原発自殺も災害関連死 双葉町村会・南相馬市、異例の認定

原発自殺も災害関連死 双葉町村会・南相馬市、異例の認定
(2012年05月10日 河北新報)

 福島県双葉地方8町村でつくる町村会と南相馬市が、福島第1原発事故が引き金になって自殺した人を「災害関連死」と認定したことが9日、河北新報の取材で分かった。

 災害関連死は、原則的に自然災害を原因とする死亡に限られる。関連死と認めた場合に市町村が遺族に支給する災害弔慰金も、故意の死亡は対象外とする自治体が多い。そうした中、原発事故による自殺を災害関連死と認めた今回の判断は、関連死認定の在り方に一石を投じそうだ。

 これまでに双葉地方町村会は381件、南相馬市は295件の災害関連死をそれぞれ認めた。このうち原発事故自殺の認定は「複数ある」(町村会)、「ある」(南相馬市)としている。件数は両者とも明らかにしていない。
 福島県内では東日本大震災後、双葉地方町村会と南相馬市、いわき市、相馬市、鏡石町、飯舘村が関連死に当たるかどうかを判定する審査機関を設置した。取材に対し、いわき市と相馬市、鏡石町は原発事故による自殺の関連死認定はないと回答し、飯舘村は有無も含め回答しなかった。

 東京電力は「事故と自殺に相当因果関係が認められる場合、適切に賠償する」としているが、自殺自体は直接の賠償対象でなく、相当因果関係の判断基準も不明確だ。
 災害弔慰金は生計維持者が死亡した場合は500万円、それ以外は250万円が遺族に支払われる。原発事故による自殺を災害関連死と認め、弔慰金支給に道を開く判断は、遺族の生活支援の点でも意義は大きい。

 復興庁が4月下旬に公表した東日本大震災の関連死者数(3月末現在)によると、福島県での関連死総数は764人。

[災害関連死] 災害直後のショック死や、避難生活など環境の変化によるストレスや体調悪化が原因の死亡。災害に起因する自殺も含む。1995年の阪神大震災を機に生まれた概念とされ、災害が原因の直接死と区別される。関連死の判定は市町村が行い、認定されれば災害弔慰金の支給対象となる。認定基準は明確でなく、国は2004年の新潟県中越地震で長岡市が作成した基準を参考情報として示している。

2012年05月10日木曜日

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