2013/06/01

福島県南相馬の脳卒中が急増 35歳から64歳で3.4倍

衆議院 2013年5月8日 震災復興特別委員会参考人
南相馬市立総合病院:副院長 及川友好(脳神経外科)

「私自身は脳神経科医でありますので、脳卒中の発症率をいま、東京大学の国際衛生学教室と一緒になってデータを集めているところなんですが、これはまだ暫定的なデータで確定的なものではないんですが、ただし恐ろしいデータが出ています。われわれの地域での脳卒中発症率が65歳以上で約1.4倍。それどころか35歳から64歳の壮年層で3.4倍まで上がっています。非常に恐ろしいデータが今、出てきています。これらのデータをきちっと解析しながら発表していくこともわれわれの仕事だと思っているんです。」


放射能汚染地の子どもたちに病気が急増している
(2013/05/05 風の便り)から抜粋

2011年3月の原発事故発生から2年が過ぎ(今も放射能放出が続いている)、東北や関東を中心に病気が増えています。特に甲状腺異常や心臓病が急増しています。

トリミング:甲状腺がん 新たに2人

甲状腺異常の内容を詳しく見ると、以下のようになっています。

2011年3万8千人186人二次検査 甲状腺がん3人疑い7人 12年9.5万.人中549人二次検査jpg
     
子どもの甲状腺異常は、2011年度に検診した3万8000人の内「2次検査必要」が186人。その内「3人が甲状腺ガン+7人がガンの疑い」と福島県から発表されました。毎日新聞によれば、「疑いのある人を含めた10人の内訳は男性3人、女性7人で平均年齢15歳。甲状腺がんと判明した3人は手術を終え、7人は細胞検査により約8割の確率で甲状腺がんの可能性があるという。7人の確定診断は今後の手術後などになるため、最大10人に増える可能性がある」

この検査をした健康管理調査検討委員会の座長である山下俊一氏は、今年3月11日、アメリカの米国放射線防護・測定審議会で講演し、「福島県の子ども3万8000人のうち10人が甲状腺がん」と発表しています。(以下は、講演で使われた資料)

山下俊一・米国講演・小児甲状腺がんグラフ

この「3万8000人のうち10人が小児甲状腺がん」という数字は、通常の小児甲状腺がん発生率「100万人に1人か2人」の約130~260倍に相当します。さらに心配なのが、2011年度より2012年度の方が2次検査が必要な比率が高くなっていることです。

福島の小児甲状腺がん 増える人数

2011年度 38,000人―186人(2次検査必要)=0.489%
2012年度 95,000人―549人(2次検査必要)=0.577% 

もし、2011年度の「186人のうち10人がガン」だった比率(10/186=5.376%)と2012年度の2次検査が必要な549人が同じ比率でガンだった場合、約30人の子どもが甲状腺ガンになります。

チェルノブイリの場合、子どもの甲状腺がん患者のうち6人に1人が肺に転移しています。1996年から、ベラルーシの国立甲状腺がんセンターにて、小児甲状腺癌の外科治療を中心に医療支援活動に従事した菅谷昭さんは、次のように語っています。

「チェルノブイリでは、国立甲状腺がんセンターだけで子どもの手術をしましたので、データが非常にしっかり残っています。それによると、子どもの甲状腺がん患者のうち6人に1人が肺に転移しているんですね。ですから、甲状腺がんの疑いがあるのだったら早く手術をした方がいいと思うんです」

そして、子どもたちの「疎開」に言及されています。

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◆心臓病も急増
問題は、甲状腺だけではありません。今、全国で心臓病が急増しています。私たちは、チェルノブイリの経験から学ぶことがたくさんあります。チェルノブイリ原発事故後、放射能汚染地の住民に心臓病が激増していきました。原発事故から22年が過ぎた2008年に、ベラルーシで亡くなった人の半数以上(52.7%)が心臓病でした。

2008年のベラルーシの死因 52.7%心臓病

チェルノブイリ原発事故の後、バンダジェフスキー博士が病気で亡くなった人を解剖して分かったことは、心臓病の多くは、放射性セシウムが心筋(心臓の壁を構成する筋肉)に蓄積して起こったということです。

福島原発事故の後、日本でも心不全や心筋梗塞など心臓病が増加しています。第76回日本循環器学会の発表で、2011年2月11日~3月10日では123件だった心不全が、同年3月11日~4月7日には220件 に増加。心不全の増加は、過去の大震災疫学調査では報告例がありません。

また、2012年12月26日の東京新聞によると、茨城県取手市(放射能汚染地=ホットスポット)の小中学生に心臓病が急増しています。一次検診を受けた小中学生1655人のうち73人が要精密検査と診断され、11年度の28人から2.6倍になっています。中学生だけで見てみると、17人→ 55人と3倍以上に増えています。

取手市 心臓病の増加

心臓に何らかの既往症が認められる児童・生徒も10年度9人から11年度21人、12年度24人と推移。突然死の危険性が指摘される「QT延長症候群」とその疑いのある診断結果が、10年度の1人、11年度の2人から8人へと急増しています。

また、秋田県が公開した心疾患死亡に関する人口統計において、福島県の心疾患死亡率が2011年度の全国一位になっています。

◆2011年度 心疾患死亡率は、福島が全国一位
福島は、2010年度の8位から2011年度は1位に、岩手が6位から4位になっています。

心疾患死亡率 2011年と2012年度の比較

今、日本の政府は、最優先で守るべき「子どもの命」より「目先の経済」を優先しているため、「チェルノブイリ法」の避難基準であれば、避難しなければならない地域に多くの子どもたちが住み続けて「外部被ばく」を増やし、飲食を通して「内部被ばく」を増加させています。

検出限界値 福島県庁食堂『1ベクレル』 学校給食『10ベクレル』

福島市・学校給食の検出限界値は 『10ベクレル』
福島県庁にある食堂の検出限界値は 『1ベクレル』
この2つの数字を見ると、子どもたちよりも県職員の方が安全を確保されているようです。さらに、佐藤雄平知事は、学校給食での福島県産米や野菜の積極的な利用を呼びかけています。

福島学校給食に県内産米 佐藤知事

長年、放射能の人体への影響を研究してきたジョン・ゴフマン博士の名著として知られている『人間と放射線 ― 医療用X線から原発まで―』によれば、0歳の乳児は30歳の約4倍、さらに55歳以上と比べると300倍以上の大きな影響を受けることになります。

ゴフマン 年齢別がん死者数グラフ

チェルノブイリで起こったこともそのことを示しています。

小児甲状腺がんにおける年齢構成 円グラフ

ウクライナで5万人の子どもを診察したエフゲーニャ・ステパノワ博士は、病気予防対策の一番目に「汚染されていない食べ物をとること」と日本人にアドバイスしています。加えて、充分なビタミンをとること。体力増進に努めること。汚染地域を離れて保養施設などで休むこと(最低でも4週間)も重要だと話しています。また、ウクライナの子どもたちは1年に1回、小児科、血液科、内分泌科、神経科、咽頭科など専門医のもとで、血液検査と尿検査、甲状腺超音波検査など総合的な健康診断を受けています。

ところが、日本では、血液検査や尿検査さえ実施されていません

福島県、尿検査せず

チェルノブイリ事故の被害をめぐっては、原発を推進しているIAEA(国際原子力機関)やWHO(世界保健機構)などにより「直接的な死者は50人、最終的な死者は4000人」とか「最大で9000人」といった過小評価が公式化されてきました。その数字の元になったのは、350の論文に基づき英文で公開されている資料だけでしたが、2009年にヤブロコフ博士らがまとめた報告書『チェルノブイリ――大惨事が人びとと環境におよぼした影響』は、5000以上の論文(英語だけでなくロシア、ウクライナ、ベラルーシの言語も含む)を元にまとめられたもので、その犠牲者数少なくとも98万5000人と見積もっています。

この報告書の翻訳本調査報告 チェルノブイリ被害の全貌が4月26日に岩波書店から出版されました。本の帯には、こう書かれています。「1986年4月、たった1つの原子炉が爆発し、今日、汚染地域の健康な子どもは20%に満たない

今、福島をはじめ東北や関東の汚染数値が高い地域に住む子どもたちは、非常に危険な状況の中で生きています。国も、自治体も「子どもを守ろうとしない」状況がこのまま続けば、チェルノブイリ以上の被害が出るのではないかと、私は恐れています。

今、政府は、原発事故などなかったかのような態度で、海外に原発を売りつけ、原発再稼動に向けて動き、原発事故の被害者などいないかのような態度で、被害者への補償を怠り、「原発事故 子ども・被災者支援法」さえ放置しています。

こうした政府の姿勢を変えさせることができるかどうかは、最終的には市民が「放射能から子どもたちを守ろう」という「国民運動」を起こせるかどうかにかかっていると思います。

最後に、ベラルーシ科学アカデミーのミハイル・マリコ博士の言葉をかみ締めたいと思います。
チェルノブイリの防護基準、年間1ミリシーベルトは市民の声で実現されました。核事故の歴史は関係者が事故を小さく見せようと放射線防護を軽視し、悲劇が繰り返された歴史です。チェルノブイリではソ連政府が決め、IAEAとWHOも賛同した緩い防護基準を市民が結束して事故5年後に、平常時の防護基準、年間1ミリシーベルトに見直させました。それでも遅れた分だけ悲劇が深刻になりました。フクシマでも、早急な防護基準の見直しが必要です

今こそ、みんなで協力して、知恵と力を寄せ合って、子どもたちを守りましょう!

2013年5月5日 子どもの日に
中村隆市

全文

国連報告書「福島県健康調査は不十分」
(2013/05/30 風の便り)

2013/05/30

国連報告書「福島県健康調査は不十分」

<国連報告書>子どもの甲状腺検査以外に内部被ばく検査をしていない点を問題視。白血病なども想定して尿検査や血液検査の実施を求め、住民の被ばく基準についても、法令が定める年間1ミリシーベルトの限度を守り、それ以上被ばくする地域では住民の健康調査をするよう政府に勧告している。

福島第1原発事故:国連報告書「福島県健康調査は不十分」
(毎日新聞 2013年5月24日)

 東京電力福島第1原発事故による被ばく問題を調査していた国連人権理事会の特別報告者、アナンド・グローバー氏の報告書が24日明らかになった。福島県が実施する県民健康管理調査は不十分として、内部被ばく検査を拡大するよう勧告。被ばく線量が年間1ミリシーベルトを上回る地域は福島以外でも政府が主体になって健康調査をするよう求めるなど、政府や福島県に厳しい内容になっている。近く人権理事会に報告される。

 報告書は、県民健康管理調査で子供の甲状腺検査以外に内部被ばく検査をしていない点を問題視。白血病などの発症も想定して尿検査や血液検査を実施するよう求めた。甲状腺検査についても、画像データやリポートを保護者に渡さず、煩雑な情報開示請求を要求している現状を改めるよう求めている。

 また、一般住民の被ばく基準について、現在の法令が定める年間1ミリシーベルトの限度を守り、それ以上の被ばくをする可能性がある地域では住民の健康調査をするよう政府に要求。国が年間20ミリシーベルトを避難基準としている点に触れ、「人権に基づき1ミリシーベルト以下に抑えるべきだ」と指摘した。

 このほか、事故で避難した子供たちの健康や生活を支援する「子ども・被災者生活支援法」が昨年6月に成立したにもかかわらず、いまだに支援の中身や対象地域などが決まっていない現状を懸念。「年間1ミリシーベルトを超える地域について、避難に伴う住居や教育、医療などを支援すべきだ」と求めている。【日野行介】

 ◇グローバー氏の勧告の骨子

 <健康調査について>

・年間1ミリシーベルトを超える全地域を対象に

・尿や血液など内部被ばく検査の拡大

・検査データの当事者への開示

・原発労働者の調査と医療提供

<被ばく規制について>

・年間1ミリシーベルトの限度を順守

・特に子供の危険性に関する情報提供

<その他>

・「子ども・被災者生活支援法」の施策策定

・健康管理などの政策決定に関する住民参加


国連人権理事会 特別報告者グローバー氏


グローバー報告、暫定仮訳
(2013年5月25日 ヒューマンライツ・ナウ)

国連「健康に対する権利」特別報告者による福島に関する調査報告書が公表されました。公衆の被ばくからの保護に関し、1mSvを明示するなど、画期的な内容となっており、今後の日本の原発被災者政策の再考に重要な文書です。

グローバー報告仮訳


福島県 子どもの放射能 尿検査せず 秘密裏に「困難」結論?
(2012年10月25日 東京新聞 こちら特報部)から抜粋

福島県、尿検査せず

福島原発事故を受けた県民健康管理調査で、子どもの内部被ばくを把握できる尿検査が行われていない。専門家でつくる公開の検討委員会でも検査の是非がほとんど議論されてこなかった。ところが今月に入り事前の「秘密会」の開催が公となり、尿検査をめぐる議論の不透明さも判明。検査を求めてきた保護者らは不信を募らせている。 (中山洋子、林啓太)

「また、だまされたんだ」。伊達市の菅野美成子さん(40)が諦めきった様子でつぶやいた。今月初めに新聞報道で検討委の委員と県側が、開催前に議論をすり合わせる「秘密会」を開いていたことが発覚。事前に会議の「進行表」が配られ、検討委に”出来レース”の疑いが浮上した。

県側は秘密会について調査し、8日にまとめた報告書で、議論を深めるための「準備会」だったと強調。内密の開催が不信感を招き不適切としながらも、「発言の抑制や議論の誘導などはなく、個人情報保護などが目的だった」と結論づけた。

だが、その説明に納得する県民は少ない。事故後、内部被ばく検査を求める声に、国や県の対応は後手に回り、今回明るみに出た進行表は、公開の検討委をないがしろにして、十分な議論や説明もないままに、検査を切り捨てた姿を浮き彫りにしたからだ。

■健康調査の検討委「議論ない」 親ら不信

昨年7月の第3回検討委の事前の進行表では、浪江町、飯舘村、川俣町、山木屋地区で計120人に行った内部被ばく調査の結果について、検討前から「相当に低い」とする発言予定が記載。

さらに「WBCの今後の普及とGe半導体の逼迫(ひっぱく)状況(牛肉等)を考えると、尿検査でWBCを代替えするのは困難ではないか」とあった。

WBCはホールボディーカウンターの略で、体内にある放射性セシウムから発せられるガンマ線を測る装置。じっとできない幼児は受けられず、体が小さい子どもの検査には不向きとされる。

尿検査の方が子供の被ばくを正確に測ることができるが、検査できる精度の高いGe(ゲルマニウム)半導体検出器が、牛肉などの食品検査を優先して不足しており、尿を検査するのは無理という意味だ。

当初公開されていた議事録では、第3回の検討委で山下俊一座長が「今後、尿検査をする意味はあるのか」と発言。これに答えて、放射線医学総合研究所(放医研)理事の明石真言委員が「今回の尿検査では極めて微量しか検出されなかった。検証にもう少し時間をいただきたい」と話したとされている。

第3回から検討委は公開されているが、県の調査でメモをまとめた議事録も「不適切」とされ、現在、作り直している。

明石委員の発言も修正される可能性はあるが、明石委員は取材に「1回分の尿から体内のセシウム濃度を推定すると、濃淡の差があり科学的な数値とは言えない。(尿検査は)どう転んでもあいまい。それならばWBCでいい」と説明する。

だが内部被ばくに詳しい矢ケ崎克馬琉球大名誉教授は「WBCはガンマ線のみなど内部被ばくを正しくつかむことはできない。尿検査を導入するべきだ」と異を唱える。

■被ばくの切り捨て 尿検査なら検出人数は大幅増

矢ケ崎氏によると、1リットルあたりの尿からセシウムが検出された場合、体内には約150倍のセシウムがあると推定され、「尿に混じって排出されるほかに、セシウムは臓器や筋肉に蓄積される」と言う。

不透明な経緯そのものが不信感を広げている。

尿検査の導入を訴えてきた「福島老朽原発を考える会(フクロウの会)」の青木一政事務局長は「この第3回検討委の後、尿検査が議論された形跡はない。ろくな議論もないままに秘密裏に『尿検査は困難』という合意が形成されたとしたら問題。現に進行表が疑問視した尿検査は実施されていない」と批判する。

同会は昨年5月、福島市内の子ども10人から採取した尿をフランスの民間検査機関「アクロ」に送り分析。全員からセシウムが検出され、保護者らの危機感が高まった。

その後も県内外の子ども102人を検査。これまでに岩手、宮城、千葉県など幅広い範囲でセシウムが検出されている。


国連専門家が国・県批判 ヨウ素剤無配布、健康調査不開示
(2012年11月29日 東京新聞)

2013/05/16

◆低線量被ばく 危険性認める 福島の「集団疎開」裁判 ◆低線量被ばくでも白血病/チェルノブイリ作業員/米追跡調査 11万人対象

東北、関東の現状を考える上で、非常に重要な新聞記事

低線量被ばく 危険性認める 福島の「集団疎開」裁判
(2013年5月3日 中日新聞 北陸中日新聞 東京新聞)

東京新聞:低線量被ばくの危険性認める 仙台高裁

訴えは却下でも、画期的な決定内容−。福島県郡山市の小中学生が市に対し、「集団疎開」を求めていた抗告審で、仙台高裁(佐藤陽一裁判長)は先月24日、仮処分申請を却下した。だが、低線量被ばくの危険に日々さらされ、将来的に健康被害が生じる恐れがあるとはっきり認めた。(出田阿生、中山洋子)

この決定の特徴は、低線量被ばくの危険性を強い口調で認定していることだ。それについては大きな成果といえる」福島の子どもたちの支援を続ける元裁判官の井戸謙一弁護士は同日、こう内容を評価した。

決定の事実認定の文章は歯切れよい。「低線量の放射線に長期・継続的にさらされることで、生命・身体・健康に対する被害の発生が危惧される」とし、「チェルノブイリ原発事故後に発生した子どもの健康被害をみれば、福島第1原発周辺で暮らす子どもにも、由々しい事態の進行が懸念される」と明言した。

さらに放射性物質を無害化したり、完全に封じ込める技術は未開発と指摘。汚染物質の置き場不足で除染作業が進まない現状は「被ばくの危険から容易に解放されない状況」とも言及した。

「年間被ばく量が100ミリシーベルト以下なら問題はない」と「安心神話」に徹した一審の福島地裁郡山支部の決定(2011年12月)とは、同じ却下でも格段の違いだ。

行政の責任、「自己責任」にすり替え

ただ、結論は「現在の空間線量では、直ちに健康に悪影響を及ぼす恐れがあるとは認めにくい」と逆転。井戸弁護士は「決定文は、異なる2つの文書が組み合わさっているように見える。裁判官同士で議論があったのでは」と推測する。

この裁判を担当する柳原敏夫弁護士は「決定文の後半は、読んでいるとキツネにつままれたような感じだ」と話す。

そこには「郡山市内に住み続けるならば、学校外での生活で年間1ミリシーベルトを超える被ばくをする計算になる。学校だけを疎開させても意味がない」ので却下するといった理屈が展開されている。

そうなると、低線量の地域に移住するしかないが、それは「自主避難すればいい」という。しかし、原告側は「疎開」は「子どもらの安全確保のために行政が果たすべき義務」と訴えた。行政の責任が「自己責任」にすり替えられた形だ。

とはいえ、低線量被ばくの危険を司法が認めた意義は小さくない。昨年6月、「避難の権利」などを定めた「子ども・被災者生活支援法」が国会で成立した。だが、その後、政権が再交代し、いまだ具体的な避難の施策は講じられていない。

柳原弁護士は「決定では『集団疎開は被ばく被害を回避する1つの抜本的方策として教育行政上考慮すべき選択肢』と指摘した。国や自治体は子ども被災者支援法の運用で、この決定の指摘した内容を生かさなければならない」と訴えた。


チェルノブイリ除染で被曝、低線量でも白血病リスク
(2012/11/8 14:15 日本経済新聞)

日経:低線量でも白血病リスク

 【ワシントン=共同】チェルノブイリ原発事故の除染などに関わって低線量の放射線を浴びた作業員約11万人を20年間にわたって追跡調査した結果、血液がんの一種である白血病の発症リスクが高まることを確かめたと、米国立がん研究所や米カリフォルニア大サンフランシスコ校の研究チームが米専門誌に8日発表した。

 実際の発症者の多くは進行が緩やかな慢性リンパ性白血病だったが、中には急性白血病の人もいた。調査対象者の被曝(ひばく)線量は積算で100ミリシーベルト未満の人がほとんど。高い放射線量で急性白血病のリスクが高まることは知られていたが、低線量による影響が無視できないことを示した形だ。

 チームは1986年に起きたチェルノブイリ事故で作業した約11万人の健康状態を2006年まで追跡調査。被曝線量は積算で200ミリシーベルト未満の人が9割で、大半は100ミリシーベルトに達していなかった。

 137人が白血病になり、うち79人が慢性リンパ性白血病だった。統計的手法で遺伝などほかの発症要因を除外した結果、チームは白血病の発症は16%が被曝による影響と考えられると結論付けた。

 これまでに広島や長崎に投下された原爆の被爆者の追跡研究でも、低線量被曝による健康影響が報告されており、線量が低ければ健康影響は無視できるとの主張を否定する結果。チームはコンピューター断層撮影装置(CT)など、医療機器による被曝影響を評価するのにも今回の研究が役立つとしている。

原発作業員、被曝どう把握
チェルノブイリ、低線量でも白血病 長期の健康管理 不可欠

(2012年12月28日 日経新聞)

 1986年に起きた旧ソ連・チェルノブイリ原子力発電所事故で収束に当たった作業員に白血病の患者が増えているという調査結果を、米国などの研究チームがこのほどまとめた。健康への影響が少ないとされていた低いレベルの放射線量で病気の増加が見つかった。東京電力福島第1原発でも廃炉まで30年以上かかる見通しで、作業員の長期の健康管理が課題となりそうだ。

 調査結果は、米国立がん研究所や米カリフォルニア大学、ウクライナ放射線医学研究センターなどのチームがまとめ、11月に専門誌に発表した。1986~2006年に現場作業にかかわった約11万人を追跡調査した。その結果、137人が白血病になり、うち79人が慢性リンパ性白血病だった。

原因の16%占める

 研究チームは被曝(ひばく)した放射線が原因で白血病になったかどうかを見分けるため、年齢や居住地域などの影響を取り除いて疫学的に分析した。白血病になった人のうち、16%に当たる19人は放射線が原因だと断定した。作業員の被曝線量は全体の78%が100ミリシーベルト未満で、国際放射線防護委員会(ICRP)などが「人間が浴びても明らかに健康への影響が出るとする科学的なデータはない」としている値だった。研究チームは「低い放射線の被曝でも白血病のリスクが高まる恐れがあり、放射線と病気の関係を調べるためより詳しい調査が必要だ」と指摘する。

 チェルノブイリ原発では事故直後の収束に多くの作業員が投入され、放射線の影響で命を落としたケースもある。原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)などによると、事故発生から現場で働いた作業員は50万人以上。約1000人が事故直後の作業で高い放射線にさらされ、134人は激しいやけどや敗血症などを併発した急性放射線障害を発症した。このうち少なくとも28人が放射線の影響で亡くなったといわれている。

 米国などの研究チームが今回指摘したのは、こうした事故直後の高い線量の被曝ではなく、現場に入ったものの低線量の被曝をした作業員ばかり。これまでも白血病などが増えたとする論文はあった。原爆被爆者の調査を手掛けた福島県立医科大学の柴田義貞特命教授は「今回の論文は分析もしっかりしているが、作業員が被曝した放射線量の推定にバラツキが大きい」と指摘する。白血病になった作業員がどれだけ被曝したのか明確になっていないからだ。

基準超えた例も

 放射線量の推定では作業員1人ずつに線量計を持たせるのではなく、その場で1度だけ線量を測定したデータや、作業員に聞き取りをした行動記録から推定したとみられる。チェルノブイリ原発では、現場に入った作業員が放射線量の情報は十分に知らされなかった例も多く、被曝した線量を特定するのは難しい。今後、病気と被曝量の因果関係をどこまで突き止められるかが課題となる。

 一方、福島第1原発でも通常の原発に比べて放射線量の高い状態が続く。これまでの作業で国が定める基準を超えた作業員もいる。

 東電によると、事故が発生した2011年3月11日から12年10月末までに現場で働いた作業員は2万4575人。このうち、現行の基準である年間の累積放射線量が50ミリシーベルトを超えたのは1132人に上る。これには基準が緩かった11年12月までの作業員も含まれるが、最も高かったのは事故直後に福島第1原発1~2号機の中央操作室にいた東電社員で678ミリシーベルトだった。

 この社員は被曝線量の許容限度を大幅に超えたため、東京都千代田区の東電本店で働いているという。被曝線量が上限を超えた作業員を含め、東電は「これまでの医師の診断から、放射線量の影響で健康に被害が出た人はいない」と説明する。

 厚生労働省は福島第1原発で働いた作業員について「健康管理をしっかりやるよう東電などに指導している」(同省福島労働局)。政府が冷温停止状態を宣言した11年12月16日以前に働いた作業員の一部には、がんなどの検診費用を負担している。ただ、宣言以降は東電などに委ねている。特に実態の把握が難しい協力企業の作業員は事業者任せだ。「国が責任を持って健康管理を続けるべきだ」という専門家の意見も多い。

 福島第1原発は廃炉まで30~40年かかる見通しで、今後も多くの作業員が長期にわたり高い放射線量の現場作業を強いられる。作業員の不安を解消し新たな人員を確保するためにも、国による健康管理が重要だ。
(福島支局長 竹下敦宣)


米国データが示す 低線量内部被ばくの影響
 原発施設周辺で事故なくても健康被害

 (2011年6月23日 東京新聞)

東京新聞:事故なくても健康被害 低線量内部被ばくの影響

東京:低線量「事故なくても」のセット記事

放射性物質の放出が止まらない福島第一原発の事故。放射線量の影響について、福島全県民を対象とした健康調査が先行して始まるが、最近、低線量の内部被ばくの懸念が高まっている。そんな中、米国の原子炉や核実験場の周辺住民の乳がん発生率などの増加を示した著書が注目されている。その疫学調査が明かす内部被ばくの恐ろしさと、福島への教訓とは何か。

原発閉鎖後 小児がん急減
160キロ圏 乳がん発生率増
雨で飲料水や井戸水汚染

「先日テレビで、福島県に住む八歳の女の子が『放射能を吸い込んじゃうから、お外では遊ばないの』と話していた。いまや子どもでさえ、内部被ばくを言葉にするようになった」。長崎大学の戸田清教授(環境社会学)は、長崎市内でこう話し始めた。

呼吸や飲み水、食事を通じていったん放射性物質が人体に取り入れられると、慢性的に体内で放射線を出し続けて細胞を傷つけ、がんなどの原因となる。原発事故による健康被害は、体外の被ばくのほか、こうした「低線量内部被ばく」で引き起こされる。

チェルノブイリ原発事故は大爆発だったが、ほぼ十日以内に事故自体は収束した。ところが福島は百日を過ぎても収束せず、海洋汚染も続いている。こうした状況下の被ばくは過去に例がない

低線量内部被ばくはどんな影響をもたらすのか。戸田氏ら研究者が福島の原発事故前から注目してきたのは、104基の商業原発がある世界一の原発大国・米国の低線量内部被ばくについての、民間疫学調査だった。

実は原発は、事故がなくても健康被害をもたらす。平常運転で放出される放射能で周辺住民が内部被ばくするからです

衝撃的な数字がある。

米国の公衆衛生学者ジョセフ・マンガーノ氏の疫学調査によると、米国内で1989年から98年にかけて閉鎖された原発6基の周辺40マイル(64キロ)で、ゼロ歳から4歳までの小児がん発生率が、原発の閉鎖後に平均で23・9%も急減した

同時期、米国全体での発生率は微増していた。

どの原発も、小さなトラブル以外、過去に事故を起こしていない。「基準値以下の放射性物質が原発運転中に大気や土壌に長年放出され続け、周辺住民が低線量内部被ばくして、がんの発生率を押し上げたと推測できる」と戸田氏は解説する。

戸田氏らが共訳し、偶然、福島の事故後の4月に出版された「低線量内部被曝(ひばく)の脅威」(緑風出版)も、同様の事実を明らかにしている。

著者は米国の統計専門家ジェイ・マーティン・グールド氏。行政の公式資料をもとに統計をとり、米国の原子炉や核実験場周辺の160キロ圏内で、乳がんの発生率が急増していたことを突き止めた。

米国は48州あり、古い原発7基がある14の郡では、50~54年の時期から85~89年の時期までの間、白人女性の10万人当たりの死亡率が37%上昇した。同時期の米国全体の上昇率は1%で、大差があった。

さらに、このうち放射能の影響を受けやすいとされる乳がんによる同時期の死亡率の上昇は、全米で2倍だったのに対して、14郡では5倍に達していた。

同様に、グールド氏らは国のデータから、戦後の大気圏内核実験の開始と、63年の中止後で、新生児死亡率や低体重児の増減率が疫学的な異常を示すことも証明した。

「米国立がん研究所の調査は『原発周辺の住民の健康に影響がみられない』としていたが、汚染が及ぶ地域を対象に入れないなど統計学的な手法に問題があった」(戸田氏)。放射性ヨウ素131のほか、半減期の長いストロンチウム90とセシウム137などが雨で落ち、都市部の飲料用上水や農村部の井戸水を汚染していたという。

福島県は県民約203万人を対象に、30年間の健康影響調査を行う

戸田氏は「広島・長崎の被爆者は、戦後60年以上たったいまでも、放射能の影響と思われる病気を新たに発症している。今後60年以上、つまり一生涯にわたる調査が必要」と提言する。

さらに「行政区分と汚染の広がりは別のもの。福島県民に限定せず、隣接県・地域の住民にも広げる必要がある」。事故直後に原発周辺地域にいて、県外に避難している人たちもきちんと調査するよう求める。

それでも課題は多い。どれだけ内部被ばくをしたのか、どれほどの健康被害につながるのか、現時点では不明なことばかり。線量計は外部被ばくしか計測できず、ホールボディーカウンターで内部被ばくを調べられるのは一部の放射線に限られる。そもそも放射性物質の体内への影響の度合いは、個人差が大きい。

将来、福島第一原発の周辺住民ががんを発症したとして、事故が原因と立証するにはどうすればいいのか。過去の原爆症や水俣病などの認定訴訟で常に争点となってきたのは「因果関係」だ

戸田氏はこう訴える。「疫学調査は集団が対象で、個人についての因果関係は証明できない。それならば、国や電力会社が『原発事故と発病は無縁』と完璧に立証できない限り、被ばくの事実と発病の事実さえあれば『因果関係は推定できる』として認定すべきだ」

<デスクメモ>「おれたちゃ、人間モルモットか」。福島市内で娘が2人いる父親は憤った。「みんな最低1時間は放射能の話だよ」と居酒屋に入ると、会話から「セシウム」「内部被ばく」が飛び交う。父親は県民調査の重要性は理解している。だがデータは住民救済のためであって、国のものではないと力説した。 (呂)

 

子ども3人+7人も細胞検査により約8割の確率で甲状腺がん

福島子ども調査:甲状腺がん、新たに2人 他7人に疑い
(毎日新聞 2013年02月13日 20時40分)

 福島県が行っている子ども(震災時18歳以下)の甲状腺検査で、新たに2人が甲状腺がんと診断されたことが、13日の県民健康管理調査の検討委員会(座長・山下俊一福島県立医大副学長)で報告された。昨年9月に判明した1人と合わせ計3人になった。他に7人に甲状腺がんの疑いがあり、追加検査を行う。同検討委は原発事故の影響について否定的見解を示したが、「断定も否定もできない」と話す専門家もいる。

 疑いのある人を含めた10人の内訳は男性3人、女性7人で平均年齢15歳。11年度に受診した原発周辺13市町村の3万8114人の中から見つかり、地域的な偏りはないという。甲状腺がんと判明した3人は手術を終え、7人は細胞検査により約8割の確率で甲状腺がんの可能性があるという。7人の確定診断は今後の手術後などになるため、最大10人に増える可能性がある。

 記者会見した鈴木真一・県立医大教授によると、子どもの甲状腺がんの発生率は「100万人に1人」が通説。今回の検査は大きく上回るが、甲状腺がんは自覚症状が出てから診察する場合がほとんどで、今回のような精度での疫学調査は前例がなく比較できないという。さらに、チェルノブイリ原発事故では最短で4年後に発症が増加しているとして、鈴木教授は「元々あったものを発見した可能性が高い。(原発事故との因果関係は)考えにくい」と語った。

 福島県の甲状腺検査は約36万人を対象に実施中。環境省は福島と他地域の子どもたちを比較するため、青森県などで約4500人を対象に検査を進めており、結果は3月下旬に公表予定。【蓬田正志、泉谷由梨子】

菅谷昭 医師(長野県松本市長)
1996年から、ベラルーシの国立甲状腺がんセンターにて、小児甲状腺癌の外科治療を中心に医療支援活動に従事した菅谷昭さんは、次のように語っています。

「チェルノブイリでは、国立甲状腺がんセンターだけで子どもの手術をしましたので、データが非常にしっかり残っています。それによると、子どもの甲状腺がん患者のうち6人に1人が肺に転移しているんですね。ですから、甲状腺がんの疑いがあるのだったら早く手術をした方がいいと思うんです」

そして、子どもたちの「疎開」に言及されています。

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2013/05/05

放射能汚染地の子どもたちに病気が急増している

子どもの日に、多くの人に伝えたいこと
今こそ、皆で協力して放射能から子どもたちを守ろう!

福島原発事故のあと、子どもたちの病気が増えています。
1990年からチェルノブイリ医療支援活動に関わり、ベラルーシやウクライナの放射能汚染地と病院を何度も訪問してきました。

現地で出会ったお医者さんや研究者のほとんどが、「さまざまな病気が増えている」と言い、ベラルーシの「低レベル」汚染地域にある子ども病院では、病気が増えている具体的なデータをもらいました。

その病院では、原発事故前年と事故から9年後を比べると、急性白血病が2.4倍、ぜんそく2.7倍、糖尿病2.9倍、血液の病気3.0倍、先天性障害5.7倍、ガンが11.7倍、そして、消化器系の病気が20.9倍にも増えていました。

モズイリ子ども病院データ

そうした状況を実際に見聞きしてきた経験から、福島原発事故以後の日本の状況をとても心配しています。2011年3月の原発事故発生から2年が過ぎ(今も放射能放出が続いている)、東北や関東を中心に病気が増えています。特に甲状腺異常や心臓病が急増しています。

トリミング:甲状腺がん 新たに2人

甲状腺異常の内容を詳しく見ると、以下のようになっています。

2011年3万8千人186人二次検査 甲状腺がん3人疑い7人 12年9.5万.人中549人二次検査jpg
     
子どもの甲状腺異常は、2011年度に検診した3万8000人の内「2次検査必要」が186人。その内「3人が甲状腺ガン+7人がガンの疑い」と福島県から発表されました。毎日新聞によれば、「疑いのある人を含めた10人の内訳は男性3人、女性7人で平均年齢15歳。甲状腺がんと判明した3人は手術を終え、7人は細胞検査により約8割の確率で甲状腺がんの可能性があるという。7人の確定診断は今後の手術後などになるため、最大10人に増える可能性がある」

こうした状況の中で、調査をした福島県の「県民健康管理調査」検討委員会は、情報の隠ぺいや「秘密会」の開催などで、市民からの信頼をなくしています。

福島健康調査:「秘密会」で見解すり合わせ
(毎日新聞2012年10月3日)

<福島健康調査>「秘密会」で見解すり合わせ

福島健康調査「秘密会」 県、出席者に口止め

また、健康管理調査検討委員会の座長である山下俊一氏は、原発事故が起きた2011年3月、福島県の健康管理アドバイザーという立場で講演してまわり、「今の放射能測定値で外出しても問題はないのか?」との質問に対して、「環境の汚染の濃度が、100マイクロシーベルト/hを超さなければ、まったく健康に影響を及ぼしません。ですから、5とか10とか20とかいうレベルで、外へ出ていいかどうかということは明確です。昨日も、いわき市で答えました。『今、いわき市で、外で遊んでいいですか?』と聞かれました。『どんどん遊んでいい』と答えました。福島も同じです。心配することはありません」と答えています。

こうした講演は、市政だよりなどで広く広報されました。福島県民の中には、山下教授の発言を信じ、100マイクロシーベルト/hまで安全、一度に100ミリシーベルト浴びなければ大丈夫だと、放射線量が高いときにマスクもさせずに子どもたちを外で遊ばせてきた親がたくさんいます。ふとんも洗濯物も外に干してかまわない、雨に多少ぬれても問題ない、といった山下発言を信じた人もたくさんいます。

そうした山下氏の言動に対し、福島県民の被ばく量を増やしたとして、市民や研究者などが告訴しています。

その山下氏が今年3月11日、アメリカの米国放射線防護・測定審議会で講演し、「福島県の子ども3万8000人のうち10人が甲状腺がん」と発表しています。広く知らせて、早急に対策を立てるべき日本国内では未発表のまま、米国では発表しているのです。(以下は、講演で使われた資料)

山下俊一・米国講演・小児甲状腺がんグラフ

この「3万8000人のうち10人が小児甲状腺がん」という情報は、日本のマスコミではほとんど報道されていません。山下氏が発表した数字は、通常の小児甲状腺がん発生率「100万人に1人か2人」の約130~260倍に相当します。さらに心配なのが、2011年度より2012年度の方が2次検査が必要な比率が高くなっていることです。

福島の小児甲状腺がん 増える人数

2011年度 38,000人―186人(2次検査必要)=0.489%
2012年度 95,000人―549人(2次検査必要)=0.577% 

もし、2011年度の「186人のうち10人がガン」だった比率(10/186=5.376%)と2012年度の2次検査が必要な549人が同じ比率でガンだった場合、約30人の子どもが甲状腺ガンになります。「9万5000人で30人」というのは、通常の「100万人で1人か2人」の157~315倍になります。

しかも、福島県の検査は、短時間で精密さに欠けるという指摘があります。

福島、子どもの甲状腺検査 高まる県民の不信(毎日新聞)

福島県二本松市の主婦は昨秋、長男(6)の検査に付き添った。検査技師はモニターを見つめて何かを測っている様子だったが、結果について何も話さず、2分ほどで終了した。不安になり、一般の病院で改めて検査を受けさせた。10分ほどかかった検査で、7ミリの結節が見つかった。県の判定基準では2次検査が必要な「B」に当たる。だが、約1カ月後に県から届いた通知は、経過観察にとどまる「A2」だった。検査画像とリポートの情報公開を請求した。約3週間後に開示されたリポートには1・6ミリののう胞があると記されていたが、結節は「なし」だった。

チェルノブイリの場合、子どもの甲状腺がん患者のうち6人に1人が肺に転移しています。私たちが、ベラルーシで出会ったナターシャさんの息子さんも9歳で被ばくし、甲状腺ガンが肺に転移して、21歳の若さで亡くなっています

ナターシャとオレグ

その後、ナターシャさんは、2人いた子どものもう一人の娘さんまでガン(胃ガンが全身に転移)によって失っています。放射線は年齢が低いほど大きな被害を受けるということ。「親よりも子どもが先に亡くなっていく」ということが放射能の最も怖いことの一つだと思います。

政府は、早急に検査体制を増強して、福島と宮城、栃木、群馬、茨城、千葉などの高汚染地域でも迅速で丁寧な検診を実施すべきです。

1996年から、ベラルーシの国立甲状腺がんセンターにて、小児甲状腺癌の外科治療を中心に医療支援活動に従事した菅谷昭さんは、次のように語っています。

「チェルノブイリでは、国立甲状腺がんセンターだけで子どもの手術をしましたので、データが非常にしっかり残っています。それによると、子どもの甲状腺がん患者のうち6人に1人が肺に転移しているんですね。ですから、甲状腺がんの疑いがあるのだったら早く手術をした方がいいと思うんです」

そして、子どもたちの「疎開」に言及されています。

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◆心臓病も急増
問題は、甲状腺だけではありません。今、全国で心臓病が急増しています。私たちは、チェルノブイリの経験から学ぶことがたくさんあります。チェルノブイリ原発事故後、放射能汚染地の住民に心臓病が激増していきました。原発事故から22年が過ぎた2008年に、ベラルーシで亡くなった人の半数以上(52.7%)が心臓や血管などの循環器系疾患でした。

2008年のベラルーシの死因 52.7%心臓病

チェルノブイリ原発事故後のベラルーシで、元ゴメリ医科大学学長のユーリ・バンダジェフスキー博士が病気で亡くなった人を解剖して分かったことは、心臓病の多くは、放射性セシウムが心筋(心臓の壁を構成する筋肉)に蓄積して起こったということです。

福島原発事故の後、日本でも心不全や心筋梗塞など心臓病が増加しています。第76回日本循環器学会の発表で、2011年2月11日~3月10日では123件だった心不全が、同年3月11日~4月7日には220件 に増加。心不全の増加は、過去の大震災疫学調査では報告例がありません。

また、2012年12月26日の東京新聞によると、茨城県取手市(放射能汚染地=ホットスポット)の小中学生に心臓病が急増しています。一次検診を受けた小中学生1655人のうち73人が要精密検査と診断され、11年度の28人から2.6倍になっています。中学生だけで見ると、17人→ 55人と3倍強に増えています。

取手市 心臓病の増加

心臓に何らかの既往症が認められる児童・生徒も10年度9人から11年度21人、12年度24人と推移。突然死の危険性が指摘される「QT延長症候群」とその疑いのある診断結果が、10年度の1人、11年度の2人から8人へと急増しています。


児童、生徒の心電図異常増加…茨城
(2013年1月4日 読売新聞)から抜粋

 茨城県取手市の市立小中学校の学校検診で、心電図に異常がみられる児童、生徒の数が、昨年度から増加していることが、生活クラブ生協取手支部など市内3団体の調査でわかった。検査は小中学校の1年生に実施し、毎年度5月に1600~1700人が受診。精密検査が必要とされた子供は、2010年度までは最高で1・79%だったのが、11年度は2・38%、12年度は5・26%になった。

 また、精密検査で疾患や異常が見つかった子供は、10年度までは最高0・71%だったが、11年度は1・28%、12年度は1・45%だった。ただし、12年度は「要精密検査」とされながらも、公表時点で受診していない子供が3分の1以上おり、3団体は「受診者が増えれば数値が上がる可能性がある」とみている。


また、心疾患死亡に関する人口統計において、福島県の心疾患死亡率が2011年度の全国1位になっています。(秋田県が公開したデータ)

◆2011年度 心疾患死亡率は、福島が全国一位
福島は、2010年度の8位から2011年度は1位に、岩手が6位から4位になっています。

【福島と周辺県の心疾患死亡率が増加】

     2010年度  2011年度  増加率   
福島   197.6   226.0   14.4%  
宮城   141.3   160.0   13.2%  
茨城   150.1   165.9   10.5%  
岩手   202.6   219.3    8.2%  

全国平均 149.7  154.4    3.1%  

心疾患死亡率 2011年と2012年度の比較

*バンダジェフスキー博士(元ゴメリ医科大学学長)は、子どもの体重1kgあたり、セシウム137が10ベクレル(5kgの子どもなら50ベクレル)蓄積するだけで、遺伝子に影響を与え、不整脈を引き起こす可能性があると警告していまます。 (不整脈は、心臓病につながります)

体重5kgの幼児が、セシウム137を毎日0.32ベクレル摂取し続けると体内10ベクレル/kgになります

ドイツ放射線防護協会「日本における放射線リスク最小化のための提言」では、『評価の根拠に不確実性があるため、乳児、子ども、青少年に対しては、1kgあたり4 ベクレル以上のセシウム137 を含む飲食物を与えないよう推奨されるべきである。成人は、1kg あたり8Bq 以上のセシウム137 を含む飲食物を摂取しないことが推奨される』と提言している。

今、日本の政府は、最優先で守るべき「子どもの命」より「目先の経済」を優先しているため、「チェルノブイリ法」の避難基準であれば、避難しなければならない地域に多くの子どもたちが住み続けて「外部被ばく」を増やし、飲食を通して「内部被ばく」を増加させています。

検出限界値 福島県庁食堂『1ベクレル』 学校給食『10ベクレル』

福島市・学校給食の検出限界値は 『10ベクレル』
福島県庁にある食堂の検出限界値は 『1ベクレル』
この2つの数字を見ると、子どもたちよりも県職員の方が安全を確保されているようです。さらに、佐藤雄平知事は、学校給食での福島県産米や野菜の積極的な利用を呼びかけています。

福島学校給食に県内産米 佐藤知事

福島県知事と県職員の皆さん
長年、放射能の人体への影響を研究してきたジョン・ゴフマン博士の名著として知られている『人間と放射線 ― 医療用X線から原発まで―』によれば、0歳の乳児は30歳の約4倍、さらに55歳以上と比べると300倍以上の大きな影響を受けることになります。

皆さんがやっていることは、逆ではありませんか?
これ以上、子どもたちを危険な状況に追い込むことはやめて下さい。

ゴフマン 年齢別がん死者数グラフ

大人は、「年齢が低い子どもほど放射線の影響を大きく受ける」という事実を肝に銘じる必要があります。

ウクライナで5万人の子どもを診察したエフゲーニャ・ステパノワ博士は、病気予防対策の一番目に「汚染されていない食べ物をとること」と日本人にアドバイスしています。加えて、充分なビタミンをとること。体力増進に努めること。汚染地域を離れて保養施設などで休むこと(最低でも4週間)も重要だと話しています。

ステパノヴァ医師「汚染地の子ども病気になりやすい」

また、ウクライナの子どもたちは1年に1回、小児科、血液科、内分泌科、神経科、咽頭科など専門医のもとで、血液検査と尿検査、甲状腺超音波検査など総合的な健康診断を受けています。

ところが、日本では、血液検査や尿検査さえ実施されていません

福島県、尿検査せず

日本は、ウクライナに比べ、子どもたちを守ろうとする意志も、原発事故被害者(特に農業者、漁業者、市民)への補償もまったく不足しています。

原発を再稼動させたり、被害補償を少なくしたい勢力は、できるだけ不利なデータを取らず(あるいは、隠して)被害を過小評価しようとします。そうした勢力は、国内の「原子力ムラ」だけでなく、国際的にも存在します。

チェルノブイリ事故の被害をめぐっては、原発を推進しているIAEA(国際原子力機関)やIAEAと協定を結んでいるWHO(世界保健機構)などにより「直接的な死者は50人、最終的な死者は4000人」とか「最大で9000人」といった過小評価が公式化されてきました。その数字の元になったのは、350の論文に基づき英文で公開されている資料だけでしたが、2009年にヤブロコフ博士らがまとめた報告書『チェルノブイリ――大惨事が人びとと環境におよぼした影響』は、5000以上の論文(英語だけでなくロシア、ウクライナ、ベラルーシの言語も含む)を元にまとめられたもので、その犠牲者数少なくとも98万5000人と見積もっています。

この報告書の翻訳本調査報告 チェルノブイリ被害の全貌が4月26日に岩波書店から出版されました。本の帯には、こう書かれています。「1986年4月、たった1つの原子炉が爆発し、今日、汚染地域の健康な子どもは20%に満たない

チェルノブイリの放射能汚染地をまわったとき、「この村には、健康な子どもはほとんどいません」「この町の多くの子どもは、複数の病気を抱えています」といった話をあちこちで聞いた私にとって、『健康な子どもは20%に満たない』というのは、驚く話ではありません。

今、福島をはじめ東北や関東の汚染数値が高い地域に住む子どもたちは、非常に危険な状況の中で生きています。国も、自治体も「子どもを守ろうとしない」状況がこのまま続けば、チェルノブイリ以上の被害が出るのではないかと、私は恐れています。

重要な放射能汚染地図

「チェルノブイリ法」の地図は、外部被ばくと内部被ばくの合計で作成
(地球の子ども新聞 2012年11月号)チェルノブイリ基準に基づく区分

地球の子ども新聞:チェルと日本の汚染地図比較

トリミング:汚染地図・移住権利・義務ゾーン

地球の子ども新聞2012年11月号の解説から抜粋)

チェルノブイリの汚染マップは、測定結果だけでなく「チェルノブイリ住民保護法(1991)」で定めた被災者保護の区分を示した汚染防護マップです。住民の健康保護を目的として、年間被曝線量0.5ミリシーベルト以上を汚染地と定義し、年間1ミリシーベルト以上を「移住の権利」、「移住の義務」、「強制避難」のゾーンに区分しています。被曝線量は、住民調査の平均値から外部被曝と内部被曝の比率を「6:4」としています。例えば、空間線量が3ミリシーベルトのとき、被曝線量は内部被曝を加え5ミリシーベルトになります。

今、政府は、原発事故などなかったかのような態度で、原発再稼動に向けて動いており、原発事故の被害者などいないかのような態度で、被害者への補償を怠り、「原発事故 子ども・被災者支援法」さえ放置しています。

こうした政府の姿勢を変えさせることができるかどうかは、最終的には市民が「放射能から子どもたちを守ろう」という「国民運動」を起こせるかどうかにかかっていると思います。

最後に、ベラルーシ科学アカデミーのミハイル・マリコ博士の言葉をかみ締めたいと思います。
チェルノブイリの防護基準、年間1ミリシーベルトは市民の声で実現されました。核事故の歴史は関係者が事故を小さく見せようと放射線防護を軽視し、悲劇が繰り返された歴史です。チェルノブイリではソ連政府が決め、IAEAとWHOも賛同した緩い防護基準を市民が結束して事故5年後に、平常時の防護基準、年間1ミリシーベルトに見直させました。それでも遅れた分だけ悲劇が深刻になりました。フクシマでも、早急な防護基準の見直しが必要です

今こそ、みんなで協力して、知恵と力を寄せ合って、子どもたちを守りましょう!

2013年5月5日 子どもの日に
中村隆市


<関連情報>
国連報告書「福島県健康調査は不十分」(5月30日)
福島県南相馬の脳卒中が急増 35歳から64歳で3.4倍(6月1日)
福島の帰還基準、避難者と賠償額の増加を恐れて「年5ミリ」とせず(6月11日)
日本では、チェルノブイリの経験がまったく生かされていない(6月15日)

2013/05/04

「チェルノブイリ法」の避難基準と放射能汚染マップ

ウクライナの「チェルノブイリ法」―チェルノブイリ事故に関する基本法
(ウクライナ科学アカデミー オレグ・ナスビット,京大原子炉実験所 今中哲二)から抜粋

チェルノブイリ事故が人々の健康にもたらす影響を軽減するための基本概念として,1991年2月27日,ウクライナSSR最高会議によって採択された.この概念の基本目標は,最も影響をうけやすい人々,つまり1986年に生まれた子供たちに対するチェルノブイリ事故による被曝量を,どのような環境のもとでも年間1ミリシーベルト以下に,言い換えれば一生の被曝量を70ミリシーベルト以下に抑える,というものである.

基本概念文書によると,「放射能汚染地域の現状は,人々への健康影響を軽減するためにとられている対策の有効性が小さいことを示している.」それゆえ,「これらの汚染地域から人々を移住させることが最も重要である.」

事故影響軽減のための基本法

法の第1条は,チェルノブイリ事故による放射能汚染地域をつぎのように定義している.「事故前に比べた現在の環境中放射性物質の増加が…住民に年間1ミリシーベルト以上の被曝をもたらし得る」領域が汚染地域である.こうした地域では,住民に対し放射能防護と正常な生活を保障するための対策が実施されねばならない

第1条では,被曝量が年間1ミリシーベルトを越える可能性のある領域が汚染地域と定義されているが,第2条のゾーン区分では,年間1ミリシーベルト以下の領域が(0.5ミリシーベルト以上の)放射能管理強化の第4ゾーンに含まれている.

チェルノブイリ法の基準

住民の健康確保という観点からは,疾病の危険性を軽減するための対策が重要である.法に従い,政府は以下の方策を実施せねばならない.

汚染地域住民の毎年の健康診断と早期の病気予防,
住民への十分な量の,医薬品,飲料水,クリーンな食料の供給,
(その他は省略)


「年1ミリシーベルト」で避難の権利 ロシアのチェルノブイリ法
(2012/05/24 みんな楽しくHappyがいい)から抜粋

「チェルノブイリ法」では、年間被ばく線量が0.5ミリシーベルト(土壌汚染が37kベクレル/m2)以上の地域で、医療政策を含む防護対策が行われる。1ミリシーベルト以上であれば、避難の権利があり、5ミリシーベルト以上の地域は、移住の義務がある。

チェルノブイリ法の避難基準

【一つ目は疎外ゾーン】
日本でいう警戒区域にあたる地域。ここは立ち入りが禁止されている。

【二つ目は退去対象地域】
住民が受ける平均実効線量が年間5ミリシーベルトを超える可能性がある地域で、住民は移住すべきとされている。ここに住んでいた住民は被害補償や社会的な支援を受ける権利がある。

【三つ目が移住権付居住地域】
住民が受ける平均実効線量は年間1ミリシーベルトから5ミリシーベルトの地域に当たる。避難するかどうかは住民自身が判断する。

【四つ目は特恵的社会経済ステータス付居住地域】
年間0.5ミリから1ミリシーベルトの地域で、医療政策を含む防護対策が行われ保証金も支払われる


◆「安全基準は年間1ミリシーベルト、0・19マイクロシーベルト/時です
(2011年06月27日 週刊現代)

日本の政府は、福島原発事故の後、一般人の年間被曝限度量を、1ミリシーベルトから一気に20ミリシーベルトに引き上げた。常識で考えて、安全基準が20倍も変わることなどありえない。

「年間20ミリシーベルト、それを基に算出した3・8マイクロシーベルト/時という数値は、ICRP(国際放射線防護委員会)が緊急事故後の復旧時を想定して決めた値です。それが一般生活者の基準になるわけがない。一般人の安全基準はあくまで年間1ミリシーベルト、0・19マイクロシーベルト/時です」(元放射線医学総合研究所主任研究官・崎山比早子氏)


日本でも法案提出―避難の権利を確立するチェルノブイリ法
(2012年5月25日 田中龍作ジャーナル)

 ロシアでは「チェルノブイリ法」により、年1ミリシーベルト以上の被ばく量地域を「移住(避難)の権利地域」と定め、在留者・避難者それぞれに仕事、住居、薬、食料の支援をしている。

※年1ミリシーベルト地域(0.23マイクロシーベルト毎時)
自然からの線量0.04シーベルトと原発事故による追加被ばく線量0.19シーベルトを足し合わせた。屋外で8時間、木造家屋で16時間過ごすと仮定すると、1年で1ミリシーベルトを超える。(環境省HPより)

 チェルノブイリ法が定める移住の権利地域の住民は、次のような補償を受ける
1、国家の負担による追加医療保障(毎年の健康診断、薬剤の無料供与など)
2、非汚染地帯でのサナトリウム治療(保養)と追加の休暇
3、妊婦に対する居住地域外での延長休暇
4、月に100米ドル相当の支払い(健康増進用、追加食品用)
5、年金の30%割り増し

 「当時、“移住の権利地域”の年間線量については激しい議論が行われた。基準を年5ミリシーベルト以上にしようとする原発推進派と闘い、年1ミリシーベルト以上を勝ち取った」


空間線量汚染地図:東洋経済
(出典www.toyokeizai.net


「チェルノブイリ法」の地図は、外部被ばくと内部被ばくの合計で作成
(地球の子ども新聞 2012年11月号)チェルノブイリ基準に基づく区分

地球の子ども新聞:チェルと日本の汚染地図比較

トリミング:汚染地図・移住権利・義務ゾーン

地球の子ども新聞2012年11月号の解説から抜粋)

チェルノブイリの汚染マップは、測定結果だけでなく、「チェルノブイリ住民保護法(1991)」で定めた被災者保護の区分を示した汚染防護マップです。住民の健康保護を目的として、年間被曝線量0.5ミリシーベルト以上を汚染地と定義し、年間1ミリシーベルト以上を「移住の権利」、「移住の義務」、「強制避難」のゾーンに区分しています。被曝線量は、住民調査の平均値から外部被曝と内部被曝の比率を「6:4」としています。例えば、空間線量が3ミリシーベルトのとき、被曝線量は内部被曝を加え5ミリシーベルトになります。

【IAEA(国際原子力機関)、WHO(世界保健機関)を超えて】
年間1ミリシーベルトを提唱したミハイル・マリコ博士(ベラルーシ科学アカデミー)
チェルノブイリの防護基準、年間1ミリシーベルトは市民の声で実現されました。核事故の歴史は関係者が事故を小さく見せようと放射線防護を軽視し、悲劇が繰り返された歴史です。チェルノブイリではソ連政府が決め、IAEAとWHOも賛同した緩い防護基準を市民が結束して事故5年後に、平常時の防護基準、年間1ミリシーベルトに見直させました。それでも遅れた分だけ悲劇が深刻になりました。フクシマでも、早急な防護基準の見直しが必要です

文部科学省放射線量等分布マップ拡大サイト

放射能汚染地図 文科省 電子国土版

衆議院チェルノブイリ原子力発電所事故等調査議員団報告書
(1) ウクライナ
  1.チェルノブイリ原子力発電所視察
  2.放射性廃棄物保管場「ブリャコフカ」及び予定地「ヴェクトル」視察
  3.チェルノブイリ博物館視察
資料『チェルノブイリの長い影―チェルノブイリ核事故の健康被害』
<研究結果の要約:2006年最新版

6.非常事態省チェルノブイリ立入禁止区域管理庁長官等との懇談
資料・チェルノブイリ原子力発電所事故により放射性物質で汚染された地域の法制度に関するウクライナ国家法(1991年)
  ・チェルノブイリ原発事故被災者の状況とその社会的保護に関するウクライナ国法(1991年)(概要及び本文)

*文書が見られないときは、画面右上にある「ほかのビューアで開く」を押して見て下さい。

   *   *   *

(参考記事)
【放射能汚染マップ】放射能汚染の分かるマップをまとめ(NAVERまとめ)

2013/05/03

福島、子どもの甲状腺検査 高まる県民の不信 (毎日新聞)

福島県二本松市の主婦は昨秋、長男(6)の検査に付き添った。検査技師はモニターを見つめて何かを測っている様子だったが、結果について何も話さず、2分ほどで終了した。不安になり、一般の病院で改めて検査を受けさせた。10分ほどかかった検査で、7ミリの結節が見つかった県の判定基準では2次検査が必要な「B」に当たる。だが、約1カ月後に県から届いた通知は、経過観察にとどまる「A2」だった。検査画像とリポートの情報公開を請求した。約3週間後に開示されたリポートには1・6ミリののう胞があると記されていたが、結節は「なし」だった。

クローズアップ2013 福島、子供の甲状腺検査 高まる県民の不信
 (毎日新聞 2013年4月22日 東京朝刊)

 東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質から子供の健康を守るとして、福島県が実施している甲状腺検査が揺れている。これまでに3人のがん患者が確認され、7人にがんの疑いがあるとされたが、県側は「被ばくとの因果関係は考えにくい」と強調する。「県民の不安解消」を検査の目的に掲げる県だが、情報公開に消極的な姿勢も相まって、保護者の不安と不信はやむ気配がない。【日野行介】

子供の甲状腺検査 高まる県民の不信

 ◇4観察項目省略、公表せず

 福島県二本松市の主婦、鈴木麻記子さん(39)は昨秋、長男(6)の検査に付き添った。検査技師はモニターを見つめて何かを測っている様子だったが、結果について何も話さず、2分ほどで終了した。

 不安になった鈴木さんは、一般の病院で改めて検査を受けさせた。10分ほどかかった検査で、7ミリの結節(しこり)が見つかった。県の判定基準では2次検査が必要な「B」に当たる。だが、約1カ月後に県から届いた通知は、経過観察にとどまる「A2」だった。

 鈴木さんは検査画像とリポートの情報公開を請求した。約3週間後に開示されたリポートには1・6ミリののう胞(液体がたまった袋のようなもの)があると記されていたが、結節は「なし」だった。「県の検査は一人一人の子供を真剣に見ていない。本当に親の気持ちを大事にしているとは思えない」と鈴木さんは憤る。

 実は県の検査では、甲状腺検査で一般的に実施される12の観察項目のうち4項目を省いている。だが、県はこのことは公表していなかった。識者からは「精度に疑問がある」との指摘も出ている。

 日本乳腺甲状腺超音波診断会議などが編集する「甲状腺超音波診断ガイドブック」は、観察項目として「甲状腺の形状」「大きさ」など12項目を挙げる。検査を委託される県立医科大は住民説明会でこのガイドブックを引用し「高い精度の検査だ」と強調してきた。しかし、実際には「甲状腺の内部変化」「血流の状態」など4項目を実施していない。検査責任者の鈴木真一教授は「短時間の1次検査では見る必要はないと考えた。(内部変化や血流の状態は)一律には見ていないが、必要な場合は見ている」と説明する。検査対象となる事故当時18歳以下の子供は約36万人に上り、検査のスピードアップのために省略したという。

 県の検査方法に関し北海道がんセンターの西尾正道名誉院長は「血流の状態の確認をしないと、小さなのう胞と血管の区別はできにくく、精度が高いとはいえない。大きな病気がないかどうか簡単に見るだけの内容だ」と指摘している。

 ◇独自検査の動きも

保護者の根強い不信と不安の背景には、情報公開に消極的な県側の姿勢がある

 県立医大が開いている住民説明会では、確認されたがん患者の居住地や、被ばく線量の推計値の説明を求める声が上がった。だが、鈴木教授は「個人情報だ」として明かさず、「被ばく線量は低い」「見つかったがん患者と被ばくの因果関係は考えにくい」と繰り返した。

 こうした姿勢に、参加者からは「『被ばくの影響なし』という結論ありきだ」との批判も出ている。会津若松市で3月に開かれた説明会では、ある母親が立ち上がり、「『親の不安を解消する』と言うが、私たちは不安を解消してほしいのではなく事実を知りたい。私たち自身が判断する」と訴えた。

 今回開示された「自治体別データ」は、今年1月の開示に合わせて市町村に伝達されたが、それも自らの自治体分だけで「比較できない」と不満も出ていた。そんな中、自治体や市民団体が独自に検査に乗り出す動きも広がる。既に本宮市、浪江町などが開始。NPO法人「いわき放射能市民測定室たらちね」は3月17日、最新機器の寄付を受けて検査を始め、印刷した画像もその場で手渡している

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 ■ことば ◇福島県の甲状腺検査

 原発事故当時18歳以下の約36万人が対象で、2年半で一回りし、20歳までは2年ごと、以後5年ごとに受ける。1次検査は超音波でしこりなどの有無と大きさを検査し、A1〜Cに分類。B、Cは2次検査の対象。2011年度にB判定となり、2次検査を受けた子供から、3人のがん患者と7人の疑い例が見つかった。

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福島の汚染地の小児甲状腺がん発生率は、通常の130倍‐260倍
(2013/03/29 風の便り)から抜粋

通常、子どもの甲状腺がんの発生率は100万人に1人か2人ですが、福島県の子どもたち3万8000人のうち3人の小児甲状腺がんの患者が見つかり、7人の小児甲状腺がんの疑いがあると福島県の県民健康管理調査検討委員会が発表していました。その後、甲状腺がんの疑いがある7人の結果は日本では報道されていないままでした。ところが、検討委の座長である山下俊一氏は、アメリカでの講演で「3万8000人の中で10人が小児甲状腺がん」と発表しています。
これは通常の小児甲状腺がん発生率の130倍~260倍になります。

山下俊一・米国講演・小児甲状腺がんグラフ


不信感募る親たち 何かあるのでは

2013/05/02

家庭でも「原発を持たない電力会社」を選べるようにしてほしい

家庭でも「原発を持たない電力会社」を選べるように早くしてほしい。

◆「脱原発の民意 多数と思わぬ 原発比率7割8割にすべき」
前九電会長で、九経連会長松尾新吾氏の発言(2012年9月25日 朝日新聞)

大画像 脱原発の民意 多数と思わぬ 原発比率7割8割にすべき

◆九電離れ 2100件超す 電力契約 企業顧客値上げ響く 
(2013年5月2日 西日本新聞1面)から抜粋

九電離れ2100件超す 電力契約 企業値上げ響く

九州電力は1日、電力小売りの新規参入事業者(PPS、新電力)に電力供給契約を奪われている企業顧客が、契約切り替えが集中する4月1日時点で2117件(前年同月比377件増)に上がったと明らかにした。小売自由化で新電力参入した2000年以降、初めて2千件を突破した。

九電は4月1日から、工場など自由化対象である企業顧客(契約電力50キロワット以上)向け料金を平均11.94%値上げした。このため、新電力各社は九電より安い料金設定が可能になり、九電との契約を打ち切る顧客が増えたとみられる。

九電が新電力に奪われた需要は、契約電力ベースで計32万9千キロワット(同4万2千キロワット増)と、これも過去最大。

関係者によると、九電からの離脱は、官公庁施設のほか、工場など民間の中規模設備にも広がっているという。

九電は1日、家庭向け電気料金も平均6.23%値上げした。

2013/04/29

ふくしま集団疎開裁判 世界に伝える 2本のAP通信記事

◆フクシマの子どもたちの避難を求める訴訟
(2013年4月13日 AP通信)

少年の放射能を測定

【資料】2011年3月24日付け資料写真。福島県、津波で損壊した福島第1原発から漏出した放射線の検査を受ける幼い避難民。2年以上も前、巨大地震と津波が襲来したさいに放射能を漏出した破損原発から60キロ(40マイル)西方の福島地方裁判所郡山支部において、福島の子どもたちのために、両親らと反核アクティビストらが提起した異例の訴訟に対して、日本の抗告審裁判所がまもなく裁定をくだすと予測されている。幼い抗告人らは放射線に被曝せずに生きる権利の実現を申し立てている。この訴訟は、お上に異を唱えることが歓迎されない社会において、低線量放射線による健康への影響に関する専門家見解の困惑するような違いの幅広さによって引き起こされた民意の分断を際立たせている。 (AP Photo/Wally Santana, File)

【東京―AP通信】
申し立て:放射線に被曝せずに生きる権利。法廷闘争をはじめた抗告人ら:14名の子どもたち。
2年以上も前、巨大地震と津波が襲来したさいに放射能を漏出した破損原発から60キロ(40マイル)西方の福島地方裁判所郡山支部において、福島の子どもたちのために、両親らと反核アクティビストらが提起した異例の訴訟に対して、日本の抗告審裁判所がまもなく裁定をくだすと予測されている。

訴訟の申し立て内容は、人口33万都市である郡山市は市内の子どもたちを、放射線レベルが自然背景レベルを超えない、すなわち年間被曝量が1ミリシーベルト以下の郡山市外に避難させなければならないというもの。
この訴訟は、お上に異を唱えることが歓迎されない社会において、低線量放射線による健康への影響に関する専門家見解の困惑するような違いの幅広さによって引き起こされた民意の分断を際立たせている。一部の専門家らは子どもたちを避難させる必要がないというが、両親らは、成人よりも放射線に弱い子どもたちへの長期的影響を心配する。これに汚染食品と水によるリスクが加わる。

日本政府は、チェルノブイリ事故以後で世界最悪のフクシマ事故が起こったあと、人びとが住みつづけてもよいか否かを決める目安として年間被曝限度20ミリシーベルトを設定した。郡山市内の平均放射線レベルはこの分け目よりずっと低いが、市内各地の「ホットスポット」では、そのレベルを超える。「これは、健康に主だった影響がなく、住むことができるレベルです」と、内閣府職員、カワモリ・ケイタはいう。「学界の専門家らがこれを安全なレベルと決めました」

福島で健康上の安全の任にあたる著名な医師は、障害が無視できなくなるのは、年間被曝量が100ミリシーベルト以上の場合だけであると指摘して、繰り返し平静を保つように訴えた。

地裁は、放射線量が100ミリシーベルの目安に達していないとして、訴訟の申し立てを却下した。健康と放射線に関する学術機関、国際放射線防護委員会は、リスクは被曝量が下がるにつれて低減するというが、それ以下ではリスクがなくなるしきい値があるとは信じていない。

抗告は、1年以上もたった現在でも、近隣の宮城県の仙台高等裁判所で係争中である。
福島第1原発よりも大量の放射能を放出した1986年のチェルノブイリ事故のあと、福島第1原発の周辺、半径20キロメートル(12マイル)の立ち入り禁止区域よりも大きな、原発から半径30キロメートル(20マイル)以内にいる女性と子どもたちを避難させることを優先させた。

家族が自主的に県外に出たり、子どもたちの年齢が上がったりして、原訴訟の当事者である子どもたちの数は、抗告審で10人に減り、今では1人になっている。日本の高等学校は義務教育ではないので、法的に、地方自治体は中学校までの子どもの責任を負っている。

しかし、訴訟は他の福島の子供達の先例として役だっている。

弁護団の一人、柳原敏夫氏は、政府は子どもたちを救うことよりも人口流出を気にしているようだと批判する。「日本のような経済大国が、子どもたちを避難させようとしないのは理解できません。第2次世界大戦中のファッシスト政府でさえもしたことです」と柳原氏は、1940年代に空襲を避けるために子どもたちを集団疎開させた例を引いていう。「これは児童虐待です」

チェルノブイリ事故後、数千人もの子どもたちが甲状腺癌になった。その後の白血病、心不全、その他の病気が放射線に関連しているという医療専門家らもいる。福島では、原発事故との関連を示す証拠はないが、子どもたちにうち、少なくとも3人が甲状腺癌と診断された。日本の他の地域には、甲状腺癌に関して比較するためのデータがない。

訴訟にかかわる子どもたちとその家族は、排斥やいじめなどの反発から身を守るために匿名であり、彼らについての詳細は明かされていない。「どうして日本は、この福島はチェルノブイリの二の舞になろうとしているのだろうか?」と、子どもたちの一人の母親が裁判所に提出した陳述書にいう。「子どもたちを守ってやれるのは大人しかいないのではないか?」

裁判は、日本のメディアの注目を浴びる点では貧弱だが、反核抗議活動家たちの支持を集め、定期的に大規模な集会が開かれてきた。著名な支持者として、ミュージシャンの坂本龍一さん、漫画家のちばてつやさん、そしてアメリカの言語学者で政治活動家、ノーム・チョムスキー氏らが名を連なる。

「社会が道徳的に健全であるかどうかをはかる基準として、社会の最も弱い立場の人たちのことを社会がどう取り扱うかという基準に勝るものはなく、許し難い行為の犠牲者となっている子どもたち以上に傷つきやすい存在、大切な存在はありません」と、チョムスキー氏はメッセージに記した。

訴訟を申し立てながら、その後に土地を離れたひとり、12歳の女児は自分の不安を語ってくれた。
「わたしが注意深くしていても、癌にかかるかもしれないし、わたしが産む赤ちゃんに有害かもしれません」と、その子は手書き陳述書に認めた。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

日本の裁判所、子どもたちの避難申し立てを却下
Japan court rejects demand to evacuate children

Japan Nuclear Childrens 3歳の女の子の放射能測定

【資料】2011年4月16日付け資料写真。日本の北東部、福島の避難所の外で母親のナオコさんのそばに立ち、放射線被曝量検査を受けているネモト・ワカナちゃん(3歳)。日本の裁判所は、同国の2011年核惨事による放射性降下物によって汚染された(郡山)市に市内の子どもたちの避難求める申し立てを却下した。この異例の訴訟は、2011年6月、福島の子どもたちのために、両親らと反核アクティビストらが提起したもの。2013年4月24日、仙台高等裁判所はその決定を下した。(AP Photo/Hiro Komae, File)

影山優里 AP通信ビジネス記者/2013年4月25日

【東京―AP通信】日本の裁判所は、同国の2011年核惨事による放射性降下物によって汚染された(郡山)市に市内の子どもたちの避難求める申し立てを却下した。この異例の訴訟は、2011年6月、福島の子どもたちのために、両親らと反核アクティビストらが提起したもの。水曜日(2013年4月24日)、仙台高等裁判所はその決定を下した。

この訴訟は、継続的な低線量放射線被曝が健康におよぼす影響、とりわけ成人よりもずっと傷つきやすい子どもたちの場合の影響に触れるものなので、国際的な注目を惹きつけた。訴訟は、郡山市は小中学校に通う子どもたちを避難させる義務があり、これは日本の法令に定める義務教育の一環であると主張した。

裁判所は、市内の放射線量が災害以前に安全とされていたレベルを超えていると認定した。だが、政府は申し立てにある学校疎開の責任を負うものでないという――つまり、心配するなら、自己責任で去ればよいと人に諭したのである。

弁護団のひとり、柳原敏夫氏は、子どもたちが「核事故にまったく責任を負わない犠牲者」であるので、この裁決は不当であるという。下級審は原申立を2011年12月に却下していたが、この裁定に対して抗告がなされた。最新の裁決に対する抗告も可能である。

郡山は人口33万の都市であり、2年前の巨大津波によって冷却システムが破壊され、複数の炉心メルトダウンにいたった福島第1原子力発電所から約60キロメートル(40マイル)西に位置する。この事故は、チェルノブイリ以来で最悪の核惨事の引き金になった。

チェルノブイリ災害のあと、何千もの子どもたちが癌になったが、数年ものあいだ、その症例は明るみに出なかった。癌にはさまざまな原因があり、放射線の影響は人によりさまざまに異なるので、福島の子どもたちが同じように影響をこうむるか否か、はっきりしない。放射能汚染は複合的であり、空気だけでなく、食品、土壌、水を汚す。

一部の專門家らは、福島第1原発周辺の制限区域の外では放射線レベルが低く、癌になる確率は日本のどことも変わらないという。だが、多くの福島県住民が不安に思い、転出した。

政府のフクシマ災害対応策が、広範な一般人の不信を招いている。何千もの人びとが街頭に繰り出し、脱原発を要求している。政府は安全審査後に原子炉を再稼働したいと表明している。

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筆者、影山優理:ツイッターアカウント

菅原文太さん 脱原発を語る 「経済成長より大切なものがある」

「原発のために途方もないカネがばらまかれ、いやも応もなくからめ捕られてしまう。戦後、日本はカネばかり追い求めてきた。敗戦から立ち上がるにはそれしかなく、頑張ってきたのは確かだけど、あまりに偏りすぎたんじゃないのかな」

「財界人や政治家は『経済成長』とお題目のように言うが、それしかないのか、もっと大切なものがあるんじゃないのかと思う。国会中継を見ていても、とってつけたように復興の問題は出てくるが、増税がどうとかカネの話ばかりだ。そろそろ経済はいいじゃないか」

菅原文太さん脱原発を語る「危険な物はやめないと」

菅原文太さん 脱原発を語る「危険な物はやめないと」
(2011年11月21日 東京新聞)

「生活様式を変えなくても、みんなが使っていない電気を消すくらいで、原発がなくても十分やっていけるんじゃないの」。そう話すのは、俳優の菅原文太さん(78)だ。数々の映画やテレビドラマで確固たる地位を築いた“国民的俳優”は、山梨県で無農薬の有機農業にいそしむ毎日。南アルプスを望む豊かな自然のもとで、脱原発への率直な思いを語ってもらった。(鈴木泰彦)

「昔、仕事で福井県の敦賀に行ったとき、街並みが普通と違っていて驚いたことがあった。映画のセットは瓦も木も、妙に新しいだろ? そんな人工的な、ピカピカした街のように感じた。聞くと『原発の交付金で(さまざまな施設や道路が)つくられた』と。奇異な感じだったね」

代表を務める山梨県北杜市の農業生産法人「竜土自然農園おひさまの里」の事務所で、スタッフとの打ち合わせを終えたばかりの菅原さんは、首に手ぬぐいをまいたまま、ゆっくりと口を開いた。

「ずっと、原発には賛成でも反対でもなかった。どちらかというと無関心だった。原発から離れたところで暮らしているとね。でも福島の事故で変わった。やめたほうがいい、危険物は。科学によってつくられたものが無謬であるはずない」

「ドイツは政府が脱原発で、20年後にすべてなくそう、自然エネルギーに変えていこうと明言している。イタリアもそう。なのに(原発事故を起こした)日本はいまだにはっきりしない。専門家は人によって全く違うことを言い、メディアも分かったような分からないような報道しかしない。国民は誰の何を信じていいか分からない。何という国なんだろうな」

福島第一原発事故を機に、原発への世間の関心は飛躍的に高まった。6月には東日本大震災の被災地支援事業の発表会見で「日本でも原発の是非を問う国民投票を」と発言した。だが、芸能界では原発の賛否すら明らかにしない人が多い。

「何で言いづらいんだろう。みんな東電にお世話になっているの? そんなことないだろう。芸能人だろうが、政治家だろうが、農家だろうが、個人として言いたいことを言わなきゃ。憲法が定めてくれているじゃないか、言論の自由を」

「夏の節電時、街は薄暗くなったけれど、俺には心地よいくらいだった。24時間こうこうとってのは、まともじゃない。昼は明るく、夜は暗い。子どものころはそうだった。20年くらい前まで家にはコンピューターもなかったし、その前は冷蔵庫やテレビもなかった。でも、それなりに暮らしていただろ? 女房と飯を食いながら、ちょうどいいねなんて話してたんだ。あのまま節電を続ければいいのに」

農園では、若い従業員が数人住み込みで働く。つい最近、建物の屋根に太陽光発電用のソーラーパネルを設置した。

「使う分くらいの電気は賄えそうだ。黙ってあぐらをかいてりゃ電気が来ると思ってきたけれど、ミニ水力(発電)とか、いろいろ工夫する人が増えているみたいだな。一人一人がそういう新しい認識を持つようになったら、電力会社からもらう電気は少しで済む。日本中がそういう方向へ行けばいいね」

緑が深い東北 放射能に心痛む「経済成長より大切なものある」

これだけの惨事が起きてもなお、財界は原発推進の姿勢を堅持する。

「それは自分たちの都合だ。企業はいろんなモノを作り、それが山のように積まれている。でも、みな人間の暮らしを左右するほど重要なファクター(要因)なんだろうか。国民は何でも買いまくるのではなく、必要のないものは買わないようにすればいい。ないないづくしの時代まで戻る必要はないけれど、ちょうどいいところってあるはずだよな」

宮城県の実家は農家だった。山梨で農園を始めたのは、甲府市で開いた講演会で聴衆に「勤めばかりしないで農業をやれよ」と発言したのを聞き付けた山梨県知事から、「ではうちで農業をやってください」と頼まれたのが発端。2009年に北杜市で立ち上げた農園で、若者たちといっしょに無農薬のホウレンソウやトウガラシ、ミニトマト、ラディッシュなどを育て、都内のレストランやホテルなどに出荷している。今年は冷え込みが緩く、大根の出来があまりよくないそうだ。

「3年目だけど、赤字続きだ。面積は二町五反くらい(約2・5ヘクタール)あるのかな。農業は奥が深くて、果てしない。はっきりした方法があるようで、ないんだ。土も地域によって違うしね。まだ試行錯誤の最中だよ」

仙台市生まれで、宮城県栗原市で育った。有数の穀倉地帯で、原発事故で飛散した放射性セシウムで汚染された稲わらや肉牛が、そこから出回ったと報じられた。

「なぜ原発からあんなに遠い栗原で、と気になって聞いたら、風で運ばれたんだと。静岡あたりにも飛んでいるというじゃないか。農薬と同じで、放射能も体内に入らないに越したことはない。でも、そもそもわらを作った人のせいじゃないんだよね」

幼少時代から身近だった農業だけでなく、菅原さんが思いを向けるいろいろなところに、原発は深刻なダメージを与えた。主役の会津藩士を演じた1980年放送のNHK大河ドラマ「獅子の時代」ゆかりの福島を思い、心を痛める。昭和一桁世代。父親の威厳にこだわり、「げんこつおやじの会」を立ち上げたこともある。映画で演じた役柄さながら、硬派を貫いてきたその目に、今の日本はあまり良く映っていない。

「原発のために途方もないカネがばらまかれ、いやも応もなくからめ捕られてしまう。戦後、日本はカネばかり追い求めてきた。敗戦から立ち上がるにはそれしかなく、頑張ってきたのは確かだけど、あまりに偏りすぎたんじゃないのかな」

「財界人や政治家は『経済成長』とお題目のように言うが、それしかないのか、もっと大切なものがあるんじゃないのかと思う。国会中継を見ていても、とってつけたように復興の問題は出てくるが、増税がどうとかカネの話ばかりだ。そろそろ経済はいいじゃないか」

「この間、中国の人権活動家が『日本も人権問題で発言を』と求めたという記事を読んで、ああそうだな、と。人権とか自由とか、本当の意味の民主主義とは何なのか、言い合ったり考えたりしないよね。ここらで立ち止まって、暮らしとか自由とか権利とか、そういうところへ立ち返らないといけないね」

<デスクメモ> 経済成長を最優先して弱者を切り捨てる政策は、小泉政権の十八番だったが、いまや野田政権も同じ道を進んでいる。政治の目標は成長ではない。弱者に手を差し伸べ、格差を是正し、国民が誇りを持てる国にすることではないのか。菅原さんの素朴な問い掛けに、国の姿勢や自分の生き方を考える。(立)

<すがわら・ぶんた> 1933年8月、宮城県生まれ。58年、新東宝入社。松竹、東映などで多数の映画に出演し、シリーズ化された「仁義なき戦い」「トラック野郎」は大ヒットした。山梨県北杜市で遊休農地を借りて農業生産法人を設立、有機農業に取り組む。都会から農山漁村への移住を手伝うNPO法人「ふるさと回帰支援センター」顧問も務める。

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