再稼働急ぐ理由「電力不足」って本当?

再稼働急ぐ理由「電力不足」って本当?
(2012年4月7日 朝日新聞)から

図:原発が動かないと関西の電気が止まる?拡大原発が動かないと関西の電気が止まる?

 「緊急安全対策にすでに取り組み、30項目の安全対策についても着手している。実施計画をとりまとめ、速やかに報告したい」。関西電力は6日、コメントを発表し、基準突破に自信を示した。

 関電は昨春以降、新たに非常用発電装置を導入したり、冷却用の海水を送る非常用のポンプを大幅に増やしたりした。さらに時間がかかる防潮堤の設置などの対策も、大まかな実施時期も公表している。

 一方、枝野経産相は6日の閣議後会見で、安全だけでなく「需給面の必要性」も原発再稼働のハードルに加えた。そもそも政権や電力業界が再稼働を急ぐのは「原発が動かなければ、夏に電力が足りなくなる」という理由だ。関電も「再稼働が夏に間に合わなければ、13.9%もの電力不足が生じる」と言ってきた。

 しかし、本当に電力は足りなくなるのか。

 関電は昨夏動いていた原発4基が止まったため、今夏は供給力が2割近い550万キロワット低下すると試算している。昨夏に最も電力需要が多かった日と同じだけ電気が使われれば、電力が不足し、停電などが起きるおそれがあるという。

 関電はこの冬もこうした心配を訴えた。関電管内では、2月ごろに10%ほど電気が不足するという関電の試算から、節電が呼びかけられた。だが、実際には電力不足は起きなかった。

 深夜に余った電力を使って水をくみ上げ、昼間に発電する揚水発電が、予想より199万キロワット増えた。電力不足の時に他の電力会社から余った電力をもらう「融通」なども50万キロワット以上増えた。家庭や企業が節電に取り組み、電力使用量も抑えられた。

 この冬、「5%の節電」が求められた九州電力管内は、寒波でピークの電力需要が予測より5%以上も増えたのに持ちこたえた。大型火力発電所が故障した日も、東京電力など6社から電気を融通してもらった。

 今夏の関電でも火力や揚水発電、融通を増やせないか。供給力に余裕がある中部電力などからもっと融通してもらえないか。企業や家庭はもっと節電に取り組めるのではないか。

 関電が示す13.9%不足の試算はこうした努力を換算していない。大飯原発が夏までに再稼働しなければならないとの関電の言い分には疑問点も少なくない。

 政府のエネルギー・環境会議は4月末にも全国の今夏の電力需給見通しを発表する予定だ。これが出ない限り、再稼働が必要かどうかもわからない。ただ、この見通しさえも、経済産業省資源エネルギー庁が電力各社から供給力と需要を聞き取ってまとめるものだ。

■九電、「電力不足」といえず

 原発再稼働を巡り、枝野幸男経済産業相は6日、節電もして電力が足りれば再稼働を進めない考えも示した。九州での電力供給はどう見込まれているのか。

 九電が当初想定した2012年度の供給力は1969万キロワット。これは保有する原発6基のうち5基が動いているという前提で計算したものだ。すべての原発が止まったままだと、夏の供給力は1562万キロワットで2割減る。

 昨年夏、最も電力需要が多かった3日間を平均した最大需要は1537万キロワット。節電の取り組みを踏まえたこの夏の需要想定はまだ固まっていないが、昨年並みの需要があるとすれば、計算上の電力供給の余裕は1.6%になる。

 九電によると、最高気温が1度上がると最大需要は約50万キロワット増えるという。ただ、供給力には他社からの電力融通分は含まれず、現時点では、関西電力のような「電力不足」という状況ではないようだ。

 一方、鹿児島県の伊藤祐一郎知事は6日の定例会見で「脱原発へとシフトしなければならないが、経済・産業への影響を考えれば一気には止められない」と、当面は原発が必要との認識も示している。

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