九電会長親族の会社 多額受注 原発関連など5億6千万円

西日本新聞9月23日トップニュース
九電会長親族の会社 多額受注 原発関連など5億6千万円
05―10年 専任技術者常駐せず「施工は別業者」
県、実態調査へ

九州電力の松尾新吾会長の親族が創業した福岡市の建設会社が、建設業法が義務付ける専任技術者を2005年以降常駐させず建設業の許可要件を満たしていないのに、九電や関連会社が発注した原子力発電所などの下請け工事を同年7月から5年間に少なくとも約5億6千万円分受注していることが西日本新聞の取材で分かった。専任技術者として登録された男性は「名前を貸しただけ」と証言。国土交通省建設業課は「常勤していなければ違法で許可取り消しもあり得る」と指摘、福岡県は近く建設業法違反の疑いで調査を始める。【33面に関連記事】

松尾氏「口利きない」

複数の関係者は「創業者が九電会長の親族ということでゼネコンなどの下請けになり、実際の仕事は別の会社がした」と話した。松尾会長は22日夜の取材に「工事をとれるよう口利きしたことはない」と否定。一方で「ゼネコンに(親族の会社を)よろしくと連絡したことはある。九電会長としてではなく親族として伝えた」と述べた。

この会社が県に提出した工事経歴書や民間信用調査会社の調査報告書によると、1992年に現在取締役を務める男性(51)が創業した。本社は賃貸マンションの一室で従業員は4人。特定の大手ゼネコン(東京)などから九電関連の土木や原発構造物建設などの工事を下請け受注し、建築以外を含めた05~10年の受注総額は約13億7千万円。調査会社は「工事能力が乏しいもようで外注依存率が高い」と指摘する。

県から建設業許可を得た05年から専任技術者になっている男性は「たまに仕事をもらうが常駐していない。給与をもらったことはない。設計図を描ける社員はおらず九電関連の大きな仕事ができる力はない」と話す。

関係者によると、九電の関連会社が07年に発注した「渡辺通2丁目開発計画北ビル新築工事」では元請けのゼネコンから約1億8千万の工事を請け負ったが、実際は孫請けの3社が施工した。取材に対し3社は「ゼネコン側から契約の窓口としてこの会社を使うよう指示された」と言い、ゼネコンは「個別の契約については答えられない」と回答した。

玄海原発(佐賀県玄海町)や川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の関連工事でこの会社に複数の下請け工事を発注した商社の元従業員は「創業者が九電会長の親族なので、九電から工事を得るために下請けにした。ただ工事能力はなく別の業者が施工した」と述べた。

創業者の男性は取材に対し、自分は松尾会長のいとこの子にあたるとしたが、工事受注の経緯については「九電とも松尾会長とも一切関係はない」とし、受注した仕事は「監理監督を行っており川内原発には人も入れている」とした。


【33面】
松尾氏社長時に急成長
九電会長 親族の会社
数人で受注億単位
「コネで仕事を」業者接近
から抜粋

従業員わずか数人の建設会社が、なぜ九州電力の関連工事を億単位で受注できたのか。複数の建設業者は「創業者が九電会長の親族だから」と話す。九電の松尾新吾会長は「便宜を図ったことはない」と言うが、松尾氏が九電社長に就任してから受注は急増した。

「ゼネコンとは付き合いがあるので(親族の会社を)よろしくと連絡した。頼ってきた親族を助けて何が悪いのか」。松尾氏は22日夜、本紙の取材に対し、直接ゼネコンに連絡したことを認めた。

松尾氏が社長になったのは2003年。ゼネコンへの連絡もこの前後という。松尾氏は「九電の工事に入れてくれと言ったわけじゃない」とし、親族の会社が九電関連工事を受注していることは「知らなかった」と答えた。

くだんの会社が福岡県に提出した工事経歴書によると、03年当時の建設工事の年間売り上げは約1200万円だったが、翌04年には約5倍の6400万円ほどに。その後3年間、九電関連を中心に毎年2億~4億円を売り上げた。

会社は賃貸マンションの一室。関係者によると常駐者はおらず、電話は別の所に転送される。

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