最大の被害者は、福島原発の事故処理作業員と子どもたち

白血病の労災認定基準「年5ミリシーベルト以上」の被曝をした作業員が約1万人もいるが、作業員の多くは労災基準を知らず、支援体制の整備が課題だ―と朝日新聞が報じている。一方で、原発事故の後、「非常時の年間被ばく限度量」として設定した20ミリシーベルトを未だに1ミリシーベルトに戻していないため、多くの子どもたちが、避難すべき地域に留まり続け、原発作業員の白血病の労災認定基準「年5ミリシーベルト以上」の被曝をしている

9460人、白血病労災基準超える 福島作業員


1万人、白血病労災基準超す 福島第一で被曝の作業員
(2013年8月5日 朝日新聞)

 【青木美希】福島第一原発で事故から9カ月間の緊急作業時に働いた約2万人のうち、白血病の労災認定基準「年5ミリシーベルト以上」の被曝をした人が約1万人にのぼることが、東京電力が7月に確定した集計から分かった。作業員の多くは労災基準を知らず、支援体制の整備が課題だ。

 原発作業員は年50ミリ超、5年で100ミリ超を被曝すると働けなくなる。これとは別にがんの労災を認定する基準があり、白血病は年5ミリ以上被曝した人が作業開始から1年過ぎた後に発病すれば認定される。原発事故後には胃がんなどの労災基準もできた。

 東電の集計によると、福島第一原発で2011年3月11日の事故から同年12月末までに働いた1万9592人の累積被曝線量は平均12・18ミリで、約5割にあたる9640人が5ミリ超の被曝をした。この人たちは白血病を発病すれば労災認定される。今年6月末には累積で5ミリ超の被曝をした人は1万3667人になった。今後も汚染水対策など被曝の恐れが高い作業が予定され、白血病の「年5ミリ以上」の労災基準に該当する人は増え続けるとみられる

原発作業3ヶ月 20年後、白血病判明

原発作業3カ月、20年後に白血病判明
5.2ミリシーベルト被曝 労災認定の男性語る

(2013年8月5日 朝日新聞)より抜粋

 男性は24歳から電気配線会社に勤務。1986年から88年にかけて、玄海原発(佐賀県)と川内原発(鹿児島県)で配線修理を担い、計約3カ月で5・2ミリシーベルト被曝した。

 それから他業種で20年以上働いた。現在勤める製造業の会社で09年に受けた定期健康診断で、白血球が通常の倍以上の1万9千あることが判明し、医師に「慢性骨髄性白血病」と告げられた。

 思い当たるのは20年以上前の原発作業だけだ。当時は「被曝量は健康に害がない程度。100ミリまでは浴びられる」と説明され、がんのリスクや労災については知らされなかった。同僚が「白血病になった」と言っていたのを思い出した。労災について詳しい知識はなかったが、2カ月後に「だめで元々」と申請すると1年半後に認められた。

 福島第一原発の作業員について「病気の発見が遅いと、手遅れになり死んでしまう。彼らは国のために働いているのだから、国は全員の健康診断をして命を守ってほしい」と話す。

******

甲状腺被ばく、公表の10倍 福島第一作業員

2012年12月に公表された福島原発作業員の被ばく線量の多さ(以下のグラフ)に驚いたが、実態はその10倍もあった。しかし、政府や自民党は、汚染水問題の悪化で原発敷地内の放射線量が高まる中、「命を削って事故処理にあたっている作業員」の被ばく問題を改善するどころか、原発の再稼動を急いでおり、ますます事故処理作業員を不足させる方向に動いている。(原発の再稼動で、技術や知識のある作業員が全国に分散する)

作業員の甲状腺局所の線量(100mSv以上)

甲状腺被曝、公表の10倍 福島第一作業員、半数未受診
(2013年7月19日 朝日新聞)から抜粋

 東京電力福島第一原発事故で、がんが増えるとされる100ミリシーベルト以上の甲状腺被曝をした作業員が、推計も含め2千人いたことが分かった。対象を広げ詳しく調べ直したことで、昨年12月の公表人数より10倍以上増えた。東電は、大半の人に甲状腺の異常を調べる検査対象となったことを通知したというが、受検者は半数程度にとどまるとみられる。

 作業員の内部被曝の大部分は事故直後の甲状腺被曝だ。だが、厚生労働省も東電も、全身の線量だけで作業員の健康を管理しており、甲状腺被曝の実態把握が遅れている。国の規則が全身の被曝線量の管理しか求めていないためだ。

 東電は昨年12月、一部の作業員の甲状腺被曝線量を初めて公表した。世界保健機関(WHO)に報告していた、実測値のある522人のデータで、100ミリシーベルト以上の人は178人、最高は1万1800ミリシーベルトとしていた。

 東電はこれをきっかけに、対象を広げ、甲状腺の線量をきちんと実測しなかった作業員についても、推計した。さらに今年に入り、東電からデータの提供を受けた国連科学委員会が、作業員の甲状腺被曝線量の信頼性を疑問視していることが判明。厚労省も、東電と関連企業に内部被曝線量の見直しを指示した。

 実測値を再評価したほか、体内に入った放射性ヨウ素の量がはっきりしない場合、セシウムの摂取量をもとに、作業日の大気中のヨウ素とセシウムの比率などから推計した。この結果、100ミリシーベルトを超えた作業員は1973人と分かった。中には、線量見直しで甲状腺被曝が1千ミリ以上増えた人もいた。

全文


ノーベル平和賞の「社会的責任を果たすための医師団」が警告

米国科学アカデミーによれば、安全な放射能の線量というものはない。過去数十年にわたる研究から、放射線はどんなに少ない線量でも、個々人の発がんリスクを高めることがはっきりと示されている。

日本で危機が続く中、人に発がんの危険が生じるのは最低100ミリシーベルト(mSv)被曝したときだという報道が様々なメディアでますます多くなされるようになっている。これまでの研究で確立された知見に照らしてみると、この主張は誤りであることがわかる。100 mSv の線量を受けたときの発がんリスクは100人に1人、10 mSv では1000人に1人、そして1 mSV でも1万人に1人である


<<< 子どもたちの被ばく問題 >>>

チェルノブイリ法」では、年間被ばく線量が0.5ミリシーベルト(土壌汚染が37kベクレル/m2)以上の地域で、医療政策を含む防護対策が行われる。1ミリシーベルト以上であれば、避難の権利があり、5ミリシーベルト以上の地域は、移住の義務がある

チェルノブイリ法の避難基準

福島の帰還基準、避難者と賠償額の増加を恐れて「年5ミリ」とせず

原発事故で避難した住民が自宅に戻ることができる基準を「年20ミリシーベルト以下」から「年5ミリシーベルト以下」にする案を政府が検討したが、避難者が増えることを懸念して見送っていた。

「多くの医者と話をする中でも5ミリシーベルトの上と下で感触が違う」と5ミリ案を検討。チェルノブイリ事故では、5年後に5ミリの基準で住民を移住させた。年換算で、5.2ミリ超の地域は 放射線管理区域に指定され、原発労働者が同量の被曝で白血病の労災認定をされたこともある。ところが、5ミリ案は実行されなかった。「20ミリ案は甘く、1ミリ案は 県民が全面撤退になるため、5ミリ案を検討したが、避難者が増えるとの議論があり、固まらなかった」 「賠償額の増加も見送りの背景にある」(2013年5月25日 朝日新聞)から要約

記事全文


「5ミリシーベルト以上は強制移住」西尾正道

この5ミリシーベルト以下のエリアでも26年後のチェルノブイリでは、75%以上の子どもたちが病気になっている

『低線量汚染地域からの報告―チェルノブイリ26年後の健康被害』

(2012年9月にNHKで放送されたドキュメンタリー番組の書籍版 NHK出版)
ウクライナのコロステンの市内は、年0・5~1ミリシーベルトの放射線管理区域と年1~5ミリシーベルトの移住権利区域が半分ずつ占めている。日本でも同程度の汚染地域は広く分布しており、年0・5ミリシーベルト以上の汚染地域ならば1千万人以上が暮らしているだろう。チェルノブイリから26年後のコロステンの現状は、目をそらすことなく凝視すべきだろう。子供たちの75%以上が何らかの疾患を抱えているという「現実」はあまりにも重すぎる。

『低線量汚染地域からの報告―チェルノブイリ26年後の健康被害』

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次