原発推進「慎重」6市 玄海原発30キロ圏8首長アンケート

「不安」「不信」根強く 立地町並みの対応求める

今後の原発推進には 「撤退」 「段階的に減らす」 「推進はやめて現状維持」など、6市が慎重な姿勢を示した。 原発の深刻な事故に直面し、九州でも原発周辺の首長の多くが「脱原発」に傾きつつある実態がアンケートで浮き彫りになった。

糸島市 「再生可能エネルギーの開発やコスト低減を進めて原発の代替とするのが理想。国が方針を示すべきだ」

原発推進「慎重」6市 玄海原発30キロ圏8首長アンケート 
(6月6日 西日本新聞朝刊 1面)

 定期検査中の九州電力・玄海原子力発電所2、3号機(佐賀県玄海町)の運転再開問題で、西日本新聞は原発の半径30キロ圏内にある福岡、佐賀、長崎県内の8市町の首長に再開の是非や今後の九州の原子力政策について考え方を聞いた。徹底した安全対策や住民理解を前提に半数以上の5市町が再開を容認したが、今後の原発推進には「撤退」「段階的に減らす」「推進はやめて現状維持」など、6市が慎重な姿勢を示した。

 東京電力・福島第1原発の深刻な事故に直面し、九州でも原発周辺の首長の多くが「脱原発」に傾きつつある実態がアンケートで浮き彫りになった。原発を推進してきた国や九州電力の経営戦略にも影響を及ぼしそうだ。

 玄海原発2、3号機の運転再開に条件付きで容認の姿勢を示したのは、福岡県糸島市、佐賀県玄海町と長崎県の平戸、壱岐、佐世保3市。条件としては、住民が安全性を理解し、納得することを挙げた自治体が目立った。町議12人のうち8人が再開に同意した地元玄海町の岸本英雄町長は「国に再度安全対策をただし、原発の現場でも確認して判断する」と答えた。

 唐津、松浦両市は「今は安全性の確保に理解を得ることが大切」と回答。現在はまだ運転再開の是非を考える段階にないとの考えを示した。伊万里市は「判断する立場にない」と回答を避けた。

 原発推進に慎重だったのは、糸島、平戸、壱岐、佐世保の各市のほか、佐賀県唐津、伊万里の両市。壱岐市の白川博一市長は「段階的に廃炉を進めて原発から撤退すべきだ」と踏み込んだ。

 残る2市町のうち長崎県松浦市の友広郁洋(いくひろ)市長は「回答できない」。玄海町の岸本町長も「国が明確に方針を示してほしい」とし、態度を明確にしなかった。

 一方、原発の新増設などの施設変更に当たり「事前了解」を出すなど影響力を行使できる「安全協定」については、既に九電と締結している玄海町を除く7市のうち糸島、唐津、松浦、壱岐の4市が「ぜひ締結したい」。佐世保と平戸も「できれば締結したい」と答え、大半が締結を希望した。伊万里市は「重要事項だが、まだ結論に至っていない」とした。

 このほか、唐津市の坂井俊之市長は、福島原発事故の早期検証と原因究明を踏まえた新たな安全基準、防災指針の見直しを国に要求。松浦市の友広市長は、原子力防災対策重点地域(EPZ)の拡大や国、県、市町村などの相互連携を求めた。

 アンケートの回答は8首長から書面で受け取った。

<解説記事 6月6日3ページ>
玄海原発 首長アンケート
「不安」「不信」根強く
立地町並みの対応求める

【解説】
「当面は原発に付き合うが、将来は縮小を」
玄海原発2、3号機の運転再開をめぐる首長アンケートから浮かび上がったのは、原発事故への予想以上の「不安」と国への「不信」だった。原発運転をめぐっては、ほとんどの市が安全協定締結など九電に立地町並みの対応を求めており、国と九電は地元を広くとらえ、あらためて理解を得る努力を迫られている。【1面参照】

=2011/06/06付 西日本新聞朝刊=

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