2022年7月22日の西日本新聞に掲載されました

有機栽培支援30年余「森を守るコーヒー」次代へ

(2022年7月22日 西日本新聞
福岡県水巻町のカフェ「ウインドファーム」には、中南米やアジアなど16カ国で有機栽培されたコーヒー豆が集まる。運営会社代表の中村隆市さん(66)が現地の人々と協力し、30年以上かけて増やしてきた?森を守るコーヒー?だ。カフェは消費者に生産過程を知ってもらう場でもあり、環境保護に取り組む若者の雇用の場でもある。

「これはメキシコのナワット族」「これはタイのカレン族」。豆を手に取る中村さんの頭には、生産者一人一人の顔が浮かぶ。
コーヒー栽培には通常、多量の農薬や化学肥料が使われる。自然環境を守るためには有機栽培が理想とはいえ、生産者にとっては容易ではない。中村さんは1980年代から生産地を巡って有機栽培を広め、適正な価格で買い支えるフェアトレードを行ってきた。
輸入した生豆は独学で磨いた技術で焙煎して国内各地のカフェに卸すほか、インターネットでも販売する。水巻町のカフェは今年4月に開店。生産者の取り組みを動画で紹介するコーナーも店内に設けた。

ゼロからの開拓

中村さんは19歳で水俣病患者と知り合ったのを機に、公害や環境問題に関心を持った。自ら農家となり、米や野菜の無農薬栽培を始めたが、思うように売れない。流通システムや消費者の意識を変える必要があると考え、福岡県内の生活協同組合に就職して有機農業の普及を推し進めた。
その間も、環境問題は世界規模で深刻化していく。
「コーヒー栽培を通じて発展途上国に有機農業を広めよう」。再び独立すると、提携できる生産者を探して南米を飛び回った。
93年、ブラジルの有機コーヒー栽培の先駆者カルロス・フランコさんと出会い、輸入販売を始める。これを起点に提携先は各国へ広がった。生産者を日本に招いて「国際有機コーヒーフォーラム」を開いたり、生産地を巡るツアーを開催したりと奔走した。

関心は高まるが

近年、環境保護への関心はこれまでになく高まる。国連の持続可能な開発目標(SDGs)を意識する企業が増え、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんの影響で取り組みに参加する若者も増えた。だが「学生時代に熱心に活動しても、卒業後に思いを生かせる仕事がない」。
中村さんはそんな若者の受け皿にと、水巻町のカフェで20?30代の8人を雇った。キッチンカー3台で移動販売も開始。8月には福岡市にも新店舗を開く。
環境保護を事業として成り立たせるのは難しく、ふすま張りをして家計を支えた時期もある。近年は原料価格の上昇に加えて急激な円安で、輸入経費は増える一方だ。来月、泣く泣く生豆の値上げに踏み切ることにした。それでも生産者からの買い取り価格は下げないと決めている。
今こそ気候変動を止めなければ後戻りできなくなる。目指すのは「格差を生む経済から、みんなを幸せにする経済へ」。そんな世界を築き、次世代に託したいと思う。(山田育代)

ウインドファームは午前11時〜午後6時。月曜定休。電話=093(482)9555。

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