建築ジャーナル 2021年5月号(No.1316)で紹介されました

コミュニティデザイナー山崎亮さんが、『建築ジャーナル』の連載コラム「まちの胃袋」第113回「コミュニティがつくる『まちの味』」で、弊社と「フェセグ協同組合」についてコメントをしてくださいました。


建築ジャーナル 2021年5月号「まちの胃袋」記事

建築ジャーナル 2021年5月号
まちの胃袋 第113回 コミュニティがつくる「まちの味」
文、イラスト=山崎 亮

今月のまちの味
福岡県水巻町
ウィンドファームのコーヒー豆

以前、本稿で美味しいコーヒー豆に出合ったと書いた。シンガポールにある「ナイロンコーヒーロースターズ」が焙煎した豆だ。翌年もシンガポール政府が呼んでくれたので、豆を買いに行くついでに講演もして帰国した。3年目を楽しみにしていたら、世界的なコロナ禍によって講演が中止になった。

仕方がないから国内で美味しい豆を探すことにした。各地で美味しいと言われるエスプッレソ用の豆を試したが、どれも苦味が強くてナイロンコーヒーに敵わない。「あのまろやかな味の豆は国内に存在しないのだろうか」と思っていたら、どうやらそれは豆の種類によるものではなかった。エスプッレソ用の豆はほとんどが深煎りなのだが、ナイロンコーヒーは浅煎りを使っていたのである。

「そりゃそうだよな」と思った。コーヒーが苦くて飲めない人間が、豆の種類による味の違いなど判別できるはずがない。単に浅煎りの豆が好みだったというわけだ。そんな間抜けな笑い話を、「コーヒー豆について」と題して自分のYouTubeチャンネルに公開した。

そんなYouTubeを観てくれる人がいたのである。先日、とある団体が主催する対談に出演したら、「お礼に浅煎りのコーヒー豆を送りたい」と申し出てくれた。なんと気の利いたプレゼントだろう。小躍りしながら自宅住所をお伝えした。

数週間後、自宅に豆が届いた。福岡県にあるウィンドファームという会社からだった。箱のなかには、この会社が扱うさまざまなコーヒー豆が入っていた。いずれも有機栽培、森林農法、協同組合による生産など、世界中の産地から届いた信頼できる豆だった。

なかでも目を引いたのは、真っ黒の袋に入った3種類のコーヒー豆。それぞれ「グアテマラ1」「グアテマラ2」「グアテマラ3」と書かれたマスキングテープが貼ってあるだけの袋だ。同梱された手紙によると、山崎は浅煎りが好きだというので特別に3種類の浅さで焙煎してみたという。

嬉しいじゃないか。浅煎りのなかにも深さがあるというのだ。さっそく最も浅い1を試してみた。これは浅い。というか、ほとんど煎っていない。手動のグラインダーだと豆が固すぎて取っ手が少しずつしか回らない。エスプッレソを淹れてみると、草木のような植物の香りが漂う。2は植物の香りに少し香ばしさが混ざる。そして3は完全に好みの浅煎りだ。今後はありがたく「グアテマラ3」を愛飲させていただこう。

となると1と2の使いみちを考えねばなるまい。いずれも考えうるなかで最も良い豆を使っているのだ。試しに1と同量の深煎り豆を混ぜてエスプッレソを淹れてみた。これがうまい。3の浅煎りとは少し違った香ばしさと柔らかさがある。2は少なめの深煎り豆を混ぜると絶妙な味になる。なお、この原稿は2をベースにしたエスプッレソにたっぷりの牛乳を足したカフェラテを飲みながら書いている。

これらの豆は、グアテマラの「フェセグ協同組合」が栽培したものだという。フェセグが特徴的なのは、女性の社会進出を後押ししている点だ。協同組合内に女性委員会を設置し、女性リーダーの育成に力を注いでいる。グアテマラでは女性に農地を相続させない習慣が残っているそうだが、フェセグでは生産グループの主要な役職を3名の女性が務めていたり、土地を所有してコーヒー栽培を行なう女性がいたりするそうだ。有機栽培であることなども嬉しいが、コーヒー豆を購入することで女性の活躍を少しだけ支援することができるというのも嬉しい。

南米にはかわいい動物の土偶もたくさんある。いつか当地を訪れてみたいものだ。

コミュニティデザイナー やまざき・りょう

1973年愛知県生まれ。studio-L代表。著書に『コミュニティデザイン』(学芸出版社)、『ソーシャルデザイン・アトラス』(鹿島出版会)、『コミュニティデザインの源流』(太田出版)、『縮充する日本』(PHP新書)など。本連載をまとめた『地域ごはん日記』(パイインターナショナル)も絶賛発売中

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