「脱原発」が最安  核燃料の再処理はコスト高 

原子力委再試算 「脱原発」が最安 揺るがず
(2012年4月28日 東京新聞朝刊)

 原子力委員会の小委員会が27日に示した核燃料サイクルのコスト再試算の結果は、原発に依存し、使用済み核燃料は再処理して再利用する現行の施策は割高だと、あらためて印象づけた。

 前回の試算では、核燃料を地中に埋めて処分する直接処分のシナリオだけに、再処理事業中止に伴う費用が加算されている点などが委員会で問題視。そのため、事業中止費用の一部は除外した上で、三百年にわたる放射性廃棄物の管理も考慮した費用を算出した。

 シナリオは(1)全ての使用済み核燃料を再処理(2)全てを直接処分(3)両者の併用―の三つ。これに総発電量に占める原発の比率を、脱原発を意味する0%、現状よりやや原発依存度が低い20%、現状以上に依存度が高い35%の三つの場合を組み合わせた。

 より長期の費用をはじいたため、どの組み合わせも前回の試算より大幅に金額がアップした。

 しかし、結局は2020年までに原発をゼロにし、その時点で残っている使用済み核燃料を直接処分するパターンが最安(8.6兆~9.3兆円)との結論は揺るがなかった。

 それどころか、再処理をからめる限り、原発依存度がどの程度であってもコスト高だとより鮮明になった。前回試算の額に比べ、直接処分は1.3倍前後になったのに比べ、再処理をするシナリオはどれも2倍近くにまで膨れあがった。

 今回の試算結果は、今夏の新たなエネルギー施策の方針づくりに生かされる。


核燃料処理 再処理がらみ費用大幅増 原子力委再試算
(2012年4月27日 東京新聞夕刊)

 原子力委員会の小委員会は27日、どんな核燃料サイクル政策を採るといくらかかるのか、2030年時点までのコストを再試算した結果を公表した。20年までに原発をゼロにし、使用済み核燃料は地中に埋設する直接処分のシナリオが8.6兆~9.3兆円とコスト的に最も有利との結果は変わらなかった。再処理をからめた従来路線は、前回試算より金額が大幅に膨れあがった。

 再試算は、前回と同様に、(1)全ての使用済み核燃料を再処理(2)全てを直接処分する(3)両者の併用―の三シナリオを設定。総発電量に占める原発の比率を、脱原発を意味する0%、現状よりやや原発依存度が低い20%、現状以上に原発依存度が高い35%の場合に分け、それぞれの費用を出した。

 前回とは異なり、再処理事業中止に伴う費用は、どのシナリオでもかかるため除外。その上で、これからかかる費用を中心に総費用ベースで比較した。

 その結果、最も安上がりなのは、脱原発をし、過去に発電に使った核燃料だけを直接処分する場合の8.6~9.3兆円。最も高コストなのは、原発依存度を35%まで高め、全部再処理する場合の18兆円で、前回の試算(9.7兆円)の2倍近い額になった。

 前回の試算は、直接処分のコストを高く見積もり、委員から批判が出たため、鈴木達治郎座長が再試算を指示していた。小委は今後、国のエネルギー・環境会議に試算結果を報告する。


埋め捨てが再処理より安価 今後の原発燃料処理で新試算
(’12/4/28 中国新聞・共同通信)

 国の原子力委員会の小委員会は27日、2030年までに発生する原発の使用済み核燃料を処理するため、今後新たにかかる費用を試算し公表した。総発電量中の原発の比率を35%とすると、全燃料の再処理は18兆円、地中に埋め捨てる直接処分は13・3兆~14・1兆円。原発比率にかかわらず全量直接処分が全量再処理より安く、差は2・8兆~4・7兆円だった。

 19日に公表した試算では全量直接処分の方が1・8兆~2・1兆円高かったが、逆転した。委員から「今後の国民負担をみる場合、前回より正確だ」(松村敏弘まつむら・としひろ東京大教授)などの意見が出た。

 二つの試算を基に、原子力委は今後の核燃料サイクル政策の選択肢を5月に政府のエネルギー・環境会議に提示する。

 試算は、燃料からプルトニウムを取り出す全量再処理、全量直接処分、両者併用の三つの方法について、原発比率を35%と現状より高くする場合と、20%、20年までに0%を想定。

 前回は、廃棄物の処分を終える300年以上先までの総事業費を40年間で積み立てると想定し、そのうち10~30年にかかる費用だけを示した。30年以降に必要になる費用が含まれず、全量直接処分に青森県六ケ所村の再処理工場廃止関連費用が加算され、委員から批判が出ていた。今回は総事業費から既に支払った費用を差し引き、今後新たに必要となる費用を期限を区切らずに求めた。

 20%の場合、全量再処理は15・4兆円、全量直接処分は11・8兆~12・6兆円。0%の場合は全量直接処分が8・6兆~9・3兆円で、プルトニウムを使う原発はないため再処理ケースはない。

 また経済産業省が、原発の稼働年数を40年とし新増設しない場合、30年の原発比率は13~15%と試算したのを受け、小委員会も15%の場合を試算する方向となった。

 20年までに原発0%の場合、六ケ所再処理工場に保管中の使用済み燃料が各原発に返送され、原発の運転ができなくなるとして、不足する電力を火力発電で補うには6兆円必要との試算も公表。鈴木達治郎すずき・たつじろう座長は「あくまで参考値。全量直接処分の費用に加えるのは正しくない」としている。


工場廃止コスト上乗せ 核燃サイクルで原子力委
(’12/4/24 中国新聞・共同通信)

 核燃料サイクル政策の再検討を進めている国の原子力委員会の事務局が、使用済み燃料を再処理せず、全て地中に埋めて捨てる「全量直接処分」の費用を試算した際、再処理事業廃止に伴う関連コストを不適切に計上したため、費用が膨れ上がっていたことが24日、分かった。

 審議を進める小委員会座長は合算しないよう指示していたが、事務局が従わずに計算した。小委員会メンバーから「再処理路線を続ける結論を導き出そうと、事務局が意図的に計算をしていると受け取った」(原子力資料情報室の伴英幸ばん・ひでゆき共同代表)との声が上がっている。事務局は「数字の並べ方が悪かった。計算方法も含め検討したい」と話している。

 小委員会座長の鈴木達治郎すすぎ・たつじろう原子力委員長代理は4月12日の会合で、再処理路線の変更に伴うコストを、直接処分の費用に計上しない方針を表明。しかし、19日の会合の前日、事務局からメンバーに配られた資料では、青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場の廃止コストなど4兆7千億円を単純合算、全量直接処分の「総費用」は最大11・6兆円となり、再処理を続けた場合よりも約2兆円高くなっていた。

 座長らの指摘を受け、19日の会合では、単純合算した「11・6兆円」の数値が削除された資料が配られた。しかし、再処理工場廃止コストなどが列挙されており、前日の資料と内容的には大差なかった。

 座長の鈴木氏は「再処理工場に投資済みのコストは、再処理事業の停止、継続にかかわらず、かかる費用であるため、単純合算すべきでない」との見解を表明していた。

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