転校理由「放射線」7割 「子どもの将来のため」苦渋の選択

転校理由「放射線」7割 福島県全域アンケート

 東京電力福島第1原発事故後、福島県から県内外に転校・転園(休退園を含む)した小中学生と幼稚園児は1万7651人に上り、うち7割超が放射線を理由に挙げていることが24日、共同通信の福島県全域を対象にしたアンケートで分かった。

 県外転校先は判明しただけでも32都道府県に及び、双葉町の住民が多い埼玉(361人)を筆頭に、東京、山形、神奈川、新潟の順で100人以上を受け入れている。

 転校・転園は県内の全小中学生と園児計約21万人(昨年5月時点)の8%。希望しているが手続きが終わっていない子どももおり、今後さらに増える見込みだ。
2011/08/24 19:03 【共同通信】


福島・夏休みに転校続々 「子どもの将来のため」母親ら苦渋の選択

 福島県内の小中学校に子供を通わせる親が、夏休みを機に転校させる動きが広がっている。仕事を持つ父親は福島に残り、別居生活を選択する世帯も多い。「放射線量の数値や評価は、専門家の間でも分かれている。子どもの将来のために後悔はしたくない」。原発事故から5カ月近くがたっても、子育てへの不安は収まらず、やむにやまれぬ思いで、ふるさとを後にする母子が相次いでいる。【安高晋】

 ◆夫は残り別居

 福島市内でも線量が高い御山地区で、小学3年の長男(9)と1歳の長女の2児を育てる女性(36)。長男が通う小学校の1学期が終わった7月下旬に、母子3人で京都府に引っ越した。公務員住宅を1年間無料で借りられ、家電や生活用品など支援も充実していることを知り、縁のない土地だったが新居に選んだ。高校教諭の夫は福島に残る。

 福島第1原発から約60キロ。安全性を疑ったことはなかった。爆発後にテレビで放射線の測定値を見て不安になり、4月末に市民団体の集まりに出席してみた。そこで、長男が通う小学校で他の地区より高い放射線量が計測されていたことを知る。県の調査なのに、それまで結果を知る機会はなかった。長女が庭の枯れ葉を口に入れていたことを思い出し、ショックを受けた。

 機器を借りて自宅内の放射線量を調べてみた。毎時0・4~0・7マイクロシーベルト。屋外で測った平常時の数値の10倍以上だ。2階の線量が高いと分かり、それ以来子どもは1階で寝かせた。自宅の庭も表土や草花を掘り起こし、土のうに入れた。緑であふれていた庭は、赤茶けた土だけになった。

 5月末ごろから、登下校時の小学校は送り迎えの車で渋滞が目立ち始める。雨が強い日には、念のため学校を休ませた。「いつになったら外で遊べるの」という長男の問いに返答できないまま、時だけが過ぎた。

 「不安をあおらないで」「冷静な対応を」。行政や学校が言う通り、長袖にマスクでの通学を続けて外出を控えれば、影響はないのかもしれない。それでも「太陽を浴びたり草花を摘んだりすることが、子どもの成長にどれだけ大切なことか」と思う。

 「『あの時は、やり過ぎだったね』と後で思ってもいい。子どもの健康には代えられない」。33年のローンが残るマイホームを離れたが、夫と離れて暮らすことには不安が消えない。福島に残る同級生の母からは「私も避難を考えたい。これからも連絡を取り合いましょう」と声を掛けられているという。

 ◆退職してでも

 原発から西へ約60キロの同県郡山市に住む早野直子さん(49)も、中学1年の長女とお盆明けに東京都品川区の雇用促進住宅に引っ越す予定だ。

 将来子どもを産む可能性がある娘の体が何より心配だった。中学2年の長男は「今の友達や部活動を大切にしたい」と夫とともに地元に残る。4人家族は2人ずつに別れて暮らす。「思春期の息子と顔を合わせないことには不安が残る」と打ち明ける。団体職員だった早野さんだが、8月中に辞職する。「これまでと同じ条件の仕事は見つからないと覚悟しており、東京ではパートの仕事を見つけて働くつもり」。見通しがつかない「疎開生活」の厳しさを心配していた。

毎日新聞 2011年8月9日 東京朝刊


福島小中生:震災後1万4000人転校 放射線不安などで

 福島県内の公立小中校に通っていた児童・生徒のうち、東日本大震災と福島第1原発事故以降に転校したか、夏休み中に転校予定の小中学生が計約1万4000人に上ることが、県教委のまとめで分かった。夏休み中に県外に転校予定の小中学生は1081人で、4分の3は放射線への不安を理由に挙げた。当初は原発から30キロ圏など避難区域からの転校例が多かったが、区域指定されていない県央部(中通り地方)からの例が多くなっているという。

 県教委によると、震災発生から7月15日までに県外へ転校した児童・生徒は7672人。県内への転校が約4500人。夏休み中に県外へ転校を予定しているのは1081人、県内への転校予定が755人。

 文部科学省によると、県内の公立小中校の児童・生徒は5月1日現在で約16万5000人だった。1割近くが転校を余儀なくされた形だ。私立学校生や就学前の幼児、高校生らを含めると「疎開」した未成年者の数はさらに増える。

 原発事故後、同県では、原発30キロ圏内の学校の多くが県内他校の校舎を借りて授業を行っている。県教委の分析では、7月15日までの転校者計約1万2000人の半数以上は、元々は原発30キロ圏内の学校に通っていた児童・生徒とみられる。今回、1学期終了に合わせて実態を調査した。調査に携わった関係者によると、夏休み中の県外転校予定者の半数以上が福島、郡山両市など中通りの学校に通学していたという。

 一方、夏休み中の県内転校予定者の約半数は「仮設住宅などへの転居」を理由に挙げた。同県相馬市に避難先から戻るケースもある。県教委は「子供の負担を考えて、区切りとなる1学期終了後の転校を決めた人が多いのでは」と推測している。【安高晋、関雄輔】

毎日新聞 2011年8月9日 2時30分

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