第9話 森林農法とは?

 ウインドファームの「森を守り、森を育てるコーヒー」は森林農法(アグロフォレストリー)という栽培方法で育てられています。今回は、この森林農法について少し詳しく説明していきましょう。

森林農法には、土地の条件や文化によって、いくつかのパタンがあります。基本は、コーヒーが好む木陰を意図的に作り出し、多様性のある生態系の中でコーヒーを育てる栽培方法です。

森林農法の森のイメージ図
いろいろな樹々が植えられ、生態系の多様性を保つ

下の図の一番上が伝統的な森林農法の森のイメージで、一番下が単一作物栽培のプランテーション農場です。

森林農法(アグロフォレストリー)の模式図 コーヒーに日陰を作るシステム
(出典:パトリシア・モゲル氏の発表資料より)

1) 山岳(又は農村)地域の伝統栽培方法

山岳方式、又は農村方式と呼ばれる森林農法。この生産方法は、既にある熱帯林や温帯林、つまり森の中にコーヒーの木を植えて育てます。この栽培方法による原生林への影響は、最小限にデザインされます。森の中にある原生植物の生態系を破壊せずに、コーヒーの木を植えるのです。

2) 伝統的多品目栽培

木陰におけるコーヒー栽培方法としては、原生林のエコシステムよりも人間の手が入ります。伝統栽培方法と同様に、コーヒーは原生林の木陰の下に植えられます。ここで異なるのは、コーヒーの木は、進んだ管理の下で有益な植物と共に栽培が行なわれていることです。例えば、ある特定の樹木の成長を助長、又は抑制するように森全体がデザインされます。この方法を用いれば、豊かなコーヒー農園が誕生して、その中には、あらゆる種類の樹木、潅木、原生、又は移入された植物が育つことができるのです。

3)商業用多品目栽培

原生林に見られる樹木や草の完全除去と、コーヒー栽培に適した木陰用樹木の移入が行われます。この栽培方法を用いる森林では、コーヒー導入以前の原生林は見ることができません。その代わりに、木陰を作るのに適した樹木が植えられます。例えば、多くの豆類の植物が土壌に窒素を供給するために作付けされます。または、換金ができる植物が導入されます。例えば、ゴムやオールスパイス、シダ、インガ(豆科の植物)、チャラウイテなどが密度濃く植えられていきます。それらの樹々が柑橘類、バナナ、コーヒーなどの商用作物に木陰を与えて多品目栽培を形成します。

木陰用樹木(シェードツリー)に囲まれるコーヒーの樹

4) 木陰単一栽培

この栽培方法は次の5番目の栽培方法と同様、ここ20年内にメキシコに導入された、最も近代的な栽培方法です。インガと呼ばれる豆科の植物を活用して、ほぼその植物のみがコーヒーに日陰を提供します。ここでも原生林の樹木は切り払われます。こうして特定の植物の下に、コーヒーを単一栽培するプランテーションが生み出されます。

5) 木陰無し単一栽培

この栽培方法は、これまでに示した森林農法の様式から大きく逸脱した農法です。木陰をつくる樹木は皆無で、切り開かれた森にコーヒーだけが植えられます。コーヒーの木は、太陽に完全に晒されています。このコーヒー生産システムにおいては、多くの化学肥料や殺虫剤・殺菌剤などの農薬を必要とします。また、1年を通して、機械や集約的労働も必要とされます。この栽培方法では、栽培面積辺りの収益が最も多いとされています。

森を切り開き、コーヒーだけを植えたプランテーション農園

トセパンコーヒーで言う森林農法とは、上で説明したうちの1)山岳(又は農村)地域の伝統栽培方法と2)伝統的多品目栽培に当たります。あくまでも、その土地の生態系を尊重して、その中にコーヒーを導入していくのです。

先住民たちの自然観や生き方そのものが栽培方法にも現れているのです。農民たちは、草刈りをするときも大地に話しかけているそうです。「草を刈りますが、寒くはないですか?少し我慢してください。蒔いた種からすぐに芽がでますよ。今年も豊かな恵みを分け与えてください。」いつも母なる自然と大地と会話をしながら農作業をしているのです。

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トセパンコーヒー物語 目次

トセパンの概要

第1話「ケツァールの地〜トセパンが活動する地域
第2話「メキシコとコーヒーの意外な(?)関係
第3話「トセパン協同組合ってどんな組織?

トセパンの歴史

第4話「抑圧されてきた先住民たち
第5章「闘いは砂糖から始まった
第6話「トセパンを支える作物・オールスパイス

森林農法・アグロフォレストリ

第7話「森を守り、森を育てるコーヒー
第8話「「おかげさま」を大切にするフェアトレードコーヒー
第9話「森林農法とは?
第10話「森林農法がもたらす豊かさ〜生物多様性
第11話「森林農法がもたらす豊かさ〜安心できる暮らし

トセパンの活動と意義

第12話「トセパンがもたらす組合員の自立と誇り
第13話「お金はみんなのもの〜トセパントミン
第14話「より良く生きるため、女性達よ集まれ
第15話「ホノトラの闘い
第16話「学び、成長していくこと

(注)これらの原稿は、トセパンが作成した「30周年組合史(2007)」、ウインドファームとも付き合いが長いメキシコの生態学者パトリシア・モゲル氏の各種論文、ウインドファームスタッフが現地を訪問した際に作成したレポートなどを編集して作成しています