放射線管理地域が混在する地域だ。この町があるジトーミル州の住民は、事故が起きた1986年から2011年までの25年間に、平均で、移住勧告地域では25.8ミリシーベルト、放射線管理地域では14.9ミリシーベルトの低線量被曝をしている。 実は最近になって、こういった低線量被曝をした人々についての注目すべき報告がウクライナ政府によってなされた。それはチェルノブイリ原発事故後、彼らの健康状態が非常に悪化しているというものだ。

P.32 – P.34
 政府による詳細な調査報告
 東日本大震災の直後の2011年4月、ウクライナの首都キエフで、「キエフ国際科学会議」という会議が開かれた。チェルノブイリ原発事故からちょうど25年が経ち、事故の収束に向けて、当事国のウクライナ、ロシア、ベラルーシ3か国の政府関係者と、IAEA(国際原子力機関)などの国連の諸機関や、G8、EUの首脳が話し合う国際会議だ。

 その会議の席上、ウクライナ政府から発表されたのが「チェルノブイリ事故から25年 未来のための安全」と題された「ウクライナ政府報告書」だ。図版を含め352ページに及ぶ大部なものだ。執筆したのは様々な分野の専門家135人。土壌汚染、心理学、廃炉、放射性廃棄物の管理などの視点から、チェルノブイリ原発事故がウクライナの人々にどんな影響を及ぼしたのか、また、ウクライナが現在どのようにチェルノブイリ原発事故に向き合おうとしているのか、最新の研究成果に基づいて報告されている。

 そして、この報告書の中でも多くのページを割かれているのが、原発事故による住民の健康状態について書かれた「第3章 チェルノブイリ惨事の放射線学的・医学的結果」だ。
 
 甲状腺疾患、白内障、免疫疾患、神経精神疾患、循環器系疾患(心臓・血管など)、気管支系疾患(肺・呼吸器など)、消化器系疾患(胃・腸など)といった、体中のありとあらゆる組織の病気について記されている。

P.46 – P.47
 私たちは、被災地で暮らす人たちを取材するため、チェルノブイリ原発から140キロの距離にあるジトーミル州のコロステン市を目指した。人口6万5000、製陶やコンクリート工業といった製造業が盛んな町だ。市があるのは移住勧告地域と放射線管理地域が混在する低線量汚染地域で、年間0.5から5ミリシーベルトの被曝線量が見込まれる地域である。

P.48 – P.54
 患者を診続けてきた医師たち

 翌日、私たちはコロステン中央病院を訪ねた。待合室は患者であふれていた。この病院は町で唯一の総合病院で、近くの村からも病人が送られてくるという。まず私たちは、この町の住民の全体的な健康状態を知りたいと思った。

 私たちを迎えてくれたのは副院長のアレクセイ・ザイエツ医師。もう70歳になるベテランだ。この町で半世紀ほど住民の健康を管理してきた。私たちの訪問にザイエツさんは、「住民の健康状態についての会議を開くので、それを聞けばこの町の人々の様子がわかるだろう」と、病院の主だった医師を集めてくれた。集まったのは、副院長のアレクセイ・ザイエツさん、内分泌疾患を専門とするガリーナ・イワーノブナ医師、リウマチなどが専門のガリーナ・ミハイロブナ医師、そして悪性腫瘍専門のウラジミール・レオニードビッチ医師らだ。

 まず、副院長のザイエツさんが口を開いた。「残念なことに、日本でも1年前に原発事故が起きました。多くの点が、私たちの悲劇的な事故と共通していると思います。今の日本の状況は、私たちの事故と同じであり、私たちに起きたことが福島でも起きているのです。ご存じのように事故当時、放出物質の80パーセントは放射性ヨウ素でした。そして、まず被害を受けたのは甲状腺でした。そのため、甲状腺がんを含めた多くの様々な甲状腺疾患が現れました。私は今日の討議を、この甲状腺疾患から始めたいと思います。では、ガリーナ・イワーノブナさんから」

 内分泌科医のガリーナ・イワーノブナさんは、事故当時、医師としてこの町で患者を診ていた。ロシア人である彼女は、ウクライナ独立後ロシアに移住したが、コロステンが懐かしく、この町に戻ってきたという。「ザイエツ医師から話があったように、放射性放出物の80パーセントが放射性ヨウ素であったため、最初に影響を受けたのが甲状腺でした。大きく増えたのがびまん性甲状腺腫、結節性甲状腺腫、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症などです。同じく甲状腺がんも増えました。事故前まで私は、大人・子どもにかかわらず甲状腺がんの診断をしたことがありませんでした。私たちが最初に甲状腺がんを確認したのは、事故1年後の1987年で、子どもの症例が1例確認されました。甲状腺がんは91年には9症例、これは私たちの市のレベルでは大変多い数です。」

 ガリーナ・イワーノブナさんは、最近危惧される傾向について話を続けた。
若年齢層の問題です。特に、事故当時18歳以下の子どもだった人たちに関心を向けています。これらの人たちを、3か月ごとに検査をしています。彼らの多くは甲状腺疾患を患っており、自己免疫性甲状腺炎やびまん性甲状腺腫の人もいます。事故当時、少年だった彼らは、いまや大人となり、自分たちの子どもをもうけています。その生まれた子どもたちにも、多くの甲状腺疾患が見られるのです」

 この病院では対象者すべてに対し、甲状腺の検査を毎年行っている。細胞検査や甲状腺ホルモンについての検査だ。またこの町の人々にはヨウ素が不足しているので、予防的措置として、ヨウ素を多く含む海産物を食べること、ヨウ素を含んだ塩を食べることを勧めている。さらに、すべての妊産婦に対してヨウ素剤を支給するという措置をとり、甲状腺疾患への対策を進めている。

 次に報告を行ったのは、リウマチ疾患が専門のガリーナ・ミハイロブナ医師だった。
「すべての内科系の疾病の中で、もっとも特徴的な疾病がリウマチ疾病です。チェルノブイリ事故前はリウマチ患者は6人だったのに、2004年には22人、2010年には42人、2011年は45人でした。この数字は、かなり高い増加を示しています。リウマチは、チェルノブリ事故と関連があると思っています。こういった症状は、チェルノブイリ事故当日、若年層だった人たちに見られます」
 
 次に、がんの増加について、ウラジーミル・レオニードビッチ医師が報告した。
「私たちは分析のためのデータを、事故前の1980年から86年までの6年間と、事故後の1987年から2011年までの25年間とをとりました。事故前の(がんの)平均発病率は10万人あたり200人でした。現在は10万人あたり310人です。つまり1.5倍に増えています。

 また、リンパ腫と白血病という血液の病気も増えています。事故前の6年では、血液の病気について26の症例が記録されていますが、事故後は25年間で255症例となっています。この増加は、放射性物質の影響によるものだと考えられます。当然のことながら、がんによる死亡率も30パーセントほど増えました。その理由はよりがんの悪性度が高くなったということです。同じく放射能の影響と思われる多くの慢性病を抱えた患者が増えています。食べ物も原因のひとつと考えられますが、放射線も影響していると言えます。

 本当のがんの増加は事故から30年後くらいに見られるでしょう。事故当時に子どもだった人たちが自分たちの子どもたちを育てる時期です。最近5年間で最初のがん疾病が見られる年齢グループで、一番多いのは40歳までのグループです。2007年には9人、08年は15人、2010年は17人、2011年は22人でした。この人たちは、事故当時青少年だった人たちです。

 私たちは生まれた年に関連した分析を行いました。一番多くの影響を受けているのが1970年と71年生まれの人たち、つまり事故当時15、16歳だった人たちです。活発な生殖成熟期に事故に遭った人たちは、25年後にがんが14症例見られ、甲状腺、白血病、乳腺などにがんを発症しています。事故時期以降の子どものがん疾患の患者ですが、同じく1996年から2000年までの間に11症例、見られています。

 がん患者の年齢別構成グループについては、発症年齢が若くなっている傾向があります。30歳ですでに前立腺がんの患者が観察されています。以前は高齢者により多く見られたがんが、この年代でも見られるのです。もちろん私たちの診断の可能性が広がり、コンピューターを使った断層X線写真診断法を使えるようになったことも、症例増加に部分的に関連していると考えられます。しかし依然として患者は増え続けており、現段階で、実際にチェルノブイリ原発事故が私たち国民にもたらした健康被害を総括するのは、時期尚早だと思います。がんの分野についての結論を出すのは、まだ早いのです」

 次に、ガリーナ・ミハイロブナさんが、被曝した親から生まれる子どもの健康状態について話をした。
「被曝した両親から、障害を持って生まれる子どもがいます。例えば、2009年は先天性障害が身体障害全体の47パーセントを占めています。2010年は36.8パーセント、2011年は42.2パーセントとなっています。今年(2012年)第一四半期においては身体障害者の100パーセントが先天性障害です。先天性障害は、主に心臓循環器系疾患、そして腸、目などに確認されています。2005年から心臓の先天性障害が第1位で、現在もそれは変わりません」

 ザイエツ副院長が付け加えた。
「私が最も心配しているのは、先天性障害のある子どもたちの問題です。事故前までは年に数件しかなかったのですが、今は年に30~40人、そういう子どもたちが生まれています。私はこうした問題が、これからも起こる可能性があるのではないかと恐れています」

P.68 – P.69
 コロステンのあるジトーミル州全体の平均的な被曝等価線量について、ウクライナ政府報告書に詳しいデータがある。子どもの被曝が等価線量にすると大きくなるなどの年齢ごとの重みづけを行った被曝等価線量のデータだ。事故の年の1986年には1.96ミリシーベルト、その後の10年間に2.91ミリシーベルト、さらにその後1997年から2011年までの間に1.32ミリシーベルト。事故発生以後、25年間のすべての積算で6.19ミリシーベルトとなっている。年平均にすれば0.25ミリシーベルト。この数字をどう見るかにはいろいろあるだろうが、福島県浜通りの汚染と比べれば、かなり低い数値だと思われた方も多いのではないだろうか。

 実は、コロステンの町の汚染状況を、この数字だけで見ると見誤る可能性がある。ジトーミル州北部にあるコロステンの町は汚染地域の中に位置しているが、この州の南部には汚染地域に指定されていない地域がかなりの部分を占めているからだ。旧ソ連は、汚染地域をその汚染の度合いによって4つのゾーンに分類していたが、コロステンの町は、セシウム137による年間被曝線量が1~5ミリシーベルトの「第3ゾーン」と0.5~1ミリシーベルトの「第4ゾーン」のちょうど境目にある。町の中に「第3ゾーン」の場所と「第4ゾーン」の場所があるのだ。このゾーン分けから非常におおざっぱに類推すると、このふたつのゾーンの境目なので、年間被曝線量が1ミリシーベルト前後の地域だったと考えることができるだろう。

 ウクライナ政府報告書の別のデータから見ても、この数字は裏付けられる。報告書によるとジトーミル州の「第3ゾーン」「第4ゾーン」も1986年から2011年まで暮らした人の内部被曝と外部被曝をあわせてのセシウム137による25年間の被曝実効線量はそれぞれ25.8ミリシーベルトと14.9ミリシーベルトである。おおざっぱに言って、セシウムによる被曝に限れば、コロステンにいた人の被曝量は25年間の積算で15から26の間、だいたい20ミリシーベルト前後と見積もっていいだろう。このデータからも、年間被曝線量が1ミリシーベルト前後だという数字が導き出される。

2014/11/13

原発は事故を起こさなくても周辺住民の病気を増やしている

「原発は事故を起こさなくても(日常的な放射性物質の放出によって)周辺住民の病気を増やしている」ということが、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカなどでの調査でわかっていましたが、韓国での調査でも「原発から5キロ以内に住む女性の甲状腺がんの発生率は、30キロ以上離れた女性の2.5倍にのぼる」ことが判明しました。

韓国で 原発周辺住民が甲状腺がん発症、原発側に賠償命令
(2014年11月4日 風の便り)から抜粋

韓国の裁判で10月17日、コリ原発から10キロ内に20年間住んでいた住民の甲状腺がん発症に対する責任がコリ原発にあるという判決が下されました。「原発は事故が起きなくても、日常的に放射性物質を放出して健康に危害を与える施設である」という事実を法的に認めた重要な判決です。

原発周辺住民が甲状腺がん発症、原発側に賠償命令
 (2014年10月18日 朝鮮日報日本語版)

原子力発電所の近くに住んでいて甲状腺がんを発症した住民に対し、原発側が賠償する責任があるという判決が下った。釜山東部地裁民事2部(チェ・ホシク裁判長)は、釜山市機張郡に住む女性(48)が甲状腺がんを発症したことについて、原発の責任が一部認められるとし、原発を運営する韓国水力原子力(韓水原)=韓国電力公社の子会社=が女性に慰謝料1500万ウォン(約151万円)を支払うよう命じる判決を下した。

地裁は判決理由について「原発から5キロ以内に住む女性の甲状腺がん発症率が、30キロ以上離れた地域に比べ2.5倍に達するなど、甲状腺がんの発症は放射線にさらされていることが決定的な要因となっていることが知られている。

原告は原発の近くに住んでいて、原発から発生する放射線に長期間さらされたことにより、甲状腺がんを発症したものと考えられる」と述べた。

機張郡にある古里原発から7.6キロほど離れた所で20年近く暮らしてきた原告の女性は、2012年2月に甲状腺がんの診断を受け、韓水原を相手取り2億ウォン(約2000万円)の損害賠償を求める訴訟を起こしていた。

関連情報1)(関連情報2

原発は、事故を起こさなくても世界中で病気を増やしています。

ドイツ政府の調査では、原発から5km圏内の小児ガンは全国平均の1.61倍、 小児白血病は2.19倍となっています。

「原発周辺で小児白血病が倍増」
フランス国立保健医学研究所が発表

フランスで、原発から5キロ圏内の子どもと一般の子どもの白血病発生率の比較を行った。15歳以下の子どもは、他地域の子どもに比べて白血病の発症率が1.9倍高く、5歳未満では2.2倍高い

「原子炉閉鎖で乳児死亡率激減」 最大で54%マイナス 米研究機関
調査は免疫学や環境問題などを専門とする医師、大学教授などで組織する「レイディエイション・パブリック・ヘルス・プロジェクト」(RPHP)が、原子炉を閉鎖した全米7ヶ所の原発を対象に、半径80キロ以内の居住の生後1歳までの乳児死亡率を調べた。原発が稼動中は乳児死亡率が高い。

被ばくに伴うガンのリスク 核施設とその周辺
ヨーロッパの原発や核燃料再処理工場などの核施設周辺に居住する子どもたちの過剰な白血病とガンのリスクを立証している研究が紹介されています。

イギリス再処理工場周辺 小児がん発生率 一般の2〜15倍 
2002年、国際的なガン研究の専門誌(International Journal of Cancer)に、セラフィールド再処理工場で働き被ばくした男性労働者の子どもたちは、他の地域の子どもたちに比べて、白血病、リンパ腫など血液のガンの発生率が2倍近く高く、再処理工場があるシースケール村においては、15倍も高いリスクがあった。

アリス・スチュワート博士の研究
(戦後、英国の子どものガンや白血病が急増した原因の研究

アーネスト・スターングラス博士の講演から

「(スチュワート博士は)ガンや白血病になった子のお母さんのグループと健康なこどものお母さんのグループに100の質問アンケートを送りました。アンケートを回収すると驚いたことに、10歳未満のガンや白血病の子どものお母さんたちが妊娠中にエックス線を浴びていたことがわかりました。それが、わずかな放射線でも人体には影響を与えることの初めてヒントになりました。つぎのグラフがその研究結果です。

アリス・スチュワート博士 X線照射グラフ

 スチュワート博士が発見したのは、数回のエックス線照射でガン発生率が倍増することです。この際、1回のエックス線の放射線量とは、自然界の環境放射線の約2年分に相当します。この放射線量というのは、大人にガンを発生させる量に比べるとその10分の1から100分の1に相当します。赤ちゃんや胎児は100倍も影響を受けるのです。また妊娠3ヶ月未満にエックス線を浴びたお母さんの子どもは、ほかのお母さんのこどもより10〜15倍ガンの発生率が高かったのです。」

病気が増えているのは、原発や核燃料再処理工場の周辺だけでなく、原料のウランを掘るウラン鉱山の周辺の人々にも病気が増えています。また、人間だけでなく、生態系全体に影響を与えています。

事故を起こさなくても原発をやめなければならない6つの理由
まず、燃料のウランを掘る段階で採掘地の環境を破壊し、放射能で汚染して、鉱山作業員と住民に被曝させている。原発の運転が始まると原発周辺にガンや白血病を多発させている。そして、原発で働く人たちの被曝労働や海の環境を破壊する温排水吸水の問題核燃料再処理工場からの膨大な放射能の排出問題。さらに、100万年後まで毒性が消えない「放射性廃棄物」の問題などがある。

2014/11/04

韓国で 原発周辺住民が甲状腺がん発症、原発側に賠償命令

韓国の裁判で10月17日、コリ原発から10キロ内に20年間住んでいた住民の甲状腺がん発症に対する責任がコリ原発にあるという判決が下されました。「原発は事故が起きなくても、日常的に放射性物質を放出して健康に危害を与える施設である」という事実を法的に認めた重要な判決です。

原発周辺住民が甲状腺がん発症、原発側に賠償命令
 (2014年10月18日 朝鮮日報日本語版)

原子力発電所の近くに住んでいて甲状腺がんを発症した住民に対し、原発側が賠償する責任があるという判決が下った。釜山東部地裁民事2部(チェ・ホシク裁判長)は、釜山市機張郡に住む女性(48)が甲状腺がんを発症したことについて、原発の責任が一部認められるとし、原発を運営する韓国水力原子力(韓水原)=韓国電力公社の子会社=が女性に慰謝料1500万ウォン(約151万円)を支払うよう命じる判決を下した。

地裁は判決理由について「原発から5キロ以内に住む女性の甲状腺がん発症率が、30キロ以上離れた地域に比べ2.5倍に達するなど、甲状腺がんの発症は放射線にさらされていることが決定的な要因となっていることが知られている。

原告は原発の近くに住んでいて、原発から発生する放射線に長期間さらされたことにより、甲状腺がんを発症したものと考えられる」と述べた。

機張郡にある古里原発から7.6キロほど離れた所で20年近く暮らしてきた原告の女性は、2012年2月に甲状腺がんの診断を受け、韓水原を相手取り2億ウォン(約2000万円)の損害賠償を求める訴訟を起こしていた。


判決文全文:韓国古里原発、甲状腺がん認定資料、李さんを日本に招聘しよう!
(2014年10月31日 OCHLOS)から抜粋

韓国における甲状腺がんの発生の責任は古里原発にあるとする判決文

原告パクの甲状腺がんの診断

(1)原告パクは2012年2月ごろ、東南圏原子力医学院で甲状腺がん(甲状腺の悪性新生物)の診断を受け、2012年2月2日に入院し、2012年2月3日に、甲状腺全摘出および中心部のリンパ節の清掃手術を受けて2012年2月14日に退院した。

(2)原告パクは今後、放射性同位元素治療を受けながら甲状腺ホルモン製剤を一生服用しなければならない状態である。

関連の医学知識および統計

(1)甲状腺がんの特徴
甲状腺がんの最も重要な危険要因は、治療による放射線被ばくと環境災害による放射線被ばくであり、被ばく放射線量に比例してリスクが増加することが知られている。

(2)疫学調査の結果
ソウル大学医学研究院原子力影響・疫学研究所で2011年4月、教育科学技術部に提出した「原発従事者および周辺地域住民の疫学調査研究」の結果によると、原発からの距離が遠いほど、甲状腺がんの発生率は減少しており、原発周辺地域(原発から5km以内)の女性住民の甲状腺がんの発生率は、遠距離対照地域(原発から30km以上離れた地域)の女性住民の2.5倍にのぼることが分かった。

原発周辺地域の甲状腺がん被害者
共同訴訟原告募集開始(プレスリリース)

去る17日、コリ原発周辺地域10キロ内に20年間住んでいた住民の甲状腺がんの発症に対する責任がコリ原発にあるという1審の判決があった。これは、国内で最初に癌の発生に対する原発の責任を認めた判決として、原発事故が発生してなくとも、放射性物質を放出する原発が健康に危害を与える施設であるという事実を法的に認めた判決である。

原子力発電所は、日常的に気体放射性物質と液体放射性物質が排出される。気体放射性物質はフィルターを通してはいるが、それに引っかからない三重水素とノーブルガス(アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)など)は、そのまま環境に放出され、液体の放射性物質は、リットル当たり50ベクレル(1秒に一度核崩壊する放射性物質の放射能の強さ)の濃度以下で海水で希釈して、温排水と一緒に海に流す

放射性物質の放出基準が別に用意されているが、原発周辺地域の制限区域を基準に、年間線量基準で管理している。制限区域は、軽水炉の場合700m、重水炉の場合914mに設定して、甲状腺等価線量では年間0.75ミリシーベルトであり、有効線量では年間0.25ミリシーベルトの基準を適用して、この基準以下と評価できる放射性物質を放出している。

しかし、法的基準値内の放射線量であっても、原発周辺に放出される放射性物質による住民の被ばくは、原発周辺地域の住民のがん発生を増加させてきたことが確認された

ソウル大学医学研究院原子力影響・疫学研究所が2011年に教育科学技術部の依頼で提出した「原子力従事者と周辺地域住民の疫学調査研究」によると、原発周辺地域(5キロ内)住民のがん発生が対照地域に比べ、全体的に増加したが、特に女性の甲状腺がんの場合、統計的に有意に対照地域に比べ、2.5倍ほど増加したことが確認された。

この報告書は、全体の20年の追跡調査の中で、最近10年間に研究対象者の約60〜70%が集められ、その過程で、既存の癌患者がみな排除されることで、起こりうる癌の発生に関するデータが縮小される可能性があり、これを補完するなら、原発によるがん発生の相関関係はさらに増加するものと予想される。

原発による甲状腺がん発症の責任に対する裁判所の判決文には「加害企業がある有害な原因物質を排出し、それが被害者に到達して損害が発生した場合、加害者側ではそれが無害であることを証明できない限り、責任を免れることはできないと見るのが、社会公正の概念に適している」という最高裁判所の判例を挙げ、例えがんの発生が法的基準値以下の放射性物質の放出によるものであっても、法的責任があるという判断をした。これまで原発周辺地域でのがん発症により苦しんできた住民が原発に責任を問う道が開かれたということだ。

ここに、私達は被害者の共同訴訟を通して、原発の癌発生の責任を問う計画だ。

<原発周辺地域の甲状腺がん被害者の共同訴訟原告募集>
*原告資格:各原発の放射能緊急計画区域(8〜10キロ)内に3年以上居住したことのある甲状腺がん発症者
*原告申請期間:1次2014年11月30日

2014年10月23日

キョンジュ環境運動連合、プサン環境運動連合、ソウル大学保健大学院職業環境健康研究所、ヨングァン原子力発電所の安全性確保のための共同行動、核から安全に住みたいと願うウルチンの人々、核なき世界のための医師会、環境保健市民センター、環境運動連合

原発は事故を起こさなくても周辺住民の病気を増やしている

【追記】
韓国 原発周辺住民に「画期的」判決 放射線原因がん認める
 脱原発ヘ高まる機運 訴訟は上級審ヘ

(2015年2月8日 東京新聞)

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韓国・釜山の裁判所で昨年10月、闘係者が「画期的」と評価する判決が出た。甲状腺がんになったのは、原発からの放射線が原因とする原告の主張を認め、事業者に慰謝料を支払うよう命じたのだ。原発問題に関心が薄いといわれる韓国でも世論が変わり始めているという。 (上田千秋)

「ほかの住民も声を上げるようになってきた。それが何よりもうれしい」。市民団体の招きで来日した李真燮(イ・ジンソプ)さん(50)は、先月31日、東京都千代田区で開かれた集会で語りかけた。
李さんと妻の朴錦先(パク・クムソン)さん(48)、長男の李均道さん(22)の3人は2012年7月、釜山郊外にある古里原発を運営する「韓国水力原子力」(韓水原)を相手取り、計3億ウォン(約3200万円)の損害賠償を求めて提訴した。

李さん夫婦は1991年2月〜93年4月、古里原発から約3.9キロの場所に住んでいた。92年6月に均道さんが生まれた。97年6月からは約8.5キロの場所に家族で暮らしている。2年に李さんが直腸がん、12年には朴さんが甲状腺がんと診断された。均道さんは先天性の発達障害があり、「いずれも古里原発の放射線が原因だ」と訴えていた。

李さんは「以前は、政府や韓水原の言う安全神話を信じ切っていた。日本で福島第一原発事故が起きて、原発は危険なものなのかもしれないと思うようになった」と振り返る。

判決は、李さんと均道さんの訴えは棄却したものの、朴さんに対して1500万ウォン(約160万円)を支払うよう韓水原に命じた。
ポイントになったのは、原発周辺に住む人たちの甲状腺がんの発症率の高さ。ソウル大が約3万6000人を対象に実施した調査では、原発から5キロ以内に住む女性の発症率は、30キロ以上離れた地域に比べて2.5倍と高かった。

韓水原は「放射線量は、法で定められた値を下回っている。健康に影響を与えることはない」と主張したが、判決は「完全に安全を担保できる数値ではない。ほかに甲状腺がんを発症する明確な材料がない以上、韓水原には損害を賠償する責任がある」と結論づけた。双方が控訴したため、上級審で争うことになる。

韓国は、電源のうち原発の依存度が高いことなどから、脱原発の機運が盛り上がっていなかった。ところが、判決後の昨年12月、古里原発周辺に住む甲状腺がん患者と家族ら計約1300人が、李さんらと同様の趣旨で提訴。さらに二次提訴の動きもある。

李さんは「訴訟をきっかけに、皆が闘う姿勢を見せるようになった。原発は安い電力といわれているが、健康の方がはるかに重要」と話し、再稼働の動きが進む日本に向けてこんなメッセージを送る。「さまざまな分野の人が訴訟を起こすなどしてアピールしていけば、政府や電力会社には大きなプレッシャーになる。大切なのは、一人でも多くの人が関心を持ち続けることだ」

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https://twitter.com/TokyoShimbunbot/status/703891847366619136/photo/1

第4回 市民科学者 国際会議( 放射線防護 ) 11月22~24日

第4回市民科学者国際会議
2014年11月22日(土) ~ 11月24日(月・祝)
国立オリンピック記念青少年総合センター 国際交流棟 国際会議室

11月22日特別講演 13:30~ 小出裕章
東京電力福島第一原子力発電所事故の過去・現在・未来
(講演概要から抜粋)

東北地方、関東地方を中心に日本の国土に降ったセシウム137の量は2.5ペタベクレル程度である。約1000平方キロメートルの土地が、セシウム134の汚染と合わせて、60万ベクレル/m2以上の汚染を受け、10万人を超える住民が故郷を追われて流浪化した。

その周辺にも4万ベクレル/m2を超え、日本の法令に従えば放射線管理区域に指定しなければならない土地が約1万4000平方キロメートルに広がった。放射線管理区域とはもともと一般人の立ち入りが禁止される場であるし、私の様な放射線業務従事者でも水を飲むことも禁じられる場、つまり生活してはならない場である。
その場に、赤ん坊も含め数百万人の人々が、今は緊急時だという理由で棄てられてしまった。

講演者(アルファベット順)
キース・ベーヴァーストック
専門等:環境科学、 放射線生物学
所属:東フィンランド大学環境科学学科

カイル・クリーブランド
専門等:社会学
所属:テンプル大学、現代アジア研究所

ポール・ジョバン
専門等:社会学
所属:パリディデロ大学東アジア言語/文化学部、CRCAO研究所

影浦峡
専門等:情報学
所属:東京大学 大学院学際情報学府

小出裕章
専門等:原子核工学
所属:京都大学原子炉実験所

松田曜子
専門等:地域防災
所属:関西学院大学災害復興制度研究所

おしどりマコ
専門等:ジャーナリスト
所属:公益社団法人自由報道協会、DAYS JAPAN

セバスチャン・プフルークバイル
専門等:物理学
所属:ドイツ放射線防護協会

アレックス・ローゼン (スカイプ)
専門等:小児科医
所属:核戦争防止医師会議 ドイツ支部

宍戸俊則
専門等:教員
所属:自主避難者

谷岡郁子
専門等:学長
所属:至学館大学

津田敏秀
専門等:疫学・環境保健
所属:岡山大学大学院環境学研究科

円卓会議 議長

セバスチャン・プフルークバイル
専門等:物理学
所属:ドイツ放射線防護協会

島薗進
専門等:宗教学・死生学・生命倫理学
所属:上智大学神学部・グリーフケア研究所

2013年 市民科学者国際会議の記録 
Oct 13th, 10:10 ~ 12:25
Session 1: Biological effect and its mechanism
セッション1 生物影響とそのメカニズム

Keith BAVERSTOCK / キース・ベーヴァーストック
Radiation induced genomic instability as cause of health effects and damage to wildlife
健康と野生生物への危害の原因としての、放射線に起因するゲノム不安定性

SAKIYAMA Hisako / 崎山比早子
Radiation and Aging
放射線被ばくと老化

Timothy MOUSSEAU / ティモシー・ムソー
Non-Human Animal Models for Effects of Radiation Exposure in Nature
放射線被ばくの影響を知るための自然界におけるヒト以外の動物モデル

OTAKI Joji / 大瀧丈二
The biological impacts of the Fukushima nuclear accident on the pale grass blue butterfly
福島原発事故のヤマトシジミへの生物学的影響


Oct 13th, 13:40 ? 15:15
Session 2: Epidemiology and dose evaluation
セッション2 疫学と線量評価

Wolfgang HOFFMANN / ウォルフガング・ホフマン
Do Nuclear Power Plants in normal operation cause Childhood Leukemia? Evidence vs. Politics
原発の平常稼働は小児白血病の原因となるのか 科学的証拠と政治の対立

TSUDA Toshihide / 津田敏秀
Thyroid cancer under 19 in Fukushika
福島県における甲状腺がん発生の現状

IMANAKA Tetsuji / 今中哲二
Radiation Contamination in Iitate Village and an Attempt to Evaluate Early-stage Radiation Exposure
飯舘村の放射能汚染と初期被曝評価の試み


Oct 13th, 15:30 ? 16:55
Session 3: Law and Rights for Public health
セッション3 健康に関する法と権利

ITO Kazuko / 伊藤和子
国連「健康に対する権利」特別報告者の勧告(グローバー勧告)に基づき、日本政府は今こそ、原発事故後の住民保護について、抜本的な政策転換を図るべき

FUKUDA Kenji / 福田健治
Law on Support for Children and other Victims of Nuclear Accidents
原発事故子ども・被災者支援法の現状と課題

ITO Emiko / 伊藤恵美子
被ばくから子どもを守るために 〜民間の力と自治体の支援と〜

Oct 14th, 14:00 ? 18:40
Round-table 円卓会議

Discussion 1 / ディスカッション 1
Standard and criteria for Radiation Protection
防護基準について

Discussion 2 / ディスカッション 2
Research agendas for future
今後の調査・研究課題

Discussion 3 / ディスカッション 3
Medical care and medical checkup structure
今後の医療と健診体制

2014/10/27

福島原発事故の後、3月15〜16日と20〜21日も放射性雲 東北、関東へ拡散 (20日のセシウムは104ベクレル)

子どもたちを守るために、忘れてはいけない過去の出来事

福島原発事故:1週間後にも放射性雲 東北、関東へ拡散
(2014年9月5日 毎日新聞)から抜粋

 東京電力福島第1原発事故後、上空に巻き上げられた放射性物質の雲状の塊「放射性プルーム(放射性雲)」が、これまで知られていた2011年3月15〜16日に加え、約1週間後の20〜21日にも、東北・関東地方に拡散していく状況が、原子力規制庁と環境省による大気汚染監視装置のデータ分析から裏付けられた。

 福島市の一つの測定局では15日夜、放射性セシウム137と134の濃度が1立方メートルあたり最大計45.5ベクレルを計測した。16〜19日も、原発から放射性雲が出続けていたと考えられるが、西風で太平洋側に運ばれたため、大気中濃度は上がらなかったらしい。その後、風向きが変わり、20日午後3時に同計104.1ベクレルに高まり、その状況は21日朝まで続いた。

 関東地方では、15日と21日の2回、帯状に高濃度の放射性雲の拡散が確かめられた。特に21日朝は茨城県南部や千葉県北東部で放射性セシウム濃度が急上昇。その後、東京湾北東沿岸部へと南西に移動した。その間、雨で沈着し、各地で「ホットスポット」と呼ばれる局地的に線量の高い場所を作ったとみられる。

福島原発3号機の爆発

福島原発事故3号炉 煙

<3年前の2011年3月21日、山下俊一教授の発言>

山下教授が発言を訂正
「100マイクロSVは、10マイクロSVの誤り」

(2011/08/16 風の便り)から抜粋

2011年3月21日の山下俊一教授の発言を確認しようと思い、福島県のホームページを見て驚きました。

福島県放射線健康リスク管理アドバイザーによる講演会
「質疑応答 動画を見る」の下に以下のように書いてあったのです。
—————————–
訂正:質疑応答の「100マイクロシーベルト/hを超さなければ健康に影響を及ぼさない」旨の発言は、「10マイクロシーベルト/hを超さなければ」の誤りであり、訂正し、お詫びを申し上げます。ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありません。
—————————–
いつのまにか、山下発言が「10分の1の数字に」訂正されているのです。

しかし、動画の質疑応答では、山下教授は自信満々で「100マイクロシーベルト/hを超さなければ、まったく健康に影響を及ぼしません」と太鼓判を押しています。

Q、今の放射能測定値で外出しても問題はないのか?

「環境の汚染の濃度、マイクロシーベルトが、100マイクロシーベルト/hを超さなければ、まったく健康に影響を及ぼしません。ですから、5とか10とか20とかいうレベルで、外へ出ていいかどうかということは明確です。昨日も、いわき市で答えました。『今、いわき市で、外で遊んでいいですか?』と聞かれました。『どんどん遊んでいい』と答えました。福島も同じです。心配することはありません。
・・・・・

100マイクロを10マイクロと言い間違えたのなら、「5とか10とか20とかいうレベル」という言い方はしないはずです。

福島県民の中には、山下教授の話を聞いて、100マイクロシーベルト/hまで安全、一度に100ミリシーベルト浴びなければ大丈夫だと信じて、放射線量が高いときにマスクもさせずに子どもたちを外で遊ばせてきた親がたくさんいます。ふとんも洗濯物も外に干してかまわない、雨に多少ぬれても問題ない、といった山下発言を信じてきた人がたくさんいます。

子どもを放射線測定器で検査

マスクをして放射能検査を受ける幼女

女の子の放射能を計測する防護服の大人

「100ミリ以下は安全」放射線アドバイザー山下俊一氏に苦言殺到
(2011年5月6日 ourplanetTV)から抜粋

将来、子どもたちに何か影響があった場合に、責任がもてるか」との質問に対しては、「将来のことは誰も予知できない」とした上で、起こった病気が放射線のせいかどうかを調査するには、福島県民全員による何十年間もかけた疫学調査が必要と回答した。

質問:これまで、福島は安全です。安全ですと言い続けてきたが、将来、子どもたちに何か影響があった場合に、責任がもてますか? イエスかノーでお答えください。
 
山下:基本的に大切なことは、将来のことは誰も予知できないんですね。神様しかできないんです。彼の質問に答えるには、膨大な数の疫学調査がいるんです。起こった病気が放射線のせいかどうかを調査するには、福島県民全員の協力が必要となります。正しい診断をし、正しい経過を把握するには、何十年間も必要なんです。数年、5年、10年ではなかなかその結果はでない。そのレベルの話ですので残念ながら、今の質問にはイエスともノーとも答えられません。

(福島県の動き)
<2011年5月、福島県民健康管理調査「検討委員会(山下俊一座長)」を設置>

<2012年9月11日、検討委で子ども1人に甲状腺がんが見つかったと発表>

<検討委で「子ども1人に甲状腺がん発症」を発表する前に「秘密会」を開いていたことが発覚>

福島健康調査 「秘密会」で見解すり合わせ (毎日新聞)
(2012年10月3日 毎日新聞)から抜粋

福島健康調査で秘密会 県、見解すり合わせ 会合シナリオ作る

 東京電力福島第1原発事故を受けて福島県が実施中の県民健康管理調査について専門家が議論する検討委員会を巡り、県が委員らを事前に集め秘密裏に「準備会」を開いていたことが分かった。準備会では調査結果に対する見解をすり合わせ「がん発生と原発事故に因果関係はない」ことなどを共通認識とした上で、本会合の検討委でのやりとりを事前に打ち合わせていた。出席者には準備会の存在を外部に漏らさぬよう口止めもしていた。

 県は、検討委での混乱を避け県民に不安を与えないためだったとしているが、毎日新聞の取材に不適切さを認め、今後開催しない方針を示した。

 検討委は昨年5月に設置。山下俊一・福島県立医大副学長を座長に、広島大などの放射線医学の専門家や県立医大の教授、国の担当者らオブザーバーも含め、現在は計19人で構成されている。県からの委託で県立医大が実施している健康管理調査について、専門的見地から助言する。これまで計8回あり、当初を除いて公開し、議事録も開示されている。

 しかし、関係者によると、事務局を務める県保健福祉部の担当者の呼びかけで、検討委の約1週間前か当日の直前に委員が集まり非公開の準備会を開催。会場は検討委とは別で配布した資料を回収し議事録も残さず、存在自体を隠していた

 9月11日に福島市内の公共施設で開いた第8回検討委の直前にも県庁内で準備会を開いていた。同日は健康管理調査の一環である子供の甲状腺検査で甲状腺がん患者が初めて確認されたことを受け、委員らは「原発事故とがん発生の因果関係があるとは思われない」などの見解を確認。その上で、検討委で委員が事故との関係をあえて質問し、調査を担当した県立医大がそれに答えるという「シナリオ」も話し合った

 実際、検討委では委員の一人が因果関係を質問。県立医大教授が旧ソ連チェルノブイリ原発事故で甲状腺がんの患者が増加したのは事故から4年後以降だったことを踏まえ因果関係を否定、委員からも異論は出なかった。

 また、昨年7月の第3回検討委に伴って開かれた準備会では、県側が委員らに「他言なさらないように」と口止めもしていた。

 毎日新聞の取材に、県保健福祉部の担当者は準備会の存在を認めた上で「あらかじめ意見を聞き本会合をスムーズに進めたかった。秘密会合と言われても否定できず、反省している。(今後は)開催しない」と述べた。

 福島県の県民健康管理調査は全県民を対象に原発事故後の健康状態を調べる。30年にわたり継続する方針で、費用は国と東電が出資した基金で賄う。【日野行介、武本光政】

「説明受ける場」
検討委の座長を務める山下俊一・福島県立医大副学長の話 準備会は調査結果について説明を受ける場と理解している。何かを決めるものではなく、秘密会の認識はなかった。しかし、不信感を与えるのであれば今後は取りやめても構わない

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 ■解説

 ◇揺らぐ信頼性

 「データだけを明らかにすれば数字が独り歩きして住民の不安をあおりかねない」。原発事故に伴う福島県の県民健康管理調査で専門家が「秘密会」(準備会)を開いて調査結果への見解を事前にすり合わせていた背景には、県や関係者のこんな思惑がうかがえる。

 検討委員会の山下俊一座長は公の場などでこれまで「今回の事故で誰も大量被ばくしていない。エビデンス(科学的根拠)から見て危険な人たちはほとんどいない」と繰り返し強調してきた。だが、秘密会では調査結果について本会合でどうやりとりするかの「シナリオ」まで事前に協議。県民の不安解消を目的とした調査結果への信頼を揺るがし「最初に結論ありき」だったとの不信感が高まるのは避けられない。

 秘密会を今後は開かないという県の方針は当然だが、そこでどのような議論が交わされてきたのかも明らかにする必要がある。不信の払拭(ふっしょく)には徹底した情報公開しかない。【日野行介】

福島健康調査「秘密会」 県、出席者に口止め

福島検討委 委員発言 県振り付け「内部被ばく相当低い」


(2012年10月4日 福島民友)
福島民友 不信感募る 県民健康調査「準備会」

福島県の甲状腺検査の責任者を務める山下俊一氏の発言
(2012/10/03 風の便り)から抜粋

(2012年08月26日 毎日新聞)
「100ミリシーベルト以下の健康リスクは明らかには証明されていない、または非常に小さいというのが科学者の国際的合意だ」
日本という国が崩壊しないよう導きたい。チェルノブイリ事故後、ウクライナでは健康影響を巡る訴訟が多発し、補償費用が国家予算を圧迫した。そうなった時の最終的な被害者は国民だ。」

山下氏に健康問題を任せ続けた場合、子どもたちがどうなるかを皆で考えたい。

ステパノヴァ医師「汚染地の子ども病気になりやすい」

汚染地域の子ども病気になりやすい ウクライナの小児科医警告
(2011年12月14日 東京新聞)

チェルノブイリ事故後の健康調査 治療効果も低下
 
 チェルノブイリ原発事故が起こったウクライナの放射線医学研究センターで、子どもの治療や検診を続けるエフゲーニャ・スパテノワ教授が13日、東京都内で取材に応じ「汚染地域の子どもたちは病気になりやすく、治りにくい傾向がある」と指摘。内部被ばくを防ぐ対策や健康管理の重要性を訴えた。

 同センターは事故の翌1987年、キエフに設立。小児科医のスパノワ教授は当初から放射線による子どもの健康影響を調べてきた。国際環境保護団体グリーンピース・ジャパンの招きで初来日し、福島市で講演した。

 ウクライナでは、土壌1平方メートルあたりの放射性セシウム濃度が3万7000ベクレル以上の「汚染地域」を4つのゾーンに区分。18万5000ベクレルまでを「管理強化」とし、さらに汚染度に従い「移住権利」「立ち入り禁止の30キロ圏内」がある。

 福島原発事故の汚染度で見ると、福島県はもとより栃木や群馬なども含めた関東の広範囲な地域がこの「汚染地域」に当てはまる。

 ステパノワ教授らの健康調査で、汚染地域に住み続ける子どもたちは複数の病気にかかりやすく、治療効果が低い特徴があった。当初は汚染されていない地域とほぼ変わらなかった胃腸の病気の発症率も、93年ごろから徐々に増加。「汚染された食べ物を取り続け、病気になる確率が高まったと考えられる」

 汚染のひどい55万5000ベクレル以上の「移住義務」に住む子どもは、汚染の低い地域と比べて、肺炎や気管支炎など呼吸器系の病気が2倍、血液系障害が2.5倍になるなど、より病気になりやすい傾向が見られた。

 ステパノワ教授は、汚染地域で暮らす場合の対策として「子どもには汚染のない食品を与えること。汚染地域を長期間離れる林間学校プロジェクトも必要だ」と話した。

(補足)
ウクライナで5万人の子どもを診察したエフゲーニャ・ステパノワ博士は、病気予防対策として、汚染されていない食べ物をとること、充分なビタミンをとること、体力増進に努めること、(移住できない場合は)汚染地域を離れて保養施設などで休むこと(最低でも4週間)も重要だと話しています。また、ウクライナの子どもたちは1年に1回、小児科、血液科、内分泌科、神経科、咽頭科など専門医のもとで、血液検査と尿検査、甲状腺超音波検査など総合的な健康診断を受けています。

ところが、日本では、血液検査や尿検査さえ実施されていません

福島県、尿検査せず

福島県 子どもの放射能 尿検査せず 秘密裏に「困難」結論?
(2012年10月25日 東京新聞)から抜粋

 福島原発事故を受けた県民健康管理調査で、子どもの内部被ばくを把握できる尿検査が行われていない。専門家でつくる公開の検討委員会でも検査の是非がほとんど議論されてこなかった。ところが今月に入り事前の「秘密会」の開催が公となり、尿検査をめぐる議論の不透明さも判明。検査を求めてきた保護者らは不信を募らせている。

「また、だまされたんだ」。伊達市の菅野美成子さん(40)が諦めきった様子でつぶやいた。

今月初めに新聞報道で検討委の委員と県側が、開催前に議論をすり合わせる「秘密会」を開いていたことが発覚。事前に会議の「進行表」が配られ、検討委に”出来レース”の疑いが浮上した。

県側は秘密会について調査し、8日にまとめた報告書で、議論を深めるための「準備会」だったと強調。内密の開催が不信感を招き不適切としながらも、「発言の抑制や議論の誘導などはなく、個人情報保護などが目的だった」と結論づけた。

だが、その説明に納得する県民は少ない。事故後、内部被ばく検査を求める声に、国や県の対応は後手に回り、今回明るみに出た進行表は、公開の検討委をないがしろにして、十分な議論や説明もないままに、検査を切り捨てた姿を浮き彫りにしたからだ。

健康調査の検討委「議論ない」親ら不信

昨年7月の第3回検討委の事前の進行表では、浪江町、飯舘村、川俣町、山木屋地区で計120人に行った内部被ばく調査の結果について、検討前から「相当に低い」とする発言予定が記載

さらに「WBCの今後の普及とGe半導体の逼迫(ひっぱく)状況(牛肉等)を考えると、尿検査でWBCを代替えするのは困難ではないか」とあった。

WBCはホールボディーカウンターの略で、体内にある放射性セシウムから発せられるガンマ線を測る装置。じっとできない幼児は受けられず、体が小さい子どもの検査には不向きとされる。

尿検査の方が子供の被ばくを正確に測ることができるが、検査できる精度の高いGe(ゲルマニウム)半導体検出器が、牛肉などの食品検査を優先して不足しており、尿を検査するのは無理という意味だ。

当初公開されていた議事録では、第3回の検討委で山下俊一座長が「今後、尿検査をする意味はあるのか」と発言。これに答えて、放射線医学総合研究所(放医研)理事の明石真言委員が「今回の尿検査では極めて微量しか検出されなかった。(略)検証にもう少し時間をいただきたい」と話したとされている。

第3回から検討委は公開されているが、県の調査でメモをまとめた議事録も「不適切」とされ、現在、作り直している。

明石委員の発言も修正される可能性はあるが、明石委員は取材に「1回分の尿から体内のセシウム濃度を推定すると、濃淡の差があり科学的な数値とは言えない。(尿検査は)どう転んでもあいまい。それならばWBCでいい」と説明する。

だが内部被ばくに詳しい矢ヶ崎克馬琉球大名誉教授は「WBCはガンマ線のみなど内部被ばくを正しくつかむことはできない。尿検査を導入するべきだ」と異を唱える。

被ばくの切り捨て
尿検査なら検出人数は大幅増

矢ヶ崎氏によると、1リットルあたりの尿からセシウムが検出された場合、体内には約150倍のセシウムがあると推定され、「尿に混じって排出されるほかに、セシウムは臓器や筋肉に蓄積される」と言う。

不透明な経緯そのものが不信感を広げている。

尿検査の導入を訴えてきた「福島老朽原発を考える会(フクロウの会)」の青木一政事務局長は「この第3回検討委の後、尿検査が議論された形跡はない。ろくな議論もないままに秘密裏に『尿検査は困難』という合意が形成されたとしたら問題。現に進行表が疑問視した尿検査は実施されていない」と批判する。

同会は昨年5月、福島市内の子ども10人から採取した尿をフランスの民間検査機関「アクロ」に送り分析。全員からセシウムが検出され、保護者らの危機感が高まった。その後も県内外の子ども102人を検査。これまでに岩手、宮城、千葉県など幅広い範囲でセシウムが検出されている

ノーベル平和賞を受賞した「社会的責任を果たすための医師団」が警告
(2011年3月23日 ワシントンDC発)

PSR ノーベル賞受賞 医師団

社会的責任を果たすための医師団」(PSR)は、福島第1原発事故が進行している中で、事故による放射能が日本の食品の中に発見されたという最近の報告に深い憂慮を表明する。PSRは、どのくらいの放射線被曝まで「安全」と考えられるかについて、メディアで誤った情報が流布している点にも注意を呼びかける。

米国科学アカデミーによれば、安全な放射能の線量というものはない。過去数十年にわたる研究から、放射線はどんなに少ない線量でも、個々人の発がんリスクを高めることがはっきりと示されている。

日本で危機が続く中、人に発がんの危険が生じるのは最低100ミリシーベルト被曝したときだという報道が様々なメディアでますます多くなされるようになっている。これまでの研究で確立された知見に照らしてみると、この主張は誤りであることがわかる。100ミリシーベルトの線量を受けたときの発がんリスクは100人に1人、10ミリシーベルトでは1000人に1人、そして1ミリシーベルトでも1万人に1人である

原発労働者のガン 5ミリシーベルトで労災認定

2013年11月の
福島県放射線健康リスク管理アドバイザー高村昇教授の発言

山下俊一氏と同じく福島県放射線健康リスク管理アドバイザーとなった長崎大学の高村昇教授は、原子力規制委員会が福島原発事故で避難している住民の帰還に向け「年間の追加被ばく線量が20ミリシーベルト以下であれば健康に大きな影響はないという見解を提言に盛り込む方針を固めた」ことに対して、「国際ルールに基づく妥当な判断」との見方を示している。

<2011年4月の出来事 内閣官房参与が20ミリに抗議の辞任

小佐古敏荘「小学生に20ミリSvは 私には許すことができません」

「自分の子どもをそういう目に遭わせたくない」抗議の辞任
(2011/04/30 風の便り)から抜粋・要約

内閣官房参与の小佐古敏荘・東京大教授(61)=放射線安全学=は29日、小中学校の屋外活動を制限する限界放射線量を年間20ミリシーベルトを基準に決めたことに「容認すれば私の学者生命は終わり。自分の子どもをそういう目に遭わせたくない」と抗議の辞任をした。小佐古氏は、学校の放射線基準を年間1ミリシーベルトとするよう主張したのに採用されなかったことを明かし、「年間20ミリシーベルト近い被ばくをする人は原子力発電所の放射線業務従事者でも極めて少ない。この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」と語った。

<それから3年半が過ぎた>

福島原発事故から3年半、病気と病死が急増 痛恨の意見陳述

子どもの甲状腺がん検査

福島原発事故から3年半が過ぎました。通常、子どもの甲状腺がんは「100 万人に1人か2人」と言われていましたが、福島県では原発事故当時18歳以下の子ども約37万人に「ガンないしガンの疑いが103名」も出ています。(通常のおよそ150~300倍

NHK:甲状腺がん・がんの疑い103人

<福島原発事故の後、3年間の子どもの甲状腺検査で分かったこと>
表を見るとよくわかりますが、甲状腺がんが増えただけでなく、がんになる可能性がある結節やのう胞が年ごとに急増しています

罫線入り表 甲状腺 結節のう胞 H26年6月30日現在

5ミリ以上の結節が、0.5% → 0.7% → 0.9% と、この2年で1.8倍に急増し、のう胞も、36.2% → 44.7% → 55.9% と激増(3人に1人が2人に1人以上に)そして、2次検査(精密検査)が必要な子どもも1.8倍になっています。

この急激な増え方は、チェルノブイリ原発事故で最も健康被害が多いベラルーシのゴメリ地方に似ています。(ベラルーシの面積は日本の約55%でゴメリ州は福島県の約2.5倍の広さ) 甲状腺がんは、下の表の中で300倍に増えている「内分泌・代謝・免疫異常」の一つです。

ゴメリ地方の小児の疾病発病率

福島県立医大で手術された54例のうち、45名は腫瘍の大きさが10ミリ以上かリンパ節や肺に転移しています。(2014年8月29日、日本癌治療学会にて福島県立医大の鈴木真一教授が発表

福島で増えている病気は、甲状腺がんだけではありません。2013年の統計で、全国平均より福島の死亡率が1.4倍以上高い病気は、内分泌・栄養及び代謝疾患(1.40倍) 皮膚がん(1.42倍 ) 脳血管疾患(1.44倍) 糖尿病(1.46倍) 脳梗塞(1.60倍) そしてセシウムが蓄積しやすい心臓の病気は、急性心筋梗塞の死亡率が2.40倍慢性リウマチ性心疾患の死亡率が全国平均の2.53倍で、どちらも全国1位になっています。

福島県の急性心筋梗塞死亡率 2009~2014.3
*2010年以前から全国1位。原発事故が起こった2011年から急増。2014年1~3月 福島の477人は、3か月間に急性心筋梗塞で亡くなった人の実数。全国の実数は、12,436人。福島県の人口は、全国の1.53%なので、12436×0.0153=190人 全国平均なら福島は190人ですが、その2.51倍の477人が亡くなっています。

原発事故以前から全国1位という数字を見て思い出すのは、原発周辺では事故を起こさなくても白血病やがんが多いというドイツ政府やフランスでの発表福島には原発が10基もあったこと、そして、2011年の原発事故前から「小さな事故」が多発していたこと、さらに事故の隠ぺいが日常化し、臨界事故まで隠されていたことです。

同じ心臓病の「慢性リウマチ性心疾患」は、慢性ということもあり、急性心筋梗塞より1年遅れの2012年から死亡率が急増しています。

福島県の「慢性リウマチ性心疾患」 死亡率

グラフにするとその急激な増加がよくわかります。
赤色が全国平均、紺色が福島県です。

慢性リウマチ性心疾患のグラフ

甲状腺がんや心臓病だけではなく、結腸がん、腎臓病、消化器系の疾患など様々な病気が原発事故後に増えています

2012年福島県の死因ワーストランキング
   (表は宝島から拝借)

こうした状況にありながら日本政府は、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアが制定している被ばく線量を減らすための法律(「チェルノブイリ法」)をつくろうとしません。年間1ミリシーベルト以上は「避難の権利」があり、5ミリシーベルト以上は「移住の義務」があることを柱としている「チェルノブイリ法」は、移住のための費用や医療費などの手厚い補償があります。移住を選んだ住民に対して国は、移住先での雇用を探し、住居も提供。引越し費用や移住によって失う財産の補償なども行われています。

チェルノブイリ法の基準

ところが、安倍首相はそうした被ばく対策の前提となる健康影響を無視するだけでなく、東京五輪招致に当たり、福島原発事故による健康への影響は「今までも、現在も、将来も問題ないと約束する」と発言。

安倍首相「健康問題については、今までも現在も将来も問題ないと約束する」

安倍首相 「健康影響ないと約束」に批判 河北新報

安倍首相に同調するかのように原子力規制委員会も「年20ミリシーベルト以下は健康影響なし」と発表。被ばく対策が進むどころか、避難した住民を20ミリシーベルト以下の放射能汚染地に戻そうとしています。(日赤は原子力災害時の医療救護の活動指針として累積被ばく線量が1ミリシーベルトを超える恐れがあれば、退避するとしている。 また、先に伝えたように、内閣官房参与だった小佐古敏荘・東京大教授は、年間20ミリシーベルトを基準に決めたことに「容認すれば私の学者生命は終わり。自分の子どもをそういう目に遭わせたくない」「年間20ミリシーベルト近い被ばくをする人は原子力発電所の放射線業務従事者でも極めて少ない。この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」と抗議の辞任をしている)

福島民報:20ミリ以下、健康影響なし

山下俊一教授は、2012年8月26日の毎日新聞インタビューでこう語っている。「日本という国が崩壊しないよう導きたい。チェルノブイリ事故後、ウクライナでは健康影響を巡る訴訟が多発し、補償費用が国家予算を圧迫した。そうなった時の最終的な被害者は国民だ」――この発言通りに山下氏は、今も政府の「原子力災害専門家グループ」の一員として、健康被害を過小評価し、原発事故と健康被害の関係を否定し続けることで、「チェルノブイリ法」のような「国家予算を圧迫する」根本的な被ばく対策を政府が取らないことを支持している。

ベラルーシ科学アカデミーのミハイル・マリコ博士の言葉
チェルノブイリの防護基準、年間1ミリシーベルトは市民の声で実現されました。核事故の歴史は関係者が事故を小さく見せようと放射線防護を軽視し、悲劇が繰り返された歴史です。チェルノブイリではソ連政府が決め、IAEAとWHOも賛同した緩い防護基準を市民が結束して事故5年後に、平常時の防護基準、年間1ミリシーベルトに見直させました。それでも遅れた分だけ悲劇が深刻になりました。フクシマでも、早急な防護基準の見直しが必要です

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