オーガニックカフェ・ウインドファームを開店

ウインドファームグループの始まりは、1987年の「有機農産物産直センター」の設立でした。翌1988年には無農薬コーヒーの自家焙煎を始めます。その後、生産者から直輸入するフェアトレードを広める中で、「有限会社有機コーヒー」という会社を設立しました。当時は「有機コーヒー」という言葉が一般に使用されていなかったため、「一般名詞」である「有機コーヒー」が奇跡的に社名として登記されました。有機コーヒー社は、日本で初めて有機コーヒーをフェアトレードで輸入した会社であり、日本で初めて有機認証のあるカフェインレスコーヒーを製造した会社でもあります。そんなウインドファームグループが創立35周年の年に、オーガニックカフェ(テイクアウト+イートイン)を開店しました。

有機農業とフェアトレードの普及に取り組んできたウインドファームグループが

「オーガニックカフェ・ウインドファーム」を開店した理由 

今から50年前の1972年にローマクラブが資源と地球の有限性に着目し『人類の危機リポート・成長の限界』を発表しました。その内容は、「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」 つまり、このまま地球環境の将来に配慮しない経済活動が続けば、地球の破局は避けられないという強い警鐘を鳴らすものでした。

それから20年後の1992年、ブラジルで国連環境開発会議(地球サミット)が開催され、当時12歳の少女だったセヴァン・スズキが演壇に立って「伝説のスピーチ」をしました。

「今、動物や植物たちが毎日のように絶滅していくのを、私たちは耳にします。それらは、もう永遠にもどってはこないんです。・・・こんな大変なことが、ものすごいいきおいで起こっているのに、私たち人間ときたら、まるでまだまだ余裕があるようなのんきな顔をしています。まだ子どもの私には、この危機を救うのに何をしたらいいのかはっきりわかりません。でも、あなたがた大人にも知ってほしいんです。あなたがたもよい解決法なんてもっていないっていうことを。

・・・死んだ川にどうやってサケを呼びもどすのか、あなたは知らないでしょう。絶滅した動物をどうやって生きかえらせるのか、あなたは知らないでしょう。そして、今や砂漠となってしまった場所にどうやって森をよみがえらせるのかあなたは知らないでしょう。 どうやって直すのかわからないものを、こわし続けるのはやめてください」と。

1992年、国連環境開発会議(地球サミット)で演説するセヴァン・スズキさん

伝説のスピーチから30年が経ちました。「成長の限界」の発表からは50年が過ぎました。しかし、人類は未だに地球環境を悪化させ続けています。世界の森や海や大地で「開発」という名の自然破壊がくり返され、世界の生物多様性は過去50年で68%も失われ、その結果「生物種の絶滅」が信じられない速さで進行しています。1975年の年間絶滅数は1,000種だったのが、今は年間4万種もの生物が絶滅しています。実に40倍にもなっています。

※IPBES(生物多様性に関する政府間科学政策プラットフォーム)は、「人間活動によって生物種の多くで地球規模の大絶滅が進行しており、およそ100万種が今後数十年のうちに絶滅する恐れがある」と2019年に警鐘を鳴らしている
「鉱山開発」という名の自然破壊

それに加えて、世界的な肉食の増加に伴って、牧場をつくるために森林が伐採され、さらに家畜のエサを栽培するために森を伐採しています。エサの大半は、遺伝子組み換えの大豆やトウモロコシであり、大型機械を使って農薬と化学肥料と水を大量に使用して栽培しています。このような「工業的な畜産」や「工業的な農業」の拡大が生物多様性の減少と生物種の絶滅を加速させるだけでなく、温暖化ガスの吸収源をも減少させています。

森林が二酸化炭素の吸収に役立っていることはよく知られていますが、森の樹木が吸収するCO2以上に森の土壌が吸収しているCO2の方が5倍も多いことは、あまり知られていません。このことは、森の土壌だけでなく農地の土壌でも同様です。植物の根の周辺に共生する「菌根菌」と呼ばれる微生物がいますが、植物が生えると植物は根を伸ばして液化した炭素を土中に溢れさせて菌根菌に栄養を届けます。代わりに、菌根菌は根よりも多くのミネラルや栄養や水分を集めて植物の生育を支えています。

この植物と微生物群との共生関係によって炭素が微生物に与えられ、植物もよく育つことができるのですが、「工業的な農業」は農薬と化学肥料の大量使用によって、その重要な微生物を殺してしまいます。その結果、温暖化を加速させているのです。

近年、気候危機が進行する中で、こうした土壌微生物の重要性が国際的な研究で明らかになり、有機農業や森林農法の重要性が増しています。

森林農法の模式図
メキシコのトセパン協同組合が熱心に広めているアグロフォレストリー(森林農法/森林農業)

【今の私たちにできることから始める】

そうした状況の中で、「私たちにできることは何か?」を考えてきました。

有機農業と森林農法、そしてフェアトレードの普及に取り組んできたウインドファームは、創業35年の経験を生かして気候変動や生物種の絶滅が加速している現状を少しでも良くしていくために、(有)有機コーヒー(株)セカエルと協力して、環境団体や有機農業生産者とも連携しながら新たな事業に取り組むことにしました。

【有機農業とアグロフォレストリー】

その柱になるのは、有機農業を普及させることです。農薬と化学肥料を大量に使用して単一品種の大規模栽培や遺伝子組み換え作物を生産する工業的な農業、工業的な畜産を変えていくことです。

もう一つの柱は、森を守り森を再生できるアグロフォレストリー(森林農法/森林農業)を普及させて森林破壊をくい止め、森を増やしていくことです。

具体的には、アグロフォレストリーで生産している中南米やアジア、アフリカの有機農産物を今まで以上にフェアトレードで購入して全国に流通させていくことです。

特に、ウインドファームが長年提携してきたトセパン協同組合をモデルに、自然との共存を掲げて「国策」として森林農法に取り組んでいるメキシコを応援することは、世界に森林農法を広める上で大変重要だと考えています。今後、メキシコで増えてくる有機農産物をフェアトレードで購入する量を増やしていきたいと思います。

2019年1月17日 毎日新聞

そのためには、今まで以上に理解者を増やしていく必要があります。そこで、森林農法の有機農産物を本格的に流通させていくための実験として「オーガニックカフェ」と「オーガニックキッチンカー」を連携させて展開することにしました。4月22日アースデイに北九州でカフェを開店し、福岡と東京でキッチンカーを走らせ始めています。8月には福岡市にもオーガニックカフェを開店する予定です。

これらの店舗(と一部のキッチンカー)では、森林農法で栽培されたコーヒーやカカオ、果物、スパイスなどの他に、国内の「フードフォレスト」で栽培された有機果実も販売しています。また、福岡県の有機農業生産者が栽培された野菜や米を使用したオーガニック弁当なども販売しています。有機農業と福祉の連携(農福連携)に取り組み、有機栽培の認証と有機レストラン認証の両方を取得されているオーガニックパパさんには、特別にオーガニック・ヴィーガン弁当をつくっていただいています。福岡県赤村で40年以上も有機農業に取り組み、全国的な生産者のネットワークを構築してきた鳥越ネットワークさんとは、ウインドファーム創業以来の連携が続いています。

こうした実験的なオーガニックカフェやオーガニックキッチンカーによって、一定の経営が成り立つ「オーガニック・ビジネスモデル」が確立されたときには、弊社の志に共感していただける全国の皆さんとの連携が進展するのではないかと期待しています。

連携の一例として、東京国分寺のカフェスロー(オーガニックカフェ)では、ウインドファームがソフトクリーム製造会社とコラボして開発した有機豆乳&有機ココナッツミルク&有機コーヒーなどでつくられたソフトクリームの販売がまもなく始まります。

目次

カフェで提供されるドリンクは全てオーガニック

カフェで提供されるコーヒー、スムージー、ジュースなどドリンクは全てオーガニックです。有機米粉と有機バナナ粉を生地にしたオーガニック・ヴィーガンクレープや有機野菜をふんだんに使ったオーガニック・ヴィーガン弁当、有機豆乳ソフトクリームなど全国的にもあまり見られないオーガニック&ヴィーガンの飲食を提供しているカフェです。カフェ内で、有機コーヒー生産農場での栽培方法(有機農業&森林農法)を動画で見たり、コーヒーの焙煎を店内で見学したり、お好みの生豆を選んで焙煎したてのコーヒーを購入することもできます。

【SDGs つづく未来へ】

環境や支援 考えるカフェ 無農薬コーヒー、有機野菜

 (2022年5月3日 読売新聞)

 途上国から有機栽培のコーヒーなどを適正価格で購入し、現地の人たちの自立を支援するフェアトレードに取り組んでいる水巻町の会社「ウインドファーム」が、カフェを同町猪熊にオープンした。環境保全に配慮しながら農産物の栽培を続ける現地農場の取り組みも紹介しており、代表の中村隆市さん(66)は「地球温暖化の問題や途上国支援に関心のある人に、気軽に訪れてほしい」と呼びかけている。 (柿本高志)

 店名は「オーガニックカフェ ウインドファーム」で、広さは約170平方メートル。遠賀川に架かる御牧大橋の近くにある飲食店跡を改装し、4月22日にオープンした。

 長年、ブラジルで農薬を使わないオーガニックコーヒーを生産している農場主にちなんで命名した「カルロスさんのコーヒー」や、エクアドルとメキシコの豆をブレンドした「ハチドリのひとしずく」などオリジナルのコーヒーを楽しめる。有機栽培した野菜をたっぷり使った筑紫野市の「オーガニックパパ」の弁当も販売する。

 中村さんは、途上国のコーヒー農場で多くの子どもたちが働き、大量の農薬を使うケースが多いことを知り、「有機農法を広め、子どもたちの置かれた状況を改善したい」と、1988年に無農薬コーヒーの取引を始めた。国内外でフェアトレードの大切さを訴え続けており、現在は、中南米や東南アジア各国からコーヒーや紅茶、カカオ豆なども輸入している。

 今回オープンさせたカフェの店内では、フェアトレードや有機農法など各国の取り組みを紹介する映像を流し、パネルも展示。メキシコを中心に中南米各国で広がっている森林農法も紹介している。

 この農法では、樹木や多様な果樹、トウモロコシといった農産物を植えた農場でコーヒーなどを栽培している。多くの人々が農法を通じて生活しながら働いており、荒れた農場の再生と森を育てる取り組みとして注目されている。

 カフェではこうした環境問題に関心がある大学生らもスタッフとして働いている。その一人、北九州市立大国際環境工学部3年の中牟田リラさん(20)は、地球温暖化や環境保全に関する啓発活動をする中で、中村さんと知り合い、スタッフとなった。

 中牟田さんは「自分たちが考案した有機バナナの粉を使ったクレープのメニューもある。気軽に来店して、環境問題や森林農法への関心を持ってほしい」と願っている。

 カフェの営業時間は午前11時から午後6時。月曜が定休日。今月5日までは、コーヒーやソフトクリーム、クレープなどの商品が割引価格となる。問い合せはウインドファーム本店(093・202・0081)へ。

2022年5月3日 読売新聞

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