「冷温停止」も 「事故収束」も  国内外で、誰も信用していない

日本人も世界中の人々も「事故収束」という日本の総理大臣の宣言をほとんど信じていない。「日本政府はウソをつく」という認識が世界に広まっている。世界から信用を失うことの重大さを政府と民主党は認識していない。また、原発を推進してきた自民党もまったく反省していない。この国の政治を根本から変える必要がある。

海外メディア 冷温停止を疑問視
(12月16日 17時50分 NHK)

野田総理大臣が、「原子炉は『冷温停止状態』に達した」と述べ、事故の収束に向けた工程表の「ステップ2」を完了したことを宣言したことについて、海外のメディアは宣言の信ぴょう性を疑問視する見方や、完全な収束には相当な時間がかかるという見方を伝えています。

このうち、アメリカの新聞、「ニューヨークタイムズ」は、電子版で「専門家は『冷温停止状態』の宣言を強く疑問視している」としたうえで、「年内にステップ2を達成するという公約を果たすための、現実を無視した宣言であり、原子炉の安全性への脅威から目をそらせることがねらいだ」とする専門家の見方を伝えています。

また、イギリスのBBCは、野田総理大臣の記者会見の模様を生中継で放送し、「冷温停止は1つの節目だが、それは汚染された地域の除染や福島第一原発の廃炉といった今後の長い道のりの中の一歩にすぎない。避難を余儀なくされている人々が故郷に戻って普通の生活を始められるめどは立っていない」と伝えました。

このほか、中国国営、新華社通信の英語版は、複数の専門家の話として、「損傷した原子炉内の温度を正確に測定することはできず、原子炉がどれほど安定した状態にあるかを断定することはできない」としたうえで、「世界の人々に間違った印象を与えるおそれがあり、日本政府は、ステップ2を年内に達成するということに固執しすぎるべきではない」と伝えています。


冷温停止宣言:ドイツ通信社が速報 批判的見解も紹介
(毎日新聞 2011年12月16日 19時20分)

 【ベルリン篠田航一】東京電力福島第1原発の原子炉が冷温停止状態になったとの宣言について、ドイツのDPA通信は16日、「フクシマの原発の廃虚が制御された」と速報した。ドイツは福島第1原発事故を受け、今年6月、国内17基の全原発を22年までに順次停止する「脱原発」を決めた。

 一方でDPA通信は「燃料棒が溶融し、圧力容器を破って地上に漏れているともみられ、まだ安全な状態には程遠い。これで冷温停止を宣言するのは意図的なウソと紙一重。日本政府は国民をミスリードしている」と批判するオーストリアの専門家の見方も紹介した。


福島第一原発 「事故収束」首相が宣言
(2011年12月17日 07時09分 東京新聞)

 野田佳彦首相は十六日、政府の原子力災害対策本部の会合で、東京電力福島第一原発で原子炉を安定して冷却する「冷温停止状態」を達成し、事故収束に向けた工程表「ステップ2」が完了できたとして「事故そのものは収束に至った」と宣言した。

 三月十一日の事故発生から九カ月余り。記者会見した細野豪志原発事故担当相は、今後は住民の帰還に向けた対策に政府を挙げて取り組む方針を示した。

 しかし、今月四日には敷地内の放射能汚染水の海への流出が確認され、溶けた核燃料の状態も分からない。そんな中で早々と「事故収束」を宣言したことには、住民や専門家から批判が出ている。

 事故対応に当たってきた国と東京電力の統合対策室は十六日に解散し、新たに「政府・東京電力中長期対策会議」を設置した。近くとりまとめる中長期の工程表をもとに、三十年以上かかるとされる同原発1~4号機の廃炉に向けた作業に取り組む。周辺住民の帰還に向け、避難区域の見直しに向けた考えも示す方針。

 対策室は四月に工程表を発表。三カ月程度を目標にした「ステップ1」で、原子炉から漏れ出した汚染水を浄化して再び炉内の冷却に使う循環式冷却を実現した。続くステップ2では、原子炉内の温度を一〇〇度以下に保つとともに、放射性物質の外部への放出を抑える「冷温停止状態」の実現を目指した。

 その結果、炉心溶融を起こした1?3号機の原子炉内の温度が三〇~七〇度程度に落ち着き、安定的に冷却できる状態になった。放出が続く放射性物質による被ばく線量は、敷地の境界で年〇・一ミリシーベルトと一般人の限度の十分の一にとどまっているとされる。

 さらに、東電や経済産業省原子力安全・保安院は、東日本大震災と同規模の地震や津波に襲われても安全性が保たれると確認。国として安全が確保できたと判断したという。

 記者会見で、細野担当相は「事故収束は極めて難しいと考えていた。日本が瀬戸際でとどまった大きな日と思う」と述べた。東電の西沢俊夫社長は「福島県、社会に迷惑を掛け、深くおわびする。今後は中長期の対策にしっかり取り組む」とあらためて謝罪した。


達成強弁 実態は道半ば
(2011年12月17日 東京新聞朝刊)

 本来の「冷温停止」と似て非なる「冷温停止状態」という用語を事故収束に向けたキーワードに用い、批判を浴びてきた政府。この日は、その達成を理由に「事故収束」宣言にまで突き進んだ。

 苦しい避難生活を迫られる人たちに配慮してか、サイト(福島第一の敷地)内の出来事に限っては「収束」とし、サイト外は「収束していない」という論法を持ち出した。

 確かに福島第一の周辺は、除染もほとんど手つかずで、放射性物質を含んだがれきの中間貯蔵施設の設置も具体化しておらず、収束どころではない。

 一方、福島第一の中も、とても収束とは言えないのが現状だ。日々原発を見ている現場の作業員たちは「収束などとんでもない」と口をそろえる。

 「冷温停止状態」かどうかも怪しい。そもそも「冷温停止」は、単に原子炉が冷えているだけでなく、放射性物質を密封できて初めていえること。その定義は東電の保安規定に明記されている。

 「冷温停止状態」の定義の一つは「圧力容器底部の温度が一〇〇度以下」。それは達成したが、炉内の別の場所は今も一〇〇度を上回るところがある

 圧力容器の底が抜けて、溶けた燃料が落下しているが、実際にどんな状態なのかも分からない。最後の“壁”である建屋も損傷。地下水の流入が止まらないが、海への流出を阻む遮水壁もできていない。高濃度汚染水は、いつ外部に漏れてもおかしくない状態だ。

 実際、四日には放射性ストロンチウムを含む水が海に漏れたと判明。すると、政府の担当者は「水は関係ない」と抑制する対象ではないと言う。

 収束と言いながら、原子力緊急事態宣言は解除されない矛盾も。「収束宣言」は政治的な節目にすぎず、実態は収束への道半ばだ。 (原発事故取材班)


福島第1冷温停止宣言 再生実感程遠く、住民に諦め 
(2011年12月17日 河北新報)

 国は福島第1原発事故の収束に向けた工程表の「ステップ2」完了を宣言し、原子炉が一定の安定状態になったと発表した。しかし、原発の安全性への信頼を裏切られ、古里を追われた福島県の住民や自治体に達成感はほとんどない。近く公表される避難区域の見直しをめぐっても疑念や諦めが渦巻き、「福島の再生」を実感するにはほど遠い

 福島第1原発が立地する大熊、双葉両町から避難した住民には「もう帰れない」という諦めが広がっている。福島市の仮設住宅で暮らす双葉町の無職山下忠宏さん(82)は「放射線量が高すぎる。政府は帰れるかどうかを判断できないあいまいな表現をやめて、土地を買い上げて最終処分場にすると決断すべきだ」と語る。

 住民は事故当初から二転三転する国や東電の情報に振り回された。大熊町で畜産業を営み、会津若松市に移った志賀美代子さん(51)は「原子炉が安定状態になったと聞かされても信じられない。こんなに早く完了宣言して大丈夫なのか」と疑いの目を向ける。

 国は線量が低い地域については帰還を認める方向で、近く避難区域の見直しを進める。しかし楢葉町の農業草野邦応さん(53)は「子どもを連れては帰れない。自分が避難先のいわき市と地元を行き来することになるだろう」と家族全員の帰還を諦めている

 「病院や上下水道、商店など生活基盤の整備がなければ帰るのは難しい」と言うのは、南相馬市小高区で老舗のラーメン店を営んだ豊田英子さん(62)。「元の場所で営業再開してもお客さんが来てくれないだろう」と二の足を踏む。

 国が帰還に向けて実施する除染についても期待感は薄い。富岡町の自営業安類聖子さん(66)は「除染作業はパフォーマンスだと思う。『やったけど駄目でした』と言うためではないか。いつまでも生殺しのように待たされるのは耐えられない」と批判する。

 避難住民の間では、広大な避難区域を全て除染するのは現実的ではないという見方が一般的だ。浪江町の会社員今野悦男さん(60)は「たくさんの放射性物質がまき散らされた。地区の約8割を占める山林の除染は不可能で、無駄金を使うことになる。何十年後かに帰れても、その時は復興の気力はないだろう」と話す。

◎「根拠なき宣言早計」/地元首長、信頼性を疑問視

 事故を起こした福島第1原発1?4号機が立地し、全域が警戒区域に指定されている大熊町の渡辺利綱町長はステップ2の完了宣言について「一歩前進」とした上で、「私たちにとっての事故収束は町民が町に戻って安心して暮らせること」と強調した。

 原発は今月に入っても放射性ストロンチウムを含む汚染水が流出するトラブルが続く。渡辺町長は「トラブルにはしっかり対応してほしい」と注文を付けた。

 一部が警戒区域に当たる南相馬市の桜井勝延市長は、完了宣言の信頼性に疑問を抱く。「炉心や燃料を完全制御できていることを確信できる根拠はなく、宣言は早計ではないか」と述べた。

 「事故発生以来、国や東京電力の情報開示には不信感があり、まともに受け止められない」。浪江町の馬場有町長は警戒区域指定に伴って役場機能を移した二本松市で記者会見し、完了宣言を批判した。避難指示が解除されても帰還に消極的な町民が一定数いる実情を踏まえ、「戻らないと判断する町民への支援策も持っていたい」と話す。

 佐藤雄平知事は県庁で取材に応じ「期待感は持たせるが、完全収束までは道半ばという認識。県としては安全安心を大前提に何ができるのか見極めたい」と語った。


<冷温停止宣言>国内外の不信払拭を優先 「拙速」指摘も
(毎日新聞 12月16日21時45分)

 東京電力福島第1原発事故の収束に向けた工程表のステップ2完了を受け、野田佳彦首相は16日の記者会見で「事故そのものは収束した」と訴えた。「同原発が安全になった」ことを宣言し、政府への国内外の懸念と不信を払拭(ふっしょく)することを優先したためだ。しかし、原発の外の「三つの課題」を解決する道筋は見えていない。記者団からは「宣言は拙速」との指摘も相次いだ。

 首相は原発事故について「全ての国民、世界中の皆様に多大な迷惑をかけ申し訳ない」と改めて謝罪。「原子炉の安定状態が達成され、不安を与えてきた大きな要因が解消される」と強調した。

 しかし、依然9万人近くが事故に伴う避難生活を余儀なくされ、全国で放射性物質の検出が続く中での「事故収束宣言」は、被災地の実態とあまりにかけ離れている。首相も、宣言はあくまで工程表で政府が自ら定めた条件を満たしたに過ぎないことを認めた上で、「被災地感情として『まだ除染や賠償があるじゃないか』という気持ちがある。オフサイト(原発施設外)で事故対応が終わったわけではない」と釈明した。

 ステップ2達成の前倒しは、細野豪志原発事故担当相が9月の国際原子力機関(IAEA)年次総会で表明した。これは国内よりもむしろ国際社会に向けて、早期収束への決意を示すのが狙いだった。

 事故直後、米国が福島第1原発から半径約80キロ以内の米国人に一時退避を勧告するなど、各国は独自の対応を進めた。日本政府の対応の遅れに対する不信感が背景にあったのは明らかだ。国産食品の輸入規制や海外からの観光客の大幅減などの風評被害を一掃するためにも、ステップ2完了で、日本政府は海外からの信頼を取り戻す必要に迫られていた。

 一方、原発の外に目を向ければ、住民生活の回復に向けた課題は山積している。首相は16日の記者会見で放射性物質の除染、住民の健康管理、被害者への損害賠償の三つを重点課題に挙げた。

 特に「最大のカギ」と指摘した除染は、12年度と合わせて1兆円超の予算確保を明言。「さらに必要なら国が責任をもって予算を確保する」と語ったが、今後どこまで費用が膨らむか、有効な除染が本当にできるのかが見通せているわけではない。放射性物質への不安がぬぐえない中での避難区域の見直しに、自治体や住民から反発が出る可能性もある。【笈田直樹】


首相、原発事故「収束」宣言へ 冷温停止達成を認定
(2011年12月16日15時0分 朝日新聞)

 野田政権は16日午後、原子力災害対策本部(本部長・野田佳彦首相)を開き、東京電力福島第一原発事故収束に向けた工程表ステップ2(冷温停止状態の達成)終了を確認し、事故の収束を宣言する。「事故の収束」という踏み込んだ表現をすることで、内外に安全をアピールする狙いだ。住民帰還のめどが立たない中での収束宣言には、避難住民から反発が出そうだ。

 ステップ2の終了確認を受けて、野田首相は同日夕に記者会見する。政権が今夕公表予定の宣言文案は、事故で放射能を拡散させた原発について「冷温停止状態に達し、万一事故が発生した場合も、(原発の)敷地境界線における被曝(ひばく)線量が十分低い状態を維持することができるようになった」と認定。さらに「安定状態を達成し、事故の収束に至ったと判断される」と踏み込んだ。

 政権は「冷温停止状態」について、1?3号機の圧力容器底部を安定的に100度以下に保ち、放射性物質の拡散を抑制する――などと定義している。

 これを「事故の収束」という、より強い表現に置き換えることで、風評被害など国内外に根強い原発事故への不安を払拭(ふっしょく)したいという狙いがある。政権は今後、放射性物質の除染を進めていく方針。避難区域の縮小も行い、住民の帰還へとつなげたい考えだ。

 ただ、溶融した炉心は場所の特定すらできていない。放射性物質の大気への放出も続いている。

 政府の原子力委員会が30年以上かかると見解を示した廃炉についても、政権は「中長期的課題」と位置付け、「事故の収束」とは切り分けた。

 政権は当初、ステップ2の達成目標について来年1月中旬までと示していた。その後、細野豪志原発相が9月の国際原子力機関(IAEA)総会で、目標を前倒しし、冷温停止状態の年内実現を宣言した。

 「事故収束」に絡み、細野豪志原発相は16日午前、東京都内で開かれた「アジア原子力協力フォーラム」閣僚級会合で「今日午後には冷温停止状態を報告することができる。オンサイト(原発敷地内)の事故は収束になる」とあいさつした。


「事故収束」を宣言しながら、緊急時の20ミリシーベルトを1ミリシーベルトに戻さない政府。そして、安全な場所での教育を求める 子どもたちの願いを 「却下」する裁判所 海外でも国内でも信頼を失っている行政、そして、司法

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