もんじゅ―運転の延期で募る疑問

もんじゅ―運転の延期で募る疑問(2009年2月2日(月)付 朝日新聞社説)
 福井県敦賀市にある高速増殖原型炉「もんじゅ」が運転を再開できないでいる。95年12月のナトリウム漏れ事故の後、13年余も止まったままだ。
 昨年、屋外の排気ダクトの腐食が見つかった。その影響で安全性を最終確認する試験が遅れ、目標だったこの2月の運転再開が難しくなった。日本原子力研究開発機構は、そう説明している。これで4度目の延期だ。
 次の再開目標は今年12月ともいわれるが、原子力機構ははっきりと時期を示していない。この際、もんじゅへの不安や疑問を見つめ直してみたい。


 なにより気になるのは、原子力機構の安全意識や品質管理体制である。
 ナトリウム漏れ事故の際、当時の動力炉・核燃料開発事業団による虚偽報告や情報隠しが厳しく批判された。その後、原子力機構は組織をあげて体質の改善に努めてきたはずだ。
 ところが、昨年、ナトリウム漏れ検出器が誤警報を出した際、自治体などに迅速に通報しなかった。排気ダクトの問題でも、補修を怠って傷口を広げた。特別保安検査をした経済産業省原子力安全・保安院からも昨年、「謙虚な姿勢がない」と厳しく批判された。
 運転を再開したとしても、また事故やトラブルの際の対応を誤れば、もんじゅの信頼は完全に失墜するだろう。そんな危機感が足りな過ぎる。
 また、これほど長く眠っていた原子力発電施設を目覚めさせようとした例は、海外にもほとんどない。長期間に及ぶ運転休止中に、設備に不具合が生まれていないかという懸念もある。
 そんな不安を抱えつつ、運転再開する必要があるのだろうか。もんじゅの存在意義にかかわる疑問さえ浮かぶ。
 高速増殖炉は消費した以上の燃料を生みだす「夢の原子炉」といわれ、原発の使用済み燃料を再処理して使う核燃料サイクルの基幹施設だ。政府は2025年ごろに実証炉をつくり、2050年ごろの実用化をめざしている。
 その前段階の性能確認施設として85年に着工したのがもんじゅである。建設に5900億円かけたのに加え、事故後は179億円で改造され、停止中のいまも年平均98億円が費やされている。運転が始まれば毎年150億?180億円が必要という。
 これほどの巨費に見合うどんな具体的な成果が期待できるのか、いま一つはっきりしない。もんじゅの周辺では新たな活断層も見つかっており、耐震性の不安もある。「国策の施設だから動かして当然だ」という姿勢ばかりでは国民の理解は得られまい。
 資源の少ない日本にとって、ウランを有効利用する高速増殖炉の意義は大きいと政府は説明してきた。しかし、もんじゅが計画通りに実用化できるのか不透明だ。高速増殖炉開発の道筋を再考し始める時期かも知れない。

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