アーニー・ガンダーセン 深刻な放射能汚染と福島の「黒い雨」

2011年7月21日
フェアウィンズ・アソシエーツ、アーニー・ガンダーセン
深刻な放射能汚染と福島の「黒い雨」
から抜粋

フェアウィンズアソシエーツ、アーニー・ガンダーセン氏の7月19日付けビデオの訳

今日お話したいのは、まず福島第一原発の原子炉の現状についてと、もっと重要な問題ですが放射性物質が福島だけでなく日本中で検出されている件について、そして日本で「黒い雨」と呼ばれ始めているものについてです。

まず原発自体の現状からです。1号機から3号機までのすべての原子炉と4号機の燃料プールからは、放射性物質が放出され続けています。

とはいえ、福島からの放射性物質のほとんどは3月と4月に放出されました。現時点では、一日あたりの放出量は3月や4月よりもはるかに少なくなっています。福島からの放射性物質の約90~95%は事故後最初の6週間で放出されました。今も放出は続いているとはいえ、日々の放出量で見たら当初とは比べ物になりません。その一方で、福島からは今後も長期にわたって放射性物質が放出され続けるおそれがあります。

放射性物質の多くは汚染された地下水と現場の汚水となり、当分のあいだはそれを除去する手立てがありません。それどころか日本政府は、格納容器の底に落ちた炉心を取り出す作業に「着手する」までにあと10年かかると発表しています。今はまだ炉心を取り出す技術が存在しないのです。思い出していただきたいのですが、燃料は原子炉を突き抜けて「メルトスルー」して格納容器の底に落ちました。スリーマイル島の事故のときは、燃料が溶けて原子炉の底に落ちましたが、メルトスルーはしていません。ですから今回のような状況には前例がないのです。

私がそれ以上に心配しているのは、最近になって原発以外の地域から聞こえてくる情報です。私の友人で、チェルノブイリでも仕事をした生物学者数名が、調査のために日本に行きました。彼らは日本がひどい状況にあることは想像していましたが、今週私に電話をかけてきて「状況は本当に本当に深刻だ」と話しました。彼らは筋金入りの科学者で、放射線の問題を扱うのにも慣れています。にもかかわらず、福島の状況は彼らの予想をはるかに超えるひどさだと言うのです。

その言葉を裏づける証拠も得られてきています。最初はシイタケです。原発から50~60kmくらい離れた地域で、日本の基準値を大きく超える放射性物質が検出されました。興味深いのは、そのシイタケが「屋内で」栽培されていたということです。なぜ屋内で栽培されたシイタケから基準値を超える放射性物質が検出されるのでしょうか。これは非常に憂慮すべき状況です。もう一度言いますが、原発から55km程度離れた地域で起きたことなのです。

2つ目の証拠は、福島県各地と福島県外で汚染牛が見つかっていることです。最初は8頭の牛に汚染が確認されたと伝えられ、やがてそれが40頭になり、130頭以上になりました。この数は時間とともに間違いなく増えると思います。[1400頭以上です。]この問題でいくつか注目したいのは、まず汚染牛が原発から50~60kmくらい離れたところで見つかっていること。そして検出されたセシウムの量が、これまでに定められた食品のいかなる基準をもはるかに上回る高レベルだったことです。

汚染牛が売られるとき、日本政府は肉のサンプリング検査をしませんでした。牛の皮をこすった上で外側から被曝の有無を確認しただけです。被曝が確認されなかったので市場で売られました。売られたあとでようやく肉の汚染が明らかになったのです。このようなやり方は、牛肉の汚染を調べる方法として容認できるものではありません。

ですがもっと重要な問題は、牛はどこで放射性物質を取り込んだのかという点です。アメリカの皆さんは牛の餌にはサイレージ、つまり原発事故前に貯蔵しておいた牧草が与えられると思うでしょうが、日本では牛の餌に稲のわらを使っているのです。70km以上離れた農家が稲を刈ってできたわらを、福島県内の農家に出荷していたのです。その稲わらは、1kg当たりの崩壊数が毎秒50万個(つまり50万ベクレル)でした。これはセシウムですので半減期は30年です。つまり、今から30年たってもまだ25万ベクレルの放射能があるということです。さらにその30年後に12万5000ベクレルになる。それが半減期という言葉の意味です。

これは原発から約70km離れた場所での話です。米国原子力規制委員会(NRC)が当初、原発から半径80km圏内のアメリカ市民を避難させるべきだと提言したのを覚えているでしょうか。どうやらNRCは正しかったようです。日本政府は20km~30kmで止めずに、80km圏内の住民を避難させるべきでした。放射能汚染は福島県外にも広がっています。にもかかわらず、日本政府が放射線被曝を心配しているのは福島県だけについてのようです。

今日最後にお話したいのは、その80km圏外で何が起きているかです。汚染された稲わらが見つかったことからもすでに明らかなように、80km圏外であってもチェルノブイリ並みに汚染されている地域が存在します。たとえば東京[首都圏]はどうでしょうか。私は東京についても心配しています。ひとつには、東京の汚水処理施設で放射性物質に汚染された汚泥が見つかっているからです。通常であれば汚泥は建設用資材に加工されますが、今回は放射線レベルがあまりに高いため、処分方法が決まるまでは防水シートをかけて屋外で保管するしかありません。

そしてもうひとつ、ある日本人の方が私宛てに検査報告書を送ってくれました。東京[首都圏]の公園近くの道で採取した土を、この方が直接研究所に持ち込み、自分でお金を払ってデータ分析を依頼したのです。これがその報告書です。東京の公園近くの土から、キロ当たり約53,000ベクレルの放射能が検出されています。この方は非常に心配になったので、市長を訪ねました。ところが市長の返事は「私は心配していない」というものでした。

一市民が、身銭を切って研究所に検査を依頼したにもかかわらず、市に訴えてもまったくらちがあかなかったのです。

さらにもうひとつデータがあります。やはり東京の近くにある国立がん研究センターの病院からです。これは病院のウェブサイトに事故の数日後から掲載されているデータです。この報告書を見ると、事故から9日後の3月24日に計測された屋外の背景放射線量が、屋内の背景放射線量の30倍に達しています。ホットパーティクル(高放射能粒子)が土に降り、それによって線量が高まったため、測定器が検知して屋内の30倍という数値を記録したのです。国立がん研究センターですから、線量を測る方法は間違いなく心得ているはずです。ですから熟練した研究者によって計測されたデータです。

最後にもうひとつレポートをご紹介します。私は毎日、日本の著名な物理学者であるグレン佐治博士[おそらく、佐治悦郎さんと思われる]からメールをもらいます。佐治博士はかつて原子力安全委員会の事務局を務めていました。彼は2日前のメールでこう書いています。汚染された稲わらが見つかった件についてです。

「汚染の原因は、事故後一週間の間に放射能の雲が通過したときに稲わらを屋外で保管していたためであり、とくに『黒い雨』のせいであると考えます」

佐治博士が「黒い雨」という言葉を軽々しく使うとは思えません。事故後の日本に「黒い雨」が降ったのは明らかです。つまり、博士が言うのは、高放射能の雲が日本の北半分の至る所にホットパーティクルを落とした、ということなのです。

日本人は自分たちが直面している問題の大きさに気づく必要があります。そうでなければ適切に対処することはできません。情報を制限するのではなく、放射性物質を制限することが重要です。

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