岡田正彦教授 「長生きしたければガン検診は受けるな」

世界一の医療被ばく大国・日本に住むすべての人に知ってほしい重要な情報
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岡田正彦・新潟大学医学部教授 長生きしたければがん検診は受けるな
(2012年02月15日(水) 週刊現代 賢者の知恵)

 早期発見・早期治療で寿命は延びない。それどころか、CTなどの検査にはこんなに害がある

 3人に1人ががんで死亡する時代。恐怖に駆られ、多くの人が検診へ急ぐ。だがその検査に、治療に、寿命を左右しかねないほどのリスクを伴うと知ったら—あなたはそれでもがん検診を受けますか。

肺がん検診で肺がんになる

 ここ数年、「がんの見落とし」に関する裁判が急増しています。患者側は「どうしてくれるんだ!」と激怒して病院を訴えますが、私は、見落とされてかえって良かったかもしれないと思うんです。へたに発見されて激しい治療を受けていたら、もっと苦しい思いをして、寿命を縮めてしまう可能性があるからです。

 私は過去20年にわたって、世界中で発表された検診の結果に関する論文を読んできました。睡眠時間、体重、生活習慣、過去に受けた医療行為など、あらゆる条件を考慮した上で、がん検診を受けた人と受けない人が十数年後にどうなっているか、追跡調査した結果にもとづく論文などです。

 その中で最も衝撃的だったのが、20年以上前にチェコスロバキアで行われた肺がん検診の追跡調査です。そこでは、検診を定期的に受けていたグループは、受けなかったグループより肺がんの死亡率が圧倒的に多く、それ以外の病気による死亡率も明らかに多いという驚愕の結論が出ているのです。

 その後、欧米各国でより精密な追跡調査が行われてきましたが、その多くが同様の結果でした。つまり、「検診を受けようが受けまいが、寿命が延びることはない」のです。

 肺がんだけでなく、他のがん検診やその他の検診でも、同傾向の結果が出ています。
肺がんの検診を受けると、なぜ死亡率が高くなるのか。理由の一つはエックス線検査にあります。

 国や専門家たちは、「エックス線検査には放射線被曝というデメリットがあるけれど、それ以上にがんの早期発見というメリットの方が大きい。だから害は無視できる」と主張します。

 しかし、これには科学的根拠がありません。私はありったけの関連論文を読んできましたが、放射線を浴びても、それを上回るメリットがあるということを科学的に証明した論文は、1本もなかったのです。

 イギリスの研究チームが、医療用エックス線検査で起こったと考えられるがんを調べたデータがあります。その研究では、日本人のすべてのがんのうち、3.2~4.4%はエックス線検査が原因だと結論づけています。残念ながらこのレポートは、日本では話題にされることはありませんでした。

 新潟大学医学部教授の岡田正彦氏(65歳)は予防医学の第一人者で、現代医療の無駄の多さ、過剰さに疑問を呈し、健康のために真に必要なものは何なのか、独自に調査・研究を進めてきた。

 胸部エックス線検査でさえこれだけ有害なのですから、被曝量がその数十倍から百数十倍もあるCTを使った検診が身体にどれだけ大きなダメージを与えるかは、火を見るより明らかです。

 CTが原因でがんが発症するというデータは年々増えています。アメリカには、CTを繰り返し受けると、がんが十数%増えるというデータもあるのです。ところが、日本では全く問題になりません。それどころか、日本のCTの普及率は、2位以下を3倍も引き離す、ダントツの世界一なのです。

 それでも、CTを使って数mmのがん腫瘍を早期に見つけることができれば、手遅れになる前に手術で切除して命を繋ぐことができる。だからCTは素晴らしいものだと、多くの人は思ってしまうでしょう。でも、一概にそう言えるでしょうか。

 手術となったら、肺にしろ、胃にしろ、肝臓にしろ、組織をごそっと取り去ります。しかも、がんはリンパ管を通って転移するので、近くのリンパ節も全部取らなくてはいけない。大変な肉体的ダメージを受け、免疫力が大幅に落ちます。手術後には何度もエックス線写真を撮りますし、抗がん剤治療も必ず行われます。放射線療法をする可能性も高い。なおかつ、人間の身体にとって最もハイリスクな寝たきり状態を強いられ、何重もの責め苦を負うわけです。これで健康でいられるわけがありません。

 そうは言っても、やはりがんは悪いものなんだから除去すべきだという反論が必ず返ってきます。しかし、「がん=悪性」というイメージは、もはや古い認識です。

治療しない方がいいがん

 動物実験で人工的にがんを発症させて、経過を調べたデータがあるのですが、がんの大多数は大きくならず、身体に悪影響を与えないタイプのものでした。

 近年、世界的な研究が行われ、人間の場合も生涯大きくならないがんが相当数あることが分かってきました。そうしたがんは、へたにいじらない方がいい。それに、もしタチの悪いがんなら、早い時期に全身に転移するので、早期発見した時には手遅れの場合が多く、予後はそれほど変わらないというのが私の考えです。

 だとすると、検診で微細ながんを見つけ出し、激しい治療を施される不利益の方が、放置しておくよりもむしろ大きいかもしれない。これ一つをとっても、がん検診の有効性には大きな疑問符がつくのです。

 そのことを考えるのにもってこいの、前立腺がんに関するデータがあります。死亡後、解剖によって初めて見つかる前立腺がんは非常に多いのですが、彼らはがんを抱えたまま天寿を全うしたことになります。もし彼らが前立腺がんの有無を調べるPSA検査を受けていたら、必ず手術になっていたでしょう。その場合、果たして天寿を全うできたかどうか・・・。治療の弊害で早く亡くなっていたかもしれません。同じことが、すべてのがんについて言えるのです。

 がんの発症人口が増えている中、近年、急激に死亡者数が減っているのが胃がんです。多くの専門家は検診の効果であると口を揃えますが、胃がん検診が普及したのはごく最近で、胃がんが減り始めたのはもっと前。実は胃がんの死亡者数が減少した本当の理由は、日本人の塩分摂取量が減ったことが大きく関係しているんです。

 私の計算では、胃がん検診は、胃がんを減らすどころか、むしろ増やしている可能性があります。肺がん検診はエックス線写真を1枚撮れば済みますが、胃がん検診ではバリウムを飲んで検査をしている間、ずっと放射線を浴びなくてはなりません。その被曝量は、肺がん検診の100倍近くも高くなります。

 そもそも胃がん検診をやっているのは、世界中で日本だけ日本は、大規模な追跡調査をやらない国なので、胃がん検診が有効だということを実証する証拠は一切ありません。にもかかわらず国が推奨しているのが、私は不思議でならないのです。

 大がかりな検診は意味がないという認識は、すでに欧米の研究者の間で広まっています。アメリカ人の医者千数百人を対象にしたアンケート調査のデータでは、大部分のドクターは、「検診はやった方がいい。ただし血液検査や尿検査があれば十分で、レントゲンや心電図までは必要ない」という意見でした。

人間ドック、脳ドックも

 ところが日本では、いまだに検診は有効だと盲信され、国を挙げて推奨されています。それはなぜかというと、ひとつはビジネスマター、つまり金儲けをする手段として検診がもてはやされているということ。もう一つは「検診は有効だ」という、人々の深い思い込みによります。なくてもいいという発想そのものを持っていないのです。

 医者の側にも問題があります。医療が細かく専門化した結果、自分の領域しか知らない医者ばかりになり、検診が他の領域に及ぼす影響まで思いが至らなくなっているのです。

 また、医者はこれまで自分のやってきたことが正当だったと信じたいため、検診に否定的な論文を目にしても、それは例外だと自分自身にも言い聞かせ、患者さんにもそう伝えるのです。

 だから、がん検診を受けても寿命は延びないし、かえって苦しい思いをしたり、がんを発症させたりする可能性があるという事実が、患者側には一切伝わってこないのです。

 こういったケースは、がん検診だけに限ったことではありません。人間ドックに入れば、ありとあらゆる検査の中で何らかの病気が見つかりますが、その中には無理に治療が必要でない微細な病気も多く、結果的に過剰医療に繋がって身体にダメージを与えてしまう恐れがあります。

 そもそも、人間ドックという言葉があるのは日本だけ。推奨している国も他にはないのです。

 また糖尿病の検査にも身体に悪いものがあります。ブドウ糖負荷試験という検査方法で、75gのブドウ糖を飲んで血糖値を計るのですが、これは5g入りのコーヒー用スティックシュガー15本分の糖分に相当します。これを一気に飲むのですから、糖尿病体質の人にとっては、発病の後押しをするようなものです。

 そもそも、この検査をしなくても早朝空腹時の血糖値を計れば必要なデータが得られるということは、外国の調査研究で15年も前に明らかになっています。

 脳ドックも毎年多くの人が受診しています。検診を受けた結果、小さな脳動脈瘤が見つかり、手術で取り去ることができた—そう聞いたら、それは良かったと思うでしょう。脳動脈瘤が破裂すれば、命にかかわるということは広く知られていますから。

 しかし、’03年に世界13ヵ国の医師と研究者が5年間放置した脳動脈瘤が破裂した割合を調査したところ、動脈瘤の大きさが7mm未満で0・2%、7~9mmで0・5%、9mm超で3・1%だけという結果でした。一方で、破裂を予防するために手術を行った場合、1年後に2・7%が治療そのものが原因で亡くなり、半身麻痺などの障害を加えると、じつに12%が死亡もしくは障害を受けていたことが明らかになったのです。

 日本政府が熱心に進めてきたメタボ健診も、有効性は認められません。健診では特に腹囲が重視されますが、欧米の研究で、腹囲の大小と寿命は無関係ということが実証されていますし、メタボリックシンドロームという病気自体、そもそも存在しないのでは、と思っています。最初にこの言葉を使い始めたWHO(世界保健機関)も、’06年以降は使わなくなりました。

検査が余病を引き起こす

 メタボ健診の大罪は、血圧が少しだけ高いと判定された人にも降圧剤が処方されてしまうことです。調査の結果、降圧剤を飲んでも飲まなくても、5年後、10年後の死亡率そのものは変わらないか、飲む薬によっては増えるということがわかっています。降圧剤を飲めば、確かに血圧は下がります。しかし、心筋梗塞を誘発したり、思わぬ余病を引き起こすことがあるのです。

 要するに、早期発見・早期治療をしても結果が変わらないということを、様々なデータが示しているのです。

 検診に大金を費やすより、予防に力を入れるほうが、国民の健康保持にとってはるかに有効だと私は思います。

 がんも、8割方予防できると考えられます。遺伝によって起こるがんは全体の5%ほどだけで、残りの80%は原因が分かってきましたから。

 その一つには、前に述べたエックス線検査があります。そして、今深刻な問題となっている放射能。それ以外にも、よく知られたところでたばこや塩分の取りすぎ、野菜や果物不足も、がんの発症の大きな要因となっています。それらを解消すれば、がんの半分以上は防ぐことができるのです。

 最近では、手軽に野菜の栄養素を摂取できると謳ったジュースやサプリが売られていますが、それでは野菜を食べたのとイコールにはなりません。成分を分解してしまうと、がんを抑制する抗酸化物質が作用しないため、意味がなくなってしまうんです。野菜はぜひ、生で食べるようにしてください。

 生活習慣のちょっとした工夫で、病気は改善されます。薬や手術では、効果があっても微々たるもので、生活習慣を改善した方が、その1・5倍もの効果があります。50%も違うということですから、これに匹敵するような医療行為は他にありません。

 人間の身体は、余計な手を加えずとも、自然に沿った生活をすることで、健康が保たれるようにできているのです。検診大国・日本で健康に生きていくために、過剰検査・過剰医療の恐ろしさをよく理解することが大事なんです。


日本は、放射線による世界一の医療被ばく大国
(2011/10/08 風の便り)

日本は世界で最も医療被ばくが多く、それが原因でガンになる人の比率も世界一多い。(日本での発がん数に占めるエックス線検査による割合は4.4%にもなり、イギリスの七倍)

『市民科学』第 20 号(2008 年 11 月)から抜粋、編集

書評
世界で最大の医療放射線被ばく国・日本の現状への鋭い批判の書
『受ける?受けない? エックス線 CT検査 医療被ばくのリスク』
高木学校医療ばく問題研究グループ
(発行:高木学校 発売:七つ森書館、2008年)

評者:笹本征男(低線量放射線被曝研究会メンバー)

●はじめに

本書は、おそらく、日本における医療放射線被ばく問題を扱った、最初の書籍であろう。本書を一読して受けた感想は、「日本は世界で最大の医療放射線被ばくの国である」ということを発見した驚きである。

本書に寄稿している小児科医の山田真氏は、「日本には世界中のCTの四分の一があるといわれ、入院施設のないような小さな医療機関でもCTが設置されています」と指摘している。

本書では、CT(Computed Tomographyの略、コンピューター断層撮影)は、エックス線を使い、その放射線量は、「一回のCT検査で受ける線量は10~20ミリシーベルトで、公衆の年間の線量限度1ミリシーベルトを10倍以上うわ回ります」と述べている。

何度もCT検査を受けている私であっても、治療を受けている病院の放射線技師にCT検査による一回分の放射線量を聞いたのは、つい最近のことである。放射線技師は「約20ミリシーベルトです」と私に伝えた。

●『医療被ばく記録手帳』の発行と本書出版の経緯

高木学校では、『市民版 医療被ばく記録手帳』を作成した。目的は、手帳を「エックス線検査を受けるとき医師あるいは技師に示し、線量を記入してもらうことによって、医療関係者に被ばく線量とそのリスクに関心を向けてもらい、ひいては医療被ばくを少なくしたいという」ことである。

2005年11月28日付毎日新聞が、『手帳』のことを報道したことで、全国各地から『手帳』の注文と「被ばくを心配する多くの声が寄せられました」。高木学校では、「市民の立場から医療被ばく問題をどう考えるのか、この冊子を発行することに」なった。

ここで留意すべきは、「ここで考慮する放射線被ばくによるリスクは、治療のための照射は含みません」ということである。

さらに、初版の「はじめに」では、「子ども、赤ちゃん、胎児、と年齢が低くなればなるほど、そして体の中では細胞が盛んに増殖している臓器ほど、放射線の影響を受けやすく、障害が心配されます。この冊子は、感受性の高い赤ちゃんや子どもをもつおかあさん、若い方々に特に読んでいただきたい」と述べてある。

高木学校医療被ばく問題研究会グループの崎山比早子氏は、その後、好評を得て、今度の増補新版を発行することになったと「はじめに」に書いている。

以下、本書を読んで、私が特に注意を引いた問題について述べる。

●医療被ばくを問題にする理由

「今なぜ医療被ばくを問題にするのか」
日本では、これまで「本格的な医療被ばくのリスク推定が行われなかった」ことが指摘され、「医療機関からは科学的な証拠を挙げることなしに、相変わらず「危険はない」という見解が出され続けています」と述べられている。これが、現在の日本において、医療被ばくを問題にすべき理由である。

2004年、A・ベリングトンらは、「診察用エックス線によるがんリスク:イギリスとその他14カ国のための評価」を発表した。

本書には、この論文の結果を図にしてある。それによると、「1991年から6年に調べられた医療先進国15カ国の年間のエックス線検査件数で、単位人口あたりで日本が世界一多く」、日本の「エックス線検査による年間の発がん数は七五八七人」になっている。さらに、「日本のCT台数は人口当たり他の国の3.7倍であることを加味して計算すると、年間の発がん数は9905人、発がん数に占めるエックス線検査による割合は4.4%にもなり、一番少ないイギリスの七倍」になる。

ベリングトンらの論文に対して、日本国内では、専門家が盛んに批判したが、「国際的な専門誌にこれを反証する論文発表は行われていません」という。なぜ、日本の専門家は、この論文への反証を国際的に行わないのであろうか。

●患者の医療被ばく線量に限度がないということ

「患者の医療被ばく線量については限度がありません」と述べられている。そしてこのことは、「線量を管理し、責任を持つ機関がないことを意味します」。なぜ、線量の限度が決められていないのか。

「職業被ばくの場合は被ばくを伴う業務から利益を得る人と、被ばくのリスクを負う人は別の人です。これとは異なり、医療被ばくの場合には被ばくにリスクが伴っても、それによって病気を発見できれば、被ばくした本人が利益を得ることになります」という。このことも、私には新しい発見であった。

医療の現場における放射線業務従事者の中の医療従事者についても、驚くべき事実が紹介されている。医療従事者は、2004年で40万人を超えたと推定され、医療従事者の被ばくは、「職業被ばくの全線量の六〇%以上を占めているといわれています。にもかかわらず、放射線を扱う医療従事者は、その人数も被ばく線量も正確には把握されていません」

●低線量なら心配ない?

低線量なら心配ない? 小学生時代からの教育
学校における「総合的学習の時間」や「エネルギー教育」の授業における放射線教育は、「日本原子力文化振興財団、NPO法人放射線教育フォーラム、エネルギー環境教育情報センター、自治体や電力会社が大きな役割を果たしています

これらの財団などの広報活動の資金は、文部科学省や経済産業省エネルギー庁などからの国家予算である。そして、学校における放射線教育は、「原子エネルギーの受容促進のためには『少しの放射線を怖がらせないこと』が必要であるという認識」の上に立って行われている、という。

人々は、このような認識に基づく教育を、小学校時代から受け続けている。
人々が、検診の時に「被ばくが心配」と言っても、「低線量ですから心配ありません」という答えが返ってくることの原因に、「低線量なら心配ない」という教育がある、ということを本書は、教えてくれる。

●医師と患者の問題ーー市民のエックス線信仰

「お医者さんもこわさを知らない?」
放射線の教科書について、「医療被ばくのリスクを理解するために必要な放射線の基礎知識を扱う教科書の少なさに驚かされます」とあり、大学における医学教育の中でも、放射線教育に割かれる時間は多くない現状が紹介されている。しかし、「このような教育環境で育った学生も、卒業し医療現場に出れば、日常的にエックス線検査をし、検査をオーダーする立場になります。放射線の単位も人体への影響もよく知らない医療従事者によって放射線診療が行われていることが多いといっても過言ではありません」。

小児科医の山田真氏が「医療被ばくに対する患者の意識」という文章を寄稿している。

戦後の日本では、「検査漬け」「薬漬け」という状態があり、「医者の側は『濃厚な医療が高度な医療である』という言説を振りまいてそのような医療を正当化してしまった」という。放射線診断についても、「レントゲンを撮ってもらえば安心」という風潮が市民の側にある。

それは医者や専門家の側が「レントゲンを撮れば何でもわかる」式の宣伝をし、“レントゲン検査による放射線被ばく” というマイナス面を情報として伝えてこなかったことによる」と山田氏は批判している。

無効なエックス線検査を有益とする言説が多量に流され市民のエックス線信仰ができあがったというのが日本の実情である

●放射線検査のリスクなど

<CT検査の危険性>
CT検査には放射線を使うことが述べられているが、放射線を使うことを知らない人が多い。「問題は被ばく線量が高いことです。胸部の単純撮影に比較すると200倍から400倍にもなります」

「すべてを考慮すると『自覚症状がない場合、CT検診によって命にかかわる疾病を早期発見し、延命できるという利益は期待できない』が結論です」

<PET検診について>
PET(陽電子放出断層撮影、Positron Emission Tomographyの略)
何の症状もない健康な人のがん検診にPETが使われるのは有害無益です

<気をつけたい妊婦と子どもの被ばく>

胎児の被ばくを可能な限り避けるために提案された「10日規則」を紹介し、この規則が緩和されている実情を紹介している。
「放射線への感受性は胎児が一番高いのです」
「胎児期の被ばくによる脳の障害と小児がん」

子どものCT検査の危険性
「子どもは大人に比べ細胞が盛んに分裂しているために放射線の傷害を受けやすい。子どもは、被ばく以降に残る人生も長いために、その間に被ばくによるがんが発症する機会も多い」という二点は、子どもに放射線検査を行う時に考慮すべき点である。

「0歳でCT検査を受けると三五歳で受けた場合よりもがん死する危険性は10倍以上になりますから、CTはできれば避けたい検査です」

「放射線をあびると…」の項では、被ばくのリスクが蓄積すること、「しきい値」はないということが国際的な常識であること、線量当たりの発がんのリスク、晩発的傷害、子孫に与える影響、大量被ばく、急性傷害、外部被ばくと内部被ばく、放射能汚染食品、原発事?の時の甲状腺がんを防ぐためのヨウ素剤の服用、ホルミス効果、について述べられている。

●無駄な被ばくを減らすための取り組み

英国における被ばく対策が成果を挙げていることを述べているが、英国の健康保険局(HPA)は、1992年から。全国患者線量データベースを作成し、五年ごとに報告している。

2001 年から2006年までの最新の報告では、全国316の病院と歯科医から報告された約30万件の線量測定記録が集計されている。健康保険局は、「各種の検査に対して基準となる線量を規定し、それからはずれている検査室があると注意を促します」

CT検査に対する英米の取り組みを日本と比較している。英国の健康保険局は、「環境放射線の医学的側面に対する委員会」の行った「健康な個人に不えるCT検査の影響についての評価報告書を公開しています」

米国では、食品医薬品局(FDA)が、「全身CT検査――あなたが知っておかなければならないこと」という冊子で、「病状のない人の検診は、それによって寿命が延びたという証拠がない。被ばくは通常のエックス線検査の数百倍にもなり、必ずリスクが伴う」という注を促している。

国立がん研究所(NCI)は、「放射線と小児CT――健康管理のためのガイド」において、「子どもの放射線被ばくで特に注意すべきことを挙げています。特記すべきは『放射線には、がんのリスクがゼロで安全であるという線量は存在しないという合意が国際的に成り立っている』ことを明記していることです」

日本の現状はどうであろうか。「厚生労働省には医療被ばくを扱う部門のありませんし、被ばく線量も把握されておらず、リスクと利益を比較した科学的検証も行われていません」

●高木学校の医療被ばくアンケート調査と被ばく低減対策

小児科医へのアンケート調査で
「子どもの親が強く要望するため不要なCT検査をせざるを得ない」

●おわりに

私は本書を読んで、あらためて、冒頭に紹介した、私が受けた驚きに戻らぜるを得ない。「世界最大の医療放射線被ばく国・日本」についてである。日本政府の厚生労働省には、医療被ばくに関する担当部署が存在しないことは、何を意味するのであろうか。

私は、厚生労働省に対して、医療放射線被ばくに関して、早急に、対策を講じることを検討するように、要望する。
■(2008年9月18日、記)

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