子ども1人甲状腺がん 福島の保護者 「一刻も早く避難を」

「子ども1人甲状腺がん」の波紋 事故影響の否定は早計
(2012年9月22日 北陸中日新聞・東京新聞)

福島の保護者「一刻も早く避難を」

 11日に開かれた福島県の県民健康管理調査検討委員会の席上、18歳以下の子どもの甲状腺検査で1人が甲状腺がんと報告された。県側は福島原発事故の影響を否定したが、チェルノブイリ原発事故の影響を調べてきた専門家たちは「否定の判断は時期尚早」と警告する。子どもたちの避難を求める声がより強まっている。 (中山洋子)

 「福島の子どもたちを守ってほしい。もう一刻の猶予もない」

 21日夕の文部科学省前。国の対応に抗議する福島の保護者からは、同県の子どもたちの避難を急ぐ声が相次いだ。

 保護者らは「多くの子どもたちが、年換算で被ばく限度線量が5.2ミリシーベルトの放射線管理区域よりも危険な地域に1年半以上、放置されている」と訴え、即時疎開を求める署名を集めていた。

 こうした人びとの危機感を刺激したのが、11日の発表だった。甲状腺検査は18歳以下の全福島県民約36万人が対象で、昨年度に避難区域の約3万8千人、本年度は福島市などの約4万2千人が受けている。

 これまでに425人に5.1ミリ以上のしこりや分泌液がたまった20.1ミリ以上ののう胞が見つかり、2次検査へ。このうち、1人が甲状腺がんと診断された。

 調査主体の福島県立医大の鈴木真一教授は、1986年のチェルノブイリ原発事故でも、事故による甲状腺がんの発見は発生から4年後だったとして、福島原発事故との因果関係を否定した。

 だが、チェルノブイリ事故の影響に詳しい京大原子炉実験所の今中哲二助教は「チェルノブイリでは、事故から4年以内にも甲状腺がんが見つかっていたが、事故との関係はよく分からなかった。4年後に甲状腺がんが急増して、原発事故の影響と断定された。ただ、当時も当初は『事故の影響としては(4年は)早すぎる』と、1度は否定された」と話す。

 「チェルノブイリの経験を踏まえるならば、否定は早計。専門家は謙虚に観察するべきだ

 実際、再検査を必要としない5ミリ以下のしこりや20ミリ以下ののう胞は3万人以上から見つかっている。昨年度の検査で35.3%、本年度分では43.1%に当たる。

 この数字について、県側は事故と無縁な状態での疫学データがなく、評価できていないとしている。政府は来年3月までに比較する数値を得るため、県外の3カ所で甲状腺調査をする。

 ただ、北海道深川市立総合病院の松崎道幸医師によると、チェルノブイリ原発事故では、91〜96年に周辺の18歳未満の16万人が甲状腺検査を受けた。その結果、のう胞の保有率が0.5%だったという。

 同医師は「のう胞のサイズが不明で単純比較はできないが、今回ののう胞保有率は過去例と比べて高い。数カ月単位で、きちんと検査する必要がある」と指摘する。

 チェルノブイリ原発のある現ウクライナの隣国ベラルーシでは、91年制定の法律により、年間被ばく線量が5ミリシーベルトを超える地域では、国が仕事や住居を用意することを前提に、住民の移住を義務付けている。

 同県郡山市の小中学生14人と保護者が「集団疎開」を求めた仮処分申請(抗告審中)の主任弁護人を務める柳原敏夫弁護士は「調査を重ねるたびに、のう胞やしこりがある子どもの割合が増えている」と懸念。「チェルノブイリ並み」の国の保護を訴えている。

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