ウクライナ「年間1ミリシーベルト以下」 山下教授「100ミリまで安全」

ウクライナでの事故への法的取り組み から抜粋

オレグ・ナスビット,*今中哲二
ウクライナ科学アカデミー・水圏生物学研究所(ウクライナ)
*京都大学原子炉実験所

チェルノブイリ事故に関する基本法

基本概念

チェルノブイリ原発事故がもたらした問題に関するウクライナの法制度の記述は,まず基本概念文書「チェルノブイリ原発事故によって放射能に汚染されたウクライナSSR(ソビエト社会主義共和国)の領域での人々の生活に関する概念」の引用から始めるのが適切であろう.この短い文書は,チェルノブイリ事故が人々の健康にもたらす影響を軽減するための基本概念として,1991年2月27日,ウクライナSSR最高会議によって採択された.

この概念の基本目標はつぎのようなものである.すなわち,最も影響をうけやすい人々,つまり1986年に生まれた子供たちに対するチェルノブイリ事故による被曝量を,どのような環境のもとでも年間1ミリシーベルト以下に,言い換えれば一生の被曝量を70ミリシーベルト以下に抑える,というものである.

基本概念文書によると,「放射能汚染地域の現状は,人々への健康影響を軽減するためにとられている対策の有効性が小さいことを示している.」それゆえ,「これらの汚染地域から人々を移住させることが最も重要である.」

 基本概念では,(個々人の被曝量が決定されるまでは)土壌の汚染レベルが移住を決定するための暫定指標として採用されている.一度に大量の住民を移住させることは不可能なので,基本概念では,つぎのような“順次移住の原則”が採用されている.

第1ステージ(強制・義務的移住の実施):セシウム137の土壌汚染レベルが555kBq/m2以上,ストロンチウム90が111kBq/m2以上,またはプルトニウムが3.7kBq/m2以上の地域.住民の被曝量は年間5ミリシーベルトを越えると想定され,健康にとって危険である.

第2ステージ(希望移住の実施):セシウム137の汚染レベルが185~555kBq/m2,ストロンチウム90が5.55~111kBq/m2,またはプルトニウムが0.37~3.7kBq/m2の地域.年間被曝量は1ミリシーベルトを越えると想定され,健康にとって危険である.

 さらに,汚染地域で“クリーン”な作物の栽培が可能かどうかに関連して,移住に関する他の指標もいくつか定められている.

 基本概念の重要な記述の1つは,「チェルノブイリ事故後,放射線被曝と同時に,放射線以外の要因も加わった複合的な影響が生じている.この複合効果は,低レベル被曝にともなう人々の健康悪化を,とくに子供たちに対し,増幅させる.こうした条件下では,放射能汚染対策を決定するにあたって複合効果がその重要な指標となる.」

 セシウム137汚染レベルが185kBq/m2以下,ストロンチウム90が5.55kBq/m2以下,プルトニウムが0.37kBq/m2以下の地域では,厳重な放射能汚染対策が実施され,事故にともなう被曝量が年間1ミリシーベルト以下という条件で居住が認められる.この条件が充たされなければ,住民に“クリーン”地域への移住の権利が認められる.

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山下俊一教授の発言
速報版 特集号『放射能』について 正しく理解しましょう(3月発行)
「(毎時)10マイクロシーベルトや50マイクロシーベルトでは、細胞は傷つきません」「チェルノブイリ周辺で、セシウムを含む食品を食べ続けた人の数は数百万にも上りますが、健康被害は出ていません」

※「山下俊一氏の発言」 と 「国際共同研究報告書」の違い
※「チェルノブイリ・百万人の犠牲者」(動画と書き起こし)

福島市の広報紙「市政だより」4/21
福島県放射線健康リスク管理アドバイザー山下俊一先生
「健康リスクが出るといわれているのは100ミリシーベルト」
「100ミリシーベルトまでは幼児も妊婦も大丈夫」

山下教授が発言を訂正「100マイクロSVは、10マイクロSVの誤り」
(※毎時10マイクロシーベルトでも年間87.6ミリシーベルトになる)

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内部被ばくに警鐘 クリス・バズビー博士インタビュー

内部被ばくや低量被ばくについて長年、研究を重ねて来た欧州放射線リスク委員会(ECRR)の技術議長クリス・バズビー氏への「OurPlanetTV」単独インタビュー(8月4日Usteream 配信 動画)から抜粋

Q,今回の来日の背景には、子どもたちの安全と健康がないがしろにされていて、福島の子どもたちの疎開を求める声があります。しかし、日本政府は被ばくレベルを引き上げ、外で遊んでも安全だと言っています。避難についてまったく検討していませんが、福島の現状をどのようにお考えですか?

日本政府は犯罪的に誤っていると感じています。子どもたちですら汚染の高い地域から避難させていないのですから。政府は個人が集まった組織です。そして、組織の個々人が決定します。誤った決定なのに、それに従って行動するようなことが、過去には戦争犯罪などで同じようなことがありました。第二次世界大戦では、ヒトラーが政府として多くのユダヤ人を強制収容所のガス室に送りました。

政府として行ったことですが、最終的には個人個人に責任があります。
これらは戦争犯罪です。今は平時ですが、戦争犯罪と同じと考えられます。
これらの人々は個人として責任があり、名前も指摘できるわけです。
彼らは最終的に何らかの裁判にかけられ、刑務所に入ることになると思います。

Q,日本政府はICRP(国際放射線防護委員会)のモデルを採用していますが、ICRPの勧告についてさえも違反している部分があります。博士はICRPを批判していますが、日本政府に対して、どうお考えですか。

日本政府がICRPの基準にこだわるのは、ICRPが緊急時には20ミリシーべルトまでの被ばくを許容しているからだと思われます。通常の許容上限は1ミリシーベルトです。ですが、アメリカやヨーロッパでは、1つの放射線源からの被曝は0.1ミリシーベルトに抑えるよう解釈されています。しかし、日本政府は、国民に1ミリシーベルトより高いレベルの被ばくを許容しているのです。

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規制値の再整理(5月1日 武田邦彦)から抜粋

「放射線は体に良い」、「20ミリまで大丈夫」、はては「核実験の時には今より放射線物質が多かった」など、いかがわしい話が横行しています.

まるで今まで何も検討されてこなかったというような報道が行われています。

そこで、ここで放射性物質の規制値を再整理しておきます.

この規制値は、私が勝手に決めたわけではなく、「国際勧告」と「国内法」で決まっているものです。

また、テレビで「専門家」という人が登場し、「一般人で100ミリまで良い」などと発言していますが、ここに示す値はその人達が決めたものです。

1年0.1ミリシーベルト
ICRPの国際勧告の10分の1で、ECRR(欧州放射線防護委員会)が国際的基準として求めているもの。ICRPとの差は、放射線で発生するガンについてのデータの見方が違うため(ヨーロッパの方がガンに対して厳しいので10分の1になっている).
「日本の基準値は厳しすぎる」という専門家がいるが、それは間違いで、これでわかるようにヨーロッパは現在の国際勧告の10分の1の値を求めている。まだ世界を説得出来ないので、ICRPはこの値の10倍を採用している

1年1ミリシーベルト
ICRPの国際勧告の中心をなす値で、「我慢できる限度」ということで定められている。例えば、交通事故は1年で約5000人が死亡するが、だからと言って外出を控えるということはしない。つまり、この社会は危険性がある程度あることを承知で行動をすることから決まっている。
1年1ミリシーベルトを被曝すると、1億人で5000人のガン+遺伝性異常が発生すると考えられている.これが世界の専門家のコンセンサスである。

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★「あなたはなぜ、山下教授を執拗に攻撃するのか」との声に返答しておきます。

1990年からチェルノブイリ原発事故被害者の医療支援に関わり、92年から何度もベラルーシやウクライナの病院に医療機器や薬を届けてきました。ベラルーシの放射能汚染が少ない地域に保養所(サナトリウム)をつくって、子どもたちに転地療養してもらったり、日本から寄贈した移動検診車で、広島の武市宣雄さんをはじめとする日本人医師と放射能汚染地の病院を訪問して検診活動もしてきました。そうした病院や放射能汚染地では、病気に苦しむ子どもたちをたくさん見てきましたし、子どもを亡くした親たちの嘆きもたくさん聞きました。

また、お医者さんや研究者から様々な病気が増えているという話を聞き、データの一部をもらいました。原発事故以前と比べて、ガン、糖尿病、ぜんそく、消化器系の病気、血液の病気、先天性の障害などがそれぞれ数倍に増えていました。彼らは、チェルノブイリ原発事故の影響は甲状腺ガンだけしか認めていないIAEA(国際原子力機関)やWHO(世界保健機関)に憤慨していました。

ベラルーシの地方病院で受け取ったデータ

その一部をグラフにしてみました。

放射能で汚染された地域に住み続け、汚染された食物を食べ続けた子どもたちはほとんどが何らかの病気を抱えていました。消化器官の病気やガン、糖尿病などが急増しています。

ベラルーシで聞いた言葉が今も心に残っています。「放射能というものは、その被害がすぐに現れないということ。見えない、臭わない、触れない、人間の五感で感じられないということ。そのため、放射能を軽く考えてしまって、被ばく量を多くしてしまった。放射能の本当の怖さは、数年たってから分かってくる」・・・この言葉を私たちは肝に銘じておく必要があると思います。

チェルノブイリ原発事故を経験したウクライナ政府が法律で決めた「被曝量を年間1ミリシーベルト以下」にすること。つまり、日本の原発事故以前の基準値1ミリシーベルトを超える地域の子どもたちが避難できるように政府や自治体はサポートするべきです。これは、福島県だけに限りません。

「健康リスクが出るといわれているのは100ミリシーベルト」「100ミリシーベルトまでは幼児も妊婦も大丈夫」という山下氏が、今後も福島県民の「健康リスク管理」を続ければ続けるほど、福島県の子どもの犠牲者が増えていくことでしょう。

また、今後は、外部被曝だけでなく内部被曝が大きな問題になってきます。食物や飲み物を通して日本全国に放射能が広がっていきます。行政は、少なくとも子どもたちだけには、汚染のない食べ物を食べられるように徹底した対策を立てるべきです。

「経済」より「子どもたちの命」を大事にする社会であってほしい。

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