2014/07/13

東大名誉教授「戦前と似ている」 中学生「僕は戦場で人を殺せません」

集団的自衛権をめぐって若い世代やお母さんたちと話す中で、話題になった記事をピックアップしてみました。

東大名誉教授・石田雄氏 「戦争に向かった戦前と似ている」
 (2014年7月7日 日刊ゲンダイ)から抜粋

学徒出陣した私には首相のいかがわしさがすぐ分かる

 先月、朝日新聞の「声」欄に、「人殺しを命じられる身を考えて」という投書が載った。末尾には大学名誉教授 石田雄(東京都 91)とある。

朝日新聞「声」 石田雄 大学名誉教授「人殺しを命じられる身を・・・」

この投書が話題になったのは、石田氏は戦争の生き証人であるだけでなく、その生涯をかけて、「どうしたら、二度と戦争を繰り返さないか」を研究してきた学者であるからだ。投書した老学者の目に、いまの安倍政権はどう映っているのか。

――なぜ、投書を書かれたのか。やむにやまれぬものがあったのでしょうか?

 私は軍国青年だったんですよ。自分がなぜ、そうなったのか。それを明らかにするために研究者になったんです。二度と戦争を起こさせないために政治学、社会科学を研究してきたつもりでしたが、こういう時代が来ちゃった。

――こういう時代とは?

 戦前、戦争に向かっていった時代と非常に似ていますね。しかし、この年ですから、デモにも行けないし、官邸前で大きな声を出すわけにもいかない。社会科学者として何ができるか。切実に考えて、やむなく、朝日新聞に投書したのです。

――具体的には、どの部分が戦前と似ているのでしょうか?

 私は「日本の政治と言葉」という本を書いた際、「平和」という言葉が歴史上、どういうふうに使われたかをフォローしたことがあるんです。平和というのは最初は、非暴力という意味で使われる。しかし、日本においては次第に東洋平和という使い方をされて、日清、日露、日中戦争において戦争の大義にされていく。これは日本の戦争に限った話ではなく、ありとあらゆる戦争の言い訳、大義名分に「平和」という言葉が利用されてきたのです。唯一の例外がナチス・ドイツの侵略ですね。こういう歴史を見ていれば、安倍首相が唱える「積極的平和主義」という言葉のいかがわしさがすぐわかるんですよ。

――平和という言葉の使い方がまず、そっくりだと。

 それと排外的なナショナリズムのあおり方ですね。積極的平和主義と排他主義が重なり合うと、非常に危険な要素になります。平和とは非暴力であり、非暴力とは敵を憎まないことです。敵を理解することで、問題を解決しようという考え方です。しかし、今の安倍政権は中国、韓国を挑発し、緊張をつくり出している。そこに積極的平和主義が重なるものだから、危ないのです。

――政府は集団的自衛権の行使についても、限定的であって、戦争する国になるわけじゃないと主張しています。

 海外の邦人を保護するため、と言っていますね。この理屈も戦前と似ています。1932年の第1次上海事変の直前、日本人の僧侶数人が殺傷される事件が起こった。日本政府は邦人の生命を守るという名目で、上海の兵力を増強し、戦闘が拡大。その後、本格的な日中戦争になりました。個別的自衛権であれば、「日本の領土内に攻め込まれたとき」という歯止めがかかりますが、邦人保護という名目で海外に出ていけば、歯止めがなくなってしまうのです。

――駆けつけ警護はどうですか?

 アフガニスタンで援助活動をしているペシャワール会の中村哲代表は「自衛隊が邦人救助に来るのは危ないからやめてほしい」と言っています。実際、ペシャワール会は日本がインド洋の給油活動をする前は、車両に日の丸を掲げて活動していた。それが守り札になったからです。しかし、給油活動を境に日の丸を消した。米国と一体と見られる懸念があったからでしょう。集団的自衛権による武力行使や集団安全保障による制裁措置に自衛隊が参加すれば、ますます、憎悪と攻撃の対象になる。もうひとつ、集団的自衛権で海外に出ていけば、おそらく、米軍の傘下に入る。邦人がいなくなったから帰ります、なんて言えるでしょうか。米軍は無人機で攻撃する。一般市民が巻き添えになれば、その恨みは陸上で展開している自衛隊に向く。こうなる可能性もあるわけです。 

――戦後70年間、せっかく平和国家としての地位があるのに、あえて、それを捨てて、恨みを買う必要があるのか、ということですね。

 言葉がわからない地域で武力行使をするのがいかに危ないか。イラクに駐留する米軍が「止まれ」という制止を振り切った車両を攻撃したら、殺されたのは、お産が近づき、病院に急ぐ妊婦だったという報告もありました。相互理解がなければ、どんどん、紛争は激化してしまう。それよりも、日本は戦後一人も海外で人を殺していないというプラスの遺産を生かすべきです。非武装の支援に徹すれば、外交的パワーもついてくる。その遺産を今、食い潰してしまうのは誠に愚かなことです。

――先生は殺せと命じられた身にもなってみろ、と投書で書かれましたね。

 私の父親は二・二六の直後に警視総監になったものだから、寝るときも枕元に拳銃を置いていた。父親は神経がもたず8カ月で辞任しましたが、私も武器恐怖症になって、不眠症が続いた。学徒出陣となって、徴兵検査のときは兵隊に行くべきだと思っていたが、人を殺す自信がなかった。東京湾の要塞重砲兵に配属になったのですが、軍隊というのはいつでも誰でも人を殺せる人間を作る。そういうところなんですね。敵を突き殺す訓練をやらされ、「そんなへっぴり腰で殺せるか」と殴られる。命令があれば、それがいいか悪いかを考えちゃいけない。なぜ、それをやるのかを聞いてもいけない。幸い、負け戦でしたから、敵が攻めてきて殺されるのを待っているような状況でした。そんな中、東京空襲に来た米軍の戦闘機が東京湾に墜落して、パイロットが泳いできたんですね。捕まえて司令部に報告すれば、「殺せ」と命令されるかもしれない。捕虜を殺すのは国際法違反です。しかし、命令に背けば、陸軍刑法で死刑です。これは大変なことになったと悩みました。

――しかし、命令する側は平気で「殺せ」というわけですね。憲法解釈を変えれば同じような境遇に自衛隊員も置かれる。殺される方もたまらないが殺す方も大変だ。そういう国に戻そうとしている安倍首相という政治家をどう見ていますか?

 自分よりも不利な人の立場で物事を考えられないのだと思います。他者感覚の欠落、共感能力の欠如というか、ずっとチヤホヤ育てられると、そうなっていくのかもしれません。デンマークの陸軍大将、フリッツ・ホルンは戦争絶滅法案なるものを提唱していて、開戦後10時間以内に元首、首相、閣僚、議員を最前線に行かせる。そういうことを決めれば戦争はなくなると言っています。そういう立場に立たされれば、積極的平和主義なんて、簡単に言えるわけがないのです

――国民も正念場ですね。

 一番恐れているのは沈黙の螺旋です。出る杭は打たれるからと黙っていると、その沈黙がだんだん広がって誰も声を出せなくなる。若い人の方が「出る杭は打たれる」と心配するでしょうから、ここは年長者が声を出さなければいけないと思います。


自衛隊来るほうが危険 
アフガンで人道支援 ペシャワール会 中村哲氏
(2014年5月16日 西日本新聞)

中村哲 自衛隊来る方が危険

アフガニスタンで医療活動や灌漑水利事業などの人道支援を30年間続けている非政府組織『ペシャワール会』(事務局・福岡市)の現地代表中村哲氏(67)=写真=は15日、西日本新聞の電話取材に応じ、集団的自衛権が行使された場合、安倍晋三首相の主張とは逆に、海外で邦人が危険に巻き込まれる可能性が高まることを指摘。憲法9条の存在が国際社会での日本の立場を高めていることを強調した。

アフガニスタン人にとって、日本は軍事行動に消極的な国だと思われています。一言で言うと、敵意のない国。これは、自衛隊の行動を縛ってきた、憲法9条の威力です。

アフガニスタン人も、日本には他国の戦争に加担しないという『掟』があることを知っています。

アフガニスタンで活動する中で、米軍のヘリコプターに撃たれそうになったり、米軍に対する反政府側の攻撃に巻き込まれそうになったりしたことはありますが、日本人だからという理由で標的にされたことはありません。この『掟』があるからです。

今、活動拠点のアフガニスタン東部のジャララバードには私以外、外国人はいません。大勢いた欧米の人は逃げ出しました。米同時多発テロの後、米国を中心とする多国籍軍が集団的自衛権を行使し、軍服を着た人々がやって来てから、軍事行動に対する報復が激しくなり、国内の治安は過去最悪の状況です。

アフガニスタン人は多くの命を奪った米国を憎んでいます。日本が米国に加担することになれば、私はここで命を失いかねません。安倍首相は記者会見で「(現状では)海外で活動するボランティアが襲われても、自衛隊は彼らを救うことはできない」と言ったそうですが、全く逆です。命を守るどころか、かえって危険です。私は逃げます。

9条は数百万人の日本人が血を流し、犠牲になって得た大いなる日本の遺産です。大切にしないと、亡くなった人たちが浮かばれません。9条に守られていたからこそ、私たちの活動も続けてこられたのです。私たちは冷静に考え直さなければなりません。


【集団的自衛権を問う】 志願は激減 徴兵制も
 元防衛官僚・加茂市長 小池清彦さん(77歳)
 (2014年6月25日 朝日新聞)

 集団的自衛権の行使にひとたび道を開いたら、拡大を防ぐ手立てを失うことを自覚すべきです。日本に海外派兵を求める米国の声は次第にエスカレートし、近い将来、日本人が血を流す時代が来ます。自衛隊の志願者は激減しますから、徴兵制を敷かざるを得ないでしょう。

 米国の要求は原則として断れません。防衛庁勤務時代、当時悲願だった国産戦闘機の製造プロジェクトに関わりました。いざ作ろうという段で米大統領から首相に「日米共同開発で」と電話があり頓挫しました。日米関係はそんなものです。

 平和憲法は国の宝です。9条があったから、朝鮮戦争にも、ベトナム戦争にも参戦しなくて済みました。そう自覚したのが1990年、イラクのクウェート侵攻後、自衛隊を初めて海外出動させる国連平和協力法案が議論された時です。

 このとき、「日本が世界の警察になってはだめだ」と事務次官に直談判しました。結局、廃案になりました。3ヵ月後、当時の防衛長官に「廃案になって良かった。通っていればと思うと、いまでもぞっとする」と耳打ちされました。

 全国の多くの首長たちが首相のやり方に異論を唱えていると聞きます。私も防衛庁内で上申して左遷させられた経験があり、国に盾突くのには勇気がいることはわかっています。それでも、集団的自衛権の問題は日本の将来に関わる話。声を上げることは、今を生きるものの責任だと思います。

元防衛官僚・加茂市長 志願は激減 徴兵制も


僕らの未来 大人が決めるな 中学生 中村 伊希 (香川県 12)
 (2014年7月6日 朝日新聞 「声」)

 憲法の解釈を変えて集団的自衛権の行使を認める閣議決定がなされました。新聞やテレビのニュースを見るたびに、危機感を覚えます。学校では歴史の授業で「戦後」日本の不戦の歩みについて学んできました。でも、いま自分が生きているこの時代が、「戦前」のように思えてなりません。憲法9条の改正に向け、着々と準備が進められているように思えるからです。

 平和憲法が骨抜きにされれば、僕たちは大人になったとき戦争に行かなければなりません。僕は、戦争には行きたくないです。人を殺したくないです。紛争の解決には武力行使以外の方法があると思うし、そういう姿勢を世界に示せる日本であってほしいのです。

 「子どもたちに夢を」と口癖のように言う大人が、僕たちが戦争に行かなければならないような判断をするのは許せません。子どもを、孫を、戦争に行かせたいですか。政治家のみなさん。一度立ち止まって、未来を生きる僕たち若い世代のことを考えてください。

僕らの未来 大人が決めるな


僕は戦場で人を殺せません 中学生 福島佑樹(東京都15)
(2014年6月25日 朝日新聞 「声」)

 日本が憲法の解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認し、戦争ができる国になる可能性が日々ましています。おそらく戦場へむかわされるであろう世代のひとりとして、気持ちを述べさせていだだきます。

 僕の友人の中にも、集団的自衛権の行使が必要だと考える人はいます。しかし僕は反対です。徴兵され、戦場に送られ、人を殺したくないからです。

 人を殺すことは、通常の世界では最も重い罪です。しかし戦場では、その一番重い罪である人殺しを命令されるのです。命令に従うのがよいことで、命令に背けば罰せられます。この矛盾が僕には理解できず、受け入れられません。

 それに、人は何のために生まれてくるのでしょうか。戦いで人を殺したり、殺されたりするためではないはずです。全ての人間に与えられる人生は、たった一度です。人を殺した罪を引きずって生きたり、自分が望まない時に命が無理やり終わったりすることは、あまりにも残念で、悲しいことです。

 集団的自衛権の行使は、海外で人を殺すことを伴います。僕には、それは絶対できません。集団的自衛権の行使の意味を、国全体で考え直す必要があると強く思います。

僕は戦場で人を殺せません

       *       *

イラク戦争で奪われた莫大な人命の犠牲- 総括をしないのは人類の汚点 
(2013年3月20日 yahooニュース)から抜粋

2003年3月20日にイラク戦争が開始されてから10年がたつが未だこの戦争の過ちについて十分な総括が国際的になされていない。イラク戦争は、国連安保理の許可を得ない武力行使であり、明らかに国連憲章違反であったし、その理由とする「大量破壊兵器」は存在しなかった。この誤った戦争により、イラクはあまりにも壊滅的な打撃を受け、人命を奪われた。

アメリカ、ジョンホプキンズ大学ブルームバーグ公共衛生大学院の研究では、2003年のイラク戦争の結果として約65万5千人のイラク人が死亡したと推定、WHOはイラクで2003年3月から2006年6月までに15万1千人が暴力によって死亡したと推定している。

子どもたちの遺体を前に涙をぬぐう男性

2004年4月と11月の米軍によるファルージャ総攻撃では、戦争犯罪に該当する「民間人攻撃」が行われたとされ、多数の民間人が殺害されたという。白リン弾や劣化ウラン弾等残虐兵器が民間人の居住地で、市民に対する危害を最小限に抑える手段を一切講ずることな大量に使われ、おびただしい死者が出た

白リン弾使用については、イタリアのドキュメンタリーでその残虐性、極めて残酷で深刻な被害が暴露されている。アメリカ軍がアブグレイブやその他の刑務所で、拷問・非人道的取り扱いに該当する身体的虐待や侮辱などの行為をイラク人拘留者に対して行ったことは多くの証拠に裏付けられている。

こうした行為は何より戦争犯罪の可能性が高いが、きちんとした調査は行われず、ほとんど誰も責任を問われていない。訴追されるのは少数の末端の兵士だけ。意思決定に関わったトップレベルの人々、ブッシュ元大統領やラムズフェルド元国防長官、拷問を正当化した司法省、国防省関係者等の責任は全く問われていない

超大国が大規模かつ残虐な人権侵害をして幾多の罪もない人を殺害しても誰も責任を問われない、そのようなことでは、大国の都合でおびただしい虐殺が今後も果てしなく繰り返されるだろう。

伊藤 和子(弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長)
    
        *         *

戦争が繰り返されるのを喜ぶのは誰か

2013年、米紙ワシントン・ポストは、「昨年(2012年)自殺した現役米兵が349人と過去最多を記録し、アフガニスタンでの昨年の戦死者(229人)を上回った」と報じた。

東京新聞は「イラク帰還の陸上自衛隊員の自殺率は日本平均の14倍以上」と報じていた。

イラク戦争で、若い米兵がこう言っていた。
「イラクでは大人も子どもも敵だと思わないといけないんだ」

米兵「イラクでは子どもも敵と思わないといけないんだ」

手を合わせて泣いているイラクの女の子

イラク戦争 犠牲になった子どもを抱く米兵

兵士たちは、「もう戦争は嫌だ!もう人を殺すのは嫌だ!」と叫んでいるのだと思う。

ここで、大きな疑問が生じる。
では、いったい誰が戦争を望んでいるのか。

それは、自らが戦場に出向くことなく、戦争で儲けている者たちだろう。
例えば、軍需産業の経営者たち。「世界の軍需産業収益ランキング」2007年のデータでは、米国の企業がベストテンの中に7社も入っている。そして、世界1位のロッキード・マーティン社だけで、385億ドル(約4兆5000億円=当時の為替レート)も収益を上げている。

世界の軍需産業収益ランキング 2007年

こうした軍需産業は、世界に戦争や紛争が増えるほど兵器を増産して利益を増やすことができる。
日本の軍需産業も 安倍政権になって、いとも簡単に「武器輸出」ができる国に変更された。
そして、戦争ができなかった国を戦争できる国に変えようとしている。

2014/06/20

子どもの甲状腺がん50人 疑い39人 リンパ節転移が多数

子どもたちが何人甲状腺がんになっても「被曝の影響は考えにくい」で済ませてしまう福島県と国。そして、そのコメントをそのまま報道するマスメディア

甲状腺がんと福島原発事故の関係を認めるのに何年かかるのだろうか?

チェルノブイリ原発事故の後、IAEA(国際原子力機関)などが原発事故と甲状腺がんの因果関係を認めたのは事故から10年後だった。それと同じことが福島原発事故でも繰り返されている。

安倍首相は、オリンピック誘致のプレゼンで福島原発事故の影響について質問されたとき、「健康問題については、今までも現在も将来も全く問題ないと約束する」と信じられないことを世界にむけて公言した。

安倍首相「健康問題については、今までも現在も将来も問題ないと約束する」

しかし現実は、放射能汚染地の子どもたちに病気が急増している

心疾患死亡に関する人口統計において、福島県の心疾患死亡率が全国1位(原発事故前年の8位から1位)になっている。

福島と周辺県の心疾患死亡率が増加

     2010年度  2011年度  増加率   
福島   197.6   226.0   14.4%  
宮城   141.3   160.0   13.2%  
茨城   150.1   165.9   10.5%  
岩手   202.6   219.3    8.2%  

全国平均 149.7  154.4    3.1% 

*2011年度は、2011年4月~2012年3月 

心疾患死亡率 2011年と2012年度の比較
(秋田県が公開したデータ)

また、心疾患につながる心電図の異常が放射能汚染地の子どもに増えている。

児童、生徒の心電図異常増加…茨城
(2013年1月4日 読売新聞)から抜粋

 茨城県取手市の市立小中学校の学校検診で、心電図に異常がみられる児童、生徒の数が、昨年度から増加していることが、生活クラブ生協取手支部など市内3団体の調査でわかった。検査は小中学校の1年生に実施し、毎年度5月に1600~1700人が受診。精密検査が必要とされた子供は、2010年度までは最高で1・79%だったのが、11年度は2・38%12年度は5・26%になった。

 また、精密検査で疾患や異常が見つかった子供は、10年度までは最高0・71%だったが、11年度は1・28%12年度は1・45%だった。ただし、12年度は「要精密検査」とされながらも、公表時点で受診していない子供が3分の1以上おり、3団体は「受診者が増えれば数値が上がる可能性がある」とみている。

そして、子どもたちの甲状腺がんが激増している。

チェルノブイリも福島も、事故の翌年から小児甲状腺ガンが増加

(2012年9月11日) 1人が甲状腺がんと判明 
(2013年2月14日) 2人増え、3人が甲状腺がん+「がんの疑い」は7人
(2013年6月05日) 9人増え12人が甲状腺がん+「がんの疑い」は15人
(2013年8月20日) 6人増え18人が甲状腺がん+「がんの疑い」は25人
(2013年11月12日)8人増え26人が甲状腺がん+「がんの疑い」は32人
(2014年02年07日)7人増え33人が甲状腺がん+「がんの疑い」41人
(2014年05月19日)17人増え50人が甲状腺がん+「がんの疑い」39人

通常、子どもの甲状腺がんは100万人に1~2人 
 福島県の子どもの甲状腺がんは約36万人で50~89人
 つまり福島では、100万人に140人~250人(通常の100倍以上)

福島県立医大の鈴木真一教授は、マスコミに対して毎回のように「チェルノブイリ原発事故では最短で4年後に発症が増加している」から福島県の甲状腺がんは、原発の影響ではないと発言し、マスコミもその言葉をそのまま記事にしているが、ベラルーシの統計では事故の翌年から毎年増えている

ベラルーシの甲状腺がん増加データ(86?2000)

77年から97年 ベラルーシの子どもの甲状腺がんの数
(「原発危機を考える」より)


18歳以下1人が甲状腺がん 福島健康調査8万人分析
放射線の影響は否定

(2012/09/11 共同通信)から抜粋

 福島県立医大の鈴木真一教授は「チェルノブイリでも甲状腺がんは(発生まで)最短4年。福島では広島、長崎のような外部被ばくや、チェルノブイリのような内部被ばくも起きていない」と述べ、放射線の影響を否定した。

発足当初から「秘密会」などを開いて信頼を失った福島県の「県民健康管理調査」検討委員会は、子どもたちに甲状腺ガンが見つかり始めたときから一貫して、「被ばくの影響は考えられない」と原発事故の影響を否定し続けている

福島健康調査で秘密会 県、見解すり合わせ 会合シナリオ作る
 (毎日新聞 2012年10月3日)

「秘密会」に対する批判を浴びて、検討委の座長を辞任した山下俊一教授に代わって甲状腺がん調査の中心人物となった鈴木真一教授は、「他県に比べ異常な数値は出ていないのか」という問いに対し「他県も同じような割合だ」と答えている

しかし、実際の統計はそうではない。
2006年の統計で、甲状腺がんと診断された20歳未満の人は【全国で46人】 
一方、2013年2月発表から2014年2月発表までの1年間で【福島県で32人】も見つかっている。(全国の70% 福島県の人口は全国の1.6%)
もしも本当に「他県も同じ割合」だったら、全国の20歳未満の甲状腺がんは46人ではなく2000人(2000×0.016=32人)になる。


「福島の小児甲状腺がん多発は統計的有意」津田敏秀・岡山大学教授
(2013年7月3日 My News Japan)から抜粋

福島県避難区域の子どもたちへの甲状腺検査で38,114人中10人の甲状腺がん(3人確定7人疑い)が見つかった。「疑い」は「10%の偽陽性=確定率9割」とされ、計9.3人となる。日本での小児甲状腺がんの発生率は年間100万人中1人で、単純比較で262倍。潜伏期間7年(今回の調査で7年間分のがんを見つけた)としても37.48倍だ。疫学エキスパートの津田敏秀・岡山大学教授は、これら様々な分析を行った上で「がんの潜伏期を考慮しても顕著な多発が起きている」「原因が被曝でないとすれば、原因不明の多発が起きている」とし、極端に甘い条件を当てはめない限り、統計的有意差は消えない、と結論付けた。

津田敏秀教授「小児甲状腺がんと被ばく 因果関係を否定できず」


すでにチェルノブイリ以上のペースで子どもの甲状腺がんが増加し続けているが、もしも安倍首相が、「公言した約束」を守るために、2020年の東京オリンピックが終わるまで因果関係を認めず、「福島県健康調査は不十分」と指摘している国連報告書を無視したり、被ばく対策が不十分なままに事態が推移したとき、健康被害はどれほど拡大するだろうか?

福島県の「県民健康調査」検討委員会が5月19日に開かれ、甲状腺がんであることが「確定」した子どもは前回(2月)の33人から17人も増えて50人になり、「がんの疑い」39人を合わせると「悪性ないし悪性疑いは89人」になった。

福島県民健康調査 甲状腺がん 確定50人疑い39人

それでも検討委の星北斗座長は、チェルノブイリ原発事故では事故から4~5年後に子どもの甲状腺がんが急増したというデータを基に「現時点では放射線の影響は考えにくい」と、これまでの見解を繰り返した。

それでは何が原因で、多数の小児甲状腺がんが見つかっているのか――検討委や政府は、スクリーニング効果(症状が現れていないのに多数を検査したからたくさんのガンが見つかった)と言っている。 それも増えた理由の一つであることは否定しないが、それだけでは説明がつかないほど異常な増え方をしている。

特に心配なことは、チェルノブイリと同様に甲状腺がんがリンパ節に転移している子どもが多いことだ。このことは、チェルノブイリ原発事故で汚染されたベラルーシのデータにもはっきりと現れている。

ベラルーシでのリンパ節への転移グラフ
(菅谷昭(医師、長野県松本市長)著 『原発事故と甲状腺がん』より)

ベラルーシでは、リンパ節への転移が14歳以下の子どもの3分の2に現れており、肺への転移も6人に1人の高率で現れている。(私がベラルーシで出会ったナターシャさんは、2人の子どもをガンで亡くしているが、息子さんは甲状腺がんが肺に転移して亡くなっている


福島、がんの転移数公表求める 子どもの甲状腺検査で
(2014年6月10日 東京新聞)から抜粋

東京電力福島第1原発事故の放射線による影響を調べている福島県は10日、子どもの甲状腺検査に関する評価部会を福島市で開いた。甲状腺がんの子どもが50人に上ることに関し、出席した専門家は過剰治療ではないかと指摘、検査を進める福島県立医大に対し、がんの転移があった人数などのデータを出すよう求めた。

 甲状腺検査は、震災時18歳以下の約37万人が対象。これまでにがんと診断が確定した子どもは50人、がんの疑いは39人に上る。


リンパ節転移が多数 福島県の甲状腺がん
 (2014年6月10日 ourplanetTV)から抜粋

(福島原発事故による)健康影響を調べている福島県民健康調査の検討委員会で10日、甲状腺がんに関する専門部会が開催され、スクリーニング検査によって、多数の子どもが甲状腺手術を受けていることについて、前回に引き続き過剰診療につながっているかどうかで激論となった。議論の過程で、手術している子どもに、リンパ節転移をはじめとして深刻なケースが多数あることが明らかになった。
 
手術を実施している福島県立医大の鈴木真一教授は、「過剰診療という言葉を使われたが、とらなくても良いものはとっていない。手術しているケースは過剰治療ではない」と主張。「臨床的に明らかに声がかすれる人、リンパ節転移などがほとんど」として、放置できるものではないと説明した。
 
渋谷教授が「リンパ節転移は何件あるのか」と追及すると、鈴木教授は「取らなくてよいがんを取っているわけではない」と繰り返しつつも、「リンパ節転移の数は、ここでは公表しない」と答えた。
 
こうした議論を受けて、日本学術会議の春日文子副会長は、現在、保健診療となっている2次検査以降のデータについても、プライバシーに配慮した上で公表すべきであると主張。また1次データの保存は必須であると述べた。
 
これについて、広島県赤十字病院の西美和医師も「部会として希望する」と同意。また、渋谷教授もデータベースを共有する必要があるとした。座長の清水教授もその必要性を認めたため、次回以降、手術の内容に関するデータが同部会に公表される方向だ。

 

問題なのは、甲状腺がんとその転移や心臓病だけではない。様々な病気が放射能汚染地で増えている。チェルノブイリ原発事故から26年後を取材したNHKでも詳しく説明している。

チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告
「第2回 ウクライナは訴える」
(NHK ETV特集)

2011年4月、チェルノブイリ原発事故25周年の会議で、ウクライナ政府は、汚染地帯の住民に深刻な健康被害が生じていることを明らかにし世界に衝撃を与えた

チェルノブイリ原発が立地するウクライナでは、強制避難区域の外側、年間被ばく線量が5ミリシーベルト以下とされる汚染地帯に、事故以来26年間、500万人ともいわれる人々が住み続けている。

公表された「Safety for the future未来のための安全」と題されたウクライナ政府報告書には、そうした汚染地帯でこれまで国際機関が放射線の影響を認めてこなかった心臓疾患や膠(こう)原病など、さまざまな病気が多発していると書かれている。

特に心筋梗塞や狭心症など心臓や血管の病気が増加していると指摘。子供たちの健康悪化も深刻で2008年のデータでは事故後に生まれた子供たちの78%が慢性疾患を持っていたという。報告書は事故以来蓄積された住民のデータをもとに、汚染地帯での健康悪化が放射線の影響だと主張、国際社会に支援を求めている。

また、チェルノブイリ原発事故から28年後を取材した独立系メディアourplanet-TVの映像報告「チェルノブイリ・28年目の子どもたち(2014年4月25日公開)も低線量長期被ばくの影響を詳しく伝えている。

東北や関東には、「チェルノブイリ法」で定められた年間0.5~1ミリシーベルトの「放射線監視地域」と、1~5ミリシーベルトの「移住(避難)の権利がある地域」に相当する汚染地域がたくさんある。そして、チェルノブイリ法では、そこに住むことが禁じられている年5ミリシーベルト以上の汚染地域に、今も多くの人々が暮らし続けている。

クリアな関東汚染地図・小出講演

小出裕章氏(京大原子炉実験所)「この青のところは、少なくても6万ベクレルを超えて汚れている。その周りのくすんだ緑のところだって、3万ベクレルから6万ベクレル汚れている。大地がみんな汚れている。メチャクチャな汚染だと私は思います。

福島県の東半分、
宮城県の南部と北部、
茨城県の北部と南部、
栃木県・群馬県の北半分、
千葉県の北部、埼玉県・東京都の一部、
あるいは新潟県の一部であるとか、岩手県の一部

そんなところまでが放射線の管理区域にしなければいけない、というほどの汚染を受けているのです。何度も言いますが、放射線管理区域というのは、私のような特殊な人間が特殊な仕事をする時に限って入ってよいという場所なのです。 普通の人は入ってはいけないし、子どもなんていることは、到底許されないという場所がこんなに広がっているということです」(全文はコチラ

小出さん・放射線管理区域・日本地図

こうした年5.2ミリシーベルト以上の「日本の放射線管理区域」よりも汚染レベルが低い(0.5~5ミリシーベルト)ウクライナのコロステン地区にある第12学校(小中学校)では、チェルノブイリ原発事故後、体育の授業を健康診断の結果に応じて4つのグループに分けるようになった。

645人の生徒のうち健康な子どもが参加する基本グループは157人(24%)、配慮が必要な子どもが参加するグループは385人(60%)、慢性的な疾患を持つ特別グループの子は90人(14%)、障害などがあり、体育を免除されている子どもは13人(2%)。体育の時間に突然死する子どもが増えたため、2年前から保健省が心肺機能を測定している。

チェルノブイリ原発事故で汚染されたウクライナ、ベラルーシ、ロシアの3つの共和国では、事故から5年後に「チェルノブイリ法」が制定された。

チェルノブイリ法」では、年間被ばく線量が0.5ミリシーベルト(土壌汚染が37kベクレル/m2)以上の地域で、医療政策を含む防護対策が行われる。1ミリシーベルト以上であれば、避難の権利があり、5ミリシーベルト以上の地域は、移住の義務がある

チェルノブイリ法の避難基準

日本でも2011年10月に5ミリシーベルト以上の地域は、避難(移住)させようとしたことがあったが、賠償額の増加を恐れて断念したままになっている。

福島の帰還基準、避難者と賠償額の増加を恐れて「年5ミリ」とせず

原発事故で避難した住民が自宅に戻ることができる基準を「年20ミリシーベルト以下」から「年5ミリシーベルト以下」にする案を政府が検討したが、避難者が増えることを懸念して見送っていた。

「多くの医者と話をする中でも5ミリシーベルトの上と下で感触が違う」と5ミリ案を検討。チェルノブイリ事故では、5年後に5ミリの基準で住民を移住させた。年換算で、5.2ミリ超の地域は 放射線管理区域に指定され、原発労働者が同量の被曝で白血病の労災認定をされたこともある。ところが、5ミリ案は実行されなかった。「20ミリ案は甘く、1ミリ案は 県民が全面撤退になるため、5ミリ案を検討したが、避難者が増えるとの議論があり、固まらなかった」 「賠償額の増加も見送りの背景にある」(2013年5月25日 朝日新聞)から要約

記事全文

こうして日本には、年間5ミリシーベルト以上でも避難させる法律がなく、1~5ミリシーベルトのエリアにも避難の権利がないまま放置されている。そして、心臓病が増えても子どもたちの甲状腺がんが激増しても「放射能の影響とは考えられない」で済ましている

もしも、安倍首相や政府が今後も「健康問題については、今までも現在も将来も全く問題ない」という態度を取り続けた場合、最大の犠牲者が子どもたちであることは間違いないだろう。

原発を輸出するため、原発を再稼動させるため、原発事故の被害を小さく見せたいため、被害者への補償額を少なくするため、「復興」のため、オリンピック開催のため・・・被害を直視せず、子どもたちの健康や生命を軽視し続けている

安倍首相や政府が憲法の解釈を変えたり、改憲してまで「自衛」しようとしている「国」とは、何なのか。最も大切な「子どものいのち」すら守らない「国防」に何の意味があるのか。

最後に、ベラルーシ科学アカデミーのミハイル・マリコ博士の言葉をかみ締めたい。
チェルノブイリの防護基準、年間1ミリシーベルトは市民の声で実現されました。核事故の歴史は関係者が事故を小さく見せようと放射線防護を軽視し、悲劇が繰り返された歴史です。チェルノブイリではソ連政府が決め、IAEAとWHOも賛同した緩い防護基準を市民が結束して事故5年後に、平常時の防護基準、年間1ミリシーベルトに見直させました。それでも遅れた分だけ悲劇が深刻になりました。フクシマでも、早急な防護基準の見直しが必要です
地球の子ども新聞 2012年11月号)

2014/06/18

子どもの甲状腺検査を無料で続けている福島の病院 

「経営は楽ではありませんが、福島の子どもたちのために何としても検査を続けます」佐川文彦さん(ひらた中央病院理事長)
(2014年5月15日発行 通販生活2014夏号)

支援先 ひらた中央病院 落合恵子

「経営は楽ではありませんが、福島の子どもたちのために検査を続けます」

さがわ・ふみひこ●1959年、福島県いわき市生まれ。整形外科や接骨院での研修を経て、88年に佐川整骨院を開設。99年、小野中央クリニック開設。2005年、医療法人誠励会およびひらた中央病院理事長に就任。

おちあい・けいこ●1945年、栃木県生まれ。67年、明治大学文学部英文学科卒業後、文化放送に入社。74年に同社を退社し作家活動に入る。最新刊は『「わたし」は「わたし」になっていく』(東京新聞)。
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落合  佐川さんが理事長を務められている「ひらた中央病院」は、人口約4万人の福島県石川郡で唯一の病院ですね。今年で開業13年。原発事故があった翌年の6月には、病院内に「公益財団法人震災復興支援放射能対策研究所(以下、ひらた中央病院と表記)」を立ち上げられ、甲状腺検査やホールボディカウンター(WBC)による内部被ばく検査などを無料で行なっています。今日は詳しくお聞かせください。

佐川  よろしくお願いします。私たちの活動を紹介していただく機会を設けてくださって感謝しています。

落合  福島県は約36万人の子どもの甲状腺検査をしていて、県内59市町村のうち17市町村でもWBCによる内部被ばく検査を行なっています。民間医療機関のひらた中央病院が、なぜ県や各自治体と同様の検査をするようになったのか、まずはそのいきさつから。

佐川  震災直後、原発から20キロ圏内の富岡町や楢葉町などの病院に入院していた188人の患者さんをひらた中央病院で受け入れました(左頁写真)。そのとき、患者さんたちは手を合わせて「ありがとう、ありがとう」と言ってくださった。患者さんを受け入れたことで私たちは診療報酬を得たのですが、それを原発事故で苦しむ人たちの役に立てたいと思ったんです。

 それで、まずWBCを1台購入して11年10月から内部被ばく検査を始めました。当時、県は内部被ばく検査の体制を整えるのが遅く、子どもの健康を心配するお母さんたちから「検査をしてほしい」という声が私たちの病院にたくさん寄せられていたのです。

原発近くの病院に取り残された患者を救出
震災から6日後の3月17日、30台のマイクロバスを連ねて原発近くの病院に取り残された患者を救出に行った佐川さん(左から2人目)。

落合  甲状腺検査も、やはり保護者の方たちからの要望がきっかけで始められたのでしょうか。

佐川  そうです。県は11年10月から甲状腺検査を始めましたが、36万人の子どもを検査するのに2年半もかけると言う。子どもの健康を心配する親からすれば、そんなに待っていられませんよね。順番を待ちきれないお母さんが子どもを福島県内の民間病院に連れていくと、県の検査を実施する福島県立医科大学(以下、県立医大)に遠慮してなのか、検査を受け付けない病院もありました。それで私たちは、12年11月から甲状腺検査を始めたのです。

落合  福島県の甲状腺検査は震災当時18歳以下の子どもが対象ですが、こちらには年齢制限は?

佐川  いえ、何歳の方でもけっこうですし、事故当時、福島県外に住んでいた方でも無料で検査が受けられます。

県の3倍の時間をかけて
甲状腺を丁寧に検査。

落合  ひらた中央病院では甲状腺の超音波(エコー)検査の体制は、どのようになっていますか。

佐川  甲状腺の専門医1人と技師3人がいてエコー検査は技師が担当しています。技師は、甲状腺疾患の治療では国内一と言われる伊藤病院(東京都渋谷区)で研修を受けました。専門医は甲状腺検査を始めるにあたって県外の病院から来ていただきました。技師が検査をした画像をもとに専門医が診断します。

落合  保護者の中には、県の検査方法に不満を持つ方が多くいらっしゃるようですね。エコー検査の時間は5分だという話を保護者の方々からよく聞きます。ひらた中央病院では、どのように検査をされているのでしょうか。

佐川  検査を始める前は県立医大と同様に5分程度のエコー検査でいいと思っていたのですが、伊藤病院では15分もかけて丁寧に検査をしているんですね。それで私たちも同じ時間をかけて、じっくりエコー検査をしています。

落合  こちらではエコー検査だけでなく、血液検査(小学生以上)と尿検査も1次検査の段階から実施していますね。県は血液や尿検査は2次検査からなのに、なぜ最初から検査するのですか

佐川  尿検査では、日常のヨウ素摂取量を把握し、原発事故当時に放射性ヨウ素を甲状腺に取り込みやすい食生活だったかどうかを推定するために尿中のヨウ素の量を調べています。血液検査では、血液中の甲状腺ホルモンの濃度などから内科的な甲状腺の病気を発見できます。チェルノブイリ原発事故の被害を受けたベラルーシでも尿や血液の検査をしていましたし、保護者からの要望もあったので、エコー検査とセットで行なっています。

 血液と尿の検査は結果が出るのに約1週間かかりますので、保護者の方にはお手数ですが再び病院に来ていただいて検査結果を伝えます。エコー検査の画像を見ながら血液や尿検査の結果と合わせて専門医が一人ひとりに直接説明しています。

落合  1次検査の段階からここまで丁寧にしていただくと、保護者も安心するでしょう。県で実施したエコー検査の画像については、以前より手続きが簡易化されたとはいえ、保護者がわざわざ情報公開請求をしないと手に入れられないという異常な状態が今でも続いているそうですね。エコー検査の画像がほしい人には渡しているのですか。

佐川  もちろんお渡ししています。医師から画像を見ながら説明を受けて、その画像を家に持って帰って家族に伝える。そういうことで安心感につながると思います。

約1年半で
5713人を検査。

落合  これまで甲状腺検査は何人の方が受けられたのでしょうか。

佐川  私たちは年齢制限も居住地の区別もなく検査を受けつけていますが、12年11月から今年4月8日までに5713人を検査しました。県の検査と同じく震災当時18歳以下の福島県在住の子どもに限ると3278人です。

落合  3月にはその検査結果の一部を公表されましたね(下表参照)。

佐川  慶應義塾大学SFC研究所と伊藤病院、そしてひらた中央病院との共同で分析した結果を公表しました。県が公表している約25万人に対して私どもが今回発表したのは、12年11月から13年9月までに検査をして結果が確定した1137人。対象者数が大きく違うので単純比較はできませんが、県の検査で「2次検査は必要なし」と診断された子どもが、うちの検査では「要2次検査」となったケースもあります。

検査結果の違い ひらた中央病院と福島県

落合  ひらた中央病院でも、県と同様にA1、A2、B、Cという判定をしていますが、A1とA2の割合が県の検査結果と大きく違います。県の検査ではA1とA2の割合はほぼ同数ですが、こちらの検査ではA2の割合はA1の約2・8倍です。

佐川  やはり検査方法の違いが大きいかもしれません。先ほど申し上げましたように、県のエコー検査は約5分で、うちは約15分。丁寧に検査をすることで、県の検査では見逃されている嚢胞(のうほう)や結節を見つけている可能性はあります。それから検査を受ける時期も関係してきます。県の検査を受けた子どもがそのときは何もなくてA1判定でも、半年後にうちの検査を受けたときに嚢胞などができていた、ということもあるでしょう。

 さらにもう一つ。県は結節や嚢胞の大きさだけで判定しますが、うちは甲状腺の状態によって判定を変えています。エコー検査をすると、甲状腺の状態が粗く見えることがあります。専門医によれば、こういうときは結節や嚢胞がなくても内科的な甲状腺の病気が潜んでいる可能性があるそうです。そのときは、少し注意して様子をみたほうがいいという意味でA2判定としています。予防医療をするには甲状腺の状態をきちんと見ていこうということです。

落合  県の甲状腺検査は、ようやく1回目の検査が3月に終わりました。今後は20歳までは2年に1回、20歳を越えたら5年に1回の検査となります

佐川  うちの病院では1年に2回は検査を受けるよう勧めています。仮に医学的に2年に1回や5年に1回の検査で問題ないとしても、お子さんや保護者の不安を少しでも解消し、早期発見・早期治療のためにもこまめに検査をしたほうがいいと思うんです。

ひらた中央病院 ベッドの子ども&落合恵子

落合  本当にそうですね。5分程度のエコー検査を受けて、「問題なし」と通知され、「次の検査は2年後」というのでは、精神的にもまいってしまいます。ひらた中央病院で1次検査を受けて、もし詳細な検査や手術が必要になった場合は、どのようなフォローをされているのですか。

佐川  結節が見つかった方には3ヵ月に一度もしくは半年に一度は検査を受けるよう勧めます。悪性の疑いがある場合は、ノドに針を刺して細胞を採取する「細胞診」検査をします。ここまではうちの病院でできますが、手術が必要な方には伊藤病院を紹介します。

落合  県立医大や福島県内の病院で手術は受けられないのでしょうか。

佐川  甲状腺検査を開始するにあたって県立医大に「何かあったときは県立医大に患者さんを紹介してもいいですか」と聞きましたが、はっきりとした返事はもらえませんでした。私たちは検査方法や結果の分析などについて伊藤病院の指導を受けております。その信頼関係も含めて、安心して患者さんをお任せできるのが伊藤病院だと考え、お願いしたところ、ご快諾いただけました。もし今後、患者さんのご希望があれば、県内の病院でも連携できるところがあるかどうか探っていきたいと考えています。

落合  今年2月に発表された県の最新検査結果では、甲状腺がんの子どもが33人、その疑いがある子が41人となりました。この結果についてはどう思われますか。県は「放射線の影響とは考えにくい」と言っています

佐川  現段階では放射線と「関係ない」とも「関係ある」とも言えないでしょう。放射線との因果関係については、われわれが言うべきことではなく、国策として原発を推進した国が、しっかり調査して発表すべきことです。

ひらた病院 甲状腺検査結果の説明


ひらた中央病院に関する
とんでもない噂。

落合  ひらた中央病院の活動は本当に素晴らしいものだと思いますが、実は残念なことがひとつあります。こちらで行なっている甲状腺検査や内部被ばく検査のデータが県立医大に流れているという噂があり、「ひらた中央病院は県立医大の手先だ」などという噂も一部流れています。違った意味での、風評被害です。悲しいことですが。

佐川  そんな噂が流れているとは残念です。私たちは小さな病院なので、やれることには限界があります。そのため、当初は県や県立医大とタッグを組んで活動できればと思っていました。 実際、WBC検査を開始した当初は県立医大の医師から指導を受けました。WBC検査を受ける方に向けた説明書にも、検査の判定はひらた中央病院もしくは県立医大で行なうことを明記していました。現在は県立医大とまったく交流はありませんが、そのようなことが噂の原因かもしれません。

 ただ、県民の皆さんのためには県と県立医大と民間病院が協力したほうがいいという考えは、今でも変わりません。バラバラでやることのデメリットは大きいですからね。でも、私たちから呼びかけても、県や県立医大からは返事をもらえませんので。

落合  甲状腺検査に関しては、今年度から県は県内の民間病院にも1次検査を委託すると聞いています。昨年、県が民間病院に募集をかけた際、ひらた中央病院は応募されたのですか

佐川  いいえ。県と同じ方法で検査をすることが条件でしたので、そうすると時間をかけたエコー検査や血液・尿の検査もできなくなります。ならば独自にやったほうがいいと思ったのです。

毎月かかる
1千万円のコスト

落合  お話をうかがうと感心させられることばかりですが、甲状腺検査をはじめ放射能に関する検査をすべて無料で行なうことで、病院の経営は相当大変なのではないでしょうか。

佐川  確かに経営は苦しいです。でも、国策で進めた原発の事故によって苦しんでいる人たちから検査費用をいただくわけにはいきません。

落合  国や県からの資金的な援助はないのですか。当然のものだと考えていますが。

佐川  一切ありません。国には何度も援助のお願いをしましたが、「そういう話は県としてください」と言われてしまう。県からは「(甲状腺検査や内部被ばく検査など)そんなことをしてくださいって誰かに頼まれたのですか?」と言われてしまいました。あのときは本当に悔しかったですね。

落合  実際、これまでにどれぐらいの経費がかかったのでしょうか。

佐川  甲状腺のエコー検査器2台とWBC2台、乳幼児専用WBC1台、それから食品の放射線測定器2台の購入費などで約2億円。甲状腺の状態をみるための血液・尿検査の外部機関への検査委託料、内部被ばく検査の際に着替えていただく衣服の代金、それから放射能対策専従職員の人件費など、それらすべてを合わせると毎月約1千万円かかります。機器の購入費を含めて、この3年間で約6億円かかりました。できる限り無料検査を続けたいと思いますが……。

落合  一般の方たちからのカンパは受けていただけるのですか。

佐川  ありがたいことに、これまで約150件で約2300万円のカンパをいただきました。

落合  でも、これからも毎月1千万円のコストがかかりますから……。

佐川  これまでは、正しいことをすれば支援の輪が広がると思っていました。支援してもらえそうなところがあれば、国内外のどこへでも行きました。でも、行く先々で言われたのは「なぜ県がやっていることを、一民間医療機関のあなたたちがするのですか」ということ。つまり、私たちがしているのは「余計なこと」なのでおカネは出せない、と

落合  余計なことだなんて……。ひらた中央病院で甲状腺検査を受けたお子さんや保護者の方たちに行なったアンケートの一部(下コラム参照)を拝見しました。県の検査では拭いきれない保護者や本人の不安を、こちらの病院がしっかりと受け止めておられることが分かりました。

ひらた病院に寄せられた声

佐川  そう言っていただくとありがたいのですが、実はおカネに関しても根も葉もない噂があるんです。「ひらた中央病院は東京電力や国からたくさんのおカネをもらっているらしい。そうでなければ無料検査を続けられるわけがない」というような噂で(苦笑)。

落合  拝金主義がはびこっていて、よいことをしても「裏側で儲けているはず」と疑われてしまうのでしょう。

佐川  だから我々は、外で食事するときは周りに気を遣いながら食べているんです。何を言われるか分かりませんので(苦笑)。でも、いま無料検査をやめたら県民の皆さんはもちろん、職員も裏切ることになってしまいます。

落合  先ほど病院内を見学させていただきましたが、すれ違う職員の方たちが本当に気持ちのよい挨拶をしてくださいました。マニュアル的ではなく、心のこもった笑顔で。

佐川  震災直後、もともと240人の入院患者さんがいたところに188人の方を新たに受け入れたことで、マンパワーが圧倒的に不足しました。でも、職員は不眠不休で頑張ってくれた。うちの病院では忘年会のときに3・11以降の活動内容などをビデオで上映するんですけど、その映像を見て職員たちが泣くんですよ。こんな純真な気持ちでみんなも頑張っているのだから、無料検査を打ち切るわけにはいきません。

落合  汚染水や除染など何ひとつ解決の目処は立たない状況で、県民の皆さんの不安は一向に解消されません。そんななかで、ひらた中央病院の活動は明日への希望をつくってくださっています。今回の記事を読んだ方たちの間にきっと支援の輪が広がると思います。どうか健康にはお気をつけください。

佐川  歯を食いしばって、何としてもこの活動を続けていきます。

ひらた病院における甲状腺検査の流れ


ひらた中央クリニックにて甲状腺外来 勉強会を行いました
(2013年8月7日 医療法人誠励会)

ひらた中央病院

ひらた中央クリニックにて、甲状腺外来に携わる職員を対象に診療の流れや検査内容の勉強会を行いました。

医事課(中田守)、看護師(折内香織)、検査技師(矢内理恵)、栄養科(服部ヒデ子)が各部門の立場から甲状腺診療に関わる発表をし、その後意見交換を行いました。

今後も福島県民の不安払拭のため、より良い甲状腺検査を県民の皆様に提供できるよう、職員一丸となり取り組んでいきたいと思います。
(記事:中田守)


子ども被災者支援法”骨抜きバイアス”の実態
英文の勧告を誤訳、健康調査拡大を先延ばし
(2014年3月25日 東洋経済)から抜粋

意図的に誤訳をして、対策の範囲を狭めようとしたのではないか――そう見られてもおかしくない“疑惑”が判明した。

国連人権理事会から任命され、福島第一原発事故による被災者の人権状況を調査した弁護士による英文の勧告を、外務省が誤った日本語に翻訳。しかも同弁護士から求められていた対策について「実施済み」と公文書に記述しているのだが、対策は行われていないことも明らかになった。

独立した立場で原発事故被災者の人権状況を調査したアナンド・グローバー弁護士は、昨年5月に勧告を同理事会に提出。福島原発事故に際して、「多くの人々は政府が設定した『年間被ばく線量20ミリシーベルト』という避難基準のもと、放射線量の高い地域に住み続け、移住・避難のための経済支援も十分な健康対策も図られていない」と日本政府の姿勢を強く批判していた。

日本語では「避難区域の」を追加

この報告書に対し、外務省は次のように対応した。

2013年6月11日付けで「グローバー健康の権利特別報告者訪日報告書・補遺・仮訳」という文書をホームページに掲載。その中で、グローバー氏による勧告内容の記述を「1ミリシーベルト以上の放射線量の避難区域の住民に対して、健康管理調査が提供されるべきであること」と日本語に訳したうえで、対策について「実施済み」と明記した。

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誤訳が指摘された外務省の翻訳

ところが、である。今年3月20日に参議院議員会館内で開催されたグローバー氏を招いての「院内勉強会」で、市民グループの一員として出席した河崎健一郎弁護士(福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク)から「原文を意図的に誤訳している」と指摘が持ち上がった。

グローバー氏の勧告の原文が、「1ミリシーベルト以上の放射線量のすべての地域に住む人々に対して、健康管理調査が提供されるべきであること」(The health management survey should be provided to persons residing in all affected areas with radiation exposure higher than 1 mSV/year.)となっていたのに対して、外務省は「1ミリシーベルト以上の放射線量の避難区域の住民に対して、健康管理調査が提供されるべきであること」と翻訳。日本語訳には、原文にはない「避難区域の」を付け加えてあるのだ。「意図的な誤訳だ」と河崎氏は追及した。

2012年6月に衆参両院で全会一致により可決成立した「東京電力原発事故子ども被災者支援法」の第13条では、原発事故による放射線の健康影響調査について、「必要な措置を講じるものとする」と定められている。特に、子どもである間に一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住したことがある住民の健康診断は、「生涯にわたって実施されることとなるよう必要な措置が講じられるものとする」とされている。

しかしながら、原発事故から3年が過ぎた現在ですら、放射線による被ばく影響に関する健康調査が実施されているのは福島県内だけにとどまっている。原発事故直後の放射性物質の飛散によってホットスポットが形成され、追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以上の「汚染状況重点調査地域」に指定された千葉県柏市などの9市町村からも「健康管理および医療支援策の推進」の要請がされているが、環境省は「有識者会議での議論に委ねる」として、実施の判断を先延ばしにしている。

パブリックコメントが募集されたものの、「支援対象地域は、追加放射線量が年間1ミリシーベルト以上の地域にするなど、広く設定すること」という多く出された意見は取り入れられなかった。

その結果、福島県外の住民は健康調査や医療費支援などを受けることができないままだ。福島県内でも、放射線による健康影響に関する調査は18歳以下の子どもの甲状腺検査のみで、避難指示区域から避難した住民に限って、通常の健康診断の項目に上乗せする形で血液検査が実施されている。

政府は「科学的根拠に乏しい」と一蹴

グローバー氏の勧告では、「子どもの健康調査は甲状腺検査に限らず実施し、血液・尿検査を含むすべての健康影響に関する調査に拡大すること」とされているが、政府は「科学的根拠が乏しい」として、「受け入れることはできない」と回答している

このままでは、子ども被災者支援法が掲げた「原発事故に係る外部被ばくおよび内部被ばくに伴う被災者の健康上の不安が早期に解消されるよう、最大限の努力がなされるものでなければならない」(第2条)という理念から遠ざかる一方だ。

全文はコチラ

2014/06/07

(集団的自衛権 行方を問う) ケビン・メア氏、ダグラス・ラミス氏に聞く

(集団的自衛権 行方を問う)
ケビン・メア氏、ダグラス・ラミス氏に聞く

 (2014年6月6日 朝日新聞)

 他国を守るために参戦する集団的自衛権を使えるようになれば、日本はどう変わるのか。安倍晋三首相が説明するように国の安全を高める抑止力になるのか、それとも米国などの戦争に加わる危険が広がるのか。内外の論客や識者に改めて問題点や是非を尋ねた。

 ■抑止力高まり戦争防げる ケビン・メア氏(元米国務省日本部長)

ケビン・メア

 日本はできるだけ早く、集団的自衛権を行使できるようにすべきだ。米政府は以前から、日本の安全と日米の安全保障体制を固めるために必要と考えていた。

 従来の憲法解釈では、日本の護衛艦が攻撃されたら米国は守るが、米国の艦船が攻撃されても日本は対処できない。日本が、北朝鮮から米ハワイなどに向かう弾道ミサイルを迎撃せずに無視するなら、米国民は「本当に同盟国なのか」と思うのではないか。

 中国は今、尖閣諸島で一方的な現状変更をしようとし、東シナ海や南シナ海で挑発的な行動をとっている。北朝鮮のミサイルや核の脅威もある。集団的自衛権を行使できるようになれば、自衛隊と米軍がより効果的に対処できる。日米がともに対応する覚悟と能力があることを示すべきだ。

 憲法の解釈変更で行使を認めれば、日本が米国の戦争に巻き込まれるという懸念がある。しかしそれは誤解で、逆に抑止力が高まり、戦争を防げる。集団的自衛権は権利であって、事態を見て行使するかどうかを決めるのは日本政府だ。日本の安全保障への影響を考えて判断すればいい。

 シリア情勢などでオバマ政権の対応が弱く、本当に米国に頼れるのかという疑問が日本にあるだろう。しかし、オバマ大統領が訪日時に述べたように、尖閣諸島は日米安保条約の対象だ。米国は日本を防衛する覚悟があり、今後も日本に最新鋭戦闘機やイージス艦を追加配備するだろう。

 米軍の戦闘機やイージス艦、早期警戒機は統合されたネットワークで運用されることになり、日本が集団的自衛権を使えるようになれば、日米間でも運用の統合が進み、同盟はますます効果的に機能するようになる。

 安倍政権がこの1年半、安全保障面で上げた成果はワシントンで高く評価されている。国家安全保障会議(日本版NSC)を発足させ、武器輸出の新原則も決めた。特定秘密保護法の成立で突っ込んだ情報交換ができるようになった。現実的に日本の防衛力を向上させようとしている安倍首相の指導力に対し、米政府内には強い期待感がある。(聞き手・渡辺丘)

     *

 81年に米国務省入省。沖縄総領事、同省日本部長などを歴任し、11年に退職。現在はコンサルタント会社の上級顧問。59歳。

(中村補足:ケビン・メア氏の過去の発言


 ■米の戦争に参加するのか ダグラス・ラミス氏(政治学者)

ダグラス・ラミス

 日本が進める集団的自衛権の行使に向けた検討を、米国は自国の軍事力強化につながると捉え、歓迎している。なぜなら日本が「集団」的自衛権を使って、ともに戦うのは米国だからだ。行使が認められれば、米国の戦争に加わる可能性が極めて高くなる。

 ベトナム戦争の終結に向け、当時のニクソン米大統領は米軍を撤退させて南ベトナムに防衛を押しつける政策を進めた。湾岸戦争に派兵しなかった日本を「血と汗を流さない」と批判した。最近の無人機導入もそうだが、米国はどうすれば自国民の犠牲を減らせるかを常に考えており、日本により積極的な軍事行動を求めてくるだろう。

 日米安全保障条約がある以上、米国は戦争を含む外交政策について日本に要求を受け入れさせる絶対的な自信がある。この条約のもとでは、日本外交の最も重要な部分、どの国と友好関係をもち、仮想敵国とするかなど米側が主権の一部を握る仕組みになっている。米国が戦ったベトナムやイラクなどは、日本と敵対関係にはなかった。安保条約があるから日本はこれらの戦争をすべて支持し、イラクには自衛隊を送った。

 今回の日本の動きを見て、中国はアジアの国々にこう強調するだろう。「第2次世界大戦を思い出せ」。日本を脅威に感じる国々が出始め、関係悪化を招く恐れがある。米国のブレーキ役になってほしいという期待も失われるだろう。

 一連の議論で、語られない重要な言葉がある。憲法9条で認めないことにした「交戦権」だ。兵士が戦場で人を殺しても、殺人罪に問われないのが交戦権。このことを抜きにして集団的自衛権の行使は語れない。

 解釈改憲で集団的自衛権を認め、戦争ができる国になるのか。それとも9条を踏まえて平和外交をめざすのか。自衛隊や米軍基地の存在は9条との関係で矛盾をはらんでいるが、交戦権を否定した9条があったからこそ、自衛隊は海外で1人の人間も殺さずにきた。

 日本が再び大きな戦争に巻き込まれ、多くの人を殺し、殺される。そうなってから平和の大切さを再認識することになるなら、それは悲しいことだ。(聞き手・泗水康信)

     *

 米サンフランシスコ出身の政治学者。海兵隊員として沖縄で勤務し、除隊後にベトナム戦争反対の活動に加わる。元津田塾大教授。沖縄在住、77歳。

2014/06/05

原発事故の真実を語れない日本人でいいの?

原発「国会事故調」パパのグローバル教育
震災の真実を語れない日本人でいいの?

(2014年5月8日 東洋経済)から抜粋

それは忘れもしない、震災から丸1年経った2012年3月11日朝のこと。首都圏郊外の自宅で目覚めた石橋哲(さとし)さんは、小学生の次男に聞かれた。

「1年経ちましたね」
「世の中はどう変わりましたか」
「あなたは何をしましたか」

「家族の仕事について調べる」という宿題のための問いかけだった、と石橋さん夫妻は記憶しているが、息子さん本人は「残念ながらよく覚えていません」。それでも、この質問に石橋さんは頭を殴られたようなショックを覚えた。

当時、石橋さんは、いわゆる「国会事故調」でプロジェクトマネジャーを務めていた。

2011年3月11日に起きた、東京電力福島第一原子力発電所の事故。事故はなぜ起きたのか。背景には何があり、再発防止には何が必要なのか。「国会事故調」はその原因究明の調査と提言を行うため、同年12月に、政府や事業者といった事故当事者から独立した調査機関として設置された。

初めて考えた、自分ごととしての「原発」

事故調は延べ1167人の関係者に、900時間に及ぶインタビューを行った。さらに、1万人を超える被災住民へのアンケート、そして東電や規制官庁に対し2000件を超える資料請求を行った。委員会は公開、同時通訳も行われ、今も動画で見ることができる。

事故調のウェブサイトからも閲覧できる報告書は、海外からの評価も極めて高く、委員長を務めた黒川清氏は、科学雑誌サイエンス発行団体AAASから「科学の自由と責任賞」を受賞。世界で知られる存在となっている。

石橋さんが次男から「あなたは何をしましたか」と問われたのは、活動期限を約半年と決められた国会事故調の折り返し期。怒濤の調査、分析活動が続き、終電帰りなら早いほう。必死に取り組んでいた石橋さんだったが、冒頭のように、小学生の息子さんからのシンプルな問いに答えられず、言葉に詰まった。

「この問題は自分ごとなんだ」。息子からの問いかけで、石橋さんはやっとそれに気づいたという。なぜなら、「小学生の息子にとって“大人”とは、“自分”以外の誰でもないから」だ。

「事故再発を防ぐ世の中を作るのは、自分を含む国民一人ひとり」「それぞれにとっての『自分ごと』にするには、この報告をわかりやすくする必要がある」。そう悟った石橋さんは、2012年秋、志を同じくする友人や大学生と一緒に、手弁当で「わかりやすいプロジェクト 国会事故調編」を作った。

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元「国会事故調」石橋哲さんと妻の薫さん
世界に向けて原発の真実が語れずに、グローバル人材を名乗れるか? 元「国会事故調」石橋哲さんの活動は、大人世代に重要な問いを投げかけている(石橋哲さんと妻の薫さん)

石橋 哲(いしばし・さとし)
1964年和歌山県生まれ。1987年東京大学法学部卒、日本長期信用銀行入行。シティバンクN.A.、産業再生機構を経て、クロトパートナーズを設立、主に事業会社における事業・組織再構築にかかる計画策定・意思決定工程の支援面で活動中。 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調) に調査統括補佐として参加、プロジェクトマネジメントなどを務めた。現在、吉本興業経営戦略アドバイザー、日本赤十字社 赤十字原子力災害活動ガイドライン作成研究委員会委員などを務める。
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若者たちも感じる、「考えない」ことへの危機感

「福島原発事故に対して、これまで『大人世代』が何をしてきたのか。問題をどうとらえ、どう反省するのか(あるいは反省しないのか)を、正しく伝えることは、『将来世代』に残せるひとつの“遺産”になる。日本が、将来世代に生活基盤を置く国として選ばれるためにも必要な条件」。石橋さんはわかりやすいプロジェクトの設立時に、そう語っている。

メンバーのひとりの学生は、参加の動機をこう語る。「国民一人ひとりが難しいトピックについて知識を持たない、考えない、議論しないという状況に危機感を抱いています」(同プロジェクトウェブサイトより)。政府やメディアなどの権威が発する情報を、そのまま信じたり、聞き流すことへの危機感を若い世代も抱いているのだ。

「事故は防げなかったの?」「原発をめぐる社会の仕組みの課題って何?」――。

「わかりやすいプロジェクト」は、私たち大人が今なお、きちんと説明できない、こうしたシンプルな問題について考えるきっかけを提供しようとしている。たとえば、上記などの問いに関する6つの「イラスト動画」を日本語と英語で公開している。親しみやすいタッチは世界で人気の学習サイト、カーン・アカデミーのようだ。

世界で通用する人になるために、必要な要素

今年1月、日本を訪れたハーバード・ビジネス・スクールの学生約30人は、帝国ホテルで黒川清氏(国会事故調委員長)の話を聞き、このイラスト動画に見入った。

このとき、ハーバードの学生たちから「日本の広告で、よくグローバル人材という言葉を見るがどういう意味か?」という質問が出たという。ちなみに石橋さんの息子さんたちは「グローバル教育」を、「世界に通用する教育を受けること」、石橋さん自身は「自分で物事を考え、それを意見に組み立て、的確に伝えることができるようになるための教育」ととらえている。

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国会事故調の報告書は、書籍『国会事故調 報告書』(徳間書店)にもなっている。 わかりやすいプロジェクト高校生チームのメンバーたちが分厚い報告書を自分たちで読み、考案を重ねて、この春出版社と一緒に新しい「帯」を作成した
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「耳障りのいい掛け声とは裏腹に、今後の世代にとって、この国に住み続けることの合理性は急速に失われつつある」。これもまた、石橋さんが「わかりやすいプロジェクト」を始めた理由だ。まさに、子どもにグローバル教育を受けさせたい、と願う親の危機感と重なる。

わが子を真のグローバル人材にしたい親御さんには、このイラスト動画を親子そろって見てみることをお勧めしたい。そこには小学生の息子から「1年経ちましたね」「何が変わりましたか」「あなたは何をしましたか」と問われ、絶句した、国家プロジェクトにかかわるパパとその仲間からの贈り物がある。そしてそれは、私たちの子どもたちが今後、海外で問われ続ける「問い」への入口でもある。

帰国子女の母が考える、子育てに重要なこと

普段、石橋さんは自分の子どもたちの教育について細かいことは言わないが、ひとつだけ、家庭内で仕事の影響が表れる行動がある。新聞やテレビを見ていて「これは、実は違うんだよ」とよく話すことだ。

たとえば、息子たちが小さい頃、テレビでポケモンを見ているときに「爆発する路上バトルでつかまらないのはなぜ?」などと話しかけていたという。「当時は子どもたちには意味がわからなかったかもれませんが」と石橋さんは振り返る。

こうした父の言動に、息子さん2人とも「影響を受けていると思う」と話す。「新聞に書かれていたり、ニュースでみたりするいろいろな事柄を鵜呑みにせず、違う側面がないのかを考えるようになっていると思います」(長男)。
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子どもたちに自己肯定感を育てる・・・薫さん
子どもたちに自己肯定感を育てるための家庭教育に力を注いできた、妻の薫さん
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息子さんたちの家庭教育は、主に母親の薫さんが担った。大学の教職課程で青年心理学を受講した際、「母と子の信頼関係をしっかり築くことが、自己肯定・人格形成へとつながる」と学び、一緒に遊んだり手作りを楽しんだり、愛情を注いできた。

薫さん自身は帰国子女で、中学と大学時代はほぼすべて英語で学んだ。その経験を生かし、息子たちが小学生の頃から英語を教えた。発音やヒアリング重視で「日常会話などを教えてもらった」(息子さんたち)。

一方で「勉強しなさい」とは言わない。言わないというより言う必要がなかった、というのが正確かもしれない。2人とも超有名私立校に通うが、塾で受験勉強を始めたのは小学5年から。それまでは通信教育を自宅でやっていた。

言われなくても勉強した理由は「やるのが当たり前だから」(長男)、「自分のためだから」(次男)という。ちなみに、子どもが勉強しなくて困っている親にどうアドバイスするか尋ねると、異口同音に「言っても無駄なので放っておいていいと思う」という答えが返ってきた。

父と母、それぞれの教育

石橋さんは、大変でシリアスな仕事を“あえて”選んできた。大学卒業後、最初に勤務した日本長期信用銀行では不良債権処理に携わり、シティバンクで培った経営者との信頼関係は今の仕事にもつながる。産業再生機構時代は大変な激務で、妻の薫さんは「(過労で)死んでしまうのでは」と心配したという。午前2時に帰宅して夕食を取り、4時間後の6時には出社する日々だったからだ。

その後は独立してコンサルティング会社を設立。組織の内部にどっぷり入り、経営改革のために汗をかくのが好きだ。今回の記事のテーマが、「グローバル教育論」と言うと、「ずっと国内で働いてきた私がですか」と戸惑う。初の海外旅行は新婚旅行で、英語が流暢な薫さんがすべてを手配。到着したバリで「日本人がいない!」と石橋さんが興奮したことは、夫婦の微笑ましい思い出になっている。

人の真価が現れる修羅場にこそ、多くの学びがある――。そんな一風変わった仕事観を持つ夫を、妻はゆったり構えて支える。「何も大変な仕事ばかり選ばなくても、と思わなくもないですが、本人がしたいことをやっているほうがいいですから」。ちなみに薫さんは6歳年下で長銀時代に社内結婚をした。「まさかこんなにドメスティックな人と結婚するなんて予想しませんでした。でも、すごく気楽に楽しく話ができました」と当時を振り返る。

都会育ちで海外経験豊富な妻。地方育ちできつい現場を好む夫。対照的だが子育てに関しては上手にバランスを取ってきた。当初「近所の公立中学校でいいのでは?」と考えていた石橋さん。薫さんは「東京は選択肢がたくさんあるよ」と私立受験も考えてみることを提案した。自身が帰国子女として高校からICUに通い「とても楽しかった」経験があったから、「環境を選ぶことは大切」と思っていた。中学受験をするかどうか、最終決定は本人の意思に任せ、結果は前述のとおりだ。

手作り好きで愛情あふれる母に育てられた優秀な兄弟は、多忙な父を、やっぱり応援しているようだ。あるとき、国会事故調の様子がテレビのニュースに映った。「参考人の頭部から生えた耳」を見た次男は「あ、これは、お父さんの耳だ!」と気づいたという。

そんな父とのかかわりを息子さんはやっぱり楽しんでいるのだろう。誕生日のプレゼントは何がいいか、と尋ねられた長男は、「一緒に石を掘りに行きたい」と答えた。これまでも家族で、秩父や鴨川に鉱物採集に、北海道にアンモナイトの化石採集に出掛けた。

長男が趣味で集めた鉱物
長男が趣味で集めた鉱物

長男と一緒に石を拾いに行ったときのこと。「石って外から見るとこんなふうに光っていないのです。小さなウサギのふんみたいなものを見つけて『あった!』と目当ての石がわかっちゃうから、すごいですね」。息子の得意分野について話す石橋さんの表情は、ごく普通のお父さんだ。


子ども被災者支援法”骨抜きバイアス”の実態
英文の勧告を誤訳、健康調査拡大を先延ばし

2014/06/04

若者の死因のトップは“自殺” 先進国中で日本だけ

若者の死因のトップは“自殺” 先進国中で日本だけ
(2014年6月3日13:01 テレビ朝日)

ANN 若年層の死因トップ 先進国では日本だけ・・・

 アメリカやドイツなど先進国のなかで、日本だけが若い世代での死因のトップが自殺であることが分かりました。

 2014年版の自殺対策白書によりますと、日本の自殺者数は2年連続で3万人を切り、減少傾向が続いています。しかし、15歳から34歳の若い世代では、男女ともに死因のトップが自殺となっています。若い世代で死因のトップが自殺なのは、アメリカやドイツなど先進7カ国のなかで日本だけです。人口10万人あたり20人に上り、2番目に多いカナダの12.2人を大きく上回っています。政府は今年度も、約360億円を自殺回避の対策に充てています。

若年層死因トップは自殺 先進7カ国で日本のみ


去年の自殺 2%減少、原因最多は健康問題
(2014年6月3日 10時44分 NHK)

政府は3日の閣議で、ことしの「自殺対策白書」を決定し、去年1年間に自殺した人は2万7000人余りで、前の年よりおよそ2%減少したものの、自殺をさらに減らすために、医療・福祉、経済分野の対策を着実に進める必要があるとしています。

3日閣議決定された「自殺対策白書」によりますと、去年1年間に自殺した人は、全国で2万7283人で、前の年に比べて575人、率にして2.1%減少し、2年連続で3万人を下回りました。

自殺した人を男女別でみると、男性が1万8787人と全体の68.9%を占め、女性は8496人で31.1%でした。

また、年代別で見てみますと、60歳代が全体の17.3%と最も多く、次いで40歳代が16.8%、50歳代が16.4%などとなっていて、70歳代と80歳以上では前の年より僅かに増加した一方、そのほかの年代はいずれも前の年より減少しました。

一方、自殺の原因を、遺書などから全体の74%の人について特定し、「健康問題」が1万3680人と最も多く、次いで、借金や失業などの「経済・生活問題」が4636人などとなっています。

白書では、自殺する人をさらに減らすために、医療・福祉、経済分野の対策を着実に進める必要があるとしています。

2014/06/02

『美味しんぼ』福島の真実編に寄せられた批判と意見

◆『美味しんぼ』 福島の真実編に寄せられた ご批判とご意見
(ビッグコミック スピリッツ 2014年6月2日号)から抜粋 

美味しんぼ ご批判とご意見


福島県庁
週刊ビッグコミックスピリッツ」4月28日及び5月12日発売号における「美味しんぼ」について 平成26年5月7日福島県

福島県においては、東日本大震災により地震や津波の被害に遭われ方々、東京電力福島第一原子力発電所事故により避難されている方々など、県内外において、今なお多くの県民が避難生活を余儀なくされている状況にあります。

原発事故による県民の健康面への影響に関しては、国、市町村、医療関係機関、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)等の国際機関との連携の下、全ての県民を対象とした県民健康調査、甲状腺検査やホールボディカウンター等により、放射性物質による健康面への影響を早期発見する検査体制を徹底しており、これまでにこれらの検査の実施を通して、原発事故により放出された放射性物質に起因する直接的な健康被害が確認された例はありません。

また、原発事故に伴い、本県の農林水産物は出荷停止等の措置がなされ、生産現場においては経済的損失やブランドイメージの低下など多大な損害を受け、さらには風評による販売価格の低迷が続いておりましたが、これまで国、県、市町村、生産団体、学術機関等が連携・協力しながら、農地等の除染、放射性物質の農産物等への吸収抑制対策の取組、米の全量全袋検査を始めとする県産農林水産物の徹底した検査の実施などにより、現在は国が定める基準値内の安全・安心な農林水産物のみが市場に出荷されております。

併せて、本県は国や市町村等と連携し、県内外の消費者等を対象としたリスクコミュニケーションなどの正しい理解の向上に取り組むとともに、出荷される農林水産物についても、安全性がしっかりと確保されていることから、本県への風評も和らぐなど市場関係者や消費者の理解が進んでまいりました。

このように、県のみならず、県民や関係団体の皆様が一丸となって復興に向かう最中、国内外に多数の読者を有し、社会的影響力の大きい「週刊ビッグコミックスピリッツ」4月28日及び5月12日発売号の「美味しんぼ」において、放射線の影響により鼻血が出るといった表現、また、「除染をしても汚染は取れない」「福島はもう住めない、安全には暮らせない」など、作中に登場する特定の個人の見解があたかも福島の現状そのものであるような印象を読者に与えかねない表現があり大変危惧しております。

これらの表現は、福島県民そして本県を応援いただいている国内外の方々の心情を全く顧みず、殊更に深く傷つけるものであり、また、回復途上にある本県の農林水産業や観光業など各産業分野へ深刻な経済的損失を与えかねず、さらには国民及び世界に対しても本県への不安感を増長させるものであり、総じて本県への風評を助長するものとして断固容認できるものでなく、極めて遺憾であります。

「週刊ビッグコミックスピリッツ」4月28日及び5月12日発売号の「美味しんぼ」において表現されている主な内容について本県の見解をお示しします。まず、登場人物が放射線の影響により鼻血が出るとありますが、高線量の被ばくがあった場合、血小板減少により、日常的に刺激を受けやすい歯茎や腸管からの出血や皮下出血とともに鼻血が起こりますが、
県内外に避難されている方も含め一般住民は、このような急性放射線症が出るような被ばくはしておりません。また、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の報告書(4月2日公表)においても、今回の事故による被ばくは、こうした影響が現れる線量からははるかに低いとされております。

また、「除染をしても汚染は取れない」との表現がありますが、本県では、安全・安心な暮らしを取り戻すため、国、市町村、県が連携して、除染の推進による環境回復に最優先で取り組んでおります。その結果、平成23年8月末から平成25年8月末までの2年間で除染を実施した施設等において、除染や物理的減衰などにより、60%以上の着実な空間線量率の低減が見られています。除染の進捗やインフラの整備などにより、避難区域の一部解除もなされています。

さらに、「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんてできない」との表現がありますが、世界保健機構(WHO)の公表では「被ばく線量が最も高かった地域の外側では、福島県においても、がんの罹患のリスクの増加は小さく、がん発生の自然のばらつきを越える発生は予測されない」としており、また、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR
)の報告書においても、福島第一原発事故の放射線被ばくによる急性の健康影響はなく、また一般住民や大多数の原発従事者において、将来にも被ばくによる健康影響の増加は予想されない、との影響評価が示されています。

「美味しんぼ」及び株式会社小学館が出版する出版物に関して、本県の
見解を含めて、国、市町村、生産者団体、放射線医学を専門とする医療機関や大学等高等教育機関、国連を始めとする国際的な科学機関などから、科学的知見や多様な意見・見解を、丁寧かつ綿密に取材・調査された上で、偏らない客観的な事実を基にした表現とされますよう、強く申し入れます。


小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教 原子核工学)
 今も帰れない地域が存在している、危険が存在するという事実を伝える必要はもちろんあります。国や電力会社、大手マスコミがその責任を放棄する、むしろ意図的に伝えないようにしている現状では、そうした活動は大切です。「鼻血」が出ることについては、現在までの科学的な知見では立証できないと思います。ただし、現在までの科学的な知見では立証できないことであっても、可能性がないとは言えません。

科学とは、事実の積み重ねによって進んでいくもので、従来は分からなかったことが少しずつ分かっていくものです。もちろん、心因性の「鼻血」は十分にありうると思いますし、従来は知られていない鼻粘膜の損害の機序もあるのかもしれません。

人間は個人差、個体差がありますので、鼻血を出す人も出さない人もいることは当然です。でも、私は医者でも生物学者でもないので、地域差が生じるかどうかは分かりません。「疲労感」については、不安を抱えている中では、心因性のものは当然あるでしょう。あるいはマスクをするなどという行為に伴う疲労もあるでしょう。

 行政は、事故を引き起こしたことについてなんの責任も取らないままですし、むしろ現在は福島原発事故を忘れさせようとしており、マスコミもそれに追随しています。このような状況で、行政の発表に対して不信感を持たないとすれば、そちらが不思議です。

何より放射線管理区域にしなければならない場所から避難をさせず、住まわせ続けているというのは、そこに住む人々を小さな子どもも含めて棄てるに等しく、犯罪行為です。


崎山比早子氏(医学博士・元東電福島原発事故調査委員・元放射線医学総合研究所主任研究官)

 私は臨床医ではないので経験がなく、低線量被曝が鼻血の原因になるのか否かということについてはわかりません。ただ、今の日本では低線量被曝の健康影響に関する議論がおかしくなっているという点については意見を述べたいと思います。

 政府は、「年間20ミリシーベルト以下であれば安全」だと言っています。原子力規制委員会が住民帰還の条件として提言したものです。20ミリという水準は、ICRP(国際放射線防護委員会)勧告の、緊急事態後の長期被曝状況の最高線量限度を用いたのだと思いますが、年間20ミリシーベルトでは健康に影響を与えないという証拠は全くありません

 政府関係者は、「100ミリシーベルト以下のリスクは、科学的に証明されていない」と言っています。これは『広島・長崎の寿命調査』を基にしていますが、その調査(原爆被爆者の寿命調査第14報)では、「放射線が安全なのはゼロのときのみ」だと結論付けています。

 20ミリシーベルトも浴びれば将来、癌になる可能性があります。放射線の持つエネルギーの大きさが、生体を形成している分子の結合エネルギーの大きさの数万倍にもなるため、放射線の飛跡が1本通ってもDNAに複雑損傷を起こす可能性があるからです。それが原因で20~30年後に癌になる可能性があるということです。放射線が安全なのは「線量ゼロ」の時だけなのです。

 そういうことを知っていながら、年間20ミリシーベルトなら大丈夫だとした専門家の社会的責任は重いと思います。

 政府の言う「100ミリシーベルト以下なら大丈夫」が仮に正しいとしても、積算線量が100ミリならば、年間20ミリの地域に生まれた子供は、5年間で100ミリになります。みすみす被曝させておいてそれ以後はどうしろと言うのでしょうか。

 環境省は『東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議』を開いて議論をしています。私は3月26日の会議で意見を申し上げてきました。

 この専門家会議では「100ミリシーベルトのリスクは小さく、バックグラウンドに隠れてしまう」と言っています。どういうことかというと、例えば日本人は3人に一人が癌で亡くなるので、癌死率は約30%。「100ミリシーベルトで癌死率が0.5%上昇する」ことは認めているので、100ミリシーベルトを浴びることで癌死率は30.5%になる。しかし0.5%の上昇は疫学調査をしても分からないと言うのです。癌死が0.5%高まることは認めていながら「バックグラウンドに隠れてしまうからいい」と言っているのです。これは倫理の崩壊です。しかも一般の人がリスクはゼロであると誤解するような言い方をしています。

 ちなみに、0.5%という数字はICRPのモデルに従って計算したものです。ICRPは、同じ線量でも低線量率被曝のほうが高線量率よりもリスクは小さいという立場で、リスクを広島・長崎の2分の1にしています。WHOやECRR(欧州放射線リスク委員会)では、1としています。旧ソ連のテチャ川流域住民では、低線量率被曝のほうがリスクが2倍となっています

 いずれにしても、専門家会議は低線量のリスクの存在は承知しています。リスクを認めるのなら、1ミリシーベルト以上の地域からは避難する権利を認めるべきです。チェルノブイリ法では1から5ミリの地域では避難の権利を認めていて、5ミリ以上は強制避難です

 なぜ、低線量被曝のリスクを無視しようとしているのでしょう。年間20ミリシーベルトなら安全だと言うことで、賠償負担をなくそうとしているのではないかと思えてきます。安全なら、賠償金は不要ですから

 しかし、福島第一原発事故現場の本当の状況は国も東京電力も知りません。炉の中がどうなっているのか、見た人がいないのですから。また、4号機からは使用済み核燃料を取り出している最中ですし、2、3号機の使用済み燃料は手つかずです。今後何が起きるかわかりません。その上、増え続けている汚染水の問題もどうするのか解決策が見つかっていません。

 このような状況で避難区域を除染したと称して帰還させても、また避難しなければならなくなる可能性があります。被曝を伴う除染に大金を使うならば、それを避難者に支払い安定した生活ができるよう支援すべきだと思います。

 ところが政府や専門家らは、100ミリシーベルトまでは安心だと、誤った情報を流し、福島をはじめ汚染地に住む人たちを”安心”させようとしている。このままでは数十年後、多くの人たちの健康に影響が出る可能性があります。

 低線量放射線の疫学研究で、2012年以降に発表された論文を見ると、イギリスの自然放射線の高い地域では、積算5ミリシーベルトで小児白血病が有意に高まるとしています。オーストラリアで、CT検査を受けた約68万人を対象とした疫学調査では、4.5ミリシーベルトで1.24倍の発癌率増加となっています。イギリスの子どものCT検査では約30ミリシーベルトで白血病が約3倍、約60ミリで脳腫瘍が2.8倍になっています。専門家会議の委員が言うように、バックグラウンドに隠れてはいません。

 にもかかわらず政府や専門家は、低線量のリスクを無視する。問題視する意見を封殺しようとしています。マスコミ報道にもそんな傾向がありますから、これは日本人全体の健康にとって、重大な問題だと思います。


中日新聞:子どもの鼻血・・・放射線被害では?
(2011年6月22日 中日新聞)

津田敏秀氏(岡山大学教授 疫学、環境医学)
 チェルノブイリでも福島でも鼻血の訴えは多いことが知られています。(雁屋さんが)実際に対面した人が「鼻血を出した」わけですから、それを描くのは問題ないと思います。「低線量放射線との因果関係をデータとして証明しないかぎり、そのような印象に導く表現をすべきではない」という批判が多いとのことですが、「因果関係がある」という証明はあっても、「因果関係がない」という証明はされていません。ここでいう「因果関係」とは科学の中心課題としての因果関係で、松井先生が作中で述べているメカニズム的な因果関係ではありませんが、これだけ各地で同様の訴えがある中で「低線量放射線と鼻血に因果関係はない」と言って批判をされる方には、「因果関係がない」という証明を出せと求めればいいと思います。

 毎日新聞の日野行介という記者が書いた『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』(岩波新書)という本があります。福島県が行った健康調査に情報操作や改ざんがあったことを調べた報道をまとめたものですが、こういうことがあると、行政は不信感をもたれます。福島県と環境省の会議の時に、住民やメディアから信頼を得る必要があるということを強調したつもりですが、上記の本によると福島県はメディア対応でやってはいけないことをやってしまっています。こういう教科書的な間違いをしてしまっては、行政の発表について、不信感を持つ人がいてもしかたないでしょう。

 放射線と鼻血の因果関係はあると思われます。鼻血だけでなく、広島や長崎では脳出血が多いのです。これらは国際雑誌にも載っている話で、被ばく量が多ければ多いほど脳出血が多い。放射線が血管に影響があるのはほぼ定説ではないでしょうか。鼻血が多くてもなんの不思議もありません。甲状腺がんも空間線量が高そうなところに多発している。福島でも広島、長崎でもこれは同じです。

 20ミリシーベルトが安全という話は、100ミリシーベルト以下は被ばくによるがんが出ないといううその情報にしたがって、20ミリシーベルトは大丈夫と言っているのでしょうが、それは間違っています。省庁や、原子力安全委員会の元委員長(松浦祥次郎氏)ですら、それを真に受けています。一方、専門家が集まった場で「100ミリシーベルト以下では被ばくによるがんが出ないという話」を私が紹介すると、「そんなバカなことを言う専門家がいるのか」と冷笑されたくらいです。100ミリシーベルト以下でも放射線被ばくによるがんが出る、ということに関して国際的に異論がある方はいないと思います。

 実態に基づいて描かれた、この程度の内容の漫画で物議をかもすのが正直まったく解せません。我々から見れば、放射線による人体影響は、数ある環境ばく露(生活環境において、放射線や紫外線、化学物質を体内に取り込むこと)のひとつにしかすぎません。たとえばPM2.5は福岡や熊本で数値が高くなっていて、マスクをしている人もいます。北京では人が住む環境ではないというような表現をしている。みんなが怖がっているのに、そのことを報道しても誰も文句を言いません。むしろ、もっと詳しく報道しろと言う。こんな穏当な漫画に福島県の放射線のことが描かれたからといって文句を言う人のほうが、むしろ放射線を特別視して不安をあおっているのではないでしょうか。詳細な報道をして、どうするべきがみんなで考えればいいじゃないかと思います。

 「福島に住んではいけない」という表現がありますが、放射線管理区域というのは、厳重に管理されている場所で、普通そういうところに人は住んではいないし、住んではいけません。特にこどもや妊婦は放射線管理区域に相当するレベルの空間線量がある場所に住んではいけない。福島県内でそれに相当する地域に関して、「住んではいけない場所」という表現をつかって、場所をもっと特定しろと言う以外に、なにか問題があるのか、逆に私が聞きたい。


東京新聞 5月13日 美味しんぼ
(2014年5月13日 東京新聞)

野呂美加氏(NPO法人「チェルノブイリへのかけはし」代表)
 私達はチェルノブイリの子ども達の大病を予防するために、日本へ保養に招待する活動をしてきました(福島原発事故以来は休止しています)。

 今、日本で行われている被曝対策は広島・長崎のデータに基づいていますが、チェルノブイリの医師達は、広島の事例は使えないと言っています。特に、低線量内部被曝は、核実験などを頻繁に行っていた旧ソ連の科学者もそこまで被害が悪化すると思っていませんでした。適切で大規模な疫学調査をしなければ、鼻血の否定はできないと思います。低線量被曝で鼻血が出ること、それはチェルノブイリでは日常です。「このぐらいの放射線量で鼻血が出るわけがない」というのは、「ある一定量以上の被曝をしないと、鼻血は出ない」という説を前提にしていますが、「被曝にしきい値がない」というのが真実です。鼻血についてはお母さん達の体験が数え切れないほど寄せられています。

 しかし、原発の再稼働に関係しているので、低線量でさまざまな身体症状が出る因果関係を政府が認めることは、絶対にないと思います。IAEA(国際原子力機関)もチェルノブイリの人々の健康被害の中で、放射線起因を認めたのは「小児甲状腺がん」のみでした。どのような身体症状も初期被曝値がわからないので、原因の特定はできないとしてウクライナの医師達の主張をしりぞけたのです。

 ベラルーシでは、年間総被曝量が1ミリシーベルトに満たない汚染地域でも内部被曝を鑑みて、子ども達を国家の事業として保養に出しています。保養させた子ども達の尿検査をすると、体内の放射性物質が著しく減少します。まずは、国民の健康診断をして、数年間は管理をすべきだし、旧ソ連にならって、せめて子ども達を安全な地で保養させたり、安全なものを食べさせたりするべきだと思います。

 日本では鼻血の症状すら口にできない言論封殺の雰囲気ができあがっており、何よりそうした症状を訴える人に対して、医学が背を向けていることが大問題です。

 母親達にとって、3.11以降、毎日が「否定されること」の連続です。毎日三度の食卓、学校での様々なイベントや給食。何か異変を感じて病院に行っても、「因果関係がわからない」「心配しすぎ」と頭ごなしに否定されることがある。母親が望んでいるのに、「診察や、血液検査の必要はない」とされてしまうこともある。そして、ツイッターなどでつぶやこうものなら、「鼻血なんて聞いたことがない」「不安をあおる」という攻撃にさらされます。

 言論封殺することで、自由な議論や発見の発表が阻害されれば、被曝がより深刻化しかねません。鼻血の段階で、ていねいに血液検査していた旧ソ連を思えば、日本は最初から否定ありきですので、事態は日本のほうが深刻になると思います。

 「鼻血が出た」と言ったらダメなのか?
 私は風評被害対策の生贄にされる国民がかわいそうでなりません。


肥田舜太郎氏(医師)
 私は、原爆投下後の広島で被爆者の治療にあたり、内部被ばくを研究してきた医師として、震災後に日本各地から講演の依頼がありました。そして全国を訪ね歩いたのですが、行く先々でこんな相談を受けたんです。「あまり人には言えないけれど、実はうちの子は鼻血が出て困りました。大丈夫でしょうか」と。鼻血のほか、下痢の症状を訴える人もいました。事故を起こした福島第一原発の放射性物質はアメリカやイギリスにまで拡散したのですから、狭い日本のすみずみまで被害が及んでいてもおかしくありません。

 また、昔の私の実体験として、「ぶらぶら病」と呼ばれる症状に苦しむ人々を多く診てきました。だるくて非常に疲れやすいという症状ですが、この患者の共通点は、原爆が投下された後に広島に入ったということ。つまり、残留した放射能の影響を受けて、内部被ばくしたことによる影響であろうと確信しています。

 鼻血や下痢、疲労感には、放射線の影響が考えられます。作中では、放射線による人体への影響について松井英介さんが見解を述べていますが、この分野では、「ペトカウ理論」という学説があります。放射線で細胞膜が破壊できるのかを実験した、カナダのアブラム・ペトカウという学者の説です。

 ペトカウは、高線量の放射線を短時間放射するよりも、低線量で時間をかけてゆっくりと放射した方が、細胞膜を破壊する率が確実に上がることを実験で証明しました。1972年のことです。

 しかし、低線量による内部被ばくを隠したいアメリカにとっては不利な学説だったため、アメリカはカナダ政府を巻き込んで、ペトカウの学説はインチキだという宣伝をしまくり弾圧してしまったのです。ですから、ペトカウのことは、ごく一部の専門家しか知らないでしょうし、一般には名前も知られていないでしょう。

 ごく微量でも、放射線を浴びれば誰でも被ばくをしますが、被ばくによって受ける影響には個人差があります。私は、原爆投下後の広島で、同じ場所で親しい高校生二人が並んで外部被ばくし、片方は3日後に亡くなったが、もうひとりは8年間生きた、というような例をいくつも診てきました。ましてや、内部被ばくの影響は、その人の持っている生命構造のほんのわずかな差で現れ方が違ってくる。ですから、外部被ばくでも内部被ばくでも、何ベクレルまでなら大丈夫、というような基準は絶対にないのです。

 放射能とは無縁に生きるのが人類の鉄則だと思いますが、今は対応のしようがない。しかし、ある程度以上の放射線量が計測されるところに住んでいる方は、少なくとも、放射線の影響を受けやすい子供だけでも、強制疎開するべき。今からでも遅くないからやるべきだと私は思います。なかには、今のチェルノブイリの基準であれば住んではいけない線量の場所で過ごしている子供もいるはずで心配です。

 今の医学ではまだ、放射線による人体への影響を解明しきれていません。しかし、解析が進めば明らかになるだろうという意味も含めて、鼻血などの症状を訴える人がいるという事実は報道すべきだと思います。

 私は古い人間ですから漫画はなじめませんが、たくさんの人に何かを伝えるためには有効な媒体でしょう。ただ、放射線による人体への影響のような専門的なことを、短いセリフと絵で伝えてしまうと、基本的な知識のない読者は自分の好きに判断してしまいかねません。この漫画を通じて得た先入観を持ったまま、放射線とはこういうものだと自分で決めてしまい、それ以上のことを追究しようとしないわけです。ですから、人間の命に関係するものを出版される以上は、読者がその奥へ迫れるようなものを重ねて出版するべきだと思います。

毎日新聞:美味しんぼ「誤解生む」「よく伝えた」
(2014年5月20日 毎日新聞)


矢ケ崎克馬氏(琉球大学名誉教授 物性物理学)
 放射能の健康への影響については、国際的に二つの潮流に分かれています。一つはICRP(国際放射線防護委員会)やIAEA(国際原子力機関)が主張する、放射能の影響は大したことがないという論調。100ミリシーベルトまでは問題はなく、チェルノブイリ事故後の健康被害は甲状腺ガンだけというもの。もう一つは、事実をありのままに見つめ、率直に理解する考え方。こちらは、低線量の健康被害を重大視しています。日本政府は、前者のスタンスですが、事実を率直に見つめれば、それが誤りであることは分かります。

 現に、100ミリシーベルトどころか、その100分の1、1000分の1でも健康被害が出ています。欧州では年間0.1ミリ以下ですが、性比(男女の出生比)、血管系疾患、免疫力低下、死産、奇形、ダウン症、水晶体混濁、白血病などがチェルノブイリ事故が起きた1986年を境に急増。主として、食を通じての内部被曝によるものと考えられています。影響は数ミリシーベルトのレベルで増加しており、2056年までの癌の発生は全欧州で13万人余、死亡数は8万人余と膨大な被害が予測されています。100ミリシーベルトなどとんでもない数値なのです。こうした事実がチェルノブイリの調査報告で出ています。

 放射能と鼻血の関係ですが、放射線がモノにあたると、どういうことが起きるか。放射線は原子に当たります。すると『電離』が起きる。電離によって電子が吹き飛ばされる。放射線で電子が飛ばされると原子が離れ、『分子切断』が起きる。生命機能を果たしていた組織が、放射線の作用で切断されるのです。放射線が鼻粘膜に当たれば、粘膜で分子切断が起こる。放射線が沢山当たると、鼻血が出る。

 放射性微粒子が粘膜につくと、どんどんベータ線が出て分子切断を行う。微粒子の周囲に集中して切断が生じる。その結果、鼻血が出やすくなる。

 原発事故後、関東圏で多くの子供が鼻血を出したと伝わっています。私もそうした情報は伝わりました。そんな問い合わせには、『お医者さんに行って、傷があるか見てもらいなさい。傷が認められないなら、放射線の可能性があります』とお答えしました。が、ICRPは放射線の基本作用を認めておらず、公式には放射能と鼻血は関係ないとし、鼻血などが認知されることを恐れています。

 放射能被害については、市民の方々も独自に調査を行い、その危なさに気付いています。

 関東地方の常総生協は2012年11月、松戸、柏、つくば、取手など千葉、茨城の15市町に住む0歳から18歳までの子どもを対象に尿検査を実施。そうしたら70%の児童の尿からセシウムが検知されました

 こうした調査結果があるにもかかわらず、国は内部被曝はないとしています。こういうことでは、行政の公表内容に不信感を持たれるのも当然でしょう

 マスコミ報道で必要なのは、国際的な視野を持ってほしいこと。そして、どういうことが起きているのか、事実を見てほしいということ。この2点です。

 今回の『美味しんぼ』については、非常に勇気を持って漫画をつくっていると感じます。
 漫画の中にも、基本的人権に通ずる言葉が大きく出ています。つまり、健康に生きる権利ですよね、そういうことが書かれている。

 事故から3年たちましたが、放射能汚染が自然のレベルまで落ちるのに相当の時間がかかる。200年たっても自然レベルには落ちません。そういう意味で、今まさに『100年の計』をもって、事故に対して国がどのように住民の命を守るのか、ちゃんと考えなきゃいけない時期に来ています。そういう時に、こうした事実に基づいた漫画作品や報道は有益です。

 今回の『美味しんぼ』の企画は、事実を大切にし、健康に生きる権利について、きちんとした視点から報じている。そこが大事なことです。


「5人に1人が鼻血」DAYS JAPANが調査結果を公表
(2014年05月14日 デイリーノーボーダー編集部)

チェルノブイリ原発事故の取材などを通じて、放射能と健康状況の関係に最も詳しいジャーナリストのひとりで、「チェルノブイリ子ども基金」前代表の広河隆一氏が、当時の調査結果を「DAYS JAPAN」を通じて公表した。

ここ数日の「美味しんぼ」騒動を受けて、チェルノブイリ事故後のIAEAによる情報隠蔽に直面した経験を持つ広河氏は、「鼻血は出ると訴えている人がいることを認めた上で、それが大きな病気に 結びつくのを防ぐためにはどうすればいいのかを話す方が建設的ではないかと思う」と提案している。

その上で、改めてチェルノブイリ原発事故後の追跡健康調査の報告を示し、安易な結論に結びつける政府や報道機関に警告を発している。

広河氏と「チェルノブイリ子ども基金」は、1993年から96年にかけて避難者2 万5564 人に対して健康状況に関する独自のアンケートを行い、その結果、5 人に1 人が鼻血を訴えていることを報告している。また、10年後の調査でも同じ症状を訴える避難者がほぼ同率いたことも併せて述べている。
(写真は沖縄県久米島の球美の里/C:広河隆一)

2014/05/22

森を守ろうとして逮捕された村長への応援メッセージ

子どもたちに美しい自然を残したい」という村長が逮捕された>という記事の関連記事です。

2014年4月23日付で、インタグコーヒー生産者協会の会長からハビエルさんに送られた手紙を紹介します。

ハビエル・ラミレス様、フニン村の皆様

 ご挨拶の前に、インタグコーヒー生産者組合の代表として、大規模な鉱山開発のような貧困を増長するようなプロジェクトに対する戦いに連帯することを表明したいと思います。インタグにおいては、この開発と発展はまったく相容れないもので、たとえば現在のセメント・セルバ・アレグレ(訳注:インタグのセルバ・アレグレ教区にあるセメント工場。インタグの端で、石灰を採掘している)からもわかるように、30年におよぶ開発の中で、インタグのコミュニティにとっては、コミュニティの発展もあの有名なロイヤリティもまったく見当たりません。

 私たちは、彼の村で鉱山開発に反対しているAACRI(インタグコーヒー生産者協会)の会員でもあるハビエルの逮捕には、憲法で保証されているはずの人権が侵害されていることに悲嘆し、心を痛めております。

 私たちはこの手紙で、組織として、ハビエルの家族と鉱山開発の影響下にあるコミュニティへ、支援することを表明します。私たちの組織は、努力しますし、コーヒーを販売することで経済的オルタナティブを作り、いのちを守る この戦いの世界への大使となります。

 ハビエル、あなたは一人ではありません。あなたはそれを知らなくてはなりません。AACRIはあなたとともにあります。AACRIはあなたの情熱を支え、健全な自然環境と持続可能な未来のあなたが守りたい人たちのいのちのために戦います。

 あなたへの最大限の尊厳を表明し、この手紙を終わります。

敬具
エドムンド・ヴァレラ
インタグコーヒー生産者協会(AACRI)会長

2014/05/15

「子どもたちに美しい自然を残したい」という村長が逮捕された

1980年代後半から無農薬コーヒーのフェアトレード事業に取り組んできた私は、90年代に入り、森と共生しながら(あるいは、森を再生しながら)森の中で農薬も化学肥料も使わずにコーヒーや果樹などを栽培してきた中南米の生産者に出会い感動しました。

特にエクアドル・インタグ地方の生産者と住民は、森を破壊する「鉱山開発」という名の自然破壊に対しても20年にわたって反対し続けてきました。しかし今、ラファエル・コレアという大統領が住民の意思を無視して暴力的な開発を進めるために、鉱山開発に反対するリーダーを不当に逮捕しました。

自然を愛し、「目先の経済」よりも子どもたちや未来世代の幸せを考え、自然と共に生きてきたエクアドルの友人たちから緊急要請が届きました。その内容は、「子どもたちに美しい自然を残したい」と先頭に立って鉱山開発に反対してきたフニン村のハビエル・ラミレス村長が逮捕され、拘留されてしまった。(すでに1ヶ月以上も拘留が続いている)早期釈放に向けて協力してほしいというものです。

フニン村のハビエル・ラミレス親子と中村
(不当に逮捕されたハビエル・ラミレスさん親子と中村、8年前の写真)

南米エクアドルの北西部に位置するインタグ地方の森は、世界でも屈指の生物多様性(多種多様な動植物が生息していること)を誇り、地球上から減少し続けている生物の「種の絶滅」を防ぐ上で、最も重要な場所の一つだといわれています。ところが、この地域には銅や金などの地下資源が眠っているため、常に「鉱山開発」の標的にされてきました。

子どもたちが遊ぶフニンの川IMG_2228
(鉱山開発が強引に進められようとしているフニン村の川で遊ぶ子どもたち)

これまで、日本やカナダの鉱山会社が執拗に「開発」しようとしてきましたが、地域住民は「目先の利益」よりも「子どもたちに森や川を残したい」と20年間も鉱山開発に反対し続けてきました。

それほどまでに守りたい自然とは、どのようなものなのか。
友人のカルロス・ソリージャさんが撮影した写真をご覧下さい。

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赤い鳥・カルロス写真

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このような美しい自然が、鉱山開発を行うと見るも無残な姿に変わり果ててしまいます。
「開発」という名の自然破壊の例をご覧下さい。

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鉱山開発4

鉱山開発3

鉱山開発5

鉱山開発1グーグル
(写真は、エクアドルの環境保護団体DECOINのサイトから)

このような自然破壊の実態を広く世界の人々に伝え、より多くの声を集めて、インタグの人々と共に自然を守っていきたいと思います。

福島原発事故の後、東北や関東から子どもを連れて避難してきたお母さんたちが言いました。「九州に来て、安心して空気が吸えて、安心して水が飲めて、安心して食べ物が食べられる。そして、安心して子どもたちを大地で遊ばせることができる。これほどうれしくて、ありがたいことはありません」と何人ものお母さんから聞きました。

私たちは、宇宙の中に奇跡のように誕生した美しい星に生きていることの「ありがたさ」や「幸せ」を忘れがちです。

この星には今、3000万種以上の生物種が生きていると言われていますが、その地球に住む「大家族」の一員に過ぎない人類が、まるで独裁者のように「人間のためなら他の生物に対して何をしても構わない」といった態度で、自然を破壊し続けています。

わずか十数年の「目先の経済」のために、半永久的に私たちの命を支えてくれる生態系を破壊しています。その愚かさに気づいたエクアドル・インタグ地方の人々は、子どもたちだけでなく遠い未来の世代にも豊かな自然を残せるような生き方を模索する中で、森と共存できるアグロフォレストリー(森林農法)に着目し、地域に広めてきました。

アグロフォレストリーは、森林を切り払って単一の作物を大量に生産する一般的な農法(プランテーション農法)とは対照的に、森を残し、その中で多様な作物や樹木を育てる農業システムです。コーヒーのアグロフォレストリーシステムの場合、多様な果樹と作物、そして日陰樹となる木々と一緒にコーヒーを栽培します。こうした多品目栽培は、落ち葉などによって土壌が豊かになり、「益虫」も含めた生物多様性のある環境によって、害虫や病気が発生したときにも、その広がりが抑えられるため、農薬を使用せずにコーヒーを栽培できます。

一方、プランテーション農法では、病害虫対策と収穫量を増やすために農薬や化学肥料が大量に使用されます。森林農法のコーヒー栽培は、こうした農法より収穫量が少なく、手間はかかりますが、自給自足的に野菜や果物も収穫できるため、コーヒーの収量が少なく現金収入が少ない時にも生産者は、なんとか食べていくことができます。

こうしたアグロフォレストリーや有機栽培のコーヒーを通じて、私たちはインタグの人々とフェアトレードでつながりました。そして、守り続けてきた豊かな自然が「観光資源」となってエコツアーを生み出し、観光客を増やしてきました。このようなインタグ地域の取り組みは「持続可能な発展のモデル」になりつつありました。そんなときに、鉱山開発の中心地であるフニン村の村長、ハビエル・ラミレスさんが、身に覚えのない「暴力行為」によって、不当に逮捕されたのです。

8年前にハビエルさんと出会った私は、彼の子どもたちに対する優しさや未来世代に対する責任感の強さに感動しました。今、日本では、エコツアーやコーヒーの産地訪問でラミレス村長に会い、その温かい人柄を知っている女性たちが中心となって懸命な救援運動を展開しています。

南米エクアドル・インタグの森を巡って、今、起きていること

インタグコーヒー物語

(2018年追記)
自然を守り続けてきた先住民を応援して下さい

2014/04/26

低線量長期被ばくの影響 「チェルノブイリ 28年目の子どもたち」

28年前の4月26日、チェルノブイリ原発事故が起こり、3年前に福島原発事故が起こった。チェルノブイリ原発事故では、東欧を中心にヨーロッパの多くの国を汚染した。

チェルノブイリ汚染地図(ヨーロッパ)

原発事故で大気中に放出された放射性物質は、風に乗ってヨーロッパ全域に広がった。そして、大量の放射性物質が空気中に漂っているときに雨が降った北欧や中欧などがまだら模様に強く汚染された。(スウェーデンでガンの増加が報告されている)、特にチェルノブイリ原発があるウクライナと隣国のベラルーシ、ロシアに年間1ミリシーベルト以上に汚染された地域が多い。

チェル周辺3カ国の汚染地図


映像報告「チェルノブイリ・28年目の子どもたち」
(2014年4月25日公開 ourplanet-tv)

チェルノブイリ28年目 低線量長期被曝の現場から

チェルノブイリ周辺3カ国の汚染地図・コロステン

地図上に「コロステニ」と書かれている所が映像報告「チェルノブイリ・28年目の子どもたち」のコロステン第12学校がある地区。年間0.5~1ミリシーベルトの「放射線管理地域」と1~5ミリシーベルトの「避難勧告地域」=「移住の権利がある区域」が混在している。

0.089ms コロステン第12学校

コロステン子ども 眼科と血液と甲状腺検査をしました

コロステン小学校:健康157人 配慮必要385人慢性疾患90人体育を免除13人

チェルノブイリ原発事故後、体育の授業を健康診断の結果に応じて4つのグループに分けるようになった。コロステン第12学校では、645人の生徒のうち健康な子どもが参加する基本グループは157人(24%)、配慮が必要な子どもが参加するグループは385人(60%)、慢性的な疾患を持つ特別グループの子は90人(14%)、障害などがあり、体育を免除されている子どもは13人(2%)。体育の時間に突然死する子どもが増えたため、2年前から保健省が心肺機能測定を導入。

子どもたちは年に1回、専門医の詳細な検査を受けます

医師「胃潰瘍、甲状腺炎、目の疾患、心疾患・・・」
医師「特別グループに入っている子どもの疾患は、胃潰瘍、甲状腺炎、重度の目の疾患とか、心疾患、脊椎側彎症、急性肝炎などです」

ウクライナ パスポート線量= 内部被ばく+外部被ばく
ウクライナでは外部被ばくだけでなく、内部被ばくも考慮して被ばく線量が計算されている。

コロステン「日本の子どもたちの健康が守られることを祈っています」

今年3月で、福島第一原発事故から3年になる日。しかし現在も年間20ミリシーベルトを避難基準に設定したまま、住民の早期帰還策が進められている。また除染以外の被ばく防護策や健康調査は極めて限定的だ。
 
そんな中、OurPlanetTVではチェルノブイリ事故後28年経つウクライナへ足を運び、子どもたちの健康状態や学校生活などを取材した。汚染地域の子どもや住民の罹患率が今も上昇する中、医師、教師たちの懸命な努力が続けられている。日本はここから何を学べるか。子どもを取り巻く学校や教育関係者、医療従事者、保護者たちの取組みや思いを取材した。

詳細


参考記事…子どもたちの健康を守るために知っておきたいこと

ジョン・W・ゴフマン著『人間と放射線―医療用X線から原発まで―』
京都大学原子炉実験所の今中哲二さんや小出裕章さんが翻訳したジョン・W・ゴフマン博士の名著 『人間と放射線―医療用X線から原発まで―』によれば、55歳以上と子どもを比べると(同じ放射線量を浴びたときに)10歳の児童は200倍以上、0歳の乳児は300倍以上もガン死率が高くなる

ゴフマンのグラフ(520サイズ)

例えば、児童が5~10ベクレル/kg汚染された給食を食べているというのは、55歳以上の大人が、その200倍の1000~2000ベクレル以上に汚染されたものを食べているのと同じである


ウクライナの避難地域(チェルノブイリ事故)と福島事故

福島原発事故の後、東北と関東で数百万人が年間被ばく線量1ミリシーベルト以上の地域に暮らしているが、チェルノブイリでは、1ミリシーベルト以上の地域に暮らす子どもたちの多くは様々な病気を抱えている。

東日本の汚染地図(チェルノブイリと比較)
(地図は「原発隣接地帯から:脱原発を考えるブログ」より拝借)

東日本汚染地図(ウクライナ基準説明)
(地図は「原発隣接地帯から:脱原発を考えるブログ」より拝借)

東日本汚染地図(東洋経済)
(出典www.toyokeizai.net


(参考)
最大の被害者は、福島原発の事故処理作業員と子どもたち
(2013/10/20 エコロジーの風)から抜粋

ノーベル平和賞の「社会的責任を果たすための医師団」が警告

米国科学アカデミーによれば、安全な放射能の線量というものはない。過去数十年にわたる研究から、放射線はどんなに少ない線量でも、個々人の発がんリスクを高めることがはっきりと示されている。

日本で危機が続く中、人に発がんの危険が生じるのは最低100ミリシーベルト(mSv)被曝したときだという報道が様々なメディアでますます多くなされるようになっている。これまでの研究で確立された知見に照らしてみると、この主張は誤りであることがわかる。100 mSv の線量を受けたときの発がんリスクは100人に1人、10 mSv では1000人に1人、そして1 mSV でも1万人に1人である

<<< 子どもたちの被ばく問題 >>>

チェルノブイリ法」では、年間被ばく線量が0.5ミリシーベルト(土壌汚染が37kベクレル/m2)以上の地域で、医療政策を含む防護対策が行われる。1ミリシーベルト以上であれば、避難の権利があり、5ミリシーベルト以上の地域は、移住の義務がある

チェルノブイリ法の避難基準

福島の帰還基準、避難者と賠償額の増加を恐れて「年5ミリ」とせず

原発事故で避難した住民が自宅に戻ることができる基準を「年20ミリシーベルト以下」から「年5ミリシーベルト以下」にする案を政府が検討したが、避難者が増えることを懸念して見送っていた。

「多くの医者と話をする中でも5ミリシーベルトの上と下で感触が違う」と5ミリ案を検討。チェルノブイリ事故では、5年後に5ミリの基準で住民を移住させた。年換算で、5.2ミリ超の地域は 放射線管理区域に指定され、原発労働者が同量の被曝で白血病の労災認定をされたこともある。ところが、5ミリ案は実行されなかった。「20ミリ案は甘く、1ミリ案は 県民が全面撤退になるため、5ミリ案を検討したが、避難者が増えるとの議論があり、固まらなかった」 「賠償額の増加も見送りの背景にある」(2013年5月25日 朝日新聞)から要約

記事全文

■東日本の放射線管理区域 どのように日本が汚れたのか?
(2012年12月22日 小出裕章氏講演録)から抜粋

私は京都大学原子炉実験所という所で、原子炉や放射能を相手に仕事をしています。私のように特殊な人間だけが、特殊な仕事をする時に限って入って良いというのが放射線管理区域です。私が放射線管理区域に入った途端に、私は水を飲むことが許されなくなります。食べ物ももちろん食べられません。そこで寝てもいけない。仕事が終わったらさっさと出て来いというのが放射線管理区域ですが、でも、簡単には出られないのです。

管理区域の出口に行くと、扉が閉まっていて開かない。その扉をあけるためには一つの手続きをしなければいけせん。扉の前に放射線汚染の検査装置が置いてあり「その検査装置でお前の身体が汚れていないかどうかを測れ」ということになっている。しかし、私は放射能を使って仕事をしたわけですから、私の衣服が放射能で汚れているかもしれない。私の手が放射能で汚れているかもしれない。

汚れたまま管理区域の外側に出てしまえば、普通のみなさんが生活をしているわけで、普通のみなさんを被曝させてしまう。それはやってはいけない事だから、ちゃんと測って、衣服、手、足などが汚れていないかどうかを確認しなければドアが開かないという、仕組みになっている。

では、その時にドアが開く基準はいくつかというと、1平方メートル当たり4万ベクレルです。

もし私の実験着が1平方メートルあたり4万ベクレル以上で汚れていれば、私はその実験着を管理区域の中で脱いで放射能で汚れたゴミとして捨ててこなければいけないのです。私の手が1平方メートル当たり4万ベクレルの放射能で汚れていれば、私は出られないのです。

管理区域の中に流しがあり、そこで手を洗って、手を綺麗にしろ。水で洗って落ちなければお湯で洗って落とせ。お湯で洗って落ちないなら、石鹸を付けて洗って落とせ。それでも洗って落ちなければ、もうしょうがないから手の皮膚が少しぐらい破れても良いから薬品で落とせという、1平方メートル当たり4万ベクレルを下回らない限りは、管理区域の中から外へ出られない。それが基準だったのです。

クリアな関東汚染地図・小出講演

この青の所は、少なくても6万ベクレルを超えて汚れている。その周りのくすんだ緑のところだって、3万ベクレルから6万ベクレル汚れている。私の実験着が汚れている、私の手が汚れているという事とは違うのです。大地がみんな汚れている。メチャクチャな汚染だと私は思います。

小出さん・放射線管理区域・日本地図

福島県の東半分、
宮城県の南部と北部、
茨城県の北部と南部、
栃木県・群馬県の北半分、
千葉県の北部、埼玉県・東京都の一部、
あるいは新潟県の一部であるとか、岩手県の一部

そんなところまでが放射線の管理区域にしなければいけない、というほどの汚染を受けているのです。何度も言いますが、放射線管理区域というのは、私のような特殊な人間が特殊な仕事をする時に限って入って良いという場所なのです。 普通の人は入ってはいけないし、子どもなんていることは、到底許されないという場所がこんなに広がっているということです。

全文


「5ミリシーベルト以上は強制移住」西尾正道

この5ミリシーベルト以下のエリアでも26年後のチェルノブイリでは、75%以上の子どもたちが病気になっている

『低線量汚染地域からの報告―チェルノブイリ26年後の健康被害』

(2012年9月にNHKで放送されたドキュメンタリー番組の書籍版 NHK出版)
ウクライナのコロステンの市内は、年0・5~1ミリシーベルトの放射線管理区域と年1~5ミリシーベルトの移住権利区域が半分ずつ占めている。日本でも同程度の汚染地域は広く分布しており、年0・5ミリシーベルト以上の汚染地域ならば1千万人以上が暮らしているだろう。チェルノブイリから26年後のコロステンの現状は、目をそらすことなく凝視すべきだろう。子供たちの75%以上が何らかの疾患を抱えているという「現実」はあまりにも重すぎる。

『低線量汚染地域からの報告―チェルノブイリ26年後の健康被害』

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