ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010年勧告

今の日本にとって、大変重要なメッセージが届きました。

「ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010年勧告」からの抜粋です。

ECRRモデルの成功とは、それが核分裂生成物によるある内部被ばくによってもたらされる発ガンやその他の疾患の数に関する問いかけに対して正しく回答するということに他ならない。

チェルノブイリ原発事故後のベラルーシにおけるガンの増加を伝える報告によって、そしてまた 2004年に公表されたスウェーデン北部における発ガンに関するマーチン・トンデル(Martin Tondel)による疫学研究によって強力な支持を得た:トンデルによる研究はチェルノブイリ原発事故によるCs-137による100 kBq/m2の汚染によってガンが統計的に有意に11%増加することを明らかにしており、これはECRR2003モデルの予測とほぼ完全に一致している。

ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010年勧告

翻訳:ECRR2010翻訳委員会
発行:美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

 ECRR2010勧告の翻訳を進めております。一部作業の完了していない部分がありますが、記述内容の重要性に鑑みこの段階で公開することにしました。
 ECRR2003からの大きな変化はチェルノブイリ原発事故の被害が明らかになり、ECRR2003モデルの有効性が示されたこと。
 劣化ウランについての新しい章が追加され、ウラン兵器の使用によって生まれるナノ粒子がICRPモデルでは全く記述できない遺伝子毒性を有していることが明らかになっています。

 より詳しくは下の緒言をお読みください。

緒 言

 欧州放射線リスク委員会が2003年に発表した新しい被ばくモデルは、生命体の放射線影響に関する従来の科学的理論の妥当性について科学者や政治家の注目を集めたということで、ある意味での革命をもたらした。もちろん、これは遅すぎたことであった。というのは、系列崩壊する新しい放射性核種による慢性的な内部被ばくがもたらすリスクの評価に、急性の外部放射線による研究を使用するのは危険であるという証拠は、40年以上も前から知られていたことだったからである。そのような科学的パラダイムシフトは簡単には進まない:原子力や軍事、経済、そして政治の中枢機構が原子力エネルギーの利用と開発に躍起になって取り組んでいるからであり、また核の軍事利用は一枚岩であり巨大な慣性を有しているからである。したがってECRR2003年勧告がそのような注目を集め、吸収線量という物理学ベースの概念に基づいている、その当時から現在まで続いている放射線リスクの哲学が抱えている欠陥について、新しく力強い関心を効果的に集めることができたのは驚きであり希望を与えるものであった。新しいモデルに対する支持と支援、そして(例外なくICRPモデルと対決することになる)多くの法廷におけるその成功には、ECRR2003の公表当時に現れていたチェルノブイリ原発事故の放射性降下物による被ばくや劣化ウラン弾の影響調査から明らかになってきた、日々増加している証拠が役立ったのかも知れない。ECRRモデルの成功とは、それが核分裂生成物によるある内部被ばくによってもたらされる発ガンやその他の疾患の数に関する問いかけに対して正しく回答するということに他ならない。これは公衆の普通の構成員とともに陪審員にも裁判官にも、あらゆる人々に対して直ちに明らかになる。それはチェルノブイリ原発事故後のベラルーシにおけるガンの増加を伝える報告によって、そしてまた 2004年に公表されたスウェーデン北部における発ガンに関するマーチン・トンデル(Martin Tondel)による疫学研究によって強力な支持を得た:トンデルによる研究はチェルノブイリ原発事故によるCs-137による100 kBq/m2の汚染によってガンが統計的に有意に11%増加することを明らかにしており、これはECRR2003モデルの予測とほぼ完全に一致している。
 新しいECRRモデルにおいては説明可能であるが、古いICRPモデルによってそれらを説明することは全く不可能であるような、実験室において行われた幾つかの進歩もある。そのようなもののひとつは、ウランのような(そして白金や金のような非放射性の元素でも同じであるが)高い原子番号を持つ元素に、それが取り込まれてしまった臓器・組織の放射線の吸収特性を変えてしまう能力があるということであった。ウランは原子燃料サイクルの循環において中心的役割を担う元素であり、前世紀の初期から膨大な量のそれを含む物質によって生物圏は汚染され続けてきている。したがってECRRリスクモデルを改訂しそのような「ファントム照射効果*」を考慮に入れる必要がある。兵器利用を通じてウランは広く散布されてしまったため、ウラン兵器に関する章を追加する必要があった。ブリュッセルにおける1988年の設立以来、ECRRには多くの国々からの数多くの傑出した放射線科学者が結集してきている。この新しい改訂版によって、政治家や科学者が彼らの電離放射線の健康影響についての理解を変えようとする圧力は今では無視することが不可能なほど大きくなってきているのは明らかである。

目 次
緒言

1. 欧州放射線リスク委員会ECRR
2. 本報告の基礎と扱う範囲
3. 科学的原理について
4. 放射線リスクと倫理原理
5. リスク評価のブラックボックス:国際放射線防護委員会ICRP
6. 単位と定義:ICRP線量体系の拡充
7. 低線量における健康影響の確立:リスク
8. 低線量における健康影響の確立:疫学
9. 低線量における健康影響の確立:メカニズム
10. 被ばくにともなうガンのリスク、第1部:初期の証拠
11. 被ばくにともなうガンのリスク、第2部:最近の証拠
12. ウラン
13. ガン以外のリスク
14. 応用の例
15. リスク評価のまとめ、原理と勧告
16. ECRRメンバーリストと本報告書への貢献者リスト
参考文献(この翻訳では割愛/原文を参照のこと)
勧告の概要
付録A:線量係数
補遺:レスボス宣言

※以下の項目からPDFを開くことができます。

・表紙から緒言/第1章?第5章
・第6章?第9章
・第10章
・第12章
・第13章
・第14章
・第15章?第16章
・サマリー他

(11/05/13UP)

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