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2016/06/02

原発事故後、東日本で大人にも甲状腺がん増加

甲状腺がん多発原因は、被ばくしかない
(2016年4月24日 女性自身)

津田敏秀教授
(津田教授は「今後どんな疾病がふえるか、症例を把握することが必要」だと語る)

福島県で多発している小児甲状腺がん。依然、「被ばくによる多発だとは考えにくい」という見解を示している県の検討委員会だが、疫学者の津田敏秀氏は、「甲状腺がん(おもに乳頭がん)の外的要因は、放射線被ばくであることは、国際的にも認められており、他の原因が説明できない現状において、甲状腺がん多発の原因は、被ばくしかない」と断言する。

津田氏が、被ばくの影響を裏付けるデータとして挙げているのが、チェルノブイリ原発事故の影響を受けたベラルーシで、〈被ばくの影響を受けていない14歳以下の子ども4万7203人を対象に行った甲状腺エコー検査〉の結果だ。

「被ばくしていない地域の子どもたちには、一例も甲状腺がんが見つかっていません。チェルノブイリでも、原発事故後、今の日本と同じように10年以上にわたって、甲状腺がんの多発は、『スクリニーング効果だ、過剰診断だ』と論争が続いていました。でも、このデータが、論争に終止符を打ったんです。やっぱり被ばくの影響だ、という確証になりました」(津田氏)

また、「チェルノブイリで甲状腺がんが増えたのは、原発事故後5年目から。福島は早すぎるので被ばくの影響とは考えにくい」とする検討委員会の意見に対しても、「チェルノブイリでは、爆発的に甲状腺がんが増加したのが事故後5年目以降であって、事故の翌年からはっきりとした甲状腺がんの多発が始まっていました」と反論する。

「ぜひ、みなさんには、こうしたデータをしっかりご覧になったうえで検証してほしい」と話す。

また、津田氏は、チェルノブイリ原発事故のあと、小児甲状腺がん以上に、大人の甲状腺がんが増えたことや、その他の疾病も増えたことなどを例にあげ、「今後、どんな疾病が増えていくのか、しっかり症例を把握していく必要がある」と警鐘を鳴らしている。

取材・文/和田秀子

甲状腺がんは、子どもにも大人にも増えている
福島原発事故後に甲状腺ガン 20歳女子の悲痛な日々 
2度の手術も、リンパや肺に転移。弟2人も甲状腺にのう胞が…

(2015年9月25日号 FRIDAY)から抜粋 取材・文/明石昇二郎(ジャーナリスト)

福島原発事故後に甲状腺ガン 20歳女子の悲痛な日々(フライデー)

「小児甲状腺ガンという診断をうけたときは、『えっ!? なにそれ』という感覚でした。それまでなんの自覚症状もなかったんですから。ガンがリンパや肺にも転移し、その後2回も手術を受けることになるとは思っていませんでした」
こう明かすのは福島県中部(中通り地方)に住む、20歳の女性Aさんだ。

8月31日の福島県の発表によると、11年3月の福島第一原発事故発生当時18歳以下だった県民36万7685人のうち、甲状腺ガン、またはその疑いがあるとされた人は137人。発症率は10万人あたり37.3人で、通常の100倍近くも高い。とくに左ページ下の地図で示した「汚染17市町村」の発症率は 10万人あたり42.9人で、ガンが見つかったAさんも同地区内で悲痛な日々を過ごしている――。

福島県内「避難7町村」と「汚染17市町村」-汚染地図

東日本大震災が起きた当日は、Aさんの中学校の卒業式だった。原発事故直後の3日間は外出をひかえていたものの、その後は通常の生活を続けていたという。 「県立高校への進学が決まっていました。事故から1週間後には、制服を注文するため母と一緒にJR福島駅前にあるデパートに出かけたんです。高校入学をひ かえ た子どもたちが押しかけ、デパートは超満員。建物の外にまで行列がのび、私たちも30分ほど屋外で待たされました」(以下、ことわりのない発言はAさん)

当時は県内の空間放射線量が非常に高く、福島市内では毎時約10マイクロシーベルトを記録していた。そうした事実を知らされず、Aさんはマスクをつけずに外出していたのだ。

通い始めた大学も再発で退学

翌年の夏休み。自宅近くで行われた県の甲状状検査で、Aさんに異常が見つかる。県からは「福島県立医大で精密検査をお願いします」との通知が届く。「ノドが少し腫れていましたが、自分で気づかなかった。県立医大で2回目の精密検査を受けたときに医師から『深刻な状態だ』と告げられ、ガンであることがわかったんです。高校3年の夏休みに手術を受け、甲状腺の右半分と転移していた周囲のリンパ組織を切除しました」

だが、これで終わりではなかった。高校で美術部に所属していたAさんは「ウェブデザイナーか学芸員になりたい」という夢を持ち、卒業後、県外の芸術系大学に進学。入学後の健康診断で「血液がおかしい」との結果が出たのだ。「夏休みに帰郷し、県立医大で検査を受けると『ガンが再発している』と言われたんです。治療に専念するため、通い始めたばかりの大学も退学せざるをえませんでした。10月の再手術では、残っていた左半分の甲状腺とリンパ組織を切除。甲状腺は全摘出することになったんです。肺への転移も判明し、術後しばらくはかすれた声しか出ず、キズの痛みをこらえながらリハビリを続けていました」

生理不順にもなりホルモン剤を投与。今年4月には肺がん治療のため「アイソトープ治療」も受けた。放射性ヨウ素の入ったカプセルを飲み、転移したガン細胞を破壊するという療法だ。「カプセルを飲む2週間ほど前から食事制限があり、飲み物は水だけ。カプセルを飲んだ後も3日間の隔離生活を強いられます。 強い放射能のため周囲の人が被曝する可能性があるからです。お風呂に入るのも家族で最後。医師からは『トイレの水も2回流すように』と言われました」

Aさんは4人兄弟の長女で、弟2人も「甲状腺にのう胞がある」との診断を受けている。だが県立医大の担当医は、発病と原発事故との因果関係は「考えにくい」としか言わない。

疫学と因果推論が専門の岡山大学大学院、津田敏秀教授が解説する。「もっとも空間線量が高かった時期に、福島県では県立高校の合格発表が屋外で行われていました。生徒も線量の高さを知らされず無用な被曝をしていた。Aさんが暮らしている場所は、住民が避難していない地域で最大レベルの甲状腺ガン多発地域です。Aさんのケースも原発事故の影響である確率が非常に高い」

******* FRIDAY記事の転載は、ここまで ********

福島・見捨てられた甲状腺がん患者の怒り
(2016年4月24日 女性自身)から抜粋

3月に都内で開かれた「311甲状腺がん家族の会」発足記者会見(家族の会提供)
3月に都内で開かれた「311甲状腺がん家族の会」発足記者会見(家族の会提供)

「僕が、がんになったのは、こんな体に産んだお母さんのせいだ! 僕は、どうせ長生きできないんだから、もう放射能の話なんてしないで!」
13年の春、郡山市内に住む川向アキさん(仮名・52)は、次男の隆くん(仮名・事故当時中2)に夜通し泣きながら責められた。「だから私、隆に言ったんです。『お母さんのせいで、アンタががんになったんだったら、死ぬときは、お母さんも一緒に死ぬべ。ぜったいにアンタ一人では死なせねぇ』って」

隆くんは13年に、県が実施する甲状腺検査で、がんと診断され、14年に、福島県が検査や治療をすべて委託している福島県立医科大学附属病院(以下、県立医大)で、甲状腺の片側を切除する手術を受けた。14歳の子どもが”がん”と宣告され、病と向き合う恐怖はいかばかりか。また、見守る親の心情は……。

川向さんが、今回、本誌に胸の内を語ろうと思ったのは、治療を受けている県立医大や福島県の対応が、あまりにも患者の心を踏みにじるようなひどいものだったので、「誰かが訴えなくては」と考えたからだ。

福島県では、原発事故以降、子どもの甲状腺がんが”多発”している。福島県が、原発事故当時18歳以下だった県内の対象者約38万人(受診者は約30万人)に対して甲状腺検査を実施したところ、11年から15年12月31日までに、甲状腺がんの”悪性”ないし”悪性疑い”と診断された子どもは166人、手術の結果、隆くんのように悪性(がん)と確定した子どもは116人にものぼった。

12年ごろから、「福島県では小児甲状腺がんが多発している」と警鐘を鳴らしていた津田敏秀氏(岡山大学大学院環境生命科学研究科教授)は、「もともと小児甲状腺がんの発症率は、全国平均で年間100万人当たり約3人。ところが福島県内では、この4年間で約30万人中、がんと確定した人が116人。これは、全国平均の約30倍。あきらかな多発です」と、その深刻さを訴える。

小児甲状腺がんは、86年に起きたチェルノブイリ原発事故のあと、ロシアやウクライナ、ベラルーシなどで多発。原子力を推進するIAEA(国際原子力機関)でさえ、被ばくとの因果関係を認めざるをえなくなった唯一の病だ。

しかし、これまで国や福島県は、これほど福島で小児甲状腺がんが増えているにもかかわらず「いっせいにエコー検査したことで、将来見つかるがんを前倒しで見つけている。いわゆる”スクリーニング効果”だ」として、多発すら認めていなかった。ところが、県民健康調査(注)に対して専門家の立場から助言するためにつくられた、「県民健康調査検討委員会(以下、検討委員会)」が、3月末に発表した「中間取りまとめ」では、福島県で小児甲状線がんが”多発”していることを、ようやく正式に認める形となった。つまり、スクリーニング効果では説明がつかないほど増えてしまったというわけだ。

「息子の目の前でがん告知で、顔面蒼白に」

 この発表に先立ち、去る3月12日には、福島県の検査で、子どもが小児甲状腺がんと診断された5人の子供の家族が、「311甲状腺がん家族の会」(以下、家族の会)を発足。東京都内で記者会見を開いた。冒頭の川向さんや、記者会見に出席していた患者の親の話を聞いていると、福島県から委託されて甲状腺がんの検査や治療、分析まで一手に引き受けている、福島県立医大の対応のマズさ、ずさんさが見えてきた。
「息子の目の前で、あなたはがんですよ、と伝えられたときはものすごくショックでした。息子は顔面蒼白になって、イスにも座っていられないような状態でしたから。私自身も、目の前が真っ暗になって……。気が遠くなりましたね。息子も、その後数日間は、かなりふさぎこんでいました」

記者会見でそう話していたのは、福島県中通り地方に住む、事故当時10代だった息子の父親。がんの告知も含め、医師からの説明は、わずか10分足らず。いまや常識となっているセカンドオピニオンの説明もなかったという。

「思春期の子どもに対して、あの告知の仕方はないんじゃないかな……」父親は記者会見で、そうもらした。家族は福島から中継で、顔を隠しながらの会見だった。実際に子どもが県立医大で治療を受けている手前、表立って批判しづらいという事情もある。「子どもを人質にとられているようなものだ」と話してくれた患者の母親もいた。

今回、つらい心情を語ってくれた川向さんの場合も、告知のされ方はひどいものだった。「私たちが診察室に入ると、先生は、しばらくパソコンの画面やエコー画像を眺めて『う―ん』とうなっていたんですが、いきなり「乳頭がんですね、手術しましょう」と言われました」
川向さんの次男、隆君も顔面蒼白になり、親子共々、なにも言葉を発せなかったという。通常は行われるエコー画像を見せての詳しい病状の説明もなく、次の検査の予約をとっておきます、と告げられ、10分ほどで終了。

「病院の廊下は、二次検査を受けるために来た子どもたちでいっぱいでした。告知がわずか10分で終わってしまうのも、人手が足りないからでしょう」

通常は、病院の対応が気に入らなければ、病院を変えればすむ。しかし、福島県内には甲状腺の専門医が少ないうえ、国や福島県は、原発事故による被ばくの影響を調べるために、すべての検査データを県立医大に集約しようとしているためマンパワーが不足している。さらに、県が実施している検査の枠組みから外れると、受診しづらいという事情があるのだ。実際に、患者が一般の病院を受診しようとしても、拒否されるケースがあった。

記者が取材した別の母親は、子どもが県で受けた甲状腺検査でB判定(二次検査が必要)の通知が送られてきたので、県立医大に「二次検査はいつ受けられますか?」と問い合わせたが、「いつできるかわからない」との回答を受けた。「早く二次検査を受けて安心したい」と思った母親は、県内の別の医療機関で検査の予約をとり、子どもを連れて行くことに。しかし、検査当日に病院に行くと、医師から、「うちでは診られません。県立医大に行ってください。これからずっと医大で診てもらうようになるんだから、個人の病院で検査することはできないんです」と言って帰されたという。

結局、県立医大で二次検査を受けられたのは、B判定の通知が送られてから約半年後。その間、母親も子どもも、「がんだったら、どうしよう」と、不安な日々を過ごした。結果は、がん。リンパ節にも転移が見られた。「検査を待たされている間に、もっと進行していたら、と思うと、今考えてもおそろしい」と、母親は振り返る。病院の対応が後手にまわり、患者がおきざりにされている現実があった。

ほかに母親が疑問に思うことは、なぜ、わが子が甲状腺がんになったのかということ。「原発事故の影響で甲状腺がんになるかもしれないと言われ、実際に受けた検査でがんが見つかったんです。それが放射能のせいかどうか、知りたいのは当たり前です」と、前出の川向さんは言う。

しかし、いままで医師からきちんとした説明はない。それどころか、川向さんが主治医に「どうして、うちの子は甲状腺がんになったのでしょうか。やっぱり、放射能の影響なんでしょうか」と尋ねたら、主治医は、頭ごなしに、こう言った。「そんなのは(がんは)前々からあったんだ!」 川向さんは、それ以上聞けなくなり、「そうですか……」と、うつむくしかなかった。

過去の公害問題の過ちを繰り返そうとしている

 前出の「検討委員会」の中間取りまとめでは、(現時点で完全に影響は否定できないものの)「放射線の影響で多発しているとは考えにくい」と結論づけている。その理由として、あげている主なものが、「将来的に臨床診断されたり、死に結びついたりすることがないがんを、(いっせいに大規模に検査することで)多数診断している可能性がある」という点だ。これを”過剰診断”という。この説明に従えば、これまで手術を受けた116人の子どもたちの中には、「しなくてよい手術を受けた子どもが含まれている可能性がある」ということになる。

県立医大で甲状腺がんの手術を行っている鈴木眞一教授に尋ねてみたところ、「手術は、診療ガイドラインに沿って行っています。手術をせずに経過観察をしていたらどうなっていたかを知る術はありません」という趣旨の回答が文書で寄せられた。

だが、実際に、手術を受けた子どもや保護者は、心中穏やかではない。「家族の会」は4月12日、「ほんとうに不必要な手術が行われていたのなら、許されない」として、現在までに施行されている手術のうち、何例が必要のない手術だったのか明らかにすることや、医療過誤に詳しい専門家を集めた第三者検証機関を大至急設置し、手術の検証を行うことなどを求める要望書を、検討委員会に提出した。

「家族の会」の世話人を務める武本泰さん(郡山市在住)は、「過剰診断説が声高に叫ばれたら、検査を受けないほうがよいと思う県民が増える。そのせいで、重篤な症状に陥る患者が出てきた場合、福島県や医大は訴えられる可能性もあるのでは」と危惧する。実際に、最近では検査の受診率が低下しているのだ。

こうした現状を、福島県はどう見ているのか。担当者に問い合わせたところ、「県としては、検査を受けたい人が受けられるように案内していく。検査を受けていない人が、万が一、予後の悪い甲状腺がんになった場合は、自覚症状が出るハズ。それから受診したらいいのでは」と、無責任な回答だった。

これに対し、早くから福島県での甲状腺がん多発を警告していた前出の津田氏は、「過去の公害問題などでくり返されて来た過ちを、再び堂々とくり返そうとしている。犯罪的だ」と述べた。さらに、「すでに議論をしている時期はすぎた」として、医療体制の整備や、県民へのリスク喚起など対策を急ぐべきだと語る。

最後に川向さんはこう訴えた。「甲状腺がんは、予後がいいから大丈夫、なんていう専門家もいますが、急にしこりが大きくなったり、すでに肺転移や再発をしたりしている子もいる。盲腸じゃないんですよ、がんなんです。私たちは日々、転移や再発を心配しながら生活しているんです」

******** 女性自身の記事はここまで ********

福島 県民健康調査 甲状腺検査の結果(2015年12月31日現在)

報道ステーション古館 甲状腺「がん」「疑い」167人に

福島原発事故が発生(*)した当時、福島県にいた18歳以下の子どもに、2011年10月から甲状腺検査を始めました。その結果、甲状腺がんとがんの疑いは、合計で166人になりました。(117人が手術を受けて、1人が良性で116人が悪性と判明しています)
*今も原発事故は収束しておらず、放射性物質は環境に放出され続けています。

福島-県民健康調査 先行検査116人、本格検査51人、合計166人(2015.12.31現在)

先行検査では、スクリーニング効果(通常は、病気の症状が出てきて検査をするが、スクリーニング検査では、症状がない人も一斉に検査することで、通常よりも多くの病気が見つかること)によって、通常よりも多くの甲状腺がんが見つかっていると言われています。しかし、津田敏秀・岡山大学教授によれば、通常スクリーニング効果で現れるのは、数倍程度(10倍以下)であるため、福島の場合は「けた外れに多い」ということ、そして、スクリーニング効果は1巡目の先行検査でほとんど刈り取られている(harvest 効果)ので、2巡目の本格検査にはあまり出ないはずですが、福島の場合は本格検査でも多発しているため、スクリーニング効果で説明できなくなっています。

ここまでは、子どもたちを見てきましたが、
甲状腺がんは大人世代にも全国的に増えてきています。

甲状腺がんは子どもだけでなく、大人にも増えている

大人も含む「甲状腺がんの手術数」を原発事故前の2010年事故後の2013年を「DPC対象病院」で比較すると、九州・沖縄の甲状腺がん「手術数」の増加は 1.07倍の増加ですが、南関東では 1.52倍、北関東では 1.83倍、東北では 2.18倍、そして 福島では 2.78倍に増加しています。(福島県の2.78倍には、子どもたちのスクリーニング検査の数字は入っていないようです)

九州・沖縄 1.07倍<南関東 1.52倍<北関東 1.83倍<東北 2.18倍< 福島 2.78倍

東北地方の「甲状腺がんの手術数」は、以下のように増加してきています。
*元データ(2010年度〜2012年度 2013年度

東北地方の「甲状腺がんの手術数」-2010-2013-年次推移

2010-2013-東北の甲状腺がん-年次推移(表)

関東地方の「甲状腺がんの手術数」は、以下のように増加してきています。

2010-2013-関東の甲状腺がん-年次推移(合計なし)

東京は人口が多いので、手術数も多く目立ちます。逆に群馬は人口が少ないので目立ちにくいのですが、2010年と2013年の手術数を比較すると2.88倍に増えています。茨城も2.26倍と多く、東京は1.62倍、関東全体は1.55倍となっています。

2010-2013-関東の甲状腺がん-年次推移(表)

九州地方の「甲状腺がんの手術数」は、以下のように推移してきています。
どの県も右肩上がりではありません。

2010-2013-九州の甲状腺がん-年次推移(合計なし) (1)          
   (大分県には、甲状腺がん治療実績で全国2位の野口病院がある)

2010-2013-九州の甲状腺がん-年次推移(表)

九州、近畿、関東、東北は、それぞれ次のように推移しています。
東北と関東だけ増え続けています。

2010-2013-九州・近畿・関東・東北の甲状腺がん-年次推移(合計なし)

2010?2013-大人含む甲状腺がん-比較(東北・関東・近畿・九州)

ここまでは、甲状腺がんを見てきましたが、その他の病気も増え始めています。
特に、チェルノブイリで最も多い死亡原因になっている心臓の病気が増加しています。

チェルノブイリと同様に、心臓病も増え始めている

チェルノブイリ原発事故の後、甲状腺がんだけでなく様々な病気が増えました。(NHK ETV特集『 チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告 第2回 ウクライナは訴える 』) 特に、心臓や血管の病気(循環器系疾患)で亡くなる人が急増しました。そこで、福島の循環器系疾患を調べてみましたが、原発事故前より増加し、全国平均との差が拡大しています。

循環器系の疾患・心疾患・脳血管疾患の死亡率 福島/全国

心疾患の中でも目立つのが「急性心筋梗塞」の死亡率で、この5年間で全国平均の1.9倍から2.5倍に増えています。(全国1位) 全国平均より2.5倍も多いというのは異常なことです。

急性心筋梗塞-福島/全国 2009-2014-年次推移
*データソース(政府統計)

原発事故の前から福島に心臓病が多い理由の一つは、塩分の摂り過ぎなど「生活習慣病」もあるかもしれませんが、塩分摂取が多い東北の中でも、特に福島県の心臓病が多い理由には、放射能の問題があると思います。なぜなら、福島には原発が10基もあったことと、明らかになっている「小さな事故」だけでも沢山あるからです。しかも、日本で最初の臨界事故まで起こしています。それを29年間も隠ぺいしていました。東京電力は隠ぺいやデータの改ざんを繰り返しやってきました。そうした体質の中で、過去に10基の原発が、いつ、どれだけの放射性物質を放出しているかは分かりません。

原発は事故が起こらなくても日常的に放射性物質を放出するため、原発に近いほど病気が増えています(ドイツ政府の調査で、原発から5km圏内の小児ガンは全国平均の1.61倍、小児白血病は2.19倍) 福島にある10基の原発は、それに加えて「小さな事故」もいっぱい起こしてきたので、心臓病が増えてもおかしくないと思います。

そして、急性心筋梗塞よりも急増しているのが慢性リウマチ性心疾患です。

慢性リウマチ性心疾患 死亡率 年次推移 福島と全国

これは、慢性リウマチ性心疾患の死亡率の全国平均と福島県とを比べたものですが、福島は原発事故の翌年から急増して全国平均の約3倍も死亡率が高くなっています。(全国1位)*データソース(政府統計)

チェルノブイリでは、原発事故から5年後に「チェルノブイリ法」を制定

年間被ばく線量が5ミリシーベルト以上の地域には「移住の義務」
1~5ミリシーベルトの地域には「避難の権利」を与えて移住を促進した

チェルノブイリ法 1ミリシーベルト基準 ウクライナ汚染地図

チェルノブイリ原発事故から5年後、ウクライナでは「チェルノブイリ法」を制定して、年間被ばく線量が1~5ミリシーベルトの地域では住民に移住の権利が与えられ、移住を選んだ住民に対して国は、移住先での雇用を探し、住居も提供、引越し費用や移住によって失う財産の補償も行われました。

チェルノブイリ法:移住先での雇用と住宅提供 引っ越し費用の補償 喪失財産の補償

移住しなかった住民にも無料検診、薬の無料化、非汚染食料の配給、保養…などの補償を定めて、住民の健康と生活を守ろうとしてきました。(ベラルーシとロシアにも同様の法律ができています)

一方、事故から5年たっても「20ミリシーベルト基準」を撤回せず、20ミリ以下は安全だとして住民を汚染地に戻している日本…そうした政府の横暴に対して、「特定避難勧奨地点」に指定されていた福島県南相馬市の住民ら約530人が、「まだ安全と言えないのに国が指定を解除したのは不当」として、国に解除取り消しを求める訴訟を起こしています。

20ミリシーベルト以下 健康影響なし 福島民報

このままの政策を続けた場合、子ども世代、若者世代、そして、
これから生まれてくる未来世代が大きな健康被害を受けてしまうでしょう。
この非人道的な政府の行為を、私たちはこのまま放置していいのでしょうか。

国連人権理事会は「科学的な証拠に基づき、年間1ミリシーベルト未満に抑えるべきだ」と指摘しています。

東京新聞:甘い年間被ばく基準 遅い情報公開 健康である権利-侵害

(参考サイト)
岡山大学・津田敏秀教授 日本外国特派員協会での記者会見の動画と読み上げ原稿
福島の子ども 甲状腺がん「多発」 原発事故の影響 否定できぬ 津田敏秀・岡山大大学院教授

2016/02/09

福島の青少年の検診とお年寄りの「在宅看取り」

「放射能から子どもを守る企業と市民のネットワーク」は、この1年間で、福岡県と青森県の2つの「保養」と「まつもと子ども留学」そして、原発事故当時19歳以上の人たちにも甲状腺検診を広げる活動の資金援助をやってきました。(今月も開催されます)そうした活動のアドバイザーであり、実際の検診もしていただいている今田かおる先生(緩和ケア医、在宅支援診療所医師)の「在宅緩和ケア」のドキュメンタリー番組「Dying at Home」がNHKオンデマンドで配信されています。

Dying at Home 今田かおる先生「在宅看取り」

福島県内外でボランティアで甲状腺検診をされている様子を拝見していて、「ありがたいなぁ」という気持ちが湧いていましたが、この番組を見て、あらためて、人生の終わりの時間を自分の家で家族と共に過ごせるように「在宅医療」「在宅看取り」をされている医師の存在を心から「ありがたいなぁ」と感じました。また、かおる先生の明るく優しいお人柄の根源にも触れたような気がしました。素晴しいドキュメンタリーです。
この番組は、2月10日まで見ることができるようです。

放射能から子どもを守る企業と市民のネットワーク

2015/12/13

野坂昭如さんの遺言

「火垂るの墓」を書かれた野坂昭如さんが、亡くなる前に「この国に戦前がひたひたと迫っている」
「原発も集団的自衛権の行使も、被害を被るのはぼくらの子や孫、またその子供たちである。ぼくらには駄目なものは駄目という責任がある。今が良ければという思考停止はもう通らない」と「遺言」を残されています。

野坂昭如「原発も集団的自衛権の行使も、被害を被るのは子どもたち」

原作者・野坂昭如が語った ジブリ作品「火垂るの墓」の真実 から抜粋

野坂(原作者)自身の戦争原体験を題材に、浮浪児兄妹の餓死までの悲劇を独特の文体で描いた作品である。

幼い妹の世話は父や母のように出来ない、妹に食べさせるつもりの食糧まで自分が食べてしまい生後1年半の妹を死なせてしまったと現在でも悔やんでいるのです。

妹が自分の手の中で死んでいったこと、亡骸を自分で火葬したこと、その骨をドロップ缶に入れていたこと、この辺りのエピソードは全部実話です。

火垂るの墓:監督・脚本 高畑勲

火垂るの墓:ドロップ缶と節子の手

火垂るの墓:節子をおんぶする

ジブリの『火垂るの墓』を見ると私は、『焼き場に立つ少年』を思い出します。

焼き場に立つ少年

野坂昭如さん死去「この国に戦前がひたひたと迫る」
(2015年12月11日 東京新聞)から抜粋

 9日に心不全のため85歳で亡くなった作家で元参院議員の野坂昭如(のさかあきゆき)さんが、亡くなる直前の9日午後4時ごろ、担当する雑誌連載の最後の原稿を新潮社に送っていたことが分かった。末尾の一文は「この国に、戦前がひたひたと迫っていることは確かだろう」。「焼け跡闇市派」を自称した野坂さんは体の自由が利かない中、戦争体験者として最後まで日本人に警告を発し続けた。 

(2014年5月15日 東京新聞:「戦地に国民」へ道 解釈改憲検討)
東京新聞:「戦地に国民」へ道 解釈改憲検討

(2014年7月2日 朝日新聞:集団的自衛権 閣議決定)
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(2015年9月19日 朝日新聞号外 安保法成立 海外での武力行使に道)
朝日新聞:安保法 成立(号外)海外での武力行使に道

火垂るの墓:晴太の膝枕で眠る節子と戦時中の服装の晴太

野坂昭如さん死去 「戦後圧殺」に警鐘
(2015年12月10日 毎日新聞)から抜粋

◇野坂昭如・黒田征太郎共著「教えてください。野坂さん」(スイッチパブリッシング、2015年)より◇

人間は長いものに巻かれやすい。

長いものに巻かれていた方が楽だからだ。

つまり、自分の頭で考えなくなると戦争は近寄ってくる。

自分の頭で考えるためには、想像力を身につけなければならない。

戦争などあり得ないと思い込んでいるうちに、

気がつけば戦争に巻き込まれている。

戦争とはそんなものだ。

火垂るの墓:ドロップ缶を抱えて眠る節子

原発も集団的自衛権の行使も、被害を被るのはぼくらの子や孫、またその子供たちである。ぼくらには駄目なものは駄目という責任がある(通販生活 2014年秋冬号)から抜粋

敗戦直後から日本人は本当によくがんばったと思う・・・高度経済成長を支える柱として、原発の必要性がいわれ、うわべ民間会社、実は国の御旗のもと、原発政策は推し進められた。当初懸念されていた原発のマイナス点は、文明の利器の恩恵のもと無視され続け、小さな島国はいつの間にか原発列島と化していた。

この原発、当初から事故だらけ、さらにどの国もあまりに危険と早々に撤退した高速増殖炉に目をつけ、原子力の平和利用をたかだかとうたい、スレスレの事故を繰り返しながら、これについては隠蔽。商業用プルトニウムと軍事用のそれとは異なるという説もあるが、どちらにしても原爆の材料であることに違いはない。世界はそれを承知。日本だけ、事故だらけ、先行きの見込み立たぬまま、今なお莫大な金をかけながら維持し続けている。

2011年3月11日の東日本大震災を受けて直後の日本人は、自然の脅威にさらされ、人間が自然の中のちっぽけな存在に過ぎないことを自覚させられた。福島第一原発の事故では、原発、放射能の恐さを思い知らされた。人間がコントロール出来ないものだとよく判った。仕事を奪われ、生活を変えざるをえない、未だ避難を強いられている人たちがいる。一生戻れない人がいる。事故当初しきりに伝えられた、安全は保たれている、放射性物質の放出によって、直ちに体に異変をきたすことはないという東京電力及びお上の言葉は、希望的観測に過ぎず、もはやこれを誰も鵜呑みにしてはいない。

ぼくらは連日、数値に敏感になり、汚染水についてその現状を固唾を飲んで見つめていた。半年、一年、二年と震災から日が経つにつれ、再稼働ありきの動きが目立つ。電力の不足が経済活動の妨げになる、経済こそ大事、今後のために必要不可欠だという。

あの原発事故は、日本のエネルギーをどうするか、お上任せだった原子力発電について、国民が自ら考えるきっかけになりえた。今はどうか。福島の事故は国がどうにかすると思い込んでいる。原発列島、便利さと引き換えに増え続ける放射性廃棄物の量は限界をこえなお、ぼくらはどうにかなる、誰かが何とかしてくれると、楽観主義で過ごそうとしている。だがそれは無責任主義と同義語である。

原発について推し進めてきたお上、再稼働にしゃかりきになっているのもお上、はっきり言って原発についてほぼ素人の政治家が、今後の方針を決めるなど、土台無理なのだ。無責任もいいところ。それを見ている国民も同罪。

安倍首相は国民の命と平和な暮らしを守る責任があるといい、集団的自衛権の行使容認を決めてしまった。抑止力を強化するのだという。曖昧な抑止力ほど危ないものはない。何にしろ、一旦、力というものを持てば、使ってみたくなるのが人間。国民の生命、財産、日本の将来に関わる大事な問題を20人足らずの閣議で決める、これは暴挙といっていい。これについても世間は何やら物騒だと眉をしかめる程度。

原発も集団的自衛権の行使も、被害を被るのはぼくらの子や孫、またその子供たちである。ぼくらには駄目なものは駄目という責任がある。今が良ければという思考停止はもう通らない。日本は今、薄氷の上に佇んでいるようなもの。その足元を少しでも丈夫にして、次世代に引き渡すことが、生きている人間の本来の仕事である

火垂るの墓「これオハジキやろ、ドロップちゃうやんか」

火垂るの墓:衰弱して横たわる節子

あなたはこの、『焼き場に立つ少年』の写真を見てもまだ、戦争はしょうがないと思いますか?
(2013年5月2日 ウィンザー通信)から抜粋

報道写真家 ジョー・オダネル撮影 「焼き場に立つ少年」 
(1945年長崎の爆心地にて) 

佐世保から長崎に入った私は、小高い丘の上から下を眺めていました。
すると、白いマスクをかけた男達が目に入りました。
男達は、60センチ程の深さにえぐった穴のそばで、作業をしていました。
荷車に山積みにした死体を、石灰の燃える穴の中に、次々と入れていたのです。

10歳ぐらいの少年が、歩いてくるのが目に留まりました。
おんぶひもをたすきにかけて、幼子を背中に背負っています。
弟や妹をおんぶしたまま、広っぱで遊んでいる子供の姿は、当時の日本でよく目にする光景でした。
しかし、この少年の様子は、はっきりと違っています。
重大な目的を持ってこの焼き場にやってきたという、強い意志が感じられました。
しかも裸足です。
少年は、焼き場のふちまで来ると、硬い表情で、目を凝らして立ち尽くしています。
背中の赤ん坊は、ぐっすり眠っているのか、首を後ろにのけぞらせたままです。

焼き場に立つ少年

少年は焼き場のふちに、5分か10分、立っていたでしょうか。
白いマスクの男達がおもむろに近づき、ゆっくりとおんぶひもを解き始めました。
この時私は、背中の幼子が既に死んでいる事に、初めて気付いたのです。

焼き場に立つ少年が背負っているのは、原爆で死んだ弟

男達は、幼子の手と足を持つと、ゆっくりと葬るように、焼き場の熱い灰の上に横たえました。

まず幼い肉体が火に溶ける、ジューという音がしました。
それから、まばゆい程の炎が、さっと舞い立ちました。
真っ赤な夕日のような炎は、直立不動の少年のまだあどけない頬を、赤く照らしました。
その時です。
炎を食い入るように見つめる少年の唇に、血がにじんでいるのに気が付いたのは。

焼き場に立つ少年の歯を食いしばるその唇には、血がにじんでいた

少年が、あまりきつく噛み締めている為、唇の血は流れる事もなく、ただ少年の下唇に、赤くにじんでいました。

夕日のような炎が静まると、少年はくるりときびすを返し、沈黙のまま、焼き場を去っていきました。
(インタビュー・上田勢子)[朝日新聞創刊120周年記念写真展より抜粋]

NHKスペシャル 解かされた封印 米軍カメラマンが見たNAGASAKI Dailymotion

よっちゃん焼き場に立つ少年(毎日新聞 やっと見つけた「よっちゃん」)

2015/12/07

原発ゼロでも 温室ガス減少 再生エネ普及進む

原発ゼロ下 温室ガス減 再生エネ普及進む
(2015年11月27日 西日本新聞)から抜粋

政府は26日、2014年度の日本の温室効果ガス排出量(速報値)は13億6500万トンで前年度比3.0%減と発表した。14年度に原発は稼働しておらず、原発に頼らず排出削減できることが浮き彫りになった。

温室ガス排出量の減少は東京電力福島第1原発事故後初で、リーマン・ショックで経済活動が落ち込んだ09年度以来5年ぶり。省エネと再生エネルギーの利用が進み、発電からの二酸化炭素排出が減ったのが主な理由としている。

西日本新聞:原発ゼロ下 温室ガス減(2015年11月27日)

2015/11/28

原発ゼロへ再考を 原子力は高くつく (東京新聞・中日新聞社説)

これまで12兆円以上もの税金を投入してもトラブル続きで動かない「もんじゅ」や「核燃料再処理工場」。これらの核燃料サイクル事業には、毎年1600億円もの維持費がかかっています。その予算を再生エネルギー事業に使うべきだと東京新聞。

原発ゼロへ再考を 原子力は高くつく
(2015年11月19日 中日・東京新聞【社説】)

 きょうは原発推進の人たちにとくに読んでいただきたい。原子力発電は結局、高くつく。そろばんを弾(はじ)き直し、原発ゼロへと考え直してみませんか。

 やっぱり金食い虫でした。

 原子力規制委員会が日本原子力研究開発機構に示した、高速増殖原型炉「もんじゅ」の運営を「ほかの誰かと交代せよ」との退場勧告は、その操りにくさ、もろさ、危険さを、あらためて浮かび上がらせた。

 そして、本紙がまとめた「核燃料サイクル事業の費用一覧」(17日朝刊)からは、もんじゅを核とする核燃料サイクルという国策が、半世紀にわたって費やした血税の大きさを実感させられる。

<巨費12兆円を投じて>

 原発で使用済みの核燃料からプルトニウムを抽出(再処理)し、ウランと混ぜ合わせてつくったMOX燃料を、特殊な原子炉で繰り返し利用する。それが核燃料サイクルだ。

 その上もんじゅは、発電しながら燃料のプルトニウムを増やしてくれる。だから増殖炉。資源小国日本には準国産エネルギーをという触れ込みだった。

 それへ少なくとも12兆円以上。もんじゅの開発、再処理工場(青森県六ケ所村)建設など、核燃サイクルに費やされた事業費だ。

 国産ジェット機MRJの開発費が約1800億円、小惑星探査機「はやぶさ2」は打ち上げ費用を含めて290億円、膨らみ上がって撤回された新国立競技場の建設費が2520億円…。

 12兆円とはフィンランドの国家予算並みである。

<1日5500万円も>

 ところが、もんじゅは事故や不祥事、不手際続きで、この20年間、ほとんど稼働していない。止まったままでも一日5500万円という高い維持管理費がかかる。

 もんじゅは冷却に水ではなく、大量の液体ナトリウムを使う仕組みになっている。

 ナトリウムの融点は98度。固まらないように電熱線で常時温めておく必要がある。1700トンのナトリウム。年間の電力消費量は一般家庭約2万5000世帯分にも上り、電気代だけで月1億円にもなるという。

 発電できない原子炉が、膨大な電力を必要とするという、皮肉な存在なのである。

 もんじゅ以外の施設にも、トラブルがつきまとう。さらなる安全対策のため、再処理工場は3年先、MOX燃料工場は4年先まで、完成時期が延期になった。MOX燃料工場は5回目、再処理工場に至っては、23回目の延期である。

 研究や開発は否定しないが、事ここに至っては、もはや成否は明らかだ。これ以上お金をつぎ込むことは是とはされまい。

 核燃料サイクルが、日本の原子力政策の根幹ならば、それはコストの面からも、根本的な見直しを迫られていると言えそうだ。

 欧米で原発の新増設が進まないのは、3・11以降、原発の安全性のハードルが高くなったからである。

 対策を講ずるほど費用はかかる。原発は結局高くつく。

 風力や太陽光など再生可能エネルギーにかかる費用は普及、量産によって急速に低くなってきた。

 国際エネルギー機関(IEA)の最新の報告では、太陽光の発電コストは、5年前より6割も安くなったという。

 ドイツの脱原発政策も、哲学だけでは語れない。冷静に利益を弾いた上での大転換だ。

 原子力や輸入の化石燃料に頼り続けていくよりも、再生エネを増やした方が、将来的には電力の値段が下がり、雇用も増やすことができるという展望があるからだ。

<そろばん弾き直そう>

 核燃料サイクル事業には、毎年1600億円もの維持費がかかる。

 その予算を再エネ事業に振り向けて、エネルギー自給の新たな夢を開くべきではないか。

 電力会社は政府の強い後押しを得て、核のごみを安全に処理するあてもまだないままに、原発再稼働をひたすら急ぐ。

 金食い虫の原発にこのまま依存し続けていくことが、本当に私たち自身や子どもたちの将来、地域の利益や国益にもかなうのか。政治は、その是非を国民に問うたらいい。

 持続可能で豊かな社会へ向けて、そろばんをいま一度弾き直してみるべきだ。

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核燃料サイクルに12兆円 コスト年1600億円 国民負担続く
(2015年11月17日 東京新聞 朝刊)

 高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)が廃炉になる可能性も出てきたことを受け、本紙はもんじゅを中核に国が進めてきた核燃料サイクル事業にかかったコストを、あらためて調べた。いずれ必要になる廃炉費用も考慮し集計した結果、少なくとも12兆円が費やされ、もんじゅが稼働していない現状でも、今後も毎年1600億円ずつ増えていくことが分かった。実用化のめどのない事業に、巨額の国民負担が続く実態が浮かんだ。 (小倉貞俊)

 本紙は、事業を進めてきた経済産業、文部科学両省のほか、電力会社や関係団体、立地自治体などにコストを問い合わせ、集計した。高速炉開発が国家プロジェクトになった1966年度から本年度まで、判明しただけで計約12兆2200億円に上った。

 本紙は2012年1月にも同様の集計をし、10兆円弱との結果を得た。今回、2兆円強膨らんだ理由は、新たに廃炉・解体費などの試算額が判明し、その後にかかった運営費なども加えて精査したためだ。

 部門別にみると、最も高コストなのは、原発で出た使用済み核燃料を溶かしてプルトニウムを取り出す再処理工場(青森県六ケ所村)の7兆円強。原子力規制委員会が文科省に運営者を交代させるよう勧告したもんじゅと、関連の試験施設「RETF」の建設・運営費は計約1兆900億円だった。

 廃炉費用は少なくとも1000億円は必要になるとみられるが、冷却材に危険なナトリウムを大量に使っており、きちんと見積もられていない。核燃サイクルのコストは、電気事業連合会(電事連)が10年以上前の03年、各施設の建設、操業(40年)、解体、最終処分までの総額を約19兆円との試算をまとめた。

 しかし、もんじゅはほとんど稼働せず、再処理工場や混合酸化物燃料(MOX燃料)工場は未完成。ウラン資源を循環させるサイクルがほとんど動いていない中、本紙の集計結果からは、既に電事連の試算額の6割以上が使われた。

 今後40年操業すれば、さらに巨額のコストが必要になる。これは、核燃サイクルを続ければ、電事連がはじいた19兆円では収まらないことを示唆している。

 核燃サイクルの財源は、税金か、電気料金に上乗せされた分かの違いはあるものの、国民負担であることに変わりはない。

◆見切りつける好機

 <大島堅一・立命館大教授(環境経済学)の話> 実現の見通しが立たない核燃料サイクルに、12兆円以上が費やされてきた事実は深刻に受け止める必要がある。何も生み出さない事業に、今後も毎年1600億円ずつ消えていくのは、民間企業ではあり得ず、異常な事態といえる。(もんじゅ問題は)核燃サイクルに見切りをつける大きな好機ではないか。国民も、自分のお金が税金や電気料金の一部として、見込みのない事業に使われている現実をよく考える必要がある。

◆本紙集計

 省庁や電力事業者、団体などが取材に回答、公開している数字を集計した。放射性物質で汚れ、出費が確定している廃炉・解体費用も当事者による数字をそのまま加えたが、試算は約10年前と古く、実際にはもっと高額になるとみられる。国は使用済み核燃料の中間貯蔵施設も核燃サイクルの一環としているが、貯蔵された核燃料は再処理されない可能性もあるため、集計から除いた。自治体への交付金は、核燃サイクルを対象にしたものに限定し、一般の原発関連が含まれる可能性がある交付金は全額、集計から除いた。

巨額を投じてきた核燃料サイクル事業

45年で10兆円投入 核燃サイクル事業めどなく
(2012年1月5日 東京新聞)から抜粋

原発から出る使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」事業に、この45年間で少なくとも10兆円が投じられたことが本紙の調べで分かった。税金や電気料金として支払ったお金が、関連施設の建設費や研究費に使われてきたが、事業が軌道に乗るめどは立っていない。計画の延期を繰り返しても、国策として進めてきたことから費用が膨れ上がった。国は総費用を集計していない。

東京新聞:45年で10兆円投入 核燃サイクル事業めどなく(全文)

六ケ所村の核燃再処理工場:完成、2年延び12年に 相次ぐトラブルで /青森
(2010年9月11日 毎日新聞)から抜粋

社長「延期は最後」と表明

 日本原燃(六ケ所村)は10日、使用済み核燃料再処理工場の完成時期を、予定の10月から12年10月に延期すると発表した。2年という過去最長の延期は国が進める核燃料サイクル政策や税収を期待する地元自治体に大きく影響を与えかねない。川井吉彦社長は県民におわびした上で「延期は今回で最後との覚悟で全身全霊で取り組む」と決意を述べた。

 原燃が発表した新しい工事計画によると、11年度内をめどにガラス溶融炉の温度計追加設置工事や茨城県東海村の実規模試験施設と実機の比較検証などを進める。検証はトラブルの起きた炉とは別の系統も含めた2系統で行い、確実なデータを取れるよう「裕度を持たせた」工程にした。ガラス固化試験も11年度内中に始めたい考えで、2系統で性能を確認し、12年10月の完成を目指す。

 原燃は昨年8月、完成時期を1年2カ月延期した際、「ゆとりある」工程表を作成したが、相次ぐトラブルで計画が崩れ、来月の完成が間に合わなくなった。この間に得られた知識などを反映させた上で試験を確実に成功させたい考えで、川井社長は新工程を「不退転の覚悟で取り組む」と強調した。

国は不退転の決意で

 六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場は、全国の原発から出る使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出し、再利用する核燃料サイクル政策の中核を担う施設。2年という過去最大幅の延期は計画全体に影響を与えるだけでなく、政策に対する国民の懸念や不信を増幅しかねない。

 度重なる延期は、高レベル放射性廃液をガラス固化する試験でトラブルが相次いだのが原因だ。再処理工場の当初の完成予定は97年12月。既に10年以上が経過し、事業指定を受けてからの延期は15回にも上る。地元自治体の税収が先送りとなる一方、増え続けるのは当初予定の3倍近い建設費と「核のごみ」と指摘される使用済み核燃料だけだ。

 国内の原発からは年間約1000トンの使用済み核燃料が発生しており、11年度には工場の貯蔵プールがほぼ満杯に達する。原発敷地内での保管長期化も進んでおり、第2再処理工場用として建設中のむつ市の中間貯蔵施設(12年7月操業予定)に一部を運び込まざるを得ない状況だ。再処理工場の遅れが計画に影響するのは避けられない。海外から廃棄物の返還も進む中、最終処分地選定も前進しておらず、核燃料サイクルの課題は山積みだ。

核燃再処理工場の完成、18年度上期に 延期23回目=日本原燃
(World | 2015年 11月 16日 17:08 ロイター)から抜粋

[東京 16日 ロイター] – 日本原燃は16日、青森県六ヶ所村で工事を進めている核燃料再処理工場とウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料工場の完成時期をそれぞれ延期すると発表した。

核燃料施設の新規制基準に対応する工事によるもので、16年3月としていた再処理工場の完成は18年度上期に延ばした。再処理工場の延期は23回目。

MOX燃料工場は17年10月の完成を目指していたが、19年度上期に延期した。同工場の延期は5回目。

再処理工場の完成延期は、事故発生時の対応拠点の「緊急時対策所」、重大事故の際に必要となる水を確保する「貯水槽」をそれぞれ新設することや、配管補強工事が理由としている。

MOX燃料工場は、MOXを粉末の状態で取り扱う設備の耐震性の扱いを最も厳しい分類に変更することに加え、火災対策の強化により工事が延びるという。

延期に伴う工事費の増加は、現在詰めており未定という。六ヶ所再処理工場は、相次ぐ工事延期により、当初見込みで7600億円だった建設費が2兆2000億円に膨らんだ経緯がある。

再処理工場は、原発から発生する使用済み核燃料を化学的に処理(再処理)してウランとプルトニウムを取り出すことを目的とした施設で、MOX燃料工場は取り出したウランとプルトニウムを混ぜ合わせて燃料にする施設。

六ヶ所村の再処理工場 23回目の“完成延期”
(2015/11/16 18:26 テレ朝 news)

 核燃料サイクルが行き詰まりです。原子力委員会による高速増殖炉「もんじゅ」の勧告に続き、今度は青森県六ヶ所村の再処理工場がまたも延期となりました。

 日本原燃は、六ヶ所村で建設中の使用済み核燃料の再処理工場の完成を、来年3月の予定から2018年度上期に延期すると発表しました。実に23回目の延期です。また、MOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料工場も、2017年10月の完成予定から2019年度上期に延期となりました。原子力規制委員会の安全審査が長引くとともに、追加の安全対策工事などで時間が掛かるためとしています。今後、2つの工場合わせて2兆4000億円とされる建設費がさらに膨らむ可能性が高まっています。核燃料サイクルを巡っては、高速増殖炉のもんじゅが運営主体を変えるよう勧告を受けていて、サイクル政策は行き詰まっています。

23回目の延期 六ヶ所村の再処理工場 2016年→2018年

使用済み核燃料再処理工場の完成延期は23回目

MOX燃料工場の完成も2017年→2019年に延期

2つの工場で2兆4000億円とされる建設費がさらに膨らむ可能性が高い

核燃政策 原子力規制委が文科大臣に「もんじゅ」の運営主体を変えるよう勧告→行き詰まり

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