非電化運動ネットワーク事務局のご紹介

 現在、世界中で脱原発や地球温暖化対策のために再生可能エネルギーや燃料電池の開発が進められていますが、非電化ネットワーク事務局が提案するのは、原子力や石油に代わるエネルギーを見つけるだけではなく、電気自体をなるべく消費しないようにするために「電化製品を減らしていこう」という運動です。それは「非電化製品」を増やしていくことでもあります。
 「非電化」という言葉は、「環境発明家」藤村靖之さんの造語です。息子さんを突然襲ったアレルギーをキッカケにして、環境問題に取り組んできた藤村さんは、環境問題を引き起こしている大きな原因は、化学物質とエネルギーの使いすぎだと考え、それらを使用しない「非電化製品」の研究開発に取り組んできました。電=エネルギー、化=化学物質、これらを使わない製品という意味です。現在、既に電気を使わない掃除機、洗濯機、除湿器、冷蔵庫、エアコンなどを考案されています。
 しかし、藤村さんは「日本では普及しない」と考えていました。なぜなら、今の電化製品より少し不便になるため「便利さに慣れた日本人には受け入れられないだろう」というわけです。もともと非電化製品を発明した理由は、途上国がこれ以上、工業先進国の後追いをして電化製品を使い始めたら地球がもたないと考え、途上国向けに発明されたそうです。しかし、私たちはこの話を聞いて「いや、藤村さん、非電化製品はエネルギーを多量に消費している先進国にこそ必要だし、少々不便でも電気の消費量を減らしたい人は多いので、日本でも普及する可能性があると思います。私たちはチェルノブイリ支援や脱原発、再生可能エネルギーの普及、地球温暖化防止などの市民運動に関わる中で、エネルギーの消費を減らしていくことの重要性を感じている人が増えていることを実感しています。ぜひ日本でも、非電化運動を進めましょう」と提案しました。そして、藤村さんと一緒にNGOや消費者団体に非電化運動の話をし始めました。
 一般に、電化製品などの工業製品は大企業でなければ作れないと考えられてきました。確かに、資金面でも、製造、販売面でも、今まで通りのやり方では難しいでしょう。そこで、私たちが考えたのが、有機農業を生産者と消費者が提携して育ててきたように「有機工業」を生産者(発明家)と消費者が提携して育てられないか、ということです。
 25年以上も前に、農薬の問題に気づいた一握りの生産者と消費者とが手を結び、手探りで育ててきた有機農産物の産直運動が、現在、農業全体を無農薬栽培や減農薬栽培に向かわせつつあるのと同じことをエネルギーの問題でも展開できないでしょうか。つまり、生産者(発明家)と消費者とが手を結んで賛同者を募り、一緒に非電化製品を作っていく運動です。こうなると消費者は「ただ、消費するだけの人」ではなくなり、生産者側にも立つことになります。
 問題は、非電化製品を製造するための資金ですが、工業製品は生産する数が多くなるほど、1台あたりの生産コストが安くなります。一方、たくさん作るためには、多額の資金が必要になります。そのことがネックで、これまで工業製品は、大企業にしか作れないと思われてきました。しかし、生産者と消費者とが手を結ぶ「有機工業運動」=「非電化製品の共同生産、共同購入運動」なら、その壁を突き崩すことが可能 です。例えば、非電化製品の除湿器なら1000人、洗濯機で3000人、エアコンでも1万人程度の購入希望者がいれば、手頃な価格で商品化できます。それ以上に購入者が増えるほど製造コストが安くなります。

詳しくは、「マスコミ市民」掲載「ナマケモノ流・脱原発と非電化運動」
http://www.sloth.gr.jp/Hidenka.htm

非電化(有機工業)運動を始めた理由 その1

原発と環境問題

原発の大事故と放射能

 現在世界で430基、日本では53基の原発が稼動し、日々発電しています。しかし環境問題の視点から考えると、原発は大変なリスクを持つ発電方法です。
 原発は核分裂エネルギーを利用して電気を起こす機械ですが、大変厄介なことに、核分裂のとき熱エネルギーと同時に大量の核分裂生成物(いわゆる死の灰・放射能)をも生み出してしまいます。その量は一基の原発が一年間で、広島原爆が生んだ死の灰の1000発分にもなります。この膨大な放射能の内ごく少量は日常的に環境に放出していますし、一旦大事故になれば炉心に抱えた大量の放射能を環境に出してしまう可能性があります。
 その大事故が現実に起きてしまったのが、スリーマイルでありチェルノブイリでした。特にチェルノブイリ事故では、広島原爆800発分にも相当する大量の放射能が環境にばら撒かれ、半径600キロにも及ぶ広大な土地(日本では本州の60%に相当)が高濃度の汚染地となってしまいました。そこに暮らしていた500万人以上もの人々の内、激甚汚染地となった土地に住む40万人は移住するしかなく、長年住み慣れた土地を断腸の思いで離れました。しかしそれ以外の人々は、今も日々被爆しながらの生活を余儀なくされています。もし日本で起きたときには、移住する土地はどこにもないことをしっかり認識しておく必要があるでしょう。
 放射能に被爆し続けた人々の間で、様々な病気が出てきています。子どもに多発している甲状腺ガンをはじめとする多くのガン・胃潰瘍などなど深刻な病気にみまわれ、事故が起きるまでは自然と共生し平和に暮らしていた人々の生活が、事故の瞬間に根底から奪われてしまいました。

世界の流れと日本

 この二度の大事故を経て世界の原発の流れは大きく変わりました。現在では環境問題を重要視するヨーロッパを中心とした先進的な国々は、既にはっきりと原発からの撤退を始めています。しかし残念ながら日本では、地球温暖化が大きな環境問題になったいま、原発はクリーンであるという偽りの宣伝を繰り返しながら今後も原発を発電の主流に置き続けようとしています。
 確かに原発は発電の現場でCO2は出しませんが、燃料であるウランの採掘にはじまり、発電に至るまでの経過で実に多くのCO2を出しています。その上膨大な放射能を作り続けながらでしか発電できない原発がクリーンだなど、到底言えるものではありません。
 日本が未だに原発推進の方向を変えられずにいる裏には様々な要因があるようですが、私たちが原発を認めるのであれば、万一の大事故時に生活環境が放射能まみれになることは、当然のこととして覚悟しておく必要があるでしょう。

消えない放射性廃棄物

 その上、幸いに巨大事故は起きなかったとしても、原発は重大な環境問題を抱えています。核分裂生成物(高レベル放射性廃棄物)のことです。
 日本中で溜まり続ける高レベル放射性廃棄物はすでに膨大な量になってきています。
 一旦作ってしまった放射能は人間の手で無毒化することはできません。環境に漏れ出さないよう注意しながら、長い時間、監視し続ける以外に手はないのです。
 高レベル放射性廃棄物(使用済み燃料orそこから取り出した死の灰)には寿命の長いものが含まれており、百万年にもわたって熱と放射線を出し続け、生命体を傷つけ続けます。この放射能をどのようにするかが原子力に手を染めた世界の悩みの種でした。宇宙に棄てる、南極の氷の下に棄てる、深海に棄てる等々、様々な方法が検討された結果、現在は地下深くの岩盤の中に埋め棄てにする方法に絞り込まれてきました。 日本でもこれまで、廃棄物問題を棚上げにしたまま原発を作り続けて来ました。原発が「トイレのないマンション」と呼ばれてきた所以です。その結果すでに膨大な放射能が溜まってきており、いよいよ切羽詰った状況を迎えています。そこで国も、地下の深所に埋め棄てにする方法を法制化して動き始めました。しかし地震多発地帯に位置する日本のどこにも、百万年にもわたって安定した場所などあるはずもなく、いずれは地下水に溶け出し、巡り巡って人間の生活環境に漏れ出してくることは避けられないでしょう。
 たかだか50年か100年間、人類の「豊かな」生活を支えるために利用してきた原発のツケ(負の遺産)を、何の利益も受けることのない未来の子孫に負わせることになるのです。そのようなことが許されるはずがありません。いま大切なことは、私たちの生活を見直しできる限りの省エネ・シンプルライフを進めることです。それとともに、社会のシステムを根本から見なおして無駄なエネルギー使用は避け、最小限のエネルギーを効率的に使う社会システムを築きあげることが必要です。
 風力、太陽光、燃料電池などの、ソフトエネルギーによる環境を壊さない発電法を最大限とり入れながら、大量のエネルギーを使わずにすむ社会を作り出すことが、いま緊急に求められています。
(事務局 河野近子)

非電化(有機工業)運動を始めた理由 その2

2002年、たんぽぽ発電所 第二回総会資料 より抜粋)

原発の廃棄物管理と金利の問題 (立命館大学 平井孝治)

 電力会社が廃棄物を管理するその前提にしていたのが、電力料金を算定するときのレートという、金利です。電気料金というのは、費用だけでなく、いわゆる適正原価といってますけど、その費用に事業者としての報酬を積み上げます。その積み上げる金利が、レートベース試算といわれるものに当時8%を掛けていた。これがずっと続いてきたわけです。それを前提に放射性廃棄物の管理の原資を作っていくとしていた。これが現在成り立たない事態になってきている。
 例えば企業年金。自分たちの将来の年金を企業と一緒になって貯蓄しておこう、退職するときには何倍かになって返ってくる。ところが今日、企業年金という考え方は成り立たなくなりました。
 その原因はどこで運用しても8%なんていう金利は到底あり得ない。非常にいいところで、せいぜい2%。
 これが原子力の場合は決定的に響いてきます。
 何万年という管理が必要な放射性廃棄物の管理。1980年ごろ、推進派の人たちとこのサイクルコストの論争をある雑誌でやったことがある。反対派からは現在同志社大学の室田さんと私でした。
 そのとき、サイクルコストが大ざっぱに言えばkW当り1円、今もあまり変わっていません。計算によれば、そういうことでした。当然これには放射能の量に応じた長期にわたる管理費が発生する。ここで金利がどういうことになるか、中間貯蔵も30年から50年管理しないといけないことがわかる。
 そうするとどう少なく見積もっても100年は管理しなければならないことがわかる。だいたい1000年のオーダーですけど、最低でも100年。
 今、仮に100年ということで計算してみましょう。そうすると1円のものを今積み立てて、何も手をつけずに複利で運用していったら、8%の場合は、1.08の100乗しますと、1円のものが2200円になります。これが長期にわたって管理できる経済的な根拠だったわけです。ところが現在は2%にもならないんですけど、仮に2%とします。金利が2%ですから元金を1としまして100年間、1.02の100乗で7.24円にしかならない。  つまり金利でみれば8%と2%、わずか4分の1になっただけですけど、100年経てば複利計算すれば、ざっと300倍。
 つまり、こういうことなんです。100年先に2200円必要だから1円積み立てておきましょうと積み立ててきた。ところが、今や2%の金利しかない。100年後でも7円にしかならない。いままで原子力発電をやっていて、積立金が1円でいいと思っていた。しかし、その積み上げを300円にしないと理屈は成立しない。
 今、1kw=23円くらいですが、そのうちの1円を積み立ててきたわけですね。原発だけでやると、さらに300円をたさなければならない。実際には原発だけでやっているわけじゃないので、ざっとみても10倍くらいの電気料金を徴収しないと核廃棄物の管理費は出てこないということになる。

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