2011/06/16

ドイツ政府調査 原発に近いほどガンにかかるリスクが高い

6月9日のブログ「玄海原発周辺で白血病が増加 全国平均の6倍」について
「玄界町の白血病は原発によるものなのか?」という声が届いている。

玄海原発の場合、本格的な調査はされておらず、何も分かっていない。だからこそ、ドイツのように政府として調査する必要がある。ドイツ政府の調査では、原発に近ければ近いほどガンになるリスクが高いことが分かった。そして、科学が原発についての危険を全て分かっているわけではない、ということも分かっている。

南ドイツ新聞 原発周辺のガンの危険性
市民エネルギー研究所「地球号の危機ニュースレター」
No.331(2008年1月)掲載

ドイツ連邦放射線防護庁は原発周辺のガンの危険性、特に幼児の確率が高いという調査結果のレポートを発表した。以下の記事は南ドイツ新聞(SuddeutscheZeitung)の記事からの翻訳である。

原発周辺のガンの危険性(ドイツ連邦放射線防護庁)
  重大なのは16の原子炉がある周辺地域で
  幼児がガンにかかる確率が高いことが明らかになったこと

ドイツの原子炉がある場所の周辺では子ども(幼児)が白血病にかかる率が高い。マインツ大学の研究者は、原子炉の5km 以内の周辺で37人の子どもが白血病にかかっている事実をつきとめた。この調査は1980年~2003年の間にされたが、この間の他の地域での平均は17人であるから20人多い。その研究者は「私たちの調査研究では、ドイツで、原発の近くに住んでいれば5才以下の子どもがガンまたは、白血病にかかる可能性が高くなっていることが確認された」と言っている。

調査グループに参加している研究者の1人は(「名前を公表したくない」と言っているが)9ページの図は、もっと多くの危険性のことが言える結果がでていることをあらわしていると言っている。実際、50km以内の地域で、ガンにかかる調査結果の研究が高まっていることを示している。この事実は、昔からあった原発周辺の危険度の議論を再び呼びおこしている。

これまでも専門家が原子炉のそばのガンの調査をしたが、とり分け krummel (クリューメル)が子どものガンを発生させるという発表は議論の対象になった。これまでの調査では研究者同志で結論が分かれたり矛盾した結論や解説があり、原因究明の意見が分かれ、決定できなかった。しかも調査方法についての批判もあった。だからドイツ連邦放射線防護庁は、今回のこの新しい調査に原発推進派も批判派も調査に関わるようにした

マインツの研究者たちは、調査の範囲規模を大きくした。その1つはドイツには子どものガンは登録されているが、この中の5才以下の子どもたちを引き出して、1980年~2003年までガンにかかった子どもたちと原発の近くで育ってなお、ガンにかかった子どもピックアップした。距離の誤差は25m以下である(25mのメッシュで調査した)。

1980年~2003年の間に1592人のガンにかかった子どもたちに対して、4735人の健康な子どもたちを検査対象グループとし、比較をつき合わせた。比較対象グループは、同じ時期(1980~2003年)に同じ場所で育った子どもたちである。“Fall‐Controll‐ Studie”と呼ばれるこの調査方法は取り分け信頼がおけると考えられている。

子どもたちが原子炉に近ければ近いほどガンにかかるリスクは高く遠ければ遠いほどリスクは少ない。でも、ガンにかかる率が高くなったことに対しての責任が原発にあるとは言えない。というのは、放射線の量が医学的にみて低すぎるから。現在の科学のレベルでは、この結果は放射線生物学の観点からは説明できないので放射線の量との関連性に関しては証明はできていない。

しかし、原発との近ければ近いほどリスクが高いという関連性は証明されたしかも今回の結果は、クリューメルのような1カ所で沢山の白血病が発生したのではなく、全ての原発立地地区でこの結果がでたことである。

調査の確実性

この調査の名称はKiKK「原発周辺での子どものガン」である(“Kinderkrebs in der Umgebung von Kernkraftwerken”)。調査の対象は、1980年~2003年の間の5才以下の子どもがガンにかかる原発周辺の市町村で調査、16基41市町村。ここでは5才以下の1592人の子どもがガンになり、その中の593人が白血病である。この時の比較対象となった4735人の子どもたちは同じ年頃、同じ男女比でしかも原発周辺地域の健康な子どもたちである。この比較グループは原発以外でのガンにかかる原因を調べるためにつくられた。

この調査研究の確かさの1つは25mのメッシュであることである。ドイツでは1980年~2003年の間に13373人の子が5才以下でガンにかかった。そのうち29人の子は原発の5 km 以内に住んでいることでガンになったといえる。1年に1、2人のケースである。5893人の白血病のケースでいえば、その中の20人の子どもが5km以内に住んでいることによってかかった。これは1年に0.8ケースとなる。そうなると16の原発周辺地域の5 km 以内で37名の白血病のケースが実際にあったので、統計的平均は17名であったから、この結果は、ドイツでは明らかに原発周辺との関連が有ると言えることが判った。

どれ位の放射線量があったか?

ドイツの核施設周辺での許容量は0.3ミリシーベルト/年。実際の汚染はこれよりも低い。5 km 周辺の50才の人は、0.00009から0.0003200ミリシーベルトの間であった。自然界の放射線は、1.4ミリシーベルトであり医学の放射線は1.8ミリシーベルトである。

誰が調査したのか?

国の機関(ドイツ連邦放射線防護庁)がやり、原発推進、反対の両者が関わった。マインツ大学の医学的生物学的測定科、伝染病の調査科と情報科の3つの学部と、kinderkrebsregister(子どものガン登録所)が行った。この調査研究は、12人の専門家グループが行った。調査結果は、150ページのレポートで発表されている。

原発周辺の信じられない危険(ドイツ連邦放射線防護庁発表)
  原発推進も反対も調査方法に同意、全く危険がないという地域での低線量被曝の実体

Werner Barten(ベルナー・バルテン)/南ドイツ新聞記者・医者

この健康へのリスクは、原発にたよることを否定してしまうほどのものである。3つのK、kinder(子ども)、krebs(ガン)、kernkraft (核の利用)は、原発周辺に住む人々、原発を推進する側の人々、政治家にとってこの3つに関する問題がおきると、微妙な動揺をさせれられるものである。

ドイツ連邦放射線防護庁が依頼したこの新しい調査によると、原発周辺地域では幼児(6才未満の子ども)がガンにかかり、とり分け白血病にかかる率が高いことが明らかになった。今までも、このような疑いがあるという調査結果は何度か出てきてはいたが、今回は科学的に疑う余地がない、ゆるぎのない結果がでた。
 
どんな調査でも弱点はある。この調査でもある。しかしこの調査の計画とデータの処理の仕方はその専門家が見るとほとんどこの結果について欠陥を指摘することは全くといってよいほどできない。というのも、この調査には放射線防護庁が、原発推進側と反対側両方の立場の言い分を調査方法のkonzeption(同意)とデータ処理の両方に入れた。だからこそ、この調査が信頼できるものであるという事実はこの調査研究の結果が重大性をもつ。
 
なぜ、幼児が原発周辺でガンにかかるのかは誰も理解できない。科学者たちが言うには、これは、周辺住民の公式の放射線許容量の何千分の1のレベルであり、しかも、飛行機に乗ってあびる量よりも又、レントゲン照射の量よりも低く、さらには、地球上の自然界の放射線レベルと比べてもずっと低いのに、なぜ、このような結果になるのかは、ほぼ説明がつかない。

この幼児のガンの罹患率が高いという発表は、原発周辺地域が危険であるという警鐘を鳴らすには充分なものであるが、今、CO2を出さないといわれている原発を温暖化対策に使うことを推進しようとする人たちには大きく出鼻を挫いた。

この調査結果は原発を止めるに値するインパクトを持っている。と同時に、技術に対する一般的な恐怖感をもっと強くするだろう。この調査発表に対する反応は、原発の危険よりももっともっと大きいだろう。それはこの事実は、論理的に考える人にはイヤなことであろう。しかし、科学が原発についての危険を全て分かっているかそうでないということが明らかになってしまった。これまでの原発の危険に対する科学は、間違っていた。

危険性がないということを証明することは不可能である。キューリー夫人は、放射線がある、ペヒブレンデ(瀝青炭ウラン鉱)を手で持って扱っていた。彼女は、放射線の領域ではすぐれた研究者であったが、その危険性は過小評価していた。

「今まで知られていなかった原発の危険性はない」といってしまうこれまでの傲慢さは、この調査の結果で誰も持てなくなった。(了)

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