日本グルントヴィ協会のご紹介

協会幹事 清水 満

日本グルントヴィ協会(Grundtvig Society Japan for Folkehojskole Movements)について

 グルントヴィ協会はデンマークに始まる成人教育・社会教育の学校「フォルケホイスコーレ」のスタイルにヒントを得て、市民運動的な教育社会運動をする小さな団体です。フォルケホイスコーレとは「民衆の学校」といった意味です。全国に130名ほど会員がいて、ゆるやかなネットワークを形成しています。協会自体が何かをするというよりも、会員のみなさんがそれぞれ独自の活動を地域で行っており、それらの情報交換の場になっています。
 協会自体の活動としては年に数回のセミナーや会合を各地で開いています。メインの会合では必ず宿泊して寝食をともにし、生きた言葉を語り合うというスタイルをとります。というのもデンマークのフォルケホイスコーレがそうした全寮制の学校であり、人々は数ヶ月間生活を共にしながら、さまざまなことを学び、連帯や友愛をつくり上げていくものだからです。
 70年代の自主講座運動にも似てはいますが、大きな違いは「生を楽しむ」こと、相互感受的な身体の交流を大事にすることです。目的に向かってしゃにむに勉強や活動をするのではなく、対話し交流し学びあうことで生きる喜びや楽しさ、モチベーションの向上をはかり、表現豊かな自己に気づくことができるのが協会の活動といえます。
 グルントヴィというのはこの学校のアイディアを考えた人の名前で、デンマークでは最も重要な人物です。協会が彼の名前をつけているのは、別にこうした人物を顕彰するという意味合いではありません。グルントヴィという名前は、世界的には、ブラジルのパウロ・フレイレ、アメリカのエデュワード・リンデマン、マイルズ・ホートンなどと並んで、民衆の解放教育の志向をもつものと理解されており、彼の名前をつけておれば、行政が上から進める社会教育ではないことがすぐにわかるからです(ちなみにリンデマンとマイルズ・ホートンは日本ではあまり有名ではありませんが、リンデマンはアメリカの社会教育の父と呼ばれる人で、今日のコミニティ・カレッジにつながるようなアメリカの社会教育を基礎づけた人です。マイルズ・ホートンはハイランダー・フォークスクールをつくり60年代の公民権運動のリーダーになった一人です。有名な「We shall overcome」という歌は、それはこのハイランダー・フォークスクールでつくられ、広まったものです。二人ともデンマークのフォルケホイスコーレ運動からこうした解放教育のヒントを得た人です)。
 デンマークは世界で唯一ともいえる民衆の解放運動によって民主的な国になりました。特色としておもしろいのは、農民解放運動、協同組合運動、科学主義に対抗するロマン主義、教育と芸術と身体文化の合流によってそれを可能にしたことです。フォルケホイスコーレはその中心部隊となりましたが、講義と歌(ダンス)とデンマーク体操が民衆の武器になりました。その伝統は70年代終わりから80年代にかけて風力発電運動を民衆レベルで手づくりで進め、国民運動にし、その結果原子力発電を政府に断念させ、また二酸化炭素削減や環境政策では世界の最先端を走っていることにもあらわれています。
 協会の方針はデンマークと同じく「多元的」な「脱中心」「地域分散化」の社会を求めることで、そのことはとりもなおさず、身の回りの友人と環境、地域を考えることを意味します。協会自体が環境保護運動をしているわけではありませんが、セミナーでは風力発電や環境問題などをテーマにすることもあり、環境は重要な柱に一つにもなっています。また会員には環境問題を専門にする者もいて、各自の現場で地道な活動を続けています。


詳しくは、清水 満『生のための学校』(新評論)、もしくは以下の協会のホームページをご覧ください。
日本グルントヴィ協会
http://www.asahi-net.or.jp/~pv8m-smz/index.html