2012/07/13

NHKスペシャル 「がれき”2000万トン”の衝撃」の嘘

この番組批判に対するNHKからの「反論」を聞きたいものです。官邸前での原発再稼動に対する抗議行動の報道なども含めて、NHKの報道姿勢をテーマにしたシンポジウムの開催が待たれます。

NHKスペシャル「がれき”2000万トン”の衝撃」の嘘

鷹取 敦
(2012年7月9日 独立系メディア E―wave)

 2012年7月7日(土)NHKスペシャル「がれき”2000万トン”の衝撃」が放映された。

 前半は被災地の東日本大震災の津波がれき処理の現状を伝える(かのような)内容、後半は北米海岸に漂着したがれきの問題を取り上げる内容である。

 番組の前半部分についていえば、映像、コメント等を通じて番組が伝える内容、印象と、津波がれき(災害廃棄物)の実態が大きくかけ離れた、大きな問題のある内容であった。

■がれき処理の進捗状況の印象操作と実態の乖離

 番組の冒頭で、NHKキャスターの鎌田靖氏が被災地入りした映像が流れ、「驚かざるを得なかった。巨大ながれきの山がいくつも残っていたから。全然減ったという感じがしない。」とコメントしている。

 処理が進まないため山の高さは20メートルを超えていた、環境省によれば石巻で発生したがれきは464万トン。市だけで処理をすれば計算上80年以上もかかる、などとナレーションが説明している。

 この説明は実態と著しく異なる印象を与える。番組全体としては、広域処理が進まないからがれきの処理が進まない、という前提となっているが、広域処理をしなければ80年以上処理に時間がかかる、ということではない。番組の後の方でも説明があるが、広域処理希望量は247万トン(番組中の数値より)であって、全体の2割にも満たない。残りの9割近くの部分は県内の仮設炉で処理する計画であり、環境省の説明でも国の目標である震災から3年以内に処理が出来る見込みとなっている。

 環境省が全国の知事、市長あてに出した下記の文書(環境省の広域処理サイトに掲載されているもの)では、これ以上あらたに広域処理の受入自治体を求めなくても処理するめどが出来た、と説明されているほどである。

環境省「災害廃棄物の広域処理の調整状況について」
http://kouikishori.env.go.jp/news/pdf/20120629b_02.pdf

 それどころか、宮城県、岩手県の公表数値を精査したところ、そもそも広域処理を行わなくても可燃物については目標までに処理可能であることが分かっている。

■青山貞一・池田こみち・鷹取敦・奈須りえ「がれき広域処理の合理的根拠なし」
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-democ1535..html

 番組ではこのいずれの事実も伝えることなく、あたかも広域処理が行われないことでがれき処理のめどがついていないかのような印象を繰り返し与えている。たとえば、大槌町でがれき処理の仕事にあたっている元々漁師だった方の

  「5年かかるか10年かかるか分からない。」「町が消えるか分からない。」
という言葉を流し、その後、各地で激しい反対運動と対比させ、いかにも反対運動によってがれきの処理全体が進んでいないかのような印象を与えている。全体の処理に5年、10年かからないことは、環境省も被災地自治体も分かっているはずだし、NHK取材スタッフも理解しているはずだが、一被災者の言葉を取り上げることで、いかにもそれが事実であるかのような印象を与えようとしているのである。

■仮置き場における問題は広域処理問題が原因か

 さらに、仮置き場で発生している問題として、一酸化炭素、硫化水素、メタンガスが発生し熱を逃がさないと発火の恐れがあること、宮城県ではがれき置き場で25件の火災したこと、夏には蠅が大量に発生していることを伝えている。

 これらは仮置き場における大きな問題ではあるが、そもそも広域処理希望量が2割に満たない割合であって、広域処理が進まないから生じている問題、ではなく、広域処理を行うかどうかに関わらず対処していかなければならない問題である。映像で流れたように、発生したガスを抜く管が設置され対策がとられつつある。蠅の発生についてもおそらく何も対策を行っていないとは考えにくいが、番組では全く触れられていない。

■仮設焼却炉の稼働状況に関する誤った説明

 番組では、分かっているだけでも2034万トン、うち154万トンは海に流出。残りは1880万トン。国は震災から3年以内にすべて処理するという目標。再利用、焼却、埋立。1年4ヶ月たったいまでも17.5%に過ぎない、というが、今後の国や被災地自治体がどのような見通しを持っているか伝えていない。

 仮設焼却炉を岩手・宮城・福島の3県で35基作る計画。本格的に稼働しているのはまだ11基、建設が遅れていると、図とナレーションで説明しているが、実際には7月中には全基稼働の予定であり、取材班は当然その事実を把握しているはずである。いかにも仮設炉の設置が予定通り進んでいないかのような説明だが、これは事実に反する。

 そして、国の目標の3年以内のは処理が完了しないおそれがある、と言っているが、仮に間に合わないとしても「おそれがある」程度のこととであって、実際にはほとんど目標の3年以内に処理が完了する見通しが立っている、というのが実態である。

■復興計画とがれき仮置き場の関係

 復興計画との関連について、番組は岩手県大槌町を取材し、「漁業の町だった。町を覆い尽くす瓦礫が復興に暗い影。」と言う。「まず防潮堤を作る。水産加工団地再建。がれきが邪魔をして計画は何一つ進んでいない。」といって示された地図には、水産加工団地の予定地に仮置き場の印はない。加工団地の造成に仮置き場が妨げになっていないことを、地図は示しているのではないだろうか。その後のナレーションでわざわざ「防潮堤や水産加工団地の予定地にも山積み。」などと説明している。

 震災前の4分の1が町を離れた、税収も激減、町の存続も危ぶまれている、とナレーションがあり、大槌町長のコメントとして「いち被災地だけで処理できるものではない。町が消えるという切迫感。」が紹介されている。もちろんいち被災地だけで処理できるものではなく、国や県の支援によって目標の3年以内の処理のめどが立っているのが現実であるが、それについて言及はない。


■仮設住宅への影響は広域処理問題が理由か

 仮置き場に近い仮設住宅の住民の方を取材し、健康への不安を募らせている人もいる、と紹介する。1歳になる子供への影響が心配。子供の肌にふれるものは部屋の中に干している。「小さい子はアレルギーになりやすい。」との声を伝える。そもそも仮置き場の場所を変更するか、このような仮置き場は優先的に処理すべきである。繰り返すががれきの処理の9割近くは県内処理であり、県内処理の間で処理の順番の最適化を行うことなく、このような問題は解決できない。

■受入自治体の反対運動が問題でがれき処理が進まないのか

 番組では6~7万トンのがれき受入を決めた北九州市を取材している。

 住民の不信感とどう向き合い受入に至ったか、と北九州市が住民との合意形成に成功したかのような説明で始まる。

 北九州市は石巻市のがれき置き場を訪ね独自に放射線量を量ることに、といいながら流れる映像は空間線量率の測定である。空間線量率ではベクレル/キログラム単位の放射性物質濃度の測定が出来ないことも市の担当者が理解していないとすれば問題である。番組では触れられていないが試験焼却では一般ゴミとまぜて焼却している。試験としてはわざわざ精度を低くしているようなもので、その結果灰の濃度が最大30ベクレル/キログラムと説明されても、市民の理解は得られないのではないだろうか。現に、焼却施設に最も近い地域ではほとんど説明無いまま試験焼却行われたことに不信感を持った、と番組でも取り上げられている。

 「対話を後回しにしたまま受入に踏みだそうとしていたことが大きな溝を生んだ。」と番組では指摘しているが、国が現在も行っているのは、結論ありきの、一方的な説明でしかない。

 結局、「健康被害が出た場合100%補償すると一筆書かせればいい。」「個人的には広域処理に底辺では賛成。安全性を補償すると一筆文書でもらってください。」との意見が住民からも出たため、北九州市は環境省と「一筆」について交渉し、その1点で合意することとなった。

 実際には、公害問題全般に共通する問題として、健康影響の因果関係を立証するのはきわめて難しい(事実上不可能)なことが多いため、なんら意味のない「一筆」である。


■細野環境大臣とNHKの欺瞞

 番組では前半の最後に細野環境大臣にインタビューし、大臣は「広域処理が進まないのは放射能に対する懸念。地域に対立を生み出したことに情報の出し方にお詫びしなければ。事実は1つ。通常の処理をすれば健康影響は全くありえないレベル。正確なデータを出し続けること。インターネットでも情報サイトを作り出し続ける。信頼を取り戻すことには時間がかかるが被災地のがれきは早く処理をしなければ。政府のためでなく被災地のために行動してほしい。」などと言っている。

 しかし環境省は未だに、リスクに関しても、必要性に関しても、まともなデータを開示せず、安全性を強調するための部分的なデータ、受入の必要性を強調するための実態(処理の対象量)とかけ離れた大きな数値を示し、写真や映像で情緒適に訴えることを続けているだけである。皮肉にも番組中で紹介されたように、結論ありきで説明するだけでは、まともな合意形成はできない。環境省は過去の公害問題・環境問題からも、この1年数ヶ月の教訓からも何も学んでいない。

 そしてNHKも同様に、客観的な事実・数値に基づいて議論が出来る場を作るのではなく、印象操作、空気作りによって、広域処理反対を封じ込めようという最悪の番組作りをしているのである。単にがれきの広域処理の問題ということではなく、「いつかきた道」に通じる民主主義の根幹に関わる問題ではないだろうか。



◆以下の記事から東電がNHKを重視していることがよくわかる。
また、NHK経営委員長が平気で「東電の取締役就任」を受け入れている。

東電が6月からの新役員発表 11人中7人が社外
数土文夫NHK経営委員長ら

(2012.5.14 産経)から抜粋

 東京電力は14日開いた取締役会で、新役員人事を内定したと発表した。6月27日開催の株主総会の承認を経て正式決定する。11人体制で、会長となる下河辺和彦弁護士(64)=現原子力損害賠償支援機構運営委員長=ら7人が社外取締役で、社内からは社長になる廣瀬直己常務ら4人にとどまる。

 他の社外取締役は▽数土文夫(71)NHK経営委員長、JFEホールディングス相談役▽小林喜光(65)三菱ケミカルホールデングス社長▽藤森義明(60)住生活グループ社長兼CEO▽能見公一(66)産業革新機構社長▽樫谷隆夫(63)公認会計士▽嶋田隆(52)原子力損害賠償支援機構事務局長


NHK経営委員長の数土文夫氏が辞任表明 東電社外取締役に
(2012.5.24 産経新聞)

 NHK経営委員長で東京電力の社外取締役に内定している数土文夫(すど・ふみお)氏(71)=JFEホールディングス相談役=は24日、東京都渋谷区のNHK放送センターで会見し、「経営委員長を速やかに辞任する」と述べた。経営委員も辞任し、東電の社外取締役に予定通り就任する意向。数土氏は辞任理由を問われ、「私がいなくても(経営委が)揺らぐことはないと思った。一方、東電(の問題)は“国難だ”との思いが高まった。再出発につまずけば、破滅的な状況になる」などと説明した。

 数土氏の兼職をめぐっては、政府・民主党が「問題ない」とする一方、自民党などから「報道の公平性に影響を与える」と批判が出ていた。数土氏は22日の会見では「兼職は問題ない」との考えを示し、6月5日の次回経営委員会で各委員の意見を聞き、最終判断するとしていた。

 この日の会見で、数土氏は決断を早めたことについて「出処進退は自ら決めること。経営者は信念で昨日言ったことと違うことをやる」と話した。また、兼職批判に対しては「配慮はしたが、影響は全く受けていない」と辞任理由でないことを強調した。


現NHK会長 松本正之氏(元JR東海副会長)
そのNHK会長の元上司の発言 JR東海会長・葛西敬之↓ 

「原発継続しか活路はない」という人を委員に選んだ政府
(2011/06/04 風の便り)

JR東海会長・葛西敬之 原発継続しか活路はない から抜粋

 原発停止を求める人々は火力発電や再生可能エネルギーの活用に活路を求めよと主張する。しかし質・量・コストいずれの点から見ても一部補完以上の期待はできない。

 原子力を利用する以上、リスクを承知のうえで、それを克服・制御する国民的な覚悟が必要である。

 日本は今、原子力利用の前提として固めておくべきだった覚悟を逃げようのない形で問い直されているのだが、冷静に現実を見れば結論は自明である。今回得られた教訓を生かして即応体制を強化しつつ、腹を据えてこれまで通り原子力を利用し続ける以外に日本の活路はない

 政府は稼働できる原発をすべて稼働させて電力の安定供給を堅持する方針を宣言し、政府の責任で速やかに稼働させるべきだ。今やこの一点に国の存亡がかかっていると言っても過言ではない。(かさい よしゆき)


JR東海会長・葛西敬之 再稼働がリーダーの使命
(2012.5.29 産経新聞)から抜粋

 日本経済の活力は製造業の競争力に、製造業の競争力は電力の安定供給に懸かっている。そして安全性を確保した上で原発を最大限活用する以外には、高品質な電力をリーズナブルな価格で安定的に供給することは不可能である

「教訓は生かす。安全性を一層強化する。そして無傷の原発はすべて稼働させる。それ無しに国民生活の維持は不可能である」と明言し、政府を信頼するよう訴えかけるべきだった。それこそが真に民意に沿うことだった。

 自然エネルギーなどで原子力の代替が可能だという幻想を振りまいているうちに「表層民意」は脱原発から反原発へと自己成長した。今、1年の大衆迎合路線の後、政府は万策尽きた形で、化石燃料の輸入増分の値上げと原発の再稼働という本音を打診し始めた。

 今からでも遅すぎることはない。この1年間に重ねてきた綺麗ごとを清算して、「無傷の原発は最大限稼働させなければならないし、今回の教訓を踏まえ、今後政府は安全に全責任を持つ」、「輸入増になった燃料の対価は東電合理化によるコストダウンでは賄えず、電力料金で回収するしかない」、「電力自由化は長期的な検討課題である」と、すべてを本音で単刀直入に語りかけるべきだ。

 政府の覚醒を期待している。(かさい よしゆき)

◆月刊マスコミ市民「放送を語る会 談話室」 から
「厳重注意」を受けるべきは誰か
NHK「ETV特集」スタッフへの「注意処分」を考える

http://www.geocities.jp/hoso_katarukai/masukomisimin.html

この国の政府もNHKも市民が関心を持っていないと、とんでもない人事や非常識なことを平気ですすめるようです。

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