自分流の働き方見つめ

2007年1月5日の朝日新聞(朝刊)にクリキンディの記事が掲載されたので紹介します。
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自分流の働き方見つめ

JR行橋駅から平成筑豊鉄道で25分。英彦山から扇状に延びる山々に囲まれた赤村に、ちょっと変わった喫茶店がある。


「赤村スローカフェ クリキンディ」
有機栽培の素材を使った食事やこーひーを出し、使い捨てのおしぼりや割りばしはない。環境保護やスローライフ関連の雑貨や本も売る。一番ユニークなのが松田直子店長(30)を含めた3人の若い店員たち。彼らは水巻町に事務局を置く「スロービジネススクール」(SBS)という聞き慣れない学校の「学生」でもある。
SBSは04年5月、同町でフェアトレードのコーヒー販売会社「ウインドファーム」を営む中村隆市さん(51)の呼びかけで開校した。
チェルノブイリ原発事故の被災者支援や、環境保護運動に取り組んできた中村さんは、「今のビジネスは人や環境を破壊している」と実感。利益や効率ばかりを追求する現代の「ファスト」なビジネスに対抗し、「スロービジネス」を普及させる学校を発案した。
スロービジネスは「自然と共生して命を大切にし、人間が幸せになれる仕事」と中村さん。開校には、スローライフにあこがれながら一般企業に就職していく若者が「理想を捨てずに働ける場」を作る狙いもあった。
共感する人は多かった。1期生には全国から予想を超える約130人が応募。年齢は10代?60代と幅広く、職業も高校生から会社員、経営者、教員、フラメンコダンサーなどと多彩だった。
学費は年間3万円。試験の代わりに課題図書の感想文を書いてもらい、合否を決める。キャンパスや決まった教科書はない。インターネットによる「ウェブ講義」で、スロービジネスの基本的な考え方や実践例などを学ぶ。年に数回は合宿も行い、スローライフを提唱する文化人類学者の辻信一さんや環境保護団体の代表など学生が希望する人から話を聞く。一番の売り物は、そうして築かれる人間関係を通じた情報の収集と交換だ。その過程で自分なりの働き方を見つけて欲しい、との思いが中村さんにはある。現在、海外在住を含めた4期生までの計180人が在籍する。
「クリキンディ」の松田店長は3期生だ。大学卒業後、職を転々とした。05年秋に世界を旅する「ピースボート」でSBSを知り、昨年2月に入学した。ちょうどそのころ、SBSとウインドファームが共同で準備を進めていた「クリキンディ」の出店を手伝うことになった。
メニューを考えたり、店内の備品をリサイクルショップで探したり。開店後は飲食店でのバイト経験を買われ、いつの間にか店長に収まっていた。「料理もお店も手間のかかることばかり。でも、その分愛着がわいて楽しい」
SBSは学費を元手に中間法人をつくり、学生のアイデアをビジネスに結びつける起業支援も始めている。その代表格が「クリキンディ」など赤村で進める「ゆっくり村」構想だ。学生たちが村に住み込んで農業をし、自給自足的な生活を営みながら、カフェや農産物の販売などの事業も行うという「半農半スローライフ」を目指す。
「スロービジネスを通じて社会を少しでも良い方向に変えていきたい」と中村さん。究極の目標は、スロービジネスという言葉が必要なくなる世界が来ることだ。

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