ロッカショ 2万4000年後の地球へのメッセージ

スロービジネススクールの学生さんが素敵な書評を書いてくれました。


手元に、1冊の本がある。『ながいも料理』 という書名そのままに、これでもか、と長芋を使ったレシピが集められた小さな本。刊行は北の街社、青森市にある出版社だ。数年前、青森を訪れた際に、かの地の書店で見つけた本である。さすが青森県、長芋の生産日本一の地、だけはある。
その青森で、長芋、米、トマトを栽培するひとりの男性がいる。哘(さそう)清悦さん、六ヶ所村在住。ある日の夕方、遊んでいた3歳の息子を、おなかが空いただろうから、と先に帰宅させ、農作業を続けていた哘さん。しばらくして、補助車輪のついた息子の自転車の音が聞こえてきた。
「どうしたんだ?」
「お父さんがおなかが空いたかと思ってパンを持ってきた!」
見ると自転車のカゴには、あんパンがひとつ。ふたりで分けあってパンを食べながら、哘さんは、胸がいっぱいになる。
ささやかな家族の幸せが、今、脅かされようとしている。
あなたは、六ヶ所で、今、何が起ころうとしているか、知っていますか?
六ヶ所村の核燃料再処理工場による、放射能汚染。そして、その尋常ではない汚染の事実が、世の中にほとんど知られていないことに対して、動き出した人たちがいる。本書 『ロッカショ』 は、坂本龍一さんが立ち上げたウェブサイト、STOP-ROKKASHOを、書籍という媒体に深化させたもの。
前述の哘さんは、本書の中で、こう語る。
「私たち人間が生きていくために必要な物は、“電気やお金” ではなく、空気・水・食糧です」
この本をまとめるために奔走した、SUGIZOさん(音楽家という枠を超え、平和や環境活動に積極的に参加するアクティヴィスト)の言葉が胸に響く。
「真実を伝えることが、僕らのように先に知ってしまった者の役目だと思って、今、動いている」
食卓の上の美味しい長芋料理と、六ヶ所で起こっていることは、実は密接につながっている。私はこれからもずっと、美味しい青森の長芋を、安心して食べていきたい。だからこそ、まずは知ること。そこから、全てははじまる。
【ロッカショ  2万4000年後の地球へのメッセージ】
STOP-ROKKASHOプロジェクト 著
講談社 刊  1,200円(税込)

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