「再稼働反対デモは、愚者の行進」? 本当の愚者は誰か

「再稼働反対デモは、愚者の行進」? 本当の愚者は誰なのか

原発の再稼働反対デモを「愚者の行進」だと、池田信夫という人が書いています。
この人は人気ブロガーらしいので、特に若い人たちへの影響を考えて、ちゃんと「批判」しておきたいと思います。

まず、「原発の健康リスクは火力より小さく、運転を止めることで安全にもならない」と書いてあります。福島原発事故という世界史的な悲惨な事故を経験しても尚、こんなことを書く大学教授がいることが信じがたいことです。

この人には、福島県民をはじめとする原発事故で、今も被害を受け続けている人々の苦しみや、原発事故で犠牲になられた(亡くなられた)方々の無念の思いは、伝わらないのだろうと思います。

チェルノブイリで子どもを亡くした親たちの思いも理解することはできないでしょう。

原発事故による「被害の全貌」が明らかになってくるには(チェルノブイリでも25年程度では被害の一部しか分かっていないように)半世紀から一世紀以上の時間がかかるでしょう。それほどに原発事故の被害は、長期間続きます。

池田氏は、「(再稼動反対デモが)他の原発を動かすなという示威だとすれば、それはすでに5兆円に達している原発停止による損失をさらに拡大するだろう」と書いています。「原発停止による損失」は書いていますが、「原発事故による損失」にはふれていません。

放射線というものは、人間だけでなく「生きとし生けるもの」全てに被害を与えます。また、今、生きている世代だけでなく、これから生まれてくる世代にも被害を与えます。

一般にいう「損失」とか「被害額」というものは、被害全体の一部を計算したものでしかありません。仮に、現時点で分かっている福島原発事故による被害の一部だけを計算したとしても、「損失」は、数百兆円以上になるでしょう。

     日本が直面している最大の危機は何か

池田氏は、「日本がいま直面している最大の危機は、明日は今日より貧しくなるということである」と書いています。私は、今の日本の危機はそんな生やさしいものではないと思います。生態系の破壊や汚染という「生存基盤の危機」であり、人間も含めた「いのちの危機」です。

池田氏は、経済学者でもあるらしいのですが、経済という言葉の語源を知らないのではないかと思います。知っていたとしても、それを理解しているとは思えません。

江戸時代の医者であり、哲学者であり、経済学者でもあった三浦梅園は、「経済には、2種類の経済がある」と言いました。「独り占めの経済(乾没)」と「分かち合いの経済(経世済民)」です。

本来の経済の意味は、「経世済民」から来ています。「経世」というのは世の中を治めること。「済民」は民を救うという意味です。平たく言えば、「世の中を平和にして人々を幸せにすること」。それが、経済の本来の役割です。

今の「経済」は、経済の名に値しません。三浦梅園が、こうなってはいけないと言った「独り占めの経済」です。自分だけが良ければいい、という「乾没の経済」です。いずれは「乾いて没する」経済です。

原発事故を起こし、事故原因の調査も終えていない中で、原発を東南アジアに売りつけています。世界のウラン鉱山の周辺では、病気で苦しんでいる人たちがたくさんいます。原発は、事故を起こさなくても原発の周辺にガンや白血病を増やしています。原発で働く人もガンや白血病になる人がいます。温排水の吸排水で、海の生態系も破壊しています。それに加えて、使用済核燃料などの「放射性廃棄物」は、100万年も毒性が続き、未来世代の重荷になります。
https://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-6956

今の財界や政界の主流は、こうした問題を無視しています。
「自分たちの損得」でしか動いていないと私には見えます。
「自分の会社さえよければいい」「日本さえ儲かればいい」
「自分たちが生きている時代さえよければいい」

こんな考え方が、子どもたちが生きていくのに困難な世界をつくっているのです。私たちは、政治も経済も、つくり直す必要があります。

今、世の中に、「これではいけない」という思いがあふれてきています。

宗教界を例にとれば、初めは、一部の宗教者だけが「脱原発」を言っていただけでしたが、その後、全日本仏教会が、「原子力発電によらない生き方を求めて」を宣言し、ついには、仏教、キリスト教、新宗教などの宗教・宗派を超えた宗教者が一堂に会し、「原発の廃止を求める声明」を7月13日に発表しました。

世界で唯一、原爆と原発の被害の両方を経験した日本人が、脱原発を選択して、「核のない世界をつくろう」と世界に宣言することができれば、その影響はとても大きなものになるでしょう。

これから原発を増設したり、新設を考えている国々に対して、見直しを迫ることにもなるでしょう。

最後に、昨年の9月19日の「さようなら原発5万人集会」での、福島の武藤類子さんのスピーチをご紹介します。
https://hairoaction.com/?p=774

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