2014/09/05

チェルノブイリで急増した心筋梗塞が、福島でも急増している。他の病気も加えると、2年で1200人以上も死者が増えている

チェルノブイリでも福島でも、原発事故の後に心臓や血管の病気で亡くなる人(循環器系疾患)が急増し、その他の病気も増えています。福島県の急性心筋梗塞による死者は、原発事故前は2009年1355人、2010年1372人でしたが、2011年は1500人(2000年+128人)2012年は1591人(+219人)と2年間で347人も増加。さらに、結腸がんは108人増、消化器系の疾患119人増、腎不全101人増など8種類の病気も加えると(重複している可能性がある悪性新生物を除いても)原発事故の前年より1219人も死者が増加しています。

2012年福島県の死因ワーストランキング
(データは宝島から拝借 クリックすると画像が拡大できます)

チェルノブイリのように被害が拡大する前に、被ばく対策をとる必要があります。

北ウクライナの循環器系など病気増加グラフ

ベラルーシ科学アカデミーのミハイル・マリコ博士はこう言っています。「チェルノブイリの防護基準、年間1ミリシーベルトは市民の声で実現されました。核事故の歴史は関係者が事故を小さく見せようと放射線防護を軽視し、悲劇が繰り返された歴史です。チェルノブイリではソ連政府が決め、IAEAとWHOも賛同した緩い防護基準を市民が結束して事故5年後に、平常時の防護基準、年間1ミリシーベルトに見直させました。それでも遅れた分だけ悲劇が深刻になりました。フクシマでも、早急な防護基準の見直しが必要です


チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告 第2回 ウクライナは訴える (2012年9月23日 NHK ETV特集)から抜粋と補足

ウクライナ政府報告書 未来のための安全

チェルノブイリ原発事故の25年後に公表された「ウクライナ政府報告書」は、年間0.5~5ミリシーベルトの汚染地帯に住む人々に深刻な健康被害が生じていることを明らかにした。

(低線量汚染地の住民には)心臓疾患や膠原病(リウマチ性疾患)など、さまざまな病気が多発し、特に心筋梗塞や狭心症など心臓や血管の病気が増加している

(2012年4月、取材班は)汚染地帯のひとつ、原発から140キロにある人口6万5千人のコロステン市を取材した。(この地域は、年間0.5から5ミリシーベルトの被ばく線量

コロステン中央病院のガリーナ・ミハイロブナ医師「チェルノブイリ事故前はリウマチ患者は6人だったのに、2004年には22人、2011年は45人になりました」(中村注:福島では、慢性リウマチ性心疾患の死亡率が全国平均の2.53倍

この町で半世紀近く住民の健康を見続けてきた医師ザイエツさんは、事故後、目に見えて心臓病の患者が増えたことを実感してきたという。

現場の医師だけでなく、放射線医学研究所のウラジーミル・ブズノフさんも「低い線量の放射線の影響が現れていると言えるのは、心臓や血管の病気です」と循環器系の病気の多発を証言している。

(1)低い線量の放射線の影響が現れていると言えるのは
(2)心臓や血管の病気です
    (放射線医学研究所 ウラジーミル・ブズノフさん)

もう一度、同じグラフを示しますが、最も急増している循環器系の病気に心臓や血管の病気が入ります。同じ循環器系の病気を複数かかえている人や、様々な病気をあわせて抱えている人がたくさんいます。

北ウクライナの循環器系など病気増加グラフ

そして今、最も危惧されているのが、事故の後に生まれ汚染地帯で育った子どもたちです。ウクライナ政府報告書も子どもの健康悪化について多くのページを割いています。

コロステンの学校には、日本の小学校から高校に当たる子どもが通います。事故の後、生徒の健康状態が悪化。体力のない生徒が増えました。3月の健康診断では、甲状腺などの内分泌疾患が生徒の48%、脊椎が曲がっているなどの骨格の異常が22%から見つかりました。そのため全校生徒485人のうち正規の体育の授業を受けられるのは14人。他の生徒は軽い運動しかできません。

最近生徒の訴えで多いのは心臓の痛み。保健室にはそれを抑える薬が常備されています。

看護教諭:心臓の薬です。血圧を測り、脈を見ます。それで判断します。

Q:救急車を呼ぶ時はありますか?

看護教諭:多い日は1日3回呼ぶこともあります。

ウクライナ政府報告書は、汚染地帯の住民など被曝した人から生まれた32万人を調べ、健康状態を報告しています。1992年子どもの22%が健康でした。ところが2008年、それが6%に減少しました。逆に慢性疾患を持つ子どもは20%から78%に増加しました。

ウクライナ 健康な子ども 慢性疾患のある子ども グラフ

報告書で子どもの健康状態について執筆した国立放射線医学研究所のステパーノバさん。汚染地帯全域で子どもたちの病気が増え続けていることは統計的に見ても明らかだと主張しています。原発事故被災者の子どものうち病気を持つ割合は17年間で、内分泌系の疾患が11.6倍、筋骨格系が5.34倍、消化器系が5.00倍、循環器系が3.75倍に増加したと言います。


(NHK ETV特集「チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告」を12分に編集された動画) 

動画の書き起こし全文

こうしたチェルノブイリでの出来事と同様なことが福島でも起こっており、原発事故から4年目の福島で心臓病や脳血管疾患が急増、その他の病気も大幅に増えています。


福島県で急増する「死の病」の正体を追う! 
 ―セシウム汚染と「急性心筋梗塞」多発地帯の因果関係―

 (2014年08月26日 宝島)から抜粋

■甲状腺ガンだけではない? 過酷原発事故の健康被害

 東京電力・福島第一原発事故の発生から、はや3年5カ月が過ぎた。原発事故に伴い放出された放射性物質の影響ではないかとして、小さな子どもや若い福島県民の間で発生が確認されている「甲状腺ガン」が昨今、注目を集めている。だが、原発事故による健康面への影響は「ガン」だけに限られるのだろうか。

 実は、原発事故の発生を境に、福島県内で多発・急増している病気がある。厚生労働省の「人口動態統計」データを精査した結果、その事実が明らかになった。急性心筋梗塞(こうそく)──。それが、福島県で現在、急増している「死の病」の正体だ。

福島「セシウム汚染」と「急性心筋梗塞」の増加・地図
    (画像をクリックすると拡大されます)

 人口動態統計とは、人口や出生、死亡、死産、婚姻、離婚といったデータを県別、あるいは市町村別にまとめたデータである。
 【表1】と【表2】を見てほしい。これらの表は、原発事故発生以降に福島県内で増えている「死因」を、人口動態統計をもとに多い順から並べたものだ。いわば、死因別の「増加数ランキング」である。

2011年と2012年の福島県の死因ワーストランキング
     (画像をクリックすると拡大されます)

 【表1】は、原発事故が発生した2011年に増加した死因で、【表2】が事故翌年の2012年に増加した死因だ。ここで私たちが着目したのは、「循環器系」の疾患である。

 11年の【表1】を見ると、地震や津波が急増の原因と考えられる「不慮の事故」や「傷病」に続き、「循環器系の疾患」と「心疾患」が4位と5位にランクイン。10位には「心不全」も入っている(注1)。そのいずれもが、原発事故前である10年の発生数を大きく上回っていた

 それが12年になると、循環器系疾患の代表格である「急性心筋梗塞」がランキングのトップに躍り出る(【表2】)。10年と比較した場合、11年で128人増。翌12年はさらに増えて219人もの増加と、100人単位で増え続けているのである。

 ちなみに、急性心筋梗塞による死者の発生を全国規模で見た場合、年々減少する傾向にある。11年の東日本大震災および福島第一原発事故の発生以降も一貫して減り続けている。

セシウム汚染と急性心筋梗塞に「正の相関関係」が

 「人口10万人当たり●人」という言い方は、病気発生の頻度を表す物差しであり、専門的には「年齢調整死亡率」と呼ばれる(注2)。

 この死亡率を福島県内の市町村ごとに計算した上で、文部科学省による福島県内の「セシウム汚染値」の濃淡と、相関関係が見られるかどうかを調べたのである。この作業では、福島県内のセシウム汚染分布に詳しい沢野伸浩・金沢星稜大学女子短期大学部教授の全面的な協力を得ることができた。

 今回の解析では、福島第一原発事故後、高汚染のためにすべての住民が避難した原発直近の7町村(双葉町・大熊町・富岡町・楢葉町・浪江町・飯舘村・葛尾村)を、解析対象から除外した。

 年齢調整死亡率は、原発事故前年の10年のものと、事故翌年の12年のものを、それぞれ計算して求めた。こうすることによって、セシウム汚染によって数値が上がったのか否かの区別がつくからである。

 ようするに、汚染の高いところで年齢調整死亡率も同時に高くなるという「正比例の関係」が見られれば、被曝との因果関係が強く疑われる──ということになる。

セシウムと土壌汚染と急性心筋梗塞

 その解析結果が、【図1】と【図2】である。沢野教授が導き出した結論は、「セシウム137の土壌汚染密度分布と年齢調整死亡率の分布との間には、原発事故後、弱いながら統計的には有意(r = 0.36、注4)と言える正の相関関係が生じている」というものだった。

 すなわち、セシウム汚染が濃いところほど、急性心筋梗塞の年齢調整死亡率が高いという傾向(=正比例の関係)が見られたのである。

(注2)都道府県ごとに年齢構成には差があるため、死亡数を人口で除した(割り算した)通常の死亡率で単純に比較しようとすると、高齢者の多い県では高めの数値が弾き出され、若年者の多い県では逆に低めの数値となる傾向がある。そこで、年齢構成の異なる地域間でも死亡状況の比較ができるよう、年齢構成を調整した死亡率が「年齢調整死亡率」(人口10万対)なのである。この調整を加えることによって、年齢構成の相違を気にすることなく、地域同士の比較や年次ごとの比較ができるようになる。

福島県の「周辺県」でも急性心筋梗塞が「上昇」

 セシウムは体内に取り込まれた後、筋肉に集まりやすい性質があるとされる。そして心臓は、そんな筋肉(心筋)の“塊(かたまり)“のような臓器である。

 気になることは、これだけではない。この「上昇」傾向が福島県にとどまらず、福島の周辺県でも見られるのだ。

 原発事故の起きた11年に顕著な上昇が見られる県(茨城県・群馬県)や、顕著ではないにせよ上昇が見られる県(宮城県・東京区部)、そして、福島県と同様に右肩上がりで増え続けている県(山形県・栃木県・埼玉県・千葉県)もある。今後、当連載では、こうした周辺県の検証作業も同時に進めていく所存である。

取材・文 明石昇二郎(ルポルタージュ研究所)+本誌取材班
(月刊誌『宝島』2014年10月号より)

全文


ウクライナ政府(緊急事態省)報告書
『チェルノブイリ事故から25年 ”Safety for the Future”』

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