2013/10/19

『福島原発事故被害は過小評価されてる』 国連科学委員会(UNSCEAR)ベルギー代表

UNSCEAR、怒るベルギー代表:
『福島原発事故被害は過小評価されている』

mardi 20 août 2013 Canard Plus

原子力事故や放射能の被害を評価する任務を負う国連機関 UNSCEAR内部で議論に火花が散っている。UNSCEARは最近ウィーンで開催された会議において用意された暫定報告書を、各国専門家の議論に委ねた。この報告書がベルギー代表団を激怒させたのだ。ベルギー代表団メンバーによれば「報告書全体が福島原発事故の被害を過小評価するために執筆、作成されている感が否めない。チェルノブイリやその他の研究から得られた情報のレベルからさえも後退している。」と言う。

ベルギー代表団を構成しているは、モル核エネルギー研究センターやさまざまな大学の専門家たちである。他国の多くの専門家たちとともに、彼らは五月にウィーンで開催された会議に参加した。UNSCEARは来秋、国際連合総会に報告書を提示しなければならない。

ブリュッセルに帰国後、ベルギー放射線防護協会(ABR)でのプレゼンテーションにおいて、代表団団長ハンス・ファン=マルケはUNSCEARの暫定結論に対する非常に批判的な意見を明らかにした。この批判はグリーンピースや反原発派からではなく、”原子力推進派内部”から噴出しただけに衝撃的である。我々の得た情報によると議論は過熱を尽くし、ベルギー代表団のショックはあまりに大きかったため、報告書への署名拒否さえちらつかせているそうだ。また何人かのメンバーは会議からの退場も考えたと言う。ベルギー代表団の発言と、またイギリスの専門家やその他何人かの専門家の発言の行われた結果、彼らの見解も改訂版を編集するうえで考慮に入れられる可能性はあると言う。しかし過去の歴史からこの手の組織においては、プログラムや文書の最終的な方向性は事務局と報告官によって決定されることがわかっている。最終稿が議論をきちんと反映しているかどうか、最大の注意が支払われることになるだろう。

批判

一般的な見解については誰も異論はない:日本は幸運に恵まれており、放射能の大部分は太平洋の方向に流れた。住民の避難は比較的速やかに行われ、食品の検査は満足できるレベルである。従って被害はおそらくチェルノブイリよりは少なくてすむだろう。

しかし地上への放射性物質降下量は無視できる量ではなく、従って住民の健康や将来への被害も無視できるものではない。その上、放射性物質の降下は福島市や郡山市(人口30万人)のように人口密度の高い地域で起こっている

UNSCEARの報告書が提示しているデータの多くは不完全であり、また提示の方法に問題がある。一般市民が受けた被曝量は不適切な方法を使って少なく見積もられている。これは事故現場で働いている作業員数万人の被曝量に関してもまったく同様である。そして日本政府も東電もこの件に関する詳細の公表を拒んでいる。安定ヨウ素剤が配られなかったことも明白であり、甲状腺検査の実施は一般に遅すぎた。そのために現時点でUNSCEARの報告書が主張しているように将来事故の影響はほとんど現れないだろうと断言することはできない。

またUNSCEARによる分析は、速断で胎児や遺伝を脅かす潜在的な危険を強制的に除外してしまっている。発癌リスクに関しては、明白な病変を引き起こすには放射線量が低すぎるため、懸念をする必要はないと評価している。このような仮説はベルギー人も含め多くの専門家を激怒させた。というのも上記の通り、一方では被曝量の評価が適切でないうえ、他方ではチェルノブイリの情報や近年行われた数多くの研究から低い線量でも健康に影響の現れ得ることが示されているからである。しかしながらUNSCEARはこのような放射線科学の発展から明らかに後戻りをしようとしている。各国からの代表者たちの一部は、今回の会議においてだけでなく、ここ数年間繰り返し、年間100ミリシーベルトという敷値の下ではいかなる健康被害も起こらないという考えを通そうと試みている。しかし国際放射線防護委員会(ICRP)は、平常時においては一般市民は年間1ミリシーベルト、原子力産業従事者は年間20ミリシーベルトの被曝量を越してはいけないと勧告しており、また事故時においては、一時的な基準の超過は大目に見られるものの、超過は持続的であってはならないとしていることを今一度確認しておきたい。

最新の研究では様々な分野において年間10から100ミリシーベルトの間の低線量被曝でも、健康に影響のあり得ることが示されている。被害は癌だけではない。胎児への影響、遺伝のかく乱、心臓血液疾患や白内障なども問題となる。

チェルノブイリと同じ被害の否定が福島でも行われるのか?

いくつもの報告書が机上にあり、完成を待っている。そのひとつは子供たちについての報告書だ。子供は被曝が起こった場合、特別に保護し、監視しなければならない対象である。この子供たちについての報告書はフレッド・メットラー教授率いるアメリカチームが請け負ったのだが、メットラー教授と言えば、チェルノブイリ・フォーラムで公表された報告書の著者の一人である。当時の報告書はチェルノブイリ事故被害を過小評価しているとして、大変に議論を沸かし、批判を浴びたものである。彼はまたも臭いものに蓋をしようとしているのか? 少なくともメットラー教授による今回の子供についての報告書では、低線量被曝が子供たちにもたらす健康被害に関する一連の研究や発見、論点が先験的に除外されてしまっている。このテーマに関する欧州原子力共同体(ユーラトム)の専門家グループによる報告書さえ、メットラー教授は考慮に入れようとしなかった。

もうひとつ関連する報告書の中で無視され、ほとんど議論されていない非常に重大な問題がある:それは持続的な慢性被曝のケースである。これは例えばある身体器官が内部から被曝を受ける場合に起こるものだ。実際、放射性物質が体内に均等に分散するか、あるいは逆に特殊な部位に蓄積するかによって、現れる健康被害は異なるらしいことがますます明らかになっている。つまり同じ被曝量でも被曝が起きている部位によってその影響は異なるということだ。このことは既に何年も前にチェルノブイリ事故における数々の影響を研究したベラルーシの科学者ユーリ・バンダジェフスキーが発表した仮説と一致する。

分裂・・・

福島原発事故(そしてチェルノブイリ原発事故)の被害を過小評価し、放射線防護に関する最新研究がもたらした結果から後戻りしようとする試みはいったいどこから発生しているのか? それは主にロシア、ベラルーシ、アメリカ、ポーランドそしてアルゼンチンの専門家によって構成される派閥からなのである。彼らの多くはUNSCEARだけでなくIAEA、そしてICRPの中心人物でもある。その一人、アルゼンチン人のアベル・ゴンザレスの就いている役職はアルゼンチン国内の原子力産業のものも含めて数知れず、前回のセッションでは、ベルギーの専門家が利益の混同を批判する書面を送ったほどである。しかしUNSCEARはこの批判書を議事録に記載することを拒否した。ゴンザレス、メットラー、ロシアのベラノフ(元IAEA職員であり、UNSCEAR報告書の一つの編集長)それに数人のポーランド人が、フランスのチュビアナ教授に代表される派閥とダイレクトにつながって、低線量被曝が起こしうるあらゆるネガティヴな影響に関する考えを頑なに拒絶しているのである。彼らは一丸となってこの路線を堅守しようとし、非常に活発な国際的拠点を築き上げている。彼らはUNSCEARやIAEA(UNSCEARの会議はIAEAの建物内で開催される)の事務局における戦略的なポストを占拠している。そして今日では日本人も彼らと見解を分かち合うようになっている。福島原発事故による影響を最小限に抑え、停止中の原発を再稼動させるのに懸命だからだ

その他の原子力大国、例えば中国やインドの代表は何も口出しをすることなく、UNSCEARの文書を黙認している。フランスのCEA(フランス原子力庁)やIRSN(放射線防護・原子力安全局)の専門家たちは、過去には日本が情報を滞らせていることを嘆いていたのに、今回はほとんど意見を発しなかった。スウェーデン、ドイツの専門家たちも言葉少ない。当然各国内の専門家たちの間でも異なる意見が存在するのだろうが、やはりUNSCEARが出した結論と原子力エネルギーの地政学との間に類似性を認めたくなるものである。ここで問題となっているのは各国の公式の代表専門家たちだからである。

かくして、一石を投じたのはベルギーの専門家たちだったのだ。イギリスの専門家たち、それにオーストラリア人の議長が彼らを支持した。またユーラトムの会議に参加しているヨーロッパの専門家たちは、UNSCEARの《過小評価派》に比べて、低線量被曝の影響をずっと気にかけている

いったいこれらの問題についての議論や科学的疑問はどこに行ってしまったのかと思わざるを得ない。少なくとも低線量被曝の影響を否定する一派は、来秋提示されるUNSCEARの報告書に彼らの見解が反映され、国連によって有効とされることを熱望している。それに対してベルギー人をはじめとするその他の専門家たちにとっては、それは放射線防護知識に関する最新の進歩に対する許しがたい後退を表すことになるだろう。

マルク・モリトール記
Marc MOLITOR
ベルギーRTBF(フランス語圏ベルギーTVラジオ局)


安心強調は早計 国連科学委

福島事故・国連科学委会報告をどう読むか
安心するのは早い 疫学調査の積み重ね必要

(2013年6月15日 東京新聞)

 福島原発事故の健康影響について、国連科学委員会は先月末、「被ばく線量は少なく、健康への明確な影響はないとみられる」ことを骨子とする報告書案を発表した。これまでも、世界保健機関(WHO)や民間団体が影響の推測をまとめてきたが、今回の報告は他と比べても「安心」の度合いが高い。この報告書をどう読むべきか。京都大原子炉実験所の今中哲二助教らに聞いた。(出田阿生、中山洋子)

 「国連科学委の報告書案に記された数字で計算すると、福島原発事故により、少なくとも日本全体で2050人のがんによる死亡が増えることになる。これを多いとみるか、少ないとみるか」

 京都大原子炉実験所(大阪府熊取町)の今中哲二助教はこう語る。今中助教は、原発事故直後から福島県飯舘村に入って放射性物質の測定などの調査を続けてきた。

 今中助教が注目したのは日本全土でどれだけ被ばくしたかを表す「集団実効線量」の推計だ。甲状腺の集団実効線量は11万人・シーベルト(生涯の被ばく線量)、全身でみると4万1000人・シーベルトとなっている。

 国際放射線防護委員会(ICRP)は「1万人・シーベルトで500人のがん死が起きる」とみている。全身の集団線量に当てはめると、がん死の増加は2050人だ。

 この数値をチェルノブイリ原発事故後の旧ソ連や欧州諸国の約六億人分のデータと比較すると、福島原発事故による被ばく量は甲状腺は約20分の1、全身が約10分の1という結果になる。

 「大したことはない」と安心したくなるが、こうした一連の数字をどう読むべきだろうか。
 「無視できる数とは言えない。当てはまった人は、事故という人為的な原因で死を迎えるのだから」(今中助教)

 健康影響を語る際、被ばくとの因果関係が明白ながんや白血病のみを取り上げがちだ。この報告案もそれを踏襲する。

 しかし、被ばくによる健康影響には、いまも不透明な部分が大きい。チェルノブイリ原発事故後には、子どもの免疫低下や心臓疾患の発生が見られた。今月初旬、ウクライナを視察してきた今中助教は「被ばくの人体への影響は多様だと実感している」と話す。

WHO報告は対照的な視点

 国連科学委の報告書案と対照的なのが、今年2月末にWHOが発表した報告書だった。

 「大半の福島県民にがんが明らかに増える可能性は低い」と結論する一方、一部の乳児は甲状腺がんや白血病などのリスクが生涯で数%から約70%増えると推計。15年後は1歳女児の甲状腺がんの発生率が浪江町で約9倍、飯舘村で約6倍になると予測した。

 WHOは前提条件を「計画的避難区域で事故後4カ月避難せず、県内産の食物だけを口にした」とした。この想定は論議を呼んだが、飯舘村では近い実態もあった。
 「想定は過大評価になるかもしれない。だが、過小評価よりも良い。過小評価の危険を最小化したかった」(WHOの公衆衛生環境担当マリア・ネイラ氏)という。

 国連科学委の報告書案でもう一点懸念されるのは、この推計の根拠とされたデータの信頼性だ。一例として、子どもの甲状腺被ばくについての数値がある。

 この数値は政府が2011年3月下旬、飯舘村や川俣町、いわき市などで、事故当時に県内に住んでいた15歳以下の子ども1080人を対象に実測し、まとめた。

 今中助教は同時期に飯舘村に入って調査していたが、空間線量を測定すると村役場の屋外で5マイクロシーベルト、室内で0.5マイクロシーベルトだった。ところが、政府の調査で子どもの首に測定器を当てて測った数値は「0.01マイクロシーベルト」などと記されていた。

 今中助教はこれほど周囲の放射線量が高い場合には、そうした微量の放射線は測定することは不可能だと指摘する。

 甲状腺に集まる放射性ヨウ素の半減期は8日。事故直後に測定しないと測れなくなる。今中助教は「真っ先に取り組むべきは、最も影響を受けやすい子どもの甲状腺被ばくなのに、検査数があまりに少なすぎる。旧ソ連でさえ、約40万人の子どもの甲状腺被ばくを調べた」と振り返る。

 健康影響に否定的とみられる報告書案だが、一方で100ミリシーベルト以下の低線量被ばくでも「がんの増加について科学的根拠が不十分でも、調査を長期間継続すべきだ」としている。今中助教は「被ばくの影響が完全に解明されていない以上、この姿勢は重要」と話す。

 「国連科学委員会は厳密さを追求する組織。だが、行政には健康を守るための予防原則が求められる。科学的な厳密さより、これからどんな影響が出てくるか分からないという視点が大切だ」

<デスクメモ> 「白黒つけずにあいまいなままにしておくこと」。復興庁参事官がツイッターに書き込んだせりふだ。時間がたてば、国民はフクシマを忘れるという「解決策」が政府の本音と感じてはいたが、実際そうだったわけだ。その先にあるのは今秋からの再稼働だろう。都議選、参院選は忘却との闘いである。 (牧)

<国連科学委員会> 被ばくの程度と影響を調べるため、国連が設置した。各国の核実験で放射性物質が拡散し、被ばくへの懸念が高まっていた1955年に発足した。関係者の間には「核実験の即時停止を求める声をかわす目的だった」という指摘もある。報告書はICRPの基礎資料になる。ICRPのメンバーと重複する委員もいる。


福島事故の甲状腺集団線量「チェルノブイリの1/30」
(2013年5月27日 朝日新聞)から抜粋

 【医療・被曝(ひばく)担当=大岩ゆり】東京電力福島第一原発事故について、国連科学委員会が報告書案をまとめた。集団でみた日本国民の総被曝(ひばく)線量(集団線量)は、甲状腺がチェルノブイリ原発事故の約30分の1、全身は約10分の1と推計した。個人の被曝線量も推計し、多くが防護剤をのむ基準以下で、健康影響は「(6千人の甲状腺がんが出た)チェルノブイリとは異なる」「(がんの発生は少なく)見つけるのが難しいレベル」と結論づけた。

 報告書案は、国連科学委員会の専門家ら約85人が2年かけてまとめた。27日からウィーンで始まる科学委員会総会で議論され、9月の国連総会に提出される。

 朝日新聞が入手した報告書案によると、事故は、米スリーマイル島などの事故より「はるかに深刻」とした。ただし、チェルノブイリに比べて、放射性ヨウ素131の総放出量は3分の1未満、セシウム137は4分の1未満で、ストロンチウムやプルトニウムは「非常に微量」と評価した。

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