新潟知事「福島原発事故の検証をせずストレステストに意味あるのか」

【柏崎刈羽】ストレステスト、新潟知事「意味あるのか」
(2012年1月17日 読売新聞)

 東京電力が16日、経済産業省原子力安全・保安院に提出した柏崎刈羽原子力発電所1、7号機のストレステスト(耐性検査)の1次評価結果。新潟県の泉田知事などは「福島第一原発で起きた事故の検証をせずに、コンピューターでシミュレーションしてどういう意味があるのか」と評価しておらず、再稼働への道のりは険しいといえそうだ。

 ストレステストの結果、1号機と7号機で想定の1・29~1・47倍の揺れに耐えることができるほか、津波は想定(3・3メートル)を大幅に超える15メートルの津波が襲ったとしても原子炉や使用済み燃料プールは使用できるとし、「十分な安全は確保できた」(新井史朗副所長)と評価した。全交流電源がなくなっても12日間まで炉心の冷却機能があり、除熱機能を失っても、原子炉は約200日間耐えることができるとしている。

 ストレステストは昨年9月から始まり、原子炉が大きな揺れと高い津波に襲われたという60通りの事態を想定。原子炉などで使われている1基あたり1000個の機器がどこまで耐えられるか、コンピューターを使って調べた。

 ストレステストの結果提出を受けて、泉田知事は16日、「(ストレステストの提出は)再稼働とは関係ない。まずは福島で何があったかの検証をやってほしい」と疑問を投げかけ、柏崎刈羽原発のある柏崎市の会田洋市長も「福島の事故の検証、安全対策の結果を待ってから」と慎重な姿勢を示した。一方、品田宏夫・刈羽村長は「手順に沿って粛々と進んでいる。原発の安全性が国で科学的に確保されれば止めておく理由はない」と再稼働を容認する構えを見せた。

 県内30市町村で構成し、原発事故時の防災などを考える「市町村による原子力安全対策に関する研究会」の代表幹事の森民夫・長岡市長は「福島第一原発事故の検証が終わらない限り、再稼働につながるか判断できない」とコメントした。

規制強化と丁寧な説明を

 ストレステストの1次評価の提出は、1、7号機の再稼働へ向けて、ようやくスタートラインに立ったものだと言える。

 今後は保安院と原子力安全委員会が数か月をかけて、結果を審査し、野田首相ら関係閣僚が政治判断を下す。地元自治体はいずれかのタイミングで判断が迫られることになる。

 現在、柏崎刈羽原発で稼働中は5、6号機のみ。1、7号機が再稼働しなければ、3月下旬にも2007年の中越沖地震以来、全基が停止する可能性が高い。首都圏への電力供給への影響は大きいはずだ。全国的にも原発が次々に定期検査に入って停止すると、4月下旬には国内の全基が停止することになる。

 ストレステストについて、泉田知事や会田市長は一貫して効果に疑問を投げかけ、福島第一原発事故の検証を進めることを求めており、再稼働に向けては高いハードルが存在する。

 こうした不安を払拭するため、国は、新たに発足する原子力安全庁(仮称)での規制強化をした上で、東電とともに原発事故への抜本的な対策などを地元自治体により丁寧に説明していくことが求められている。(出川智史)
(2012年1月17日 読売新聞)

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