2014/04/26

原発輸出 無責任すぎる経済優先 (北海道新聞 社説)

原発輸出 無責任すぎる経済優先
(2014年4月20日 北海道新聞 社説)

トルコとアラブ首長国連邦(UAE)を相手にした原子力協定が国会で承認された。これで日本から両国への原発の輸出が可能になる。トルコについては、安倍晋三首相のトップセールスで決まった輸出を追認した形だ。国内で原発依存度を可能な限り低減するとしながら、成長戦略として海外へ官民一体で原発を売り込むのは、つじつまが合わない。

福島第1原発は汚染水漏れなどのトラブルが続く。収束の見通しが立たない現状で、原発輸出を推進するのはあまりに無責任だ。とりわけ、トルコは世界有数の地震国である。

さらに問題なのは、トルコとの協定に、核不拡散の抜け道になりかねない記述が含まれる点だ。日本が同意すれば、トルコはウラン濃縮や、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理ができることになっている。このような核兵器転用につながる恐れのある文言は、UAEとの協定には見当たらない。

岸田文雄外相は「日本政府が合意することはない」と釈明した。であれば、疑わしい部分は削除しても構わないはずだ。安倍首相は昨年、トルコを2度も訪問し、三菱重工業などの企業連合が原発4基の建設を受注することが固まった。

問題の記述は、トルコ側の要望で入れられたという。これでは、首相がまとめた商談を円滑に進めるために、便宜を図ったと疑われても仕方あるまい。

民主党が協定締結承認案の賛成に回ったのも理解し難い。政権担当時に原発輸出を進めたと言う理由で、核拡散の疑いさえある協定を認めるようでは、歯止めとしての役割をなさない。「原発ゼロ目標」とも矛盾する。

首相は「過酷な事故を経験したことから安全性に強い期待が寄せられている」と述べ、原発輸出を正当化している。しかし、事故原因すら解明されていないのに、事故の経験まで売り物にする姿勢は、なりふり構わぬ経済優先と映る。

政府は複数の国と原子力協定の交渉を行っている。この中に事実上の核保有国であるインドが含まれているのも看過できない。首相が先頭に立って売り込んだ原発が事故を起こせば、日本の責任も追及されるだろう。

 原発輸出を成長戦略の柱に据える安倍政権の方針は、危険で道義的にも許されない

・・・

原発輸出 平和より「金もうけ」


反省なき原発輸出行脚


3年前に福島原発事故を起こし、今も大量の放射能汚染水や大気中に放射性物質を放出し続けている日本が、「世界一安全な原発」(安倍首相の発言)と称して、トルコに原発を輸出しようとしている。

首相講演「世界一安全」国産原発を売り込み(2013年5月2日 東京新聞)

首相「世界一安全」原発売り込み

「世界最高」は欺瞞 原子力コンサルタント 佐藤暁氏(2013年7月9日 西日本新聞)から抜粋

西日本新聞:「世界最高」は欺瞞

原子力規制委員会がまとめた原発の新規制基準が施行された。規制委自らと電力会社を怠惰にさせ、国民を不用心にさせる「世界最高」という欺瞞(ぎまん)の言葉が怖い。まず、そのこと自体が真実ではないからだ。真の世界最高は、おそらく米国が2007年に発行した将来型(第4世代)の原子炉に適用する安全基準の骨子案である。

その前の第3世代と呼ばれる新型の原子炉が、世界各地で建設されている。航空機の衝突に備え、格納容器の外側に頑丈なシールド建屋を持つ。安全系統は四重化され、非常時に原子炉に注水するための冷却水は、屋外タンクではなく格納容器内に設置する。建屋内で出火した場合には、耐火壁で隔離された内側の機器が全焼することを想定し、復旧を期待しない。
仮にこれらも新規制基準に含めていたならば、日本の原子炉は1基も適合できない

世界で現在運転中の原子炉の半数以上は、1万~10万年に1回の大規模地震を想定して設計することになっているが、日本ではいまだに具体的に規定されていない。せめて千年に1回の規模のものでもいいから、大規模地震や大津波に関する基準となる数値を示し、われわれに問うてほしかった。


1999年トルコ北西部地震と1995年兵庫県南部地震の比較(岐阜新聞)
1999年トルコ北西部地震と1995年兵庫県南部地震の比較(岐阜新聞)

トルコ大地震1

トルコ地震2

トルコ地震3

巨大地震の可能性 トルコ地震など

トルコからの手紙
日本の国会議員のみなさま、トルコの状況を知って下さい!8割の国民が原発に反対しています。しかし、反対意見を表明する国民は、政府に「国賊」と呼ばれ警察により排除されます

原発に反対するトルコのおばあちゃんたち

https://www.facebook.com/photo.php?v=306551249245&set=vb.588574245&type=2&theater

*****

「あなたを心配する手紙」

Japonya’dan Türkçe uyarı: Nükleer felaket olacak!

Türk vatandaşlarına

トルコの人へ

Merhaba, Ben Japonum

こんにちは。わたしは日本人です。

Ben, Türkler için duyduğumuz endişeyi anlatabilmek için Türkçe öğrendim

わたしは今、「トルコの人たちのことを心配している」と伝えたくてトルコ語を教えてもらいました。

Japon Başbakanı Türkıy’ye Nükleer santral sattı.

日本の首相はトルコに原発を売りました。

Bundan dolayı Japonlar utanç içindeler.

その事をとても恥ずかしく思っている日本人はたくさんいます。

Çünkü biz, 2buçuk yıl önce FUKUSHIMA Nükleer santralinde büyük bir kaza yaşadik.

なぜなら私たちの国は2年半前にフクシマの原発事故を経験したからです。

Ben FUKUSHIMA Nükleer santralinden 20kilometre içerdeki şehri ziyaret ettim.

わたしはフクシマの原発20キロ圏内の街を訪れました。

Kaza yaşamiş o şehirler, 2buçuk yıl geçtiği halde hala aynı şekilde duruyordu.

事故があった街は2年半経っても、あの日のままです。

Hala daha, kazanın olduğu Nükleer santralin içi ne durumda, bılınmıyor.

今でも誰も事故のあった原発の中がどうなってるか?

Çok tehlikeli olduğu için kimse kesin bilemıyor.

危険すぎて誰も確認できていません。

Ve her gün, 300ton radyoaktif kirli su denize akıyor.

そして毎日、300トンもの放射能汚染水が、海に流れ出ています。

Radyoaktif bulaşan toprak, sıyrılıp bile nereye atılacağı belli değil.

汚れた大地を大量に削りとってもそのゴミ処分は決まっていません。

Nükleer santralde kullanılan malzeme 100,000yıl boyunca takip edilmesi gereken çok tehlikeli bir maddedir.

原発の使用済み燃料は10万年管理をし続けなければいけない大変危険な物質です。

Eğer ileride bizim sattıgımız Nükleer santralde bir kaza olursa, gerçekten ne olacak?

もしも未来に私たちが打った原発があなたの国で事故を起こしたら一体どんなことが起きるか?

Düşüncesi bile korkunç.

想像すると私たちはとても恐ろしい。

Bir Japon olarak, ne kadar özür dilesek yeterli değil.

日本人として謝っても謝りきれない。

Ben, Türker için endişeleniyorum.

わたしはトルコの人たちをとても心配しています。

Biz, sizin ve ülkenizin geleceği için endişe ediyoruz.

私たちはあなたと、あなたの国の未来を心配しています。

Nükleer santral büyük bir enerjidir ama aynı zamanda çok büyük bir para kaynağıdır.

原発はエネルギーですが、同時にとても大きなお金を生み出すシステムでもあります。

Japonyada, bu hakkı kullanma hususunda insanlar yanlış karar vermekte, görüş ayrılıkları olmaktadır.

日本がそうであるようにその利権によって、人々は判断を間違い、意見が分かれます。

Aynı ülkenin insanları birbirine düşebilir.

同じ国の中で同じトルコ人同士、争うことになるかもしれないのです。

Nükleer santral artık güvenli değil.

原発はもはや安全ではありません。

Japonya, ekonomisi için geleceğini kurban etmiş bir ülkedir.

日本は経済の為に未来を犠牲にしてしまった国です。

Lütfen, kimseye güvenmeyin.

決して誰も信用しないでください。

Lütfen, bir Nüleer santral fıkrine lişmayin.

原発があることに慣れないでください。

Her zaman etrafınızı koruyup, dikkatli olmak önemlidir.

いつでも見守り、注意し続けることが重要です。

Ben Türkiye’yi otobüs ile gezdim.

わたしはトルコをバスで旅したこともあります。

Çok güzel bir ülke olduğunu gördüm.

とても美しい国だと感じました。

Gelecekte, o güzelliği kaybetmemesini arzu ediyorum.

未来にその美しさを失うことのないよう祈ります。

Bütün Türklere ve geleceğin çocuklarına.

トルコの人へ、その未来の子どもたちへ

Japonya’dan Sevgilerle.

日本より愛を込めて

cast & written & Directed by KOUKI TANGE

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参考

2014/04/22

セヴァン・スズキ「放射線から子どもを守り、原発再稼動を止めたい」

こんにちは。セヴァン・カリス=スズキです。
ここはハイダグワイです。
美しい、3月の夕方です。
こうして、海藻を収穫しているところです。

私は「100万人の母」ムーブメントを支援し、連携し
そしてそれに参加することを表明したいと思います。

再稼働しようとしている10基の原発を止めるため
世界中の人に力を貸してほしい。
そうした日本の母たちからの 強い願いに答えるものです。

私は、今こうして海からの恵みをいただいています。
何千年も前からずっと 先祖の人たちがそうしてきたように
ここハイダグワイでも、 世界中の至る所でもそうでしょう。

日本の海に流れ続けている放射性物質の量を 私たちは知らないという事実
それは、私たちが口にする食べ物が 安全ではないかもしれないという
とてもショッキングなことなのです。

福島の原発事故からこの3年間、 ガンやさまざまな症例が出てきています。
放射能の毒性は、子どもや乳児に さまざまな病気を引き起こしています。

これは日本に暮らす人たちだけの問題ではありません。
人類全体の問題です。
私たちすべての人間にとっての問題なのです。

だからこそ、私たちは声を上げ「100万人の母」に参加するのです。
世界中から声を上げれば、 それが「数百万人の母」になります。

子どもたちのために、 安全な世界を確かなものにしようと
はぐくみ、守ろうとする「母性」をもつ人々
それが「100万人の母」です。

私は「100万人の母」の一人であることを誇りに思います。
子どもたちが安心して暮らせる世界を創っていきましょう。


100万人の母たちーThe Million Mothersー

Millionmothers(英語サイト)

12歳の少女 “伝説のスピーチ” ― セヴァン・スズキ ―  
(環境関連の教育番組 2010年10月11日放送 NHK)

◆映画『セヴァンの地球のなおし方』予告編 – YouTube

2014/04/16

「放射線の安心」本当? がんと原発事故の関係 (中日新聞)

「放射線の安心」本当? がんと原発事故の関係は
(2014年4月8日 中日新聞)

2014年2月の福島県の県民健康管理調査検討委員会
ことし2月の福島県の県民健康管理調査検討委員会。甲状腺がんとその疑いの患者は計74人になった=福島市で

 「ただちに健康に影響はない」。福島原発事故の直後、政府が繰り返した言葉だ。事故から3年が過ぎ、それは「安心していい」に変わってきた。環境省は先月下旬、福島での小児甲状腺がんの発生が他県との比較で多発とは言い難いとした。国連科学委員会もがんの増加は確認できないとしている。これらをうのみにしてよいのか。「安心」をめぐるいくつかの問題点を専門家に聞いた。 (荒井六貴、榊原崇仁)

福島と比較条件違う 

 青森、山梨、長崎各県での小児甲状腺がんの発生を調べていた環境省は先月28日、「福島県と発生頻度は同じ」と発表した。国連科学委も今月2日、福島事故によるがんの増加は予想しないと報告した。

 京都大原子炉実験所の小出裕章助教は、環境省の発表内容について「疫学的に比較するなら、同一条件で検査しなければ意味がない」と話す。

画像国連科学委員会が福島原発事故の影響について調べた報告書
国連科学委員会が福島原発事故の影響について調べた報告書

 福島県は事故当時18歳以下の全員が対象で、これまで27万人を調べたが、3県の調査は各県1500人程度。さらに福島の調査はゼロ歳からだが、3県は3歳以上18歳以下だ。

 元国会事故調査委員会メンバーで、独立行政法人・放射線医学総合研究所の元主任研究官の崎山比早子氏は「甲状腺がんは8歳ぐらいから発症するケースが多いとされる。3歳以下を調査対象に含めていない3県の割合は高めの数字が出てしまう」と解説する。

 さらに3県調査で見つかったがんは一例しかない。小出助教は「何かの傾向を統計的に調べるには一定の数が必要だ。これでは検証できない」と指摘する。

 国連科学委の報告書については、崎山氏は「事故から3年では、まだ影響がはっきりしない。それにもかかわらず、放射線のリスクよりも、不安が健康に与える影響の方が大きいと書いてある。こうした部分に原発事故を過小評価する意図を感じる」と話した。

心臓異常の症状も

 チェルノブイリ事故で小児甲状腺がんが増えたのは4、5年後。それゆえ、福島で現在見つかるがんと事故の因果関係はないという根強い主張がある。

小出さん「政府は『放射線は危ない』という意識を変えようとしている」
「政府は『放射線は危ない』という意識を変えようとしている」と指摘する小出裕章助教=大阪府熊取町で

 小出助教は「チェルノブイリでは、事故直後から現地の医師らが『甲状腺がんが増えている』と警告していた。だが、国連などは放射線影響研究所による広島・長崎原爆での調査を持ち出し、『がんが増えるのは10年後』と無視した。ところが、4、5年後から患者数が激増したため、事故との関係を認めざるを得なくなった」と説明する。

 「実は放影研の調査は原爆投下から5年後だった。こうした例からも、過去の知見が必ずしも正しいとは限らない。大切なことは過去例を基にした推論ではなく、現在の事実だ」

 崎山氏は「がんの発生と原発事故の因果関係を否定する一部の学者らは、検査機器の性能が向上したから多く見つかったという。そうならば、数年後の検査では新たながんの発生が見つからないはずだ」と話す。

 さらにがんのみに注目すべきでないという。「チェルノブイリでは心臓の異常など他の症状も出た。福島でも甲状腺以外も調べる必要がある。セシウム137の半減期は30年。住民を被ばくから守る努力がもっと必要だ」と強調する。

低線量でもDNAを損傷   

 「100ミリシーベルト以下の被ばく量では、発がんリスクが増えるという明確な証拠はない」という論理が繰り返されている。

 小出助教は「放影研の1950年からの被爆者の追跡調査のほか、原子力施設の労働者や医療被ばくに関する調査でも、低線量被ばくで発がんリスクがあるという歴然としたデータが出ている」と反論する。

 放影研が2012年に発表した追跡調査の報告書では、発がんさせる放射線量について「(これまでの調査からは)しきい値は示されず」とある。「国際放射線防護委員会(ICRP)ですら、低線量でも発がんの可能性があるという立場を取っている」

 崎山氏はドイツの放射線専門家マルクス・レイブリッヒ氏らが03年に発表した低線量被ばくの影響についての論文に触れた。論文は、放射線がDNAに複雑な傷を付け、その傷は1.3ミリシーベルトでも付き、放射線量によって増えることを示している。

 「放射線は低線量でもエネルギーが大きく、結合を壊してしまう。DNAが損傷すれば、修復ミスが発生し、細胞の突然変異が起きる可能性が出てくる。それががんに結び付く」

他の要因に紛れさせるな

 低線量被ばくによるがんは発生割合が低く、たばこや生活習慣などの原因に隠れてしまうという意見も依然として強い。

 崎山氏は「それで放射線が無害ということにはならない。たばこは個人の好みの問題で選択権がある。そうしたことと原発事故で無理やり被ばくさせられることは同様には扱えない。被ばくを受忍しろというのはおかしい」と訴える。

 前述の放影研の報告書でも「リスクがゼロは線量がゼロの時以外にない」と結論づけている。「英国やオーストラリアでは10ミリシーベルト以下でも、白血病や脳腫瘍が増えるというデータが発表されている」(崎山氏)

 小出助教も「低線量被ばくによる発がんの数は少なく、検知すること自体、難しいかもしれない」と語りながら、「原発事故由来の放射線は本来、受けなくていいものだし、発がんリスクもゼロではない。『他のリスクに紛れてしまう』という言葉で済ませてよいわけがない」と説いた。

初期被ばくの調査不十分

 それでも政府は「リスクコミュニケーション」で福島の被災民に「安心」を流布している。ただ、事故直後の被ばく量は現在も分かっていない。

 崎山氏は「科学的観点だけから見れば、20ミリシーベルト以下の低線量でも健康への影響を否定することはできない。除染しても線量が下がらない現実があり、経済的な観点も健康影響の判断材料に入れてしまうから、低線量被ばくを軽視することになる」と解説する。

崎山比早子氏「国は被ばくを避ける努力をすべきだ」
「国は被ばくを避ける努力をすべきだ」と訴える崎山比早子氏=千葉市内で

 「チェルノブイリは福島より線量が高かったから、がんが発症したという学者もいるが、国や福島県は住民の初期被ばくについては十分に調べなかった。健康に影響がないとすることで、国や県はそのミスを隠したいのではないか」

 放射性ヨウ素は半減期が8日間と短く、迅速に調べる必要があった。これについては、政府が実施した1080人分の検査など、ごく限られたデータしかないとされている。

予防原則踏まえ対応を

 小出助教は「現段階ではどれだけの健康影響があったのかは分からない」と前置きし、こう訴えた。

 「(年換算で5.2ミリシーベルト以上になる)放射線管理区域並みの線量の地域で生活するわけにはいかない。しかし、現実には多くの人がこうした環境で生活を強いられている。予防原則を踏まえれば、国家財政が破綻してでも政府が責任を持って避難させるべきだ」

デスクメモ

 放射線量の基準には一定の数値未満なら安全というしきい値がない。利益と比べ、この程度なら受忍できるという水準しかない。つまり利益がなければ、基準はゼロになる。代替エネルギーや節電を急ぐ理由でもある。しかし、原発をカネもうけや野望に使いたい者はだだをこねる。このたぐいは論外である。 (牧)


子どもが甲状腺がんに・・・母が苦悩の告白  3/11報道ステーション(2014/03/15)

「このままでいいのか」と日本人に問う ドイツTV 『フクシマのウソ』(2014/04/01)

放射能汚染地の子どもたちに病気が急増している(2013/05/05)

2014/04/04

NPOが福島の子どもの疎開事業

福島から長野県松本市に家族で避難して、NPO法人「まつもと子ども留学基金」の理事長を務める植木宏さんは言う。「事故から3年以上。福島にはまだ、子どもを避難させたくてもできない人たちがいる。国が何もしないのなら、私たちが動かないといけないと思った」

NPOが福島の子どもの松本疎開事業
(2014年4月3日 中日新聞・特報)

中日:松本へ 子は疎開

 福島県の子どもたちが、長野県松本市にあるNPO法人運営の寮に入り、地元の学校に通う「まつもと子ども留学」が始まった。初年度は女子8人が入寮する。原発事故による被ばくを避ける試みだが、被災地では政府が後押しする、情報共有によるリスク低減の取り組みである放射線「リスクコミュニケーション(リスコミ)」が加速している。子ども留学と安心を強調するリスコミ。どちらに理があるだろうか。

 「事故から3年以上。福島にはまだ、子どもを避難させたくてもできない人たちがいる。国が何もしないのなら、私たちが動かないといけないと思った」

 松本市の四賀(しが)地区にある「松本子ども寮」で、NPO法人「まつもと子ども留学基金」理事長の植木宏さん(43)は力を込めた。

 原発事故当時、福島県須賀川市に住んでいた植木さんは、妻と幼い息子2人とともに2012年7月、松本市へ自主避難。松本で他の子どもらを受け入れられないかと考えるようになった。

 そこで、医師出身でチェルノブイリ事故後に現地で住民の治療に当たった松本市の菅谷(すげのや)昭市長に相談。財政支援こそなかったが、寮として使える格安な物件の紹介などに協力してくれた。

 福島では事故後、低線量被ばくの危険性が指摘されているが、国は原発周辺の一部地域を除いて、住民を早期に帰還させる姿勢を崩していない。避難する権利も認めず、郡山市の子どもが市に「集団疎開」を求めた仮処分の申請も、一審福島地裁郡山支部、二審仙台高裁のいずれでも却下された。

 ただ、不安を抱えている住民は少なくない。今回、長女を入寮させた40代の女性は「国がいくら安心だといっても信用できない。かといって、高齢の親や夫の仕事を考えると、福島を離れられない。娘と別れて暮らすのは寂しいし、家族が離れ離れになるのはよくないけれど、それよりも被ばくのリスクの方が怖かった」と打ち明ける。

 松本子ども寮では、福島市や郡山市などに住んでいた中学生は2年4人と1年3人、小学6年1人の計8人の女子が築約30年の2階建て家屋で共同生活を送り、新年度から地元の小中学校に通う。寮費は一人月3万円で、高校卒業まで暮らす予定だ。

 寮には元教諭のNPO法人のスタッフ2人が住み込み、食事や身の回りの世話をする。「子どもたちが将来『ここで暮らせてよかった』と思えるような場所にしていきたい」と根岸主門(しゅもん)さん(29)は意気込む。

 中学2年の女子生徒(13)は「福島にいるときは親からあれこれ口うるさく言われたり、食べる物にも気を使わないといけなかった。こっちに来ていろんなストレスから解放され、ほっとしている」と話す。

 法人には留学したいという問い合わせが他にも数件来ているというが、課題は少なくない。寄付で賄う年間運営費1千万円余のうち、今のところめどがついているのは約500万円。

 植木さんは「楽な事業ではないが、安全だ、危険だと議論をしているうちに、どんどん被ばくが進んでしまう。少しでもリスクを減らすために、国は今からでも住民に避難する権利を認めてほしい」と訴えた。

留学事業 NPOが開始

「福島に戻れ」国は言うけど 

 一方、福島県では原発事故の収束にめどが立たない。除染も難航し、住民らは放射線の影響を懸念している。そこで行政が熱を注ぐのが安心を強調するリスクコミュニケーションだ。

 福島第1原発から30キロ近く離れながら、事故直後に大量の放射性物質が降り注ぎ、全村避難している飯舘村も例外ではない。

 村は12年6月に「健康リスクコミュニケーション推進委員会」を設けた。

 委員は17人。住民代表や学校関係者らのほか、東京大付属病院の中川恵一准教授、国際放射線防護委員会(ICRP)委員を務める東京医療保健大の伴信彦教授、県民健康調査を請け負う県立医科大の宮崎真氏らも加わる。

 リスコミ推進委は少人数の車座集会や講演会を繰り返し開くほか、一時帰宅や除染、健康調査等の話題を扱う広報紙「かわら版道しるべ」を3200ある全世帯に配っている。

 「かわら版」は既に11回発行されているが、安心感を植え付ける内容一色と言っていい。

 12年12月発行の第3号では中川氏の講演内容を取り上げ、「原発事故前から放射線は宇宙から降り注いでおり、大地にも大気中にも食物にも放射性物質は含まれている」「100ミリシーベルトの被ばくは野菜不足と同程度の影響」と紹介。13年2月の第四号では、村民向け放射線勉強会で「被ばくで子どもの甲状腺がんが増えることがあっても少なくとも4、5年かかる」と述べた伴氏の言葉を掲載した。

 13年9月の第8号では、甲状腺検査の説明会で宮崎氏が「がんの原因は放射線だけでない。たばこや肥満、職場環境やストレスも関係がある」と述べた様子を扱い、今年1月の第10号では「100ミリシーベルト以下の被ばくによって、がんなどの影響が引き起こされるという明白な証拠はない」と強調する記事を載せている。

福島県飯舘村で発行されているリスクコミュニケーション紙「道しるべ」

飯館村で発行リスクコミュニケーション紙「道しるべ」

賠償減を狙う?

 飯舘村でのリスコミには国が深く関わっている。推進委の取り組みは復興庁の委託事業「福島原子力災害避難区域等帰還・再生加速事業」の一環で、復興庁が2月に示したリスコミ施策集でも飯舘村の実践が先進例として紹介されている。

 リスコミに躍起になる国の真意はどこにあるのか。

 国学院大の菅井益郎教授(日本公害史)は「事故が収束せず、除染も遅れている現在、危険な状態があるのなら、住民にその現状を伝えないといけない。しかし、国は早期帰還を実現させて避難者の生活支援の費用や賠償を抑えたい。安全を装い、帰還を促そうというのがリスコミに込められた思惑だ」と指摘する。

 ただ、避難生活を送る飯舘村民はそうした国の姿勢に冷ややかだ。伊達市の仮設住宅で暮らす60代の女性は「国の言うことを真に受ける人なんているか。いままでさんざんだまされてきた」と憤慨した。

 子どもたちの受け入れに協力した松本市の菅谷市長は「国がいくら安心だと主張しても、不安に思う福島の親たちは子どもを外出させようとは考えない。子どもは運動不足で転びやすくなったり肥満になったりする。世の中への関心が薄れて無感動、無気力になる危険性すらある」と心配する。

 「原発は国策なのだから本来は国がやらなければいけないことだが、低線量被ばくのリスクが高い子どもは一定期間避難させて、のびのびと過ごさせるべきだろう。松本の留学制度をモデルケースとして、全国の自治体が支援する体制を整えていく必要がある」

(上田千秋、榊原崇仁)

「福島に戻れ」 国は言うけど


福島の子、新天地で春 松本で「子ども留学」
 (2014年3月22日 信濃毎日新聞)

 東京電力福島第1原発事故の影響を避けた福島県の小中学生が、松本市四賀地区で寮生活しながら地元の小中学校に通う「まつもと子ども留学」の受け入れが21日、始まった。松本市に避難した人などが設立したNPO法人「まつもと子ども留学基金」が寮を運営。4月1日までに計8人が寮に入る。基金理事を務める福島県郡山市の種市靖行医師(49)は「子どもを安全な場所に移す取り組みは国がやるべきことだがやらない。松本の動きが全国に波及すればいい」と期待していた。

 21日は、同県郡山市の小学校を20日に卒業した佐藤愛(まな)さん(12)が母友紀(ゆき)さん(41)と到着した。留学基金の植木宏理事長(43)が出迎えた。

 愛さんへの放射線の影響を不安視した友紀さんは、愛さんを東京の医療機関で受診させ、医師から福島を離れて過ごすよう勧められたという。寮に着いた愛さんは「直感でここがいいと思った」とし、「家族と一生会えないわけではないので寂しくない。楽しく遊びたい」と話していた。

 留学基金は、松本市に避難した人や同市の弁護士、種市医師ら9人で昨年設立。福島県内などで参加者を募り、松本市が提案した四賀地区で民家を借りて寮に改修した。寮費は食費を含め月3万円。子どもたちは四賀小学校や会田中学校に通学する。

 福島県の病院で甲状腺の超音波検査などを手掛ける種市医師は、子どもを福島県から離れさせることについて「放射線が安全か、危険かの議論以前に、子どもを避難させたという親の安心感は何物にも代えられない」と説明。まつもと子ども留学は「経済的事情などで行動に移せない人の受け皿を、と作った」と話す。

 福島県は2月、県民健康管理調査で子ども75人にがんの疑いが判明し、このうち手術を受けた33人にがんが確認されたと発表した。種市医師は「大人になって見つかるがんが今回の調査で発見されたとも、原発事故の影響でがんになったとも考えられる。今後も行う調査の結果を見ないといけないが、現状が安全ということではない」とした。

 その上で「福島県は県外避難者に県内に戻るよう呼び掛けている。一方で、子どもが遊ぶ屋内施設が各地に開設され、福島県立医大も放射線の影響に対応する医療拠点の設置を計画し、母親たちの不安につながっている」と指摘した。

2014/04/01

「このままでいいのか」と日本人に問う ドイツTV 『フクシマのウソ』

日本人に「このままでいいのか」と問いかける
ドイツZDF(第2ドイツテレビ=公共放送局)『フクシマのウソ』

ドイツZDF『フクシマのウソ』 (2014年3月9日公開)


ドイツZDF「フクシマの嘘」翻訳全文

福島第一原発。
事故発生から三年が過ぎたが、今でも緊急事態のままだ。
2020年に日本はオリンピックを開催することになった。
そして日本政府は、世界を安心させようと必死だ。

(テロップ)日本総理大臣 安倍晋三
「私から保証をいたします。状況はコントロールされています」

首相の発言がどこまで信用できるのか
われわれは調べることにした。

調査を進めていくと、犯罪社会の心臓部に導かれていった。
ヤクザの手先が人を集めて、福島に派遣しています。

私たちは、事故の被害が隠ぺいされ、
黙殺されていることを突き止めた。
事故のあった原子炉から離れた場所にいる科学者たちを訪ねた。
高濃度に汚染されたホットスポットや放射性物質が溜まる場所を
発見しました。

すべてがコントロールされているというのは本当なのか?

(テロップ)京都大学原子炉実験所 小出裕章
「残念ながら「アウト・オブ・コントロール」ですね。
そしてなにもコントロールできていないので
放射性物質は環境に漏れ、放射能汚染が日々広がっているのです。」

(テロップ)フクシマの嘘 第2弾
双葉町。
ここは福島第一原発と目と鼻の先にある。
特別許可を得ないと、数時間の滞在も許されない。
双葉町はいわゆる警戒区域である。
ここにはもう誰も住めない、おそらくもう永遠に。

町の中心にかかっている標語
原子力 明るい未来のエネルギー
まったく別の時代につくられた言葉だ。

井戸川克隆氏、双葉町の町長だった。 
古い武士の家系出身で先祖代々五百年以上ここで暮らしてきた。
誇り、誠実、責任感といった徳が何百年にわたって家族で受け継がれてきた。
「井戸川家の跡継ぎということは、私は井戸川家の墓守なのです。」

(テロップ)双葉町元町長 井戸川克隆
「私にはご先祖様の墓を守り、世話をする義務があります。
そしてこの義務を次の世代に受け継いでいかなければなりません。
しかしこんな状態では、もう誰にも引き継いではもらえません。」

(テロップ)井戸川美紀子
「妻として、私は死ぬまで先祖に礼をつくすつもりでした。
それがもうできないというのは、胸が引き裂かれる思いです。」

戦争、地震、津波といった災難を井戸川家は乗り越えてきた。
しかし何百年と続いた後で、この家族の歴史は
今ここ双葉で終わろうとしている。
誰も原発事故とそれが引き起こした出来事の責任を取ろうとしない。
まったく恥知らずばかりだ、と彼らは語る。

「日本では東電が好き勝手にしたい放題で
自分たちのことしか考えていません。
政府はそれをそのままに放っておきます。
政治家は原発ロビーのいいなりです。
私は、それを世界中の人々に知っていただきたい。」

郡山。
フクシマの事故現場から55キロのところにあり
20キロの立ち入り禁止地区からは大分離れている。
「私は毎日放射線の線量を測定しています。
ここは子供たちの通学路なのです。
それで原発事故のあと、測定を始めました。」

(テロップ)根本淑栄、教師
事故が起こる前は、測定など
したことがありませんでした。
根本淑栄さんは学校の先生で、一人息子の母親だ。
彼女が立ち入り禁止地区からこれだけ離れた場所で
放射線測定を行うのには理由がある。
ここには、立ち入り禁止地区よりも線量の高い場所があるのだ。

「子供が小さかったころ、みんなよくこの近所で遊んだものでした。
この場所がどこも汚染されていると思うと、とても悲しくなります。
できるだけ見ないようにしています。
だって、とても我慢できないからです。
いつも泣きそうになってしまいます。

このことはまったくマスコミでは報道されません。

ここは、あらゆる問題を抱えて悩んでいる人ばかりですが
でも、誰もここに来て、どうしているかと聞いてくれはしません。
ですから、私たちはもう忘れ去られているのだと感じています。
現実に向き合おうとするのは本当につらいです。」

浪江町
福島第一原発から14キロのところにある。
畜産農家の吉沢正巳氏は、ここから避難するのを拒否した。
「私は牛飼いですからね。私は牛抜きでは暮らせない。」

(テロップ)畜産農家 吉沢正巳
「350頭の牛と私は運命を共にしたいのです。
牛も被ばくし、人間もまた被ばくします。
よくどうしてそんな危険なところに、と聞かれます
私はもうすぐ60になるんですが
被ばくで寿命が短くなるとは思っていません。
でも、牛を見捨てるわけには絶対いきません。」

経営者が避難してここを離れていった後
吉沢さんは牛の世話を受け継いだ。
牛を放っていくことはどうしてもできなかった。
動物の多くに、しかし、変化が見られる。

「牛に現れた変化を、国に検査してもらたんです。
これが結果なんですが、
私は、これは被ばくの影響だと思ってます。
黒い和牛にこうして突然白いまだらの斑点模様が
いっぱいできたんです。
政府はそれを検査した。だけどわからない、と言うんですね。
こういう症状が出ているということはわかっても
原因はわからない、と。
福島の原発事故によって引き起こされた影響が
あらゆるところで出ている。」

しかし、破壊した原子力発電所自体では今まだ
どのような危険が進行中なのだろうか?

大阪にある京都大学の原子炉実験所
私たちは小出裕章氏に取材した。
小出氏は原子力物理学者で40年来ここで研究している。
原発事故発生以来ずっと、彼はその進展を見守ってきた。
政府や原子力業界が発表しているのより
ずっと状況はひどい
、と彼は言う。
「残念ながら『アウトオブコントロール』といわざるを得ませんね。」

(テロップ)京都大学原子炉実験所 小出裕章
「そしてなにもコントロールなどできていないからこそ
放射性物質が外に放出され、放射能汚染が毎日広がっている
のです。」

コントロールできていない?
日本だけでなく世界も変えてしまうかもしれない場所
いまだに広島の原爆より1万倍以上という放射能が潜む場所
小出氏は、首相の発言に鋭く異議を唱える理由を説明してくれた。

1号機から3号機までメルトダウンしてしまいましたが
その溶けた炉心がどこにあるのか、わからないのです。
この炉心は冷却しなければいけないので
水を原子炉建屋に注入しています

しかし、溶けてしまった炉心に水をやっているので
水は放射能で汚染されます

それは変えることができません。
そして建屋にはひびや割れ目がたくさんあるので
そこから地下水が入ってきています。
東電は、その水を循環回路でさらに利用するので
タンクで一時的に貯蔵するといっていますが
もちろん水を全部くみ上げることは不可能です。
福島第一原発の敷地はもはや放射能の泥沼と化してしまったのです。
付近の井戸からは高濃度の放射性物質が検出されました。
もちろんその一部は海に流れ出ているわけです
。」

数階分が水浸しになっている。
そして、その下のどこかに溶けた炉心がある。
つい最近も、建屋周辺にある観測井戸で採取した地下水が
1リットル当たり500万ベクレルのストロンチウムに
汚染されていることを東電が知りながら
半年も隠していたことがわかった
ばかりだ。

今でも毎日200トン以上の高濃度の汚染水が太平洋に流れ出ている
それに加え毎日40万リットルの水がくみ上げられ
このようなタンクに貯蔵されている。
今ではこうした汚染水が4億リットルもある。
これまでにすでに何度も問題や水漏れが起きている。
東電が経費節約のため放射性物質の貯蔵に
適していないタンクを選択したからだ。

「日本政府は、これまでに放出された放射線量は
概算しておよそ広島の原爆の168個分だけだと言っています
チェルノブイリ事故で出た放射能の5分の1だと
しかし福島からは、汚染水が常時、海に排出され続けているのです。
環境に放出された放射線の総量はすでに
チェルノブイリと同じ程度だと私は考えています。
そして現在でもまだ、事故は進行中です。」

しかし、どうしてこれほどの事態になってしまったのだろうか?
東京で私たちは馬淵澄夫氏と会った。彼は事故発生当時大臣を務め
事故の対応担当者として事態収束に取り組んだ人物だ。
彼は、事故発生直後に、最悪事故の規模に関し
東電がどうも真実を隠しているという疑いを持ったという。

(テロップ)2010年~2011年の管政権内閣総理大臣補佐官 馬淵澄夫
「放射能に汚染された水が漏れているかという質問をすると
東電は、水は漏れていない。そんなことはありえないと、答えました
地下水はどうなっているかと聞くと、
東電は、心配は無用だ、と答えました。
でも、それは私には疑わしく思えたので、
私は地下水の検査をするよう命じました。
東電が嘘をついていたことは、すぐに明らかになった
産業界と科学者による馬淵氏の専門家チームは
毎日数十万リットルの地下水が
福島第一の方に流れていることを突き詰め
その地下水がそこで汚染され、
さらに太平洋へと流れ出ることを懸念した。
それで一刻も早く食い止めなければならないと急ぎました。
ゆっくり構えている暇はまったくなかったのです。」

それを早く食い止めなくては、と事故発生後から
約3ヵ月後に当たる2011年6月14日、
馬淵氏は記者会見で彼の計画を発表することにした。
福島第一を取り囲む遮水壁を地下に建設するという計画だ。
しかし東電はそれに反対した。
東電が記者会見予定の前日に作った極秘書類を
ZDFが入手したが、このようなことが書いてあった。
わが社ではちょうど有価証券報告書の監査期間中であり
遮水壁を建設するということになれば、
その建設費用の記載も求めることになる

「しかしそうなれば市場は激しい反応を見せることになるだろう。
わが社が債務超過に一歩近づくと思われてしまう
それだけはぜひ回避したい。」

その影ではかなり厳しいやり取りが行われた。
計画された記者会見は行われず、
今でも福島第一原発の周辺に遮水壁はない

要するに東電は、遮水壁の費用を一切出したくなかったのです。
私は彼らにとって都合の悪いことを言っていた私を退任に追い込んだ
のです。
馬淵さえいなければ、と彼らは思ったのでしょう。
馬淵がいなければ馬淵チームもなくなる、と
私だけでなく、チームが全員いなくなりますから」

その影では、
強力でつかみどころのない産業、銀行、政治家、官僚、科学者
そしてマスコミによる日本の原子力ロビーが
ありとあらゆる方法で糸を引いていた。
事故発生後、いわゆる原子力村とすぐに対立した当時の首相も
辞任に追い込まれた

管元首相もさんざん誹謗、中傷を受けたが後日、
これらの非難はすべて当てはまらないことが判明した。
事故発生から3年後、その彼が激しく非難を展開している。

(テロップ)管直人 2010年~2011年総理大臣
背景にあったのは、いわゆる原子力村が
私をできるだけ早く首相のポストから降ろせということでした。
これはまったくの陰謀でした。私は、そう受け止めています。

そして原子力村は、あらたな看板役を見つけた。
現在の総理大臣安倍晋三である。
安倍首相は2020年のオリンピック開催権
獲得に向けて世界に対してこう宣言した。

(テロップ)日本総理大臣 安倍晋三
「福島についてご懸念をお持ちの方もいるかもしれません。
ここで私が保証いたします。状況はコントロールされています。」

現在の政府は、
再び「原子力村」の人物を諮問委員会に送り込んでいます。
これらの人物は、原発の新設を推進したい人物です。
巻き返しがすでに始まっているのです。
私たちはあるホテルで放射能物質除染の専門家に話を聞いた。
彼はある大きな研究所の責任者だ。
そのホテル、町、大学の名前、彼の研究内容も彼の素性が
推理できる手がかりとなるものいっさい伏せてほしいと言われた。
それには、理由がある。

「去年の10月始めまでは、かなり自由に意見を述べても
平気だったのですが、それから公的機関から指示が出され、
テレビに出演してはいけない

マスコミと一切接触してはならないと言われました。
オリンピックの開催地として候補するにあたり
安倍首相は、フクシマの状況はコントロールされている、
といいましたが、その後指示が来て、研究結果をもう絶対に
マスコミには公表するな、というのです。」

その研究結果というのはいったいどのようなものなのか、訊ねた。
「基本的には、福島第一原発の事故後の状況に関する一切のデータです。
私たちは現場サンプルを採集し汚染を検査しています。
実際には、なにもコントロールなどできていないのです。」

その指示に従わなければ研究プロジェクトの予算がカットされ
彼の元で働く研究員たちが失業することになる。
不安、恐怖を育む土壌。
そして、日本のマスコミはこのテーマには
怖がって触れようとしない、と彼は別れ際に語ってくれた。

私たちは京都大学の水文水資源学会の
山敷庸亮氏の研究調査を取材した。
山敷氏たちは、河川や海の放射線汚染が
どのように広がっているか調査している。

東電や政府はかねてから、水での汚染は
原発周辺の地域に限定されていると主張してきた。
山敷氏率いるチームは、事故のあった福島第一原発から
80キロ離れたこの仙台湾で土と海水を採取した。
原発からこれほど離れた場所で調査をするのは
これが初めてのことではない。
そしてその結果は衝撃的だった。

始め私たちは、放射能汚染はフォールアウトした場所と
原発の水漏れのあるところに限られているのだと思っていたのですが
実は阿武隈川流域一体で汚染が進んでいることが調査で判明しました。

「私たちの計算では、阿武隈川を通じて、
1年に約10兆ベクレルの放射性セシウムが
太平洋に放出されています。
この量は原発事故直後に海に流出した量とほぼ同じです」

山敷氏の調査結果は、阿武隈川が事故のあった原発から
遠く離れているだけでなく
直接なんの接触もないはずだけにかなり衝撃的だ。

それなのに河床は高濃度の放射性セシウムによる
汚染があることをはっきり示している。
理由は、雪解け水と雨によりフォールアウトした地域から
放射性物質が洗い流されることによる。
それが小川や支流を通じて阿武隈川に流れ込み
最終的に海へと運ばれていくのである。

しかしそれはまた、これから何十年にわたり
放射性セシウムが食物連鎖に入り込んでいくことを意味している。
誰も気にも留めない、原発事故現場から遠く離れたこの汚染源を通じて。
ここ2、3年はもう、誰もこのテーマに関心を示そうとしません。

(テロップ)京都大学 山敷庸亮
政府も地方行政も市街の除染をやることが一番の関心事で
海への流出に関しては注意を払いません。
これらの事実はすっかり無視されています。
日本政府は事故のあった原発周辺一体での魚の捕獲を禁止している。
しかし、80キロ北上したここでは許されている
。」

京都大学、その1週間後のことだ。
山敷博士は私たちに
河口デルタ地域の泥土サンプルの分析結果を見せてくれた。
海流と地形によって
放射性セシウムによる海の汚染の影響は異なるが
何箇所かで値が非常に高くなっている。

それで、状況はコントロールされているのでしょうか?

「いいえ! 難しいですね。
分析結果はさておき、これは基準値の問題なのです。
日本政府は新しい基準値を設定しました
これによれば1キロ当たり8000ベクレル以上が危険
ということになっています。
これには驚いたんですが、それは事故前の基準値は
1キロ当たり100ベクレルだった
からです。
それで、私たちが分析した値をもう一度よく見てみてください。
どれも8000ベクレル以下です。
それで誰もが大丈夫と思って忘れ始めているのです。
しかし私自身は、この汚染は実は非常に高いと思っています。
このことに世間はもっと注目すべきです。
けれども誰もこの結果に関心を寄せないので政府も何もしないのです。」

このような子供だましのトリックで
政府は問題を解決しようとしているのだ。
基準値をあげれば問題は消え、
誰も心配する必要がなくなる、というわけだ。

去るもの日々に疎し、ということか。

私たちは浪江町で牛の飼育をする吉沢正巳さんの農場に戻った。
今ではここは牛のホスピスとなってしまった。
ここで育てられた牛はかつてはよく売れ、繁盛した。
しかし2011年3月で原発が爆発して以来
それは過去のものとなり、牛は売れなくなった。
吉沢氏に、その理由を見せてもらった。
「牛たちはここにあるこういう草を食べていますからね。
放射能に汚染された草を一年中食べているんです。
放射能が体内に取り込まれているから白い斑点ができたんだと思います。
牛たちは外部と内部被爆にさらされているわけですから
この犬だって被爆しているわけですよね。」

吉沢氏には動物たちを見捨てることはできない。
「自分は外からの食料で賄っているが
牛たちには支持者たちから寄せられる寄付金だけでは足りない。
放射能で汚染された食物がどのような影響を与えるのか、
牛を検査して調べることができるはずだ。
こういう模様ね。こういう白い斑点が出ています。」

こういうのは前にはなかったんですか?
「初めてですね。もう40年も牛を飼ってきましたが
こういうのは初めてです。」

理由は何だと思いますか?
「獣医も、これは皮膚病ではないといっています。
これは皮膚の病気ではなくて、ほらここ、
肌が真っ白になっているんです。
どうしてそうなったかといえば、
それは…もう長いこと牛の世話をしてきましたけど
こういうことは初めてのことでね。
放射能の影響ということを考えないわけにはいきません。
でないと、理由は多分みつからないでしょう。」

その周辺の村などでも
農家で同じような原因不明の現象が動物に現れている。
行政からは検査が命じられ、そのあとで緊急な勧告が降りた。
「政府も何もしなかったわけではありません。
2回ほど科学者が派遣されてきて、あらゆることを調べていったんですが
それから政府は私に牛を全部殺すようにと言ってきました。
これ以上生かしておいては困るから私に殺せと
だけど私にはそれはできません。
どうして政府が牛を生かしておきたくないか
その理由は、記録を残しておきたくないんだと私は思っていますね。
だから牛を殺せ、ここを片付けろ、と言うのです。」

しかし被ばくするのは動物だけではない。双葉町に戻った。
ほぼ1万人の住民がここには住んでいた。
そのほとんどが原発に従事していた。
今ではここは原発事故による立ち入り禁止地区だ。
原子炉建屋が爆発したとき、たくさんの人が高線量の被ばくをした。
井戸川元町長も同じである。
「私たちはちょうど避難する最中でした。
病院の患者と看護婦たちがちょうど車に乗ったときです。
そのときバーンという大音響がして、それが1番目の爆発でした。
すぐに空からたくさん埃が降ってきました。
あのときの線量は非常に高かったと思うんですが
もうすぐに死ぬと思いましたね。皆、そう思ったんです。」

事故発生後初めて、井戸川夫妻は自分たちの家に戻った。
彼らは除草剤を持参した。
ここにはもう住めない、ということが彼らにはまだ納得できないのである。
ついこの間まではこの東京近郊の学校の建物が彼らの避難場所だった。
ここに約千人の被害者と共に寝起きを共にした。

井戸川氏は爆発後、放射性の埃を吸い込んで以来
のどの痛みを訴え、繰り返し鼻血を出し
胃や目が痛み、そして疲労感に苦しんでいる。

爆発直後、始めは行わないですまそうとした官庁に
被ばく量の測定をするよう、彼は迫った。
結果は数十万ベクレルのヨウ素131とセシウム137だった
しかし測定は測定だけに終わった。
それが何を意味するかについては、なにも知らされない。
「福島大学病院では、
放射線で健康被害を受けた人は誰もいない、と言うんですね。
しかし私たちは事故が起きたときすぐそばにいて
放射能を直接浴びたわけですが、
医学的な検査をなにも受けていないのです。
今だになんの検査もされていないのですよ。
私は真実を知りたいのです。
そしてそれに従った手当てを受けたいのです。」

これは2011年に福島で行われた説明会で撮影されたビデオだが、
これを見ると日本が公に健康の危険に関する評価として
どのような立場をとっているかが明らかになる。

山下教授は
政府に任命された福島の放射線健康リスク管理アドバイザーだ。
「放射能の影響はニコニコ笑っている人には来ません。
くよくよしている人に来ます。
これは明確な動物実験で解っています。」

「日本政府は非人道的です。
それを私は確信しました。
まったく情ないことです。
国民がことごとく馬鹿にされているのです。
いろいろな感情がこみ上げてきますが、
一番強いのは、激しい怒りです。」

大人と違い、子供を持つ親の要請で
子供たちには医学的な検査が行われている。
すでに地域の子供、若者たちの30万人以上が
甲状腺のスクリーニング検査を受けた。

笑っている人には放射線の被害は来ないと言った
福島県の放射線リスクアドバイザーの山下教授も出席し
検査結果が規則的に間をおきながら発表される。結果は衝撃的だ。

いくつかのカテゴリーに分類されているが
検査を受けた子供たちの約50%に甲状腺異常が検出されている。
小さい結節やのう胞からガンまでさまざまなケースがある。
親には、自分の子供がどのカテゴリーに分類されたかを知らせる手紙が届く。
根本氏のところにも、それが届いた。しかしそれには問題点がある。

「これだけでは、なにもわからないのです。
8ミリから20ミリの結節と書いてあって
一番下のカテゴリーだというのですが、
数字しか書いてなくて、
でも私はそれがどういう意味なのかわからない。
それでどのような状況にあるのかを説明してほしいのです。
でも、検査結果は渡してくれないのです。
それでわざわざ申込書を提出しなければなりませんでした。」

数ヵ月後にやっと、コピー代を払って、ようやく根本氏は、
超音波写真を含む検査結果を受け取った。
この結果だけを見ても何もわからないので彼女は病院に行き
彼女の息子はそこで2度目の検査を受けることになった。

しかしそれは
放射線リスクアドバイザー山下教授が出した規則に反している。

「私は病院から、検査をこの病院でしたということは
黙っていてほしいと頼まれました。
ですから、検査をしてもらった病院と医者の名前は
言うことができません。」

というのは、
一番下のカテゴリーに分別された症状を持つ子供たちは
2年後まで次の検診が病院で受けられないことになっているからである。
それが山下教授による指示だ。

「どうしてそのようなことをするのか私にはわかりません。
政府や県のやり方に対する不信感はそれで募る一方です。
自分たちが何を本当にしているのか、知られるのがいやなんだと思いますね。
しかし、2回目の検査をして根本氏は少し安心した。
結節が小さくなっていたからである。しかし心配はなくなってはいない。
放射能による汚染はまだ続いているからである。

薪ストーブに使っていた木なんですが
燃やしたあとの灰を測ってみたら1万5千ベクレルだった
のです。
それで薪はもう使えなくなりました。
それでそれ以来ずっとここに置いてあるんですが
これをどうしていいかわからないんです。」

高濃度放射能のゴミが自宅の庭に

困って、彼女は町の役所に聞いてみた。
役所に電話をして聞いてみたんですが
環境省に聞いてみろ、というんです。
それで環境省に聞くと、今度は市役所に聞けという。
もうどうしていいかわからない、そういう状況です。

そして彼女が連れて行ってくれたのは、
町にある公園広場の1つだ。
ここは特別な場所である。
原発事故発生後、日本では、
あらゆることがもう普通ではなくなった
ことが
ここにいるとはっきりする。

「ここは子供たちがたくさん遊びに来る場所です。
2011年の事故発生後に除染が始まったとき
放射能のゴミがこの公園に埋められたんです。
大きな機械を運んできて穴を掘り、
そこに除染工事でできた放射能のゴミを
袋に詰めたものを何個も寝かせ、また上から土をかけたのです。
最初は彼女も、なにをそこに埋めたのか知らなかったという。
しかし、それがとうとうわかったとき
根本氏は、このような場所が町のどこにどのくらいあるのか訊ねた。

「『風評被害があるといけない』また廃棄物の不法投棄が
増えるといけないという理由で教えてくれませんでした。
市がどこに埋められているか知っていれば十分で
市民は知る必要がない、と言われました。」

放射能のごみを公園に埋め、
それは誰も知らない方がよい。
子供たちの遊び場には、
一応、立ち入り禁止のロープが張られている。
芝生養生中のためという理由で
立ち入り禁止の立て札が立っている。
ドイツの諺にあるように
草が多く茂ればすべて忘却の彼方、ということか。

仙台駅。
私たちはここで福島の除染作業員を集めていると聞き
やってきた。
3晩かかってやっと接触に成功した。
取材に応じてくれるよう彼らを説得するのは
とても難しい。
危険だからだ。

「もちろん危険です。彼らの商売に影響を与えるから
これは何十億という金のかかった利権である。
ある地方一帯を除染する作業だ。
福島県の大部分は、高線量のフォールアウトのため
住むことができない。
政府はそれを変え、住民に帰還させたいと思っている。
しかしそのためには数百万立方メートルという
汚染された土を剥ぎ取らなければならない。
福島県のいたるところで土が掘られ、
パワーショベルが動いている。
この危険な作業に携わる労働力がたくさん必要だ。
そしてここで活躍するのがやくざである。

商売はどのように行われるんですか?
「やくざ自身は、現場での作業には関わりません。
彼らの手先である組織が人集めをして
作業員を福島に派遣するだけです。

どうやって、どういう人を集めるんですか?
「借金のある人、または失業者などですね。
仙台の駅周辺で彼らは、仕事の口があるよと声をかけるのです。
ただ実際に金を受け取ってみると、
約束した額よりかなり少ないのです。

で、どれくらい受け取るものなんですか?
日取りで5千円から9千円といったところですが
そこから1割から2割がやくざにピンはねされます。

やくざがことに好んで雇うのはホームレスだ。
それには理由があると、今井誠二牧師は語る。
今井牧師は何年も前から仙台のホームレス支援組織で働いている。
原発事故発生後、ホームレスの数は著しく増加したという。
何十万人という人が地震、津波、原発事故で一切合財を失ったからだ。

ホームレスには職も、住所も、住民票もないので
それで普通の仕事の口はありません。
しかし原子力業界では仕事がもらえるのです。
例えば除染作業や原子炉の収束作業などです。
どれもとても危険で、誰もやりたがらないからです。
それで、弱い者がこうして雇われていくのです。

やくざに雇われ、彼らが行き着くのは
危険な場所にある下請け会社である。
住む場所も家族もなく、また福島にいたということがわかると
ほかの仕事にありつけなくなるという不安があることが
原発産業にとって皮肉にも好都合な効果を招いていると
今井牧師は語る。

「実際に病気になっても証拠がありません。
彼らは『いや、福島にいたことはない』と言いますから。
彼らは嘘をつかざるを得ないのです。
そしてもしガンになることがあっても
彼らがそこいにたという証拠はありません。

まったくひどいことです。
大事なのは金のことばかりで、
人間のことはどうでもいいのです。」

いつも金の話しばかりです。
私たちに情報を提供してくれた人も
やくざの手先として働いていたが足を洗った。
もう福島で働きたくないと思ったからだ。
しかし沈黙を破るのは非常に危険だ、と彼は言う。
顔や姿を見せるのはとても危険です。

どんなことが起きるのでしょうか?
「恐ろしいことをするだろうね。
殺しはしないまでも、思い知れという
かなりの戒めが待っているだろう。
きっと拉致されて、暴行されるだろう。
危険な仕事を引き受けるホームレスは
いつか死んでも、死を悼んでくれる人もいない。
原子力ムラに対立した総理大臣や大臣は
辞任に追い込まれ、科学者たちに圧力がかかり
事故の真実を隠蔽する ― いったいどうしてなのか?

私たちは答えを求めて福島県の隣にある新潟県を訪れた。
ここには世界最大の原発がある。

日本が自慢とするこの原発設備が建つのは、
新潟市の中心街から目と鼻の先だ。
福島の原発事故以来、運転が停止されている。
東電と政府はこの原発を再稼動したいと思っている。
原子力発電をまた復活させるには、
この原発が中心的な役割を果たしているからだ。
私たちは新潟県知事に取材した。
この知事は、今までは政府与党である自民党に支持を受けていたが
それは取り消されることになるかもしれない。
それは、この知事が再稼動を拒否しているからだ。

(テロップ)新潟県知事 泉田裕彦
「現在の『東電再建計画』では、事故があった場合に
銀行も株主も責任を取らなくていいことになっています。
そう計画書で設定されている
のです。
もし事故が起きれば、そのしわ寄せは、
また、みんな国民に来るのです。
しかし銀行や投資家が
なんの損害も受けないということであれば
彼らはこれからもリスクを冒していくでしょうし
安全第一の文化が壊されていくでしょう。

私はこれを、倫理的なリスク計画と呼んでいるのです。」

ここでも何百億、何千億という単位のお金が絡んでいる。
東電の広瀬社長は、泉田知事に再稼動計画を認めてもらおうと
あらゆる手を尽くしている。

フクシマの事態はコントロールされている、
あのような事故があっても
「原子力エネルギーは制御可能だ」という
メッセージは変えようとしない。

「東電は真実を話してきませんでしたし、
これまで一切責任を取らないできました。
すべてコントロールされているなどというのは、
私にはなんの意味もない言葉です。
彼らがたくさんのことで嘘をついてきたというだけでなく
たくさんの問題に正面から立ち向かうのを避けてきたことが
問題なのです。」

原子力ムラが嘘、隠蔽、危険の過小評価をするのには
理由がある、と泉田知事は語る。
日本には安全神話というのがあります。
安全神話は、日本の原発は安全で
ほかの国のような事故は決して起きない、というものでした。
今原発の再稼動に関する議論を見ていますと
彼らが新しい安全神話をつくろうとしている
という印象を受けますね。」

新しい安全神話?
私たちは福島に戻った。島の反対側だ。
日本政府と原子力ロビーが原発事故の事態が
制御できると見せようとしていることは確かだ。
福島第一原発の周りに凍土遮水壁を
作るという計画も、それに属している。
これで常時原子炉建屋に流れ込み
放射能でたちまち汚染されていく
地下水を食い止めようというのである。
新川達也氏は政府の原発事故収束対応室長だ。
遮水壁がいつ完成するのか、彼に話を聞いた。

(テロップ)事故収束対応室長 新川達也(経済産業省)
現在、可能性を探る調査を行っているところです。
今年度終了までにプロジェクトの工事を終えたいと希望しています。
日本の会計年度は3月に終わりますので
つまり2015年の3月を目指しています。
それから土が実際に凍るまで2ヶ月ほどかかります。」

遮水壁を作るという初めの計画があがってから数年が過ぎた。
この数年の間に毎日、何百トンもの地下水が放射能に汚染され
そのうち毎日200トン以上の水が太平洋に流出している。
そしていまだに責任者たちは可能性調査をしているという。
そもそも、凍土による遮水壁が本当に目的を果たすかという疑問には
まだ完全に答えが出ていないのが現状だ。
そのことはこの政府代表者も認めた。

「まだいくつかの課題があります。
まず、この技術は、これほどの規模で試されたことがありません。
そして地下水の移動速度という問題があります。
私たちは低いと考えていますが、もし速度が高ければ水は凍りません。
それから地質の問題があります。
原発の周りにどのようなものが埋まっているか
土がその条件で凍るか、ということです。」

それでも状況がコントロール下にあるとお思いですか?

「はい!」

まだ技術の性能が試されたこともなく
福島の現場の条件でそれが機能するかどうか明らかでなくても、
それでもコントロールできている?

かつて事故収束を担当した馬淵澄夫氏が
なぜ東電と政府がこの計画を決定したのか
その簡単な理由を教えてくれた。

「国がお金を出すのは、凍土遮水壁のように
技術的に難解でまだ課題の多いものに対してだけなのです。
これが日本のやり方なのです。
それより、どうやったら確実に
水をせき止められるのか考えなければいけない。
難解なプロジェクトを始めることが目的ではあり得ないはずです。
よく性能が実証されている技術を使うべきです。
しかし国は、技術的に手間のかかる初めてのプロジェクトにだけ
お金を支払うことになっています。
それで凍土遮水壁が作られるのです。」

つまり、投資家や株主は責任を問われず、
したがって賠償をする必要がなく

まだ実証されていない技術に頼って
日本と世界を大災害から守ろうということだ。
そして日本の一般大衆は、これらのことを
ほとんど気にもとめない

マスコミは、福島第一原発から今でも発生している
危険や事故の影響についてほとんど報道しない

それで、忘れられたと感じている人たち
牛飼いの吉沢さんのような人たちに
世論を喚起する役を任せるよりないようだ。
彼は月に一度ここ、東京の渋谷を訪れる。

「東京の住民の皆さん、話を聞いてください。
あなた方が使っている電気は
毎晩こうして明るく照らしてくれる東京の電気は
40年来、福島から来ているんです。
今は福島の火力発電所から来ています。
だけど、人間として、どうか考えてみてほしいのです。
浪江町や富岡町、大熊町、小高町、飯館村の人たちは
もう二度と故郷に帰ることができない。
米づくりなど二度とできやしないよ。
再稼動と今言っている人たちは、ここを見たことがないんです。
ことに安倍首相は何も見ていません。本当にがっかりします。」

事故を起こした原発を所有する東電に
状況をどう判断しているか訊いてみようと思った。
状況が本当にコントロール下にあると思っているのか
嘘をついているといわれてどう反論するのか。
私たちが質問表を用意すると
応じてもいいといわれていたインタビューを断られた。

(テロップ)
ヨハネス・ハーノ記者報告
製作・ZDF
字幕翻訳・無限遠点


◆フクシマの嘘 其の弐(隠ぺい・詭弁・脅迫)

2014/03/25

今、思い出したい 村上春樹さんの脱原発スピーチ

「我々は電力会社を非難し、政府を非難します。それは当然のことであり、必要なことです。しかし同時に、我々は自らをも告発しなくてはなりません。我々は被害者であると同時に、加害者でもあるのです。そのことを厳しく見つめなおさなくてはなりません。そうしないことには、またどこかで同じ失敗が繰り返されるでしょう。
 『安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませんから』
 我々はもう一度その言葉を心に刻まなくてはなりません」

村上春樹 原発政策を批判

村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ
(2011年6月10日 毎日新聞)から抜粋

「原子炉は効率が良い発電システムであると、電力会社は主張します。つまり利益が上がるシステムであるわけです。また日本政府は、とくにオイルショック以降、原油供給の安定性に疑問を持ち、原子力発電を国策として推し進めるようになりました。電力会社は膨大な金を宣伝費としてばらまき、メディアを買収し、原子力発電はどこまでも安全だという幻想を国民に植え付けてきました。

 そして気がついたときには、日本の発電量の約30パーセントが原子力発電によってまかなわれるようになっていました。国民がよく知らないうちに、地震の多い狭い島国の日本が、世界で三番目に原発の多い国になっていたのです。

 そうなるともうあと戻りはできません。既成事実がつくられてしまったわけです。原子力発電に危惧を抱く人々に対しては「じゃああなたは電気が足りなくてもいいんですね」という脅しのような質問が向けられます。国民の間にも「原発に頼るのも、まあ仕方ないか」という気分が広がります。高温多湿の日本で、夏場にエアコンが使えなくなるのは、ほとんど拷問に等しいからです。原発に疑問を呈する人々には、「非現実的な夢想家」というレッテルが貼られていきます。

 そのようにして我々はここにいます。効率的であったはずの原子炉は、今や地獄の蓋を開けてしまったかのような、無惨な状態に陥っています。それが現実です。

 原子力発電を推進する人々の主張した「現実を見なさい」という現実とは、実は現実でもなんでもなく、ただの表面的な「便宜」に過ぎなかった。それを彼らは「現実」という言葉に置き換え、論理をすり替えていたのです。

 それは日本が長年にわたって誇ってきた「技術力」神話の崩壊であると同時に、そのような「すり替え」を許してきた、我々日本人の倫理と規範の敗北でもありました。我々は電力会社を非難し、政府を非難します。それは当然のことであり、必要なことです。しかし同時に、我々は自らをも告発しなくてはなりません。我々は被害者であると同時に、加害者でもあるのです。そのことを厳しく見つめなおさなくてはなりません。そうしないことには、またどこかで同じ失敗が繰り返されるでしょう。

 「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませんから」
 我々はもう一度その言葉を心に刻まなくてはなりません。

全文 

福島原発事故:被ばく線量を公表せず 想定外の高い数値で

福島原発事故:被ばく線量を公表せず 想定外の高い数値で
(毎日新聞 2014年03月25日 07時00分)

 ◇内閣府のチーム、福島の3カ所

 東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示の解除予定地域で昨年実施された個人線量計による被ばく線量調査について、内閣府原子力被災者生活支援チームが当初予定していた結果の公表を見送っていたことが24日、分かった。関係者によると、当初の想定より高い数値が出たため、住民の帰還を妨げかねないとの意見が強まったという。調査結果は、住民が通常屋外にいる時間を短く見積もることなどで線量を低く推計し直され、近く福島県の関係自治体に示す見込み。調査結果を隠したうえ、操作した疑いがあり、住民帰還を強引に促す手法が批判を集めそうだ。

 毎日新聞は支援チームが昨年11月に作成した公表用資料(現在も未公表)などを入手した。これらによると、新型の個人線量計による測定調査は、支援チームの要請を受けた日本原子力研究開発機構(原子力機構)と放射線医学総合研究所(放医研)が昨年9月、田村市都路(みやこじ)地区▽川内村▽飯舘村の3カ所(いずれも福島県内)で実施した。

 それぞれ数日間にわたって、学校や民家など建物の内外のほか、農地や山林などでアクリル板の箱に個人線量計を設置するなどして線量を測定。データは昨年10月半ば、支援チームに提出された。一般的に被ばく線量は航空機モニタリングで測定する空間線量からの推計値が使われており、支援チームはこれと比較するため、生活パターンを屋外8時間・屋内16時間とするなどの条件を合わせ、農業や林業など職業別に年間被ばく線量を推計した。

 関係者によると、支援チームは当初、福島県内の自治体が住民に配布した従来型の個人線量計の数値が、航空機モニタリングに比べて大幅に低かったことに着目。

 関係省庁の担当者のほか、有識者や福島の地元関係者らが参加する原子力規制委員会の「帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム」が昨年9〜11月に開いた会合で調査結果を公表し、被ばく線量の低さを強調する方針だった

 しかし、特に大半が1ミリシーベルト台になると想定していた川内村の推計値が2.6〜6.6ミリシーベルトと高かったため、関係者間で「インパクトが大きい」「自治体への十分な説明が必要」などの意見が交わされ、検討チームでの公表を見送ったという。

3市村に報告へ 

 その後、原子力機構と放医研は支援チームの再要請を受けて、屋外8時間・屋内16時間の条件を変え、NHKの「2010年国民生活時間調査」に基づいて屋外時間を農業や林業なら1日約6時間に短縮するなどして推計をやり直し、被ばく推計値を低く抑えた最終報告書を作成、支援チームに今月提出した。支援チームは近く3市村に示す予定だという。

 支援チームの田村厚雄・担当参事官は、検討チームで公表するための文書を作成したことや、推計をやり直したことを認めた上で、「推計値が高かったから公表しなかったのではなく、生活パターンの条件が実態に合っているか精査が必要だったからだ」と調査結果隠しを否定している。

 これに対し、独協医科大の木村真三准教授(放射線衛生学)は「屋外8時間・屋内16時間の条件は一般的なもので、それを変えること自体がおかしい。自分たちの都合に合わせた数字いじりとしか思えない」と指摘する。

 田村市都路地区や川内村東部は避難指示解除準備区域で、政府は4月1日に田村市都路地区の避難指示を解除する。また川内村東部も来年度中の解除が見込まれている。【日野行介】

福島 第2回 甲状腺検査 評価部会 2014.3.2

◆第2回 甲状腺検査評価部会(ノーカット版)2014.3.2

「甲状腺検査は過剰診療か」がん増加で激論〜福島健康調査

甲状腺がんデータ

◆第2回 甲状腺検査評価部会 記者会見

2014/03/23

「お金より幸せが大事」というブータンの考え方

GNP(国民総生産)よりGNH(国民総幸福)=「お金より幸せが大事」という国、ブータンから来日した友人と、熊本で開催されるフェアトレード国際会議で対談します。

「お金より幸せが大事」というのは、あたりまえの考え方だと思いますが、日本では今、それがあたりまえではなく、「いのちよりお金が大事」になっていることが多いようです。もう少し言うと「他人のいのち」より「自分のお金」が大事ということが「あたりまえ」になっていないでしょうか。原発などがその象徴で、自分たちにお金が入るなら、ウラン鉱山や原発周辺の子どもたち、海の生物や未来世代のいのちが脅かされても目をつぶる人はたくさんいます。

官僚や政治家や専門家、財界人に目立ち、大企業には「他者のいのち」より「自社のお金」が大事という傾向が強いですね。しかし、もともと人間は、他者と共に生きることに喜びや幸せを感じる生き物だと思います。そうした本当の人間性を思い出し、取り戻すヒントについて、「お金より幸せが大事」だと国民の大半が考えているブータンの友人と話し合ってみたいと思っています。

第8回フェアトレードタウン国際会議 in 熊本 3月28日(金)15:00~16:30

ナマケモノ倶楽部の友産友消?ローカル化とフェアトレード
〜地域と地域がつながって、互いの文化や暮らしのあり方を育て合うフェアトレード〜

GNHブータン 笑顔の子ども

 福岡はウインドファームの中村隆市さんとブラジルのカルロスさんの絆からはじまり、全国のスローカフェムーブメント、slowwatercafeのエクアドルの女性や辺境の村とのものづくり、そして今始まろうとしている、ブータンのチモン村のコットンのプロジェクトについて、生産者リーダーのペマさんをまねいて、ナマケモノ倶楽部のフェアトレードを縦横無尽にお話します。

 小さな観光とものづくりの両輪は、これからローカル化する日本の地域づくりの参考にもなること間違いなしです。

出演者:

  辻信一(ナマケモノ倶楽部世話人、明治学院大学教授)
  
  ペマ・ギャルポ(ブータン「チモン・モアン」プロジェクト代表、エンシェント・ブータン・ツアーズ&トレックス)

GNHブータンのペマと辻さん
        (ペマさんと辻信一さん)

  藤岡亜美(ナマケモノ倶楽部共同代表、スローウォーターカフェ有限会社)

  
  中村隆市(ナマケモノ倶楽部世話人、ウィンドファーム代表)
  

テーマ:

 ペマさんの出身地でもあるブータン東部奥地の村チモンで、コットン文化再生のための「チモン・モアン」プロジェクト とGNHツアーの名で知られるスローツーリズム、ナマケモノ倶楽部が発足当初から取り組んできたエクアドルでのフェアトレードやスローツーリズムなどの事例をもとに、フェアトレードに変わる「シェアトレード」と地産地消に変わる「友産友消」、エコツーリズムや農の可能性について語り合っていく。

●各地の事例紹介

 1.ブータンチモン・モアンプロジェクト、GNHツアー

 2.ナマケモノ倶楽部、Slowwatercafeやウインドファームなどのエクアドルでのフェアトレード、スローツーリズム事業

●出演者全員で「シェアトレードと友産友消」についてパネルディスカッション
*1階の見本市会場では、ブータンとエクアドルの 商品の販売もあります。

2014/03/22

今、思い出したい 渡辺謙さんの脱原発スピーチ

全国の世論調査で、原発再稼働「賛成」28% 「反対」が59% と2倍以上が原発再稼働に反対する中で、安倍政権は今夏にも原発を再稼働させようとしています。

福島原発事故の翌2012年、世界経済フォーラムに日本の芸能人として初参加した渡辺謙さんのスピーチは、これからの日本と世界が向うべき方向のヒントになる素晴らしい内容でした。しかし、マスメディアの多くは、スピーチの最も重要な部分を伝えませんでした。そのため、以下のスピーチ内容はほとんど知られていません。

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 国は栄えていくべきだ、経済や文明は発展していくべきだ、人は進化していくべきだ。私たちはそうして前へ前へ進み、上を見上げて来ました。しかし、度を超えた成長は無理を呼びます。日本には「足るを知る」という言葉があります。自分に必要なものを知っていると言う意味です。人間が一人生きて行く為の物質はそんなに多くないはずです。

こんなに電気に頼らなくても人間は生きて行けるはずです。「原子力」という、人間が最後までコントロールできない物質に頼って生きて行く恐怖を味わった今、再生エネルギーに大きく舵を取らなければ、子供たちに未来を手渡すことはかなわないと感じています

 私たちはもっとシンプルでつつましい、新しい「幸福」というものを創造する力があると信じています。がれきの荒野を見た私たちだからこそ、今までと違う「新しい日本」をつくりたいと切に願っているのです。今あるものを捨て、今までやって来たことを変えるのは大きな痛みと勇気が必要です。しかし、今やらなければ未来は見えて来ません。心から笑いながら、支え合いながら生きて行く日本を、皆さまにお見せできるよう努力しようと思っています。そしてこの「絆」を世界の皆さまともつないで行きたいと思っています。

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「原発の再稼動をどうするのか」という岐路に立つ今
多くの人に渡辺謙さんのスピーチを伝えたいと思います。

渡辺謙さん、ダボス会議でスピーチ 原子力からの転換訴える
 (2012年1月26日 東京新聞)

 スイスで25日に開会した世界経済フォーラム年次総会「ダボス会議」で、俳優の渡辺謙さんがスピーチに立ち、各国から寄せられた東日本大震災の被災地支援への深い感謝と立ち上がる決意を語るとともに、原子力から再生エネルギーへの転換を訴えた。

 渡辺さんは、震災発生直後から、インターネットにメッセージなどで被災者を応援するサイト「kizuna311」を立ち上げ、現地を幾度も訪れるなど、支援活動を積極的に続けている。

 スピーチは現地時間25日午前(日本時間同日午後)に行われた。渡辺さんは「私たちの決意として、世界に届いてほしいと思います」と話している。

 スピーチ全文は次の通り。

 初めまして、俳優をしております渡辺謙と申します。

 まず、昨年の大震災の折に、多くのサポート、メッセージをいただいたこと、本当にありがとうございます。皆さんからの力を私たちの勇気に変えて前に進んで行こうと思っています。

 私はさまざまな作品の「役」を通して、これまでいろんな時代を生きて来ました。日本の1000年前の貴族、500年前の武将、そして数々の侍たち。さらには近代の軍人や一般の町人たちも。その時代にはその時代の価値観があり、人々の生き方も変化してきました。役を作るために日本の歴史を学ぶことで、さまざまなことを知りました。ただ、時にはインカ帝国の最後の皇帝アタワルパと言う役もありましたが…。

 その中で、私がもっとも好きな時代が明治です。19世紀末の日本。そう、映画「ラストサムライ」の時代です。260年という長きにわたって国を閉じ、外国との接触を避けて来た日本が、国を開いたころの話です。そのころの日本は貧しかった。封建主義が人々を支配し、民主主義などというものは皆目存在しませんでした。人々は圧政や貧困に苦しみ生きていた。私は教科書でそう教わりました。

 しかし、当時日本を訪れた外国の宣教師たちが書いた文章にはこう書いてあります。人々はすべからく貧しく、汚れた着物を着、家もみすぼらしい。しかし皆笑顔が絶えず、子供は楽しく走り回り、老人は皆に見守られながら暮らしている。世界中でこんなに幸福に満ちあふれた国は見たことがないと。

 それから日本にはさまざまなことが起こりました。長い戦争の果てに、荒れ果てた焦土から新しい日本を築く時代に移りました。

 私は「戦後はもう終わった」と叫ばれていたころ、1959年に農村で、教師の次男坊として産まれました。まだ蒸気機関車が走り、学校の後は山や川で遊ぶ暮らしでした。冬は雪に閉じ込められ、決して豊かな暮らしではなかった気がします。しかし私が俳優と言う仕事を始めたころから、今までの三十年あまり、社会は激変しました。携帯電話、インターネット、本当に子供のころのSF小説のような暮らしが当たり前のようにできるようになりました。物質的な豊かさは飽和状態になって来ました。文明は僕たちの想像をも超えてしまったのです。そして映画は飛び出すようにもなってしまったのです。

 そんな時代に、私たちは大地震を経験したのです。それまで美しく多くの幸を恵んでくれた海は、多くの命を飲み込み、生活のすべてを流し去ってしまいました。電気は途絶え、携帯電話やインターネットもつながらず、人は行き場を失いました。そこに何が残っていたか。何も持たない人間でした。しかし人が人を救い、支え、寄り添う行為がありました。それはどんな世代や職業や地位の違いも必要なかったのです。それは私たちが持っていた「絆」という文化だったのです。

 「絆」、漢字では半分の糸と書きます。半分の糸がどこかの誰かとつながっているという意味です。困っている人がいれば助ける。おなかがすいている人がいれば分け合う。人として当たり前の行為です。そこにはそれまでの歴史や国境すら存在しませんでした。多くの外国から支援者がやって来てくれました。絆は世界ともつながっていたのです。人と人が運命的で強く、でもさりげなくつながって行く「絆」は、すべてが流されてしまった荒野に残された光だったのです。

 いま日本は、少しずつ震災や津波の傷を癒やし、その「絆」を頼りに前進しようともがいています。

 国は栄えていくべきだ、経済や文明は発展していくべきだ、人は進化していくべきだ。私たちはそうして前へ前へ進み、上を見上げて来ました。しかし、度を超えた成長は無理を呼びます。日本には「足るを知る」という言葉があります。自分に必要なものを知っているという意味です。人間が一人生きて行く為の物質はそんなに多くないはずです。

こんなに電気に頼らなくても人間は生きて行けるはずです。「原子力」という、人間が最後までコントロールできない物質に頼って生きて行く恐怖を味わった今、再生エネルギーに大きく舵を取らなければ、子供たちに未来を手渡すことはかなわないと感じています。

 私たちはもっとシンプルでつつましい、新しい「幸福」というものを創造する力があると信じています。がれきの荒野を見た私たちだからこそ、今までと違う「新しい日本」をつくりたいと切に願っているのです。今あるものを捨て、今までやって来たことを変えるのは大きな痛みと勇気が必要です。しかし、今やらなければ未来は見えて来ません。心から笑いながら、支え合いながら生きて行く日本を、皆さまにお見せできるよう努力しようと思っています。そしてこの「絆」を世界の皆さまともつないで行きたいと思っています。

・・・・・・・・

大手メディアが渡辺謙の脱原発スピーチを伏せていた
(2012年02月01日 NAVERまとめ)から抜粋

渡辺謙氏の世界経済フォーラム(WEF)スピーチ報道に見られる各メディアの原発依存度

俳優の渡辺謙氏が、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF: World Economic Forum)に日本の芸能人としては初めて参加して、脱原発を訴えた。しかし、日本のメディアは渡辺氏がダボス会議でスピーチをしたことには触れているが、その内容は、「絆の大切さ」を語ったことのみが強調されており、渡辺氏が「脱原発」を訴えたことには触れないメディアが多かった。

Mad Amano 渡辺謙の脱原発スピーチを削除したメディア


原発再稼働「反対」59% 朝日新聞世論調査
(2014年3月18日 朝日新聞デジタル)

 朝日新聞社が15、16日に実施した全国世論調査(電話)で、原子力発電所の運転再開の賛否を尋ねたところ、「賛成」は28%で、「反対」の59%が上回った。安倍政権のもと、今夏にも九州電力川内原発(鹿児島県)が再稼働することが有力視されているが、原発の再稼働反対派が多数を占めた。

朝日:原発の運転再開に反対59%賛成28%

 昨年7月、9月、今年1月の調査でも同じ質問をしており、「反対」はいずれも56%だった。今回の調査では、男性は「賛成」が39%、「反対」が51%だったのに対し、女性は18%対66%と「反対」が圧倒的だった。

 原発を段階的に減らし、将来は、やめる「脱原発」については、「賛成」が77%で、「反対」の14%を引き離した。

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