地球を残しておいてください
Severn Cullis-Suzuki(セヴァン・カリス=スズキ)

1992年のリオ・サミットから翌年、1993年4月24日に開催されたグローバルフォーラムの閉会で、当時13歳のセヴァンが行ったスピーチです。

 お話しさせていただくこと、とても光栄です。
 こんなことを言うのを許していただきたいのですが、グローバルフォーラムを聞いて物足りなく感じました。「価値の転換はどうすればいいか」と一生懸命に議論している大人の人を見ていると、難しいことを考えすぎて、簡単なことを忘れてしまっているように思うのです。  私たち子どもは自然と親密な関係を失っていません。
 オタマジャクシや花や昆虫などを愛しています。
 そして人間が自然の一部であることも知っています。 価値の転換の秘密は、子どもの頃を思い出すことです。自然の中で遊んだこと、それがどんなに素敵だったか、それがどんなに大切だったか、大人が何でも解決してくれると信じていたこと、なにが正しく何が間違っていたかを知っていたことを思い出してください。本当に大切なことは、純白で偽りのないことです。
 あなた方の中の子どもの心は、一番大切な価値や本質を知っています。
 それなのにあなた方の興味は株や出世やお金儲けのことばかりです。
 いくらお金があっても自然が無ければ生きては行けません。
 あなた方は「子どものとき自然はいつもそばにあった」という思い出を持つ最後の世代になってしまうのではないでしょうか。
 私は21世紀に21歳になります。
 あなた方の残した地球で生きることになるのです。
 私たちが生きることのできる地球を残すためには、大きな改革を急いで実行する必要があります。本当にそれをしてもらえるでしょうか。
 もしあなた方がやらなければ、一体誰がするのでしょうか。
 ソマリアやバングラディッシュでは子どもたちが飢えで苦しんでいます。
 でも豊かな国の政府は、分け与えることをしたくないようです。
 貧困や公害をなくすことの出来るお金より沢山のお金が、破壊や戦争のために使われていることが不思議でなりません。
 私は子ども環境機構(eco)で環境保護の活動をしていますが、いつも「経済が優先」という論争に巻き込まれます。
 でもきれいな空気、水、土がなければどうやって生きて行けるでしょう。

 私の友達の両親はタバコを吸います。そして「タバコを吸ったら駄目よ」と言います。でも、きっとその子はタバコを吸うと思います。
 子どもにとって大人はモデルなのです。どうして違う行動がとれるでしょうか。
 あなた方はいつも言っています。「けんかをしてはいけない。生き物を傷つけては行けない。欲張ってはいけない。分け合いなさい」と。
 でもどうして、あなた方はいけないことばかりしているのですか。
 私の両親は環境保護の活動をしています。私はそれを誇りに思っています。
 将来を失うことはとても恐ろしいことです。お金が無くなったり株が下がったりすることは比較になりません。
 私は沢山の動物、鳥や昆虫を見ることが出来ましたが、果たして私の子どもはそれらを見ることが出来るでしょうか。
 あなた方は子どもの時、こんな恐ろしい心配をしたことがありましたか。
 全てはあなた方の時代から始まっています。
 そして「まだ大丈夫、まだ時間がある」ように振る舞っています。
 でもオゾンホールの修復の仕方を知っていますか。
 死んでしまった川に鮭を呼び戻すことが出来ますか。
 絶滅した動物たちを生き返らせることが出来ますか。
 砂漠になってしまった森を元に戻すことが出来ますか。
 それが出来ないのならせめてこれ以上、地球を壊すのをやめてください。
 ブラジル地球サミットのとき、リオで道に住んでいる子ども(ストリートチルドレン)を見てショックを受けました。
 その一人が私に「もし僕が金持ちだったら、みんなに食べ物や服や小屋をあげるのに・・・」と言いました。何でも持っているあなたがたはなぜあげないのですか。なぜもっと欲しがるのですか。
 この会議で聞いたことは去年リオ(地球サミット)でも聞きましたが、事態はさらにひどくなったように思います。
 会議で決めたことが実行されるのはいつですか。心配でたまりません。
 あなた方は私たちのモデルです。私たちはあなた方のようになろうとしているのです。どうかお手本を見せてください。どうぞ勇気を失わないでください。
 「正しいと信じることをしなさい」といつも言うでしょう。
 どうして、そうしてくれないのですか。もう時間は残されていないのでしょう。
 世界中の子どもたち、未来の生命を代表して尋ねます。
 「あなた方は何を私たちに残してくれるのですか」
 「あなた方は何を待っているのですか」
ありがとうございました。