作業員の生命を守るためにも 全国の原発を停止し、福島に集中を

これまでで最も高い、毎時1万ミリシーベルト(10シーベルト)を超える放射線が計測された。計測器の限界を超えており、どれほど高い放射線量なのかわからない。仮に、10シーベルトであっても1時間そこで作業するとほぼ全員が死亡する。福島第1原発だけに設定された「緊急被ばく限度」250ミリシーベルトも90秒で超えてしまう。

20110801 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所 小出裕章さんの話から抜粋

「(10シーベルトという数値は)想像を絶する強さです。7~10シーベルトで死亡します。猛烈な放射性物質がそこにない限りは、1時間あたり10シーベルトというような放射線量にはなりません。毎時10シーベルトの放射線量がある所で作業者の人が4ミリシーベルトしか被曝していなかったとすれば、せいぜいその場に1秒か2秒しか居られなかったということです。作業員の方の被曝が私は心配です。」

「(10シーベルトと聞いて)言葉を失いました。1シーベルトでも恐ろしい。1時間あたり1シーベルトという現場には、とても近づけないと思っていた。10シーベルトという場所は、とうてい人間が行かれるような場所ではありませんし、このままでは何の作業もできないと思います。その場所では。遠隔操作ができるのであれば、その場所にどんな物体があるのかを知りたいと思います」

・・・抜粋は以上・・・

これほどの高線量について、東電は「ベントの影響が考えられる」と説明しているが、ベントは2、3号機でも実施されいるので、この場所以外でも数値が高い可能性がある。

これまでに分かっているだけでも被ばく量が250ミリシーベルトを超えた作業員が6人もいる。事故処理作業員のこうした高線量被ばくを抑えるためにも全国の原発を止めて、ベテランの原発作業員を福島の事故処理に集中させる必要がある。

関係者は証言している。「本当は『原発職人』は全国にたくさんいるはずなんですよ。でも会社が出さない。福島で働くと他で仕事ができなくなるから」


福島第1原発:計測限界の10シーベルト 作業に影響懸念(毎日新聞)

 東京電力福島第1原発1、2号機につながる配管表面から計測限界に相当する毎時10シーベルト(1万ミリシーベルト)以上の高い放射線量が計測されたことで、敷地内にまだ高線量の地点が残っている可能性が浮かび上がった。

 これほどの高線量について、東電は「ベントの影響が考えられる」と説明する。ベントは2、3号機でも実施されており、この配管以外でも、作業員の安全確保のために速やかな計測が求められる。

 一方、10シーベルトはあくまで1時間当たりの測定値だが、これまで敷地内で計測された放射線量に比べても倍以上になる。茨城県東海村の核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」の事故で死亡した作業員2人の被ばく量は6~20シーベルトだった。

 東電は現場の立ち入りを制限し、「作業への影響はない」としているが、他にも高線量の地点が相次げば作業への影響が懸念される。

 NPO法人「原子力資料情報室」の伴英幸共同代表は「事故後4カ月以上もたって確認されたのでは遅すぎる。ベントが原因ならば、原子炉格納容器内なども極めて高濃度の放射性物質に汚染されている可能性が高い。今後、必要となった場合の格納容器の補修などがかなり難しくなるのでは」と指摘する。【奥山智己、河内敏康】

毎日新聞 2011年8月1日 23時41分(最終更新 8月2日 0時36分)


検証・大震災:福島第1原発事故、収束作業 覚悟の苦闘、黙々と続く
(毎日新聞 2011年7月25日 東京朝刊)から抜粋

 かつてない事故の収束に向け苦闘が続く東京電力福島第1原発。労働現場で何が起き、作業員は日々どんな思いで臨んでいるのか。

 ◆3・14~15 放射線量上限「超緊急」引き上げ

 ◇労働者は使い捨ての機械ではない

 そのころ東京・霞が関では、緊急作業時の被ばく線量の上限値(当時100ミリシーベルト)引き上げを巡り、関係法令を所管する経済産業省原子力安全・保安院と厚生労働省の間で激しいやりとりがあった。

 14日午後、厚労省の金子順一労働基準局長に官邸から電話が入った。

 「福島第1原発の状況が厳しい。今の緊急作業の現場からすると、100ミリシーベルトでは(作業が)難しいという話がある。関係省庁で話をして急いで結論を出してほしい」。加えて「国際放射線防護委員会(ICRP)の国際基準では、緊急作業の場合には条件付きながら500ミリシーベルトまでは許容される」とも伝えられた。

 事故収束を優先させたい原子力安全・保安院に対し、厚労省の高崎真一計画課長は「労働者は使い捨ての機械ではない。死にに行け、とは言えない」との思いで臨んだ。そのさなか、金子局長の元へ1人の女性課長が訪れ、こう報告した。「小さな子を抱えた人たちが東京駅から西の方へ続々と出発しています」。事故対応は急を要していた。

 医師でもある厚労省の鈴木幸雄労働衛生課長が文献を調べると、年間100ミリシーベルトを超えると慢性的影響は否定できないが、250ミリシーベルトまでなら急性症状の報告はなかった。

 金子局長は大臣室に何度も出入りし苦悩した。「こんな形で基準を見直していいのか。しかし原発への対応を誤れば……」。35年間、労働行政に携わってきた官僚として、あまりに厳しい判断を迫られた。

 最後は細川律夫厚労相が250ミリシーベルトへの上限値引き上げを決断した。「長期的な話ではなく、この日をどう乗り切るか、だ」

(★中村コメント:この決定から既に4ヶ月以上たっている

 ◆3・24 3人被ばく

 ◇彼らは普段、あんな仕事はしてない

 3人が被ばくする事故は起こるべくして起きた。

 24日午前10時半。協力会社の関電工(東京都港区)の社員2人と恒栄電設(北区)の社員が、3号機のタービン建屋地下で非常用冷却系ポンプのモーターに電気を送るためのケーブルを制御盤に差し込む作業を始めた。建屋内には深さ約15センチの水がたまっていたが、暗くて気づくのが遅れ、短靴のまま足を突っ込んだ。173~180ミリシーベルトの被ばくだった。

 関電工の2人を知る作業員は明かす。「彼らは普段、あんな仕事はしてない。研修でやっているかもしれないが、あの非常時にできるレベルではない。現場の人数が足りず、専門外の仕事をさせていた

 ◆4・9 経産相、視察は40分

 ◇乾パン、食べてみろ

 労働環境が一向に改善されない中、海江田万里経産相が4月9日、第1原発視察に訪れた。免震重要棟で作業員を激励し、雨の中、バスから1~4号機を見て回った。滞在時間約40分。下請け会社の工事課長で福島県富岡町出身の男性(41)は怒りを押し殺した。

 「何で現場をきちんと見ないのか。視察に来たら、同じ装備で動いてみろ。味のしない乾パンをぼりぼり食べてみろ」

 自宅は津波に流され、避難先には妻と4歳、1歳の息子がいる。自身が宿泊するいわき市の宿は、同じように家族を残した作業員ら約150人で満杯だ。怖さもあるが、生まれ育った町だ。「地元だし、19歳からこの仕事だし。行かなきゃどうにもなんねえだろう」。そんな気持ちで作業に臨んでいる。

 仕事はタービン建屋の汚染水を移送するホースの設置。全面マスクに軍手を2枚重ね、さらにゴム手袋を2枚。防護服は熱がこもり、まるでサウナスーツだ。マスクの曇りで視界は悪く、恐怖心からか動悸(どうき)もする。一緒に作業する東電社員は「この装備じゃ夏は無理だね」と嘆く。

 4月末までに、自分の周囲にいた100人のうち4割が辞めた。

 ◆4・17 最初の工程表発表

 ◇終わらなかったら? それでも排水する

 「一刻も早く事故収束への工程表を作成すべきだ」。放射性物質放出封印策の立案を委ねられた馬淵澄夫首相補佐官が3月26日の就任直後に細野補佐官に直言し、作業が始まった。だが、4月17日に発表された最初の工程表では、作業員への配慮はなかった。

 原発が立地する大熊町でプラント保守の協力会社を営む50代の社長は工程表の発表をテレビニュースで聞き、こう思った。「1年で収束できれば早いほうだ。それより社員の補償を何とかしてくれ」

 事故収束への道筋は、はっきりとは見えず、今後、作業員が足りなくなる恐れもある。「本当は『原発職人』は全国にたくさんいるはずなんですよ。でも会社が出さない。福島で働くと他で仕事ができなくなるからだ。だから、福島で働いた後の救済策を早く決めてもらわないと」

 ◆5・14 60歳作業員急死

 ◇夏は続出するんじゃ…?

 5月14日朝、免震重要棟はいつになく騒然としていた。「作業員が倒れ、心肺停止らしい」。事故以来、原発の半径20キロ圏内は避難地域で、いわき市まで行かないと病院はない。「もう無理だろうな」。同僚たちがささやき合った。

 作業員の大角信勝さん(当時60歳)。同市の病院に運ばれたが、午前9時33分、死亡が確認された。心筋梗塞(こうそく)とみられる。

 大角さんは全国各地の繁忙期の原発や建設現場を転々とする仕事で、業界では「スポット派遣」と呼ばれる。青森県六ケ所村の原子力関連施設、福島県内の火力発電所……。タイ国籍の妻(53)と02年に結婚してからも、静岡県御前崎市の浜岡原発などで働いた。福島第1原発には、元請けの東芝からみて4次下請けにあたる建設会社の臨時雇いとして11日に出発した。

 「お父さん(信勝さん)、そこは暑いところ」

 「心配するな。給料も上がるから」

 妻は「貧乏でも、危ないところへは行かないでと引き留めればよかった」と悔やむ。

 下請けの機器メンテナンス会社の男性社員(34)は亡くなる前日の13日、同じ現場にいた。自分は汚染水を浄化する機械を設置し、大角さんはその機械の配管工。「夏になればこんな事故が続出するんじゃないか」。不安が募った。

 工程表に作業員の環境改善が盛り込まれたのは17日。対策はあまりに後手に回った。

 ◆5・17 7・19 新工程表

 ◇あれだけ装置あればどれかは働くだろう

 5月17日、汚染水を処理して原子炉注水に再利用する「循環注水冷却システム」の実現を優先させる新たな工程表が発表された。全国の原発を転々としてきた「原発職人」の30代の男性作業員は、各号機から汚染水が移送される集中廃棄物処理施設で、このシステムの配管をつなぐ作業に従事していた。

 「7月の予定が『6月中に稼働』と1カ月も前倒し。物がないのに工期を縮めてどうするんだ」。配管の調達が間に合わず、つなぐ金具もない。図面はあったが朝令暮改で度々作業が変更された。

 ようやく敷設を終え、初テストで水を流すと、夜になって現場から連絡が入った。「水が漏れてるぞー」。午前2時まで残業し、配管のつなぎ間違いを修正した。自分たちではなく、別の会社が担当した箇所だった。

 6月27日午後4時20分、システムは何とか稼働し始めた。会見した細野首相補佐官は「汚染水の処理と冷却機能の安定化の達成に大きな一歩になった」と胸を張る。だが、その直後に配管の継ぎ手で漏水が発見され、循環は停止。その後もトラブルは続く。

 それでも19日、原発事故担当相となった細野氏は工程表のステップ1の目標達成を宣言。「さまざまな困難を乗り越えたのは現場の作業員の奮闘があったからだ」とたたえ、新たな工程表を発表した。

 しかしその工程表も、緊急作業時の上限値250ミリシーベルトを元の100ミリシーベルトに下げる見直しには一切触れていない

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福島第1原発:被ばく50ミリ超1600人 経産省が試算

 東京電力福島第1原発事故の収束作業にあたる作業員について、経済産業省が「被ばく線量50ミリシーベルトを超える作業員は約1600人」と試算していたという内容の文書があることが26日、市民団体による情報公開請求で明らかになった。

 文書は厚生労働省の内部資料で被ばく労働問題に取り組む「全国労働安全衛生センター連絡会議」が公開請求し、6月に開示された。文書には経産省からの情報として、「今後50ミリシーベルトを超える者が約1600名と試算される」などと記されていた。

 資料作成の日付は4月25日。多くの作業員が50ミリシーベルトを超えて被ばくすると予想されることから「50ミリシーベルトを超えた者にも放射線業務に従事してもらわなければ他の原発の安全性の確保が困難となる」と懸念。その上で「5年間で100ミリシーベルトを超えないよう指導する」と、線量管理の方針について記載されていた。

 放射線業務従事者の被ばく上限は法令上、通常時で年間50ミリシーベルトと規定。東電によると13日現在、緊急作業時の上限となる250ミリシーベルト超の被ばくが確定したのは同社社員の6人。50ミリシーベルト超は東電と協力企業の作業員計416人。経産省原子力安全・保安院は「実際に試算をしたかも含め、すぐには確認できない」としている。【池田知広】

毎日新聞 2011年7月27日 2時36分(最終更新 7月27日 9時02分)

福島第1原発:高線量被ばくの作業員は2160人

 経済産業省原子力安全・保安院と東京電力は27日、福島第1原発事故の収束作業に当たる作業員のうち、事故収束までの高線量被ばく者数の3月下旬時点での試算を発表した。50ミリシーベルト以上100ミリシーベルト未満が約1680人、100ミリシーベルト以上が約480人だった。

 保安院などによると、試算は保安院の指示を受け、東電と原子炉メーカーの東芝、日立製作所の計3社が実施し、保安院に結果を報告。厚生労働省の内部文書内に「経産省によると50ミリシーベルト超は約1600人」との記載があることが市民団体の情報公開請求で明らかになったため発表した。

 試算結果を4カ月近く公表しなかった理由について、保安院の森山善範原子力災害対策監は「個別の企業情報が含まれているため」などと説明。内部文書の開示を受けた「全国労働安全衛生センター連絡会議」の飯田勝泰事務局次長は「もっと早く作業員に知らされるべき情報だった。隠していたとしか思えない」と批判している。

 東電によると、今月13日現在、100ミリシーベルト以上の被ばくをした作業員は東電と協力企業の計111人。【池田知広、久野華代】

毎日新聞 2011年7月27日 21時12分(最終更新 7月27日 23時26分)

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