北電やらせ:道職員がプルサーマル計画意見募集の賛否集計

北電やらせ:道職員がプルサーマル計画意見募集の賛否集計
(毎日新聞 2011年11月19日 2時35分)

 北海道職員が関与した疑いが指摘されている北海道電力泊原発3号機のプルサーマル計画を巡るやらせ問題で、道原子力安全対策課職員が08年当時、意見募集の賛否集計をしていたことが関係者への取材で分かった。意見募集に関し道はこれまで「賛否を問うものではない」とし、北電に賛成意見を集めるよう求めたとされる疑惑を否定する根拠にしてきたが、その前提に疑念が生じた形だ。道の第三者検証委員会は関係者から事情を聴き、集計した経緯や意図を慎重に調べている。

 関係者によると、職員は08年5月19日~6月13日に実施された第1次意見募集で住所や性別などに加え賛否を集計していた。職員は検証委のヒアリングに対し「(何らかの)意図を持って作成したわけではない」などと答えているとみられ、当時の道幹部は「議会などから質問された場合に備え、基本的な資料として個人的に整理していたのだろう」と指摘。当時の原子力安全対策課の村井悟課長(現釧路総合振興局長)も職員が集計資料を作成していたことは知らなかった模様だ。

 意見募集を巡っては、1次募集で1割にも満たなかった推進(賛成)意見が08年6月16日?7月11日の2次募集で5割を超えた。北電第三者委員会の報告書によると、同7月8日に道と北電の打ち合わせが行われ、村井元課長が北電に賛成意見を集めるよう要請したと指摘されている。

 また、08年10月3日?31日の3次募集中には、北電社員のメールに「現在のパブコメ(意見募集)の状況は全体で90件(賛成4割、慎重6割)。慎重意見が多い」などと道の意見募集の途中経過が記されていたことも判明しており、道と北電が恒常的に賛否状況の情報交換をしていた可能性もある。【高山純二】

 ◇第三者委は23日に報告書公表

 北海道電力のやらせ問題で、道は18日、道の関与の有無を調査している第三者検証委員会(委員長=小寺正史弁護士)が23日に報告書を公表すると発表した。高橋はるみ知事に報告書を提出後、第三者委が記者会見する。


北電やらせ:「社員も住民」道、賛成意見促す…社内メモ
(毎日新聞 2011年11月17日 21時25分)

 北海道電力泊原発(北海道泊村)3号機のプルサーマル計画を巡るやらせ問題で、北電の第三者委員会が道の関与疑惑の根拠として指摘した社内メモの概要が、関係者への取材で分かった。道民からの意見募集について「北電社員も住民。匿名希望でも受け付けている」と社員に賛成意見を出すよう促したうえで、道が当時設置していた有識者検討会議の委員に対する工作や審議を急がせるような発言も記されていた。

 メモは08年7月、北電が道原子力安全対策課と打ち合わせをした際、出席した社員が作成したとされる。

 今年9月、北電の第三者委員会は社員の社内メールからメモを発見したが、道側は「信ぴょう性に欠ける」と否定し、具体的な内容は公表されていなかった。

 関係者によると、メモには、当時の村井悟・原子力安全対策課長=現・釧路総合振興局長=が意見募集について「反対意見ばかり」としたうえで、「北電社員も地元住民だよね」「ちなみに『○○町、匿名希望』でも受け付けている」と発言したと記されている。

 また、プルサーマル計画の安全性について審議していた有識者検討会議の委員について、「(国から)『原子力に詳しくない委員に対し、基本的なレクが必要ではないか』と言われた」と指摘。審議のペースについて「9月中旬には中間取りまとめを出したい」と急がせるような発言も含まれていた。

 メモの内容について道の立川宏総務部長は「第三者検証委員会に調査をお願いしており、現時点ではコメントできない」と話した。【高山純二】


原発やらせ問題:第三者委、7件認定…新たに泊、女川でも
(毎日新聞 2011年9月30日 21時21分)

 経済産業省の原子力安全・保安院と資源エネルギー庁による国主催原発シンポジウムへの動員など「やらせ」問題で、事実関係を調べる経産省第三者委員会(委員長、大泉隆史・元大阪高検検事長)は30日、最終報告をまとめ、枝野幸男経産相に提出した。調査した41件のうち7件で、保安院かエネルギー庁が電力会社に対し原発推進の立場からの質問や動員を働きかけた事実があったと認定した。

 最終報告は、新たに、08年8月の北海道電力泊原発のプルサーマル計画に関するシンポでエネルギー庁職員が推進の立場に立った質問を北電関係者に要請していたと認定。8月30日の中間報告で保安院の関与が「疑われる」とされた06年10月の東北電力女川原発の説明会3件でも保安院職員が東北電関係者の動員や賛成発言を促していたと認定した。

 中間報告でエネルギー庁の関与が疑われた10年5月の九州電力の川内原発公開ヒアリングと11年6月の九電玄海原発の説明番組は「(やらせは)電力会社が主体」として国の関与は否定。

 保安院やエネルギー庁の幹部による具体的な指示などは「認められなかった」としたが、幹部が「やらせ」を把握せず、改善策が講じられなかったことなどを「組織としての機能不全が国民の深刻な不信を招く結果につながった」と指摘した。再発防止策として、公正性や透明性を確保する規範の策定などを挙げた。枝野経産相は30日の会見で「再発防止策を早急にとりまとめ、関係者の処分も速やかに行いたい」と述べた。【和田憲二】
 ◇「組織離れては起こらぬ」

 「幹部職員がやらせを指示したと認定できないが、組織を離れて(やらせが)起こるとは考えられない」。経産省第三者委員会の大泉隆史委員長(元大阪高検検事長)は30日に会見し、国の原発シンポジウムをめぐるやらせ問題について、同省原子力安全・保安院などの組織的関与については断定を避けたものの、「電力会社と資源エネルギー庁、保安院が相互にもたれ合っていた」と指摘。原子力関係者が癒着する「原子力ムラ」の体質に、やらせの温床があったと明言した。

 第三者委の報告書公表を受け、深野弘行・保安院長と、高原一郎・資源エネルギー庁長官は同夜、相次いで記者会見。「職員の規範に反する行為で大変遺憾」(深野院長)、「エネルギー政策の透明性を損なう行為で、おわびする」(高原長官)と、それぞれ謝罪した。ただし、説明会のやり直しについては「地元の要望に従う」(深野院長)などと明言を避け、組織的関与についても否定した。

 報告書は元保安院課長(56)が05?06年、東北電力など五つの説明会で、「やらせ」をしたと断定した。元課長は30日、毎日新聞の取材に対し、「やらせの認識はないが、第三者委の決定には従う」と語った。元課長は経産省を既に退職しており、同省はどのような処分が可能か検討している。

 内閣府主催のタウンミーティングの「やらせ問題」で、調査委員会メンバーを務めた明治学院大の川上和久教授(政治心理学)は「今回の調査は『国の関与の有無』に限定されており、電力会社によるやらせの全体像が解明されないまま終わったのは非常に残念」と指摘。組織的関与については、「証拠主義にこだわらず、もっと追及すべきだった」と調査が不十分との見解を示した。【中西拓司】

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