2009/07/16

コーヒーの歴史 1

今では世界中で飲まれているコーヒーですが、もともとはアフリカ大陸のエチ
オピアの高原で自生していた作物でした。

コーヒーの記載が初めて文献に登場するのは、10世紀初頭(900年頃)のこと。
アラビア人医師、ラーゼスが記した書には、「バンカム(コーヒーのこと)
は熱く口当たりよき飲み物なりて、胃にもきわめてよし」とあり、当時のアラ
ビアでは薬用として使われていたことがわかっています。

13世紀に入ると、コーヒー発見の伝説がいくつか残されています。

◆眠らない修道院
エチオピアのカルディというヤギ飼いが、ある日自分が世話をするヤギがあ
る赤い実を食べると、騒がしく 興奮状態になることに気づきました。
近くの修道院の院長にこの話を伝え、茹でて飲んでみることにしました。する
と気分が非常に爽快になったので、夜の儀式中に居眠りをする修道僧たちに飲
ませてたところ、弟子たちは居眠りもせずに勤行に励むことができました。
やがて「眠らない修道院」の噂は国中に広まり、魔法の木の実が競って求めら
れるようになったそうです。

◆オマールの伝説
イスラム教の高僧の若い弟子オマールは、王女に恋をしてしまっため、モカの
地から追放されてしまいます。
山中を空腹で歩いていると、小鳥がついばんでいた赤い実に気づき、その実で
スープを作って飲みました。するととても元気が出たそうです。その後スープ
の効用で病人を救った彼は、許しを得ることができ、コーヒーを発見した聖者
として崇拝されるようになったそうです。

このように、薬用植物として注目されたコーヒーですが、特にアラビアではイ
スラム寺院の中で心身に爽快感を与える特別な飲み物として大切にされ、14世
紀頃からは、アラビア人によってトルコ・エジプト・イラクなどにもコーヒー
を飲む習慣が伝わっていきます。

2007/04/24

トセパン協同組合の歩み 第1話 ケツァールの地〜トセパンが活動する地域

1話 ケツァールの地〜トセパンが活動する地域

フェアトレード&オーガニック、そして森林農法のコーヒーを育むトセパン協同組合は、メキシコ・プエブラ州の北東部、クエツァラン市に拠点を置きます。山岳地帯の先住民ナワット族を主な構成員とする農業を軸にした生産者組合です。一帯に広がる山深い地域は、首都のメキシコシティーからバスに揺られて6時間の距離にあります。最初にこの地域のことを簡単に紹介していきましょう。

メキシコとプエブラ州の拡大地図

メキシコとプエブラ州の拡大地図


黄色の部分が、トセパン協同組合の活動地域です

 クエツァランという町の名前は、鳥の名であるケツァールに由来します。先住民の言葉、ナワット語が語源で、「美しいケツァール鳥と共に」という願いが込められます。

第1章1

古代文明が栄えていた頃は、ケツァールの羽は王に捧げられる程に貴重で、価値あるものであったとされます。しかし、残念ながら現在は、この地域でケツァールの舞う姿は見られません。
 
 農山村での人々の暮らしは楽ではありませんでした。山々が連なり、渓谷が入り組むため道は悪く、かつては移動すら困難を極めました。最低限の食糧確保のみならず、収穫物を運び出すのも容易ではありません。さらに、山岳地帯は湿度が高く、夏期には豪雨が襲い、冬期は濃霧に包まれる自然の厳しい環境にあります。

第1章2


 切り立った地形が多いため、それぞれの耕作地は小さいのが特徴です。土壌はこの上なく肥沃で、水はふんだんにあります。とうもろこし、豆類、カボチャ、とうがらし等が栽培され、蒸留酒の原料となるサトウキビも栽培されます。トウモロコシの収穫量は1ヘクタールあたり1トン以下で、トウモロコシ畑と野菜畑からの収穫だけでは、年間の食糧を賄うことはできません。そのため、トウモロコシをはじめとする食糧を、地域外から調達することもあります。

第1章3

かつて、この地域での商業作物といえば綿とサトウキビでした。その畑は大土地所有者が管理をしており、先住民たちは小作農的に働いてきました。土地の所有者は牧畜にも従事していました。20世紀中頃から商業作物としてのコーヒー栽培が広まり、20年前には自生していたスパイス類の栽培が始まりました。少量ながらも、オレンジやバニラなど、国内市場で販売される作物も栽培されてきました。

山の斜面を耕す農民はとても貧しく、厳しい暮らしに甘んじて来ました。わずかな土地で収穫された作物は、大地主などの裕福な人々に安く買い叩かれ、さらには、生活必需品を高く売り付けられていたのです。

こういった農村地域では、コーヒー畑のみを規模拡大してきたことも問題になっています。コーヒー栽培は困難の連続でした。寒さに弱いコーヒーが霜などの害で壊滅する年もあれば、コーヒー豆の取引がマネーゲームに巻き込まれ、1989年には価格が大暴落することもありました。

第1章4
森の中で育つコーヒー(赤いのが実)

こういった厳しい自然環境と社会の状況が背景にあり、山岳地帯の農民たちは自分たちの暮らしと尊厳を守るために組織を作る必要に迫られたのです。なぜなら、団結のみが問題を解決する手段であり、互いに助け合い、前へと進む必要があったからです。

2005/11/19

メキシココーヒー物語 第5話 持続可能な社会への道 トセパン・ティタタニスケ協同組合

メキシコの先住民族たちや生産者たちは、団結すること、組織化することで、不平等・不公正なグローバリゼーションに対して闘い続けてきた。その中で も、ナワット族の有機コーヒー生産者組合「トセパン・ティタタニスケ協同組合」の活動はモデルケースだと言われ、非常に多様で持続可能な活動を行ってい る。

組合のベースにあるのは、ナワット族の考え方、そして文化的背景であり、そこでは常に自然への敬意が払われている。彼らはいつも「母なる大地は、自分たちのプロジェクトの中心である」と表現する。

トセパン組合は、プエブラ州の山岳地方にあるケツァーランという町を拠点としている。組合員数は5,300世帯。ケツァーランを中心に7つの地域66の コミュニティに暮らす。一般的に、コーヒー栽培に適している標高は600?1200メートルだと言われているが、彼らが暮らす地域は、標高200?900 メートルに及ぶ。このうち、コーヒー生産を営む組合員は、標高400?900メートル内に暮らしており、標高200?400メートルではコショウを、 200メートル以下ではトウモロコシやサトウキビを生産する組合員たちが暮らしている。

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組合の本部があるケツァーランの町

トセパン組合がスタートしたのは1977年。食料や生活必需品が不足していたという現状と、コーヒー販売において高い仲介料を取る仲介業者に対抗し、自 分たちの暮らしを守り続けていこうと始めた組合運動が最初だった。これをベースとして1980年、正式にトセパン組合が設立された。環境や社会状況を悪化 させるグローバル化が進む中、自給的な作物と商品作物を栽培することで、安定した経営を目指してきた。

現在トセパンが生産し、販売している作物は、有機コーヒー、オールスパイス(香辛料)、マカダミアナッツ、シナモン、はちみつ、である。この他、コー ヒーの豆を加工する段階で出るコーヒー豆の果肉や皮を利用して堆肥をつくったり、機械用のアルコールを精製したり、資源を捨てることなく循環させて、さま ざまな活動を行っている。また、女性の自立を目指した活動も多く行われている。パン屋、トルティーヤ(とうもろこしからつくる主食)製造、日用品販売、手 工芸品製作と販売などがそれである。この他、近年、図書館、研修施設、パソコンルーム、宿泊施設を含む環境教育センター「カルタイクスペタニロヤン」を設 立。子どもから大人に至るまで、組合全体での環境教育に力を入れている。

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環境教育センター ”カルタイクスペタニロヤン”

各生産活動にはプロジェクトリーダーがそれぞれおり、グループごとのミーティングから始まり、全体総会も定期的に行われ、メンバーたちの意見や知識をシェアする場がきちんとつくられている。

トセパン組合のリーダーは、4年を任期とし、民主主義によって選ばれる。まず、66のコミュニティそれぞれから代表者が選ばれ、この66人の代表者会議 によって組合の代表者が選ばれている。組合の代表に選ばれる者には、ナワット語が話せること、知識と経験が豊富なこと、そして組合員の尊敬を得られるこ と、という3つの条件を満たすことが必要とされている。こうして選ばれたリーダーのもと、多様なプロジェクトが行われるのである。

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組合内での代表者会議

しかし、これだけ多様な活動を行っていくには、資金が必要となる。トセパンの人たちは、資金も外部に頼らず、組合内の活動に必要な予算や、組合員それぞ れが生産のために必要とする資金については、組合内に設けた自らの金融機関「トセパン・トミン」(ナワット語で、「お金はみんなのもの」を意味する)でま かなっている。お互いの信頼関係で成り立っているこの機関では、組合員は担保なしでお金を借りることができるが、だからと言って、ローンの返済が滞ったと いう事例はこれまで一つもない。


トセパントミン

トセパントミンの集会.jpg
トセパントミンの報告集会

トセパン組合の活動が素晴らしいのは、環境や組合員一人一人に配慮した持続的な活動を行っているというのはもちろん、ナワット族の文化や伝統を守りなが ら、それを活動の中にしっかりと反映させているというところにある。このように、地域の環境や自らの文化を守りながら、独自の活動に取り組むトパンは、メ キシコ政府から「環境賞」や「フォーレスト賞」などを受賞し、高い評価を得るに至っている。

2005/11/12

メキシココーヒー物語 第4話 グローバリゼーションと闘う メキシコの現状とフェアトレード

熱帯地方に位置する多くのコーヒー生産国は、途上国と呼ばれる国々である。コーヒーはここ10年間、一般市場価格においては下落傾向が見られてい る。こうした経済危機の中、森林は伐採され、若者たちは仕事を失って都市部などに働きに出、村々には、年老いた人たちのみが暮らし続けるという厳しい状況 が強いられている。この経済的な危機は、メキシコを始めとするコーヒーの生産国に対して大きな影響を与えている。


荒れていく農地

一方で、消費者の方を見てみると、数で言えば、この地球上の人口の約40%の人がコーヒーを消費すると考えられている。その中でも、より多くのコーヒー を消費しているのがヨーロッパ、そしてアメリカである。しかし残念なことに、このコーヒーの約80%がアメリカやヨーロッパの企業によって流通させられて いて、約8つの企業の手によって支配されている、つまり、価格がコントロールされている。一般的に市場では、需要と供給によって価格は上下しているが、大 企業が自由市場という中で自由に振る舞い、在庫の管理、流通の量などを調整して価格を管理しているというのが現状となっている。

他のラテンアメリカ諸国と同じように、メキシコでもこの30年間、経済のグローバル化という現象が進んできた。自由市場が経済の中に持ち込まれると、北と南の間で競争をしなくてはならなくなる。しかし、これは、非常に不平等な市場での競争になってくる。

メキシコは、アメリカやカナダと自由貿易協定を結んだために、国家が、農民たちに自由に補助金などを提供することができなくなってきている。一方で、北の国々というのは、自由に補助金を出しているという非常に不公平で不平等な状況が展開されているのである。

こうした状況の中、メキシコでは、1994年に、サパティスタ解放戦線というゲリラ活動の蜂起があった。これは、自由主義が北から持ち込まれることに対 しての抵抗活動と考えられている。一方で、この厳しい現状を前にして、生産者たちで組織作りを行っていこうという動きが出始め、その中で、北とは直接競争 できない分野で競争していこうという流れになっている。

その一つの例が、メキシコ・プエブラ州にあるトセパン・ティタタニスケ協同組合である。実際、トセパンに限らず、生産者組織は北の国々からの多くの助け を得て、商品をフェアトレード市場で販売し、利益をあげるようになってきている。このようなかたちで北との連携を築くことで、持続可能な生産というのを南 北で築いていこうという動きが生まれているのである。

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サパティスタ民族解放戦線

メキシコは、有機栽培のコーヒーにおいては世界第一位の生産量を誇る国であり、生産者組織の数も一番多いと言われている。フェアトレードのように、一般 の市場とは異なる市場の中で、生産者が認証を得えようとする動きがある。それは、「木陰で生まれたコーヒー」、「鳥類にやさしいコーヒー」といったように さまざまである。そして、最終的には「持続可能なコーヒー」という名がつけられ、広まっていくことになる。認証印というのは環境、または生産を助長するだ けではなく、フェアトレードの市場にくい込むためにも役立っている。そして消費国である日本は、フェアトレードのコーヒーを選ぶことで、メキシコを始めと する第三世界の小さな生産者組織の闘いを支えることにつながるのである。

※サパティスタ民族解放戦線:メキシコ南部に位置するチアパス州において活動する先住民の武装組織。北米自由貿易協定(NAFTA)が発行した1994年にチアパス州にて蜂起。

2005/11/10

メキシココーヒー物語 第3話 メキシコと日本をつなぐ パトリシア・モゲル

コーヒーの国際市場価格の暴落、大企業によるコーヒー豆の買いたたき、開発による森林破壊など、コーヒー生産国、そして生産者たちを取り巻く現実は厳しい。コーヒー生産量世界第5位、そして有機コーヒーの生産量では世界第1位を誇るメキシコでも、その現実は同様だ。そん中、メキシコで昔から行われてきた森と共生しながらコーヒーを栽培するアグロフォレストリーを守り、「協力」と「分かち合い」という意識を持って、この困難に立ち向かう生産者たちがいる。そして、そこにはいつも、彼らとともに闘う一人の女性パトリシア・モゲルの姿がある。

パトリシア・モグエル
  パトリシア・モゲル

生物学者である彼女は、メキシコのラテンアメリカン大学の教授として、多様な作物や果樹と共にコーヒーを育てるアグロフォレストリーが、生態系に与える恩恵や影響について研究している。メキシコのアグロフォレストリー研究の第一人者だ。また、地元の町では、女性たちによる環境活動グループのリーダーも務め、積極的に環境保護活動にも取り組んでいる。常に弱い立場の人たちの側に立ち、環境問題や社会問題に取り組んできた。

伝統的な有機コーヒー栽培、アグロフォレストリーでは、自然や生態系を保護しながらコーヒーを生産する。しかし、何の考慮もない安い価格でしか生産物を取引できない以上、収入を得るためには、こうした伝統を捨てざるを得なくなる。メキシコの先住民たちは、昔から受け継がれてきた「協力」「分かち合い」 という素晴らしい姿勢をもって、こうした状況を乗り切ろうとしている。そんな生産者らの現状や切なる訴えを、パトリシアは、まるで自分自身のことであるかのように強く訴える。それはパトリシアが、不公平な状況にある生産者の立場に自分を置き換えて、考え、感じることが出来る人だからなのだろう。こうした貧困や差別に対する彼女の問題意識や行動力は、一体どこから生まれてきているのだろうか。

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  説明するパトリシア

彼女は言う。「私の人生に一番大きな影響を与えたのは、弁護士だった父親です」 と。彼女の父親は、公平な世の中の実現へ向けて、常に高い意識を持っていた人だった。弁護料を払えないような貧しい人たちの依頼をすすんで引き受け、彼らのために無償で闘っていたという。パトリシアは、この父から「貧しい人たちのために闘うこと、分かち合うという精神を持つこと、そして社会に矛盾や疑問を感じたら、それをはっきりと訴え、行動することが大切」ということを教わった。この父親からの教えは、パトリシアにとってかけがえのない宝物であり、彼女の大きな原動力になっている。

そしてもうひとつ、彼女の生き方に大きな影響を与えたことがある。それは、イスラエルのキブツ(イスラエルで発達した世界的に有名な共同体社会)での生活だ。キブツの哲学は、「社会的平等を得て幸せになるためには、皆が協力しあって懸命に働かなくてはならない」、「皆が平等の権利を持つべきである」というもので、これは、彼女自身が成長する上で学んできた考え方ととても良く似ていた。大学進学を目の前にした多感な時期に半年ほどキブツで生活し、農業を始め、さまざまな仕事を体験した彼女は、さらに半年、イスラエル国内を旅して多くの人と出会い、その生活、農業、自然を見て回った。こうした経験を通し、パトリシアは、社会問題に対してさらに強い意識を持つとともに、農業、環境、生物や生態系といったことにも興味を抱くようになった。この後、大学へ進み、先住民の環境意識やコーヒー生産の研究にも従事することになる。彼女が、単なる研究者に留まらず、活動家として多くの問題と関わる根底には、こうした経験がある。

パトリシアはよく言う。「研究者と呼ばれる人たちは、いつも頭(知識)ばかり使っています。でも、それだけではだめなんです。 本当の研究というのは、ハート(こころ)でするものなのですから」、と。彼女の言葉や行動が、いつも人を引きつけ、人の心に入っていくのは、この言葉が象徴しているように、パトリシア自身がいつも「ハート」をもって人びとの心に語りかけ接しているからだろう。

「以前は、こんな世の中に悲観的になることもありました。でも今は違います。メキシコの生産者と日本の消費者との強い絆をつくっていくという未来に、私は大きな希望をもっているのです」。日本とメキシコをつなぐ大きな掛け橋として、パトリシアは今日も現場で活動し続ける。

2005/11/02

メキシココーヒー物語 第2話 アグロフォレストリー(森林農法)

メキシコを始め、そのほとんどが熱帯に位置するコーヒー生産国では、一時的な開発やコーヒーのみを栽培するプランテーション栽培などにより、森林伐 採、そして温暖化の問題が深刻なものとなっている。こうした深刻な森林伐採から、森を守ろうと取り組まれている方法の一つに、「熱帯の庭園」という名前で 呼ばれる『アグロフォレストリー(森林農法)』というシステムがある。

メキシコでは昔から、このシステムを用いたコーヒー栽培が、さまざまな先住民族によって行われてきた。彼らは、さまざまな方法での資源活用を身に付けて おり、自らの宇宙観と関わり合いながら生物多様性を守り、森を活用してきた。そして、彼らは保護すると同時に、何百年もの時間をかけて森というのをデザイ ンしてきた。そうして生まれてきたのが、アグロフォレストリーである。

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トセパンの女性(ナワット族の伝統衣装)

先にプランテーション栽培(一つの作物のみを大量に生産する)について述べておくと、これはアグロフォレストリーとは全く逆のシステムである。これは、 近代的な手法によってつくりあげられたもので、生態系を全く無視した場所になっている。 プランテーションで生産する場合、まず商業栽培の部分だけを残し て、原生種を始め、すべての樹木を切り払う。また、プランテーション栽培を維持するためには、非常に集中的に農薬などを使う必要が出てくる。土地を傷めつ けてしまうこの方法は、限られた期間しか栽培することができない。これは、先住民が自然の生態系を活かしながらデザインし、森自身が再生する力を持ったア グロフォレストリーシステムとは全く異なる。

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プランテーション栽培

では、具体的にアグロフォレストリーとはどういう農法なのだろうか。ひと言で言えば、自然の森の中に、コーヒーなどの商業作物を始め、果樹や木材用の樹 木、作物などを混植する方法である。本来の生態系を活用して出来上がったものであるため、森の豊かさや生物多様性を保護する場所にもなっている。また、商 業作物を導入することで、森から収入を得ることができ、自家用の作物なども得られる。多様な作物を栽培するので、収入を一つの作物のみに頼ることなく、比 較的安定した経営を行うことができる。

メキシコのトセパン組合では、アグロフォレストリーの森1ヘクタールあたり150種ほどの有用な作物が生産されており、この森がどれほど生物的に豊かで あるかということがわかる。これらの作物の中には、地元の市場だけでなく、海外の市場に出される商品作物もある。それは、トセパン組合を始め、先住民たち が、長い年月をかけて、森との付き合い方、どう管理したらいいのか、とても豊富な知識と経験を持っているあかしでもある。

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アグロフォレストリーの森

アグロフォレストリーの恵み.gif

また、アグロフォレストリーの森は、二酸化炭素を吸収するという機能を持っている他、野生生物たちが暮らす場所としても役立っている。例えば、トセパン 組合のあるプエブラ州北部の地域では、1,000種類近くの鳥類が確認されていて、その多くが絶滅の危機に立たされている。アグロフォレストリーの森は、 この鳥類にとっても最後の隠れ家でもあるのだ。

さらには、この地に暮らす先住民たちは、アグロフォレストリーの森を作り上げていく中で、自分たちの文化や伝統、そして暮らしをもつくってきた。つま り、この森は、経済的や環境的のみならず、社会的にも文化的にも、そして歴史的にも重要な意味を持つ場所となっているのである。

2005/09/14

アグロフォレストリーツアー2005 森のカフェへようこそ 報告

2005年6月8日、メキシコから生物学者であり、環境保護活動家でもあるパトリシア・モグエルさん、そして有機コーヒー生産者グループ「トセパン・ティタタニスケ協同組合」からアルバロ・アギラルさんが来日しました。

メキシコでは、森の中でさまざまな作物や樹木と有機コーヒーを栽培する「アグロフォレストリー(森林農法)」が多く行われています。農薬や化学肥料を使 用せず、森の自然の生態系を守りながら行うこの農法は、土や水、そしてそこに暮らすたくさんの動物たちの命を守る持続的なやり方です。また、さまざまな作 物を栽培するアグロフォレストリーにおいては、収入源を一つの作物に頼ることなく、比較的安定した経営が可能となるのです。この農法は、主に熱帯地方にお ける持続可能な農業として重要視されています。メキシコにはたくさんの先住民グループがおり、この国でのアグロフォレストリーは、伝統的にこうした先住民 の人たちによって行われてきました。

今回、来日したパトリシアさんは、メキシコにおけるアグロフォレストリー研究の第一人者で、生物多様性を守るばかりでなく、この農法が有機コーヒーを栽 培する先住民たちの文化や暮らしを守っているということを強く訴えています。また、パトリシアさんと共に来日したアルバロさんは、トセパン組合の設立当初 からの中心人物であり、アグロフォレストリーの有機コーヒー栽培を始め、非常に多様で持続可能な組合づくりを行ってきました。

来日して最初に訪問したのは熊本県熊本市にあるフェアトレードショップ「はちどりの木」。2005年5月にオープンしたばかりのこのお店で、フェアト レードや国際交流に携わっている人たちと交流した後、水俣市へ移動。水俣病患者さんたちの支援に取り組む「ガイアみなまた」、患者さんたちの 作業所でもある「ほっとはうす」を訪問し、交流を行いました。水俣病の資料館を訪れ、また患者さんたちの話を聞いた二人は、水俣病に大きな関心を抱いてい ました。特に、地元で環境運動にも熱心に取り組んでいるパトリシアさんは、この日の訪問を、自分の人生の中で特別な日になったと涙を浮かべて 話していました。この他、九州は福岡でも講演会を行ったのですが、九州各地をまわる中で彼ら二人がとても驚いていたのは、日本にたくさんの山があるという ことでした。多くの木材を東南アジアなどから輸入している国に、これほど多くの森林があるとは想像もしていなかったようです。「これだけ豊かな森林がある のに、どうして外材に頼るの?」そんな疑問から始まり、日本人が山をどう管理してきたか、そして林業の現状などを知っていくにつれ、メキシコとは全くタイ プが異なる森林の問題にとても関心を抱いていました。メキシコでは開発やプランテーション栽培によって森が失われていっています。それを、アグロフォレス トリーを守り、さらには広めていくことで守ろうとしている。一方で日本には森林が多くあるのに、経済成長や社会状況の変化から、だんだんと森に入る人が少 なくなり、管理されなく なっている。そして熱帯地域を始めとする他の国々の森を壊し、その木を輸入しています。二人は、そんな構造にはがゆさも感じたようでした。

福岡イベントのスタッフたちと
福岡イベントのスタッフたちと
講演するパトリシア
講演するパトリシアさん

京都では、主に大学生、そして市民グループの人たちへの講演を行いました。フェアトレードや開発問題など、熱心に尋ねてくる学生もいました。

SBSの学生からのインタビュー
スロービジネススクールの学生からインタビューを受けるゲスト二人

その後に訪問した名古屋では、フェアトレードショップ「風”s」を見学。オーナーの土井さんを始め、スロービジネススクールの学生さんや市民活動をして いる大学院生の方々が企画してくださったイベントで話をしました。会場いっぱいの参加者があり、パトリシアさんたちの話に興味深く聞き入っていました。

アルバロの講演
講演するアルバロさん
聴衆
話に聞き入る参加者たち(名古屋会場)
フェアトレードショップ風sの前で
フェアトレードショップ風”sの前で、オーナーの土井さんと

この他、名古屋ではスロービジネススクールの学生さんたちとの交流会、屋上緑化や風力発電、また雨水利用などを行っているエコビルディングを見学するなど、中身の濃い滞在となりました。

旅の最後となる関東地域では、大学での意見交換、ナマケモノ倶楽部世話人の辻信一さんとともに「BeGoodCafe丸の内」イベントへトークゲストとして出演、カフェスローでのトークライブなど、さまざまなイベントに参加しました。

辻さんとBeGoodCafeに出演
辻信一さんとBeGood Cafeにゲスト出演

多くの日本人にとっては聞き慣れない「アグロフォレストリー(森林農法)」という自然や文化を守る農法。パトリシアさんは、今回の滞在で、さまざまな人 たちにこのアグロフォレストリーをわかりやすく紹介し、そしてアルバロさんは、その具体例としてトセパン組合の素晴らしい取り組みを伝えることができたと 思います。その中で日本に暮らす私たちができること。それは、森や環境、そして人びとの文化や伝統、生き方を守ろうと闘っているトセパンの人たちのコー ヒーを支援すること。日常におけるちょっとした物選びを見つめ直し、フェアトレードで輸入されたコーヒーを選ぶこと。そして、メキシコの生産者や豊かな大 地に思いを馳せてみること。それが、彼らが取り組む持続可能な活動を支える大きな力になるのです。メキシコ(途上国)の生産者と、日本に暮らす私たち消費 者とのつながりと連帯感。パトリシアさんとアルバロさんの来日によって、それが少しずつ動き始めました。

ツアーの全日程を終えた6月23日。この動きが大きく広がっていくことを願いながら、二人はメキシコへと帰国していきました。

パトリシア・モゲル講演録 アグロフォレストリーとコーヒー生産

パトリシア

皆さん、こんにちは。今日はお招きいただきまして、ありがとうございます。皆さんと一緒にこのような時間を持てることをとても嬉しく思いますし、このような場を設けてくださった皆さんにも感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

またこの京都という町に来られたことも非常に嬉しく思っています。この京都に対しては、世界で最も大切な条約といいますか取り決めの一つである京都議定書 が締結されたことで、多くの国々も参加し、この地球の温暖化という最も危機的な状況というものを食い止めるための一歩が踏み出された場所ということも私は 認識しています。

この先、地球温暖化が進行することで、どのような危機的な状況が招かれるかということは、まだまだ私たちはわかっていません。しかしながら、この状況を 食い止めるための一歩を踏み出したということがまず大切だと考えています。北の国々というのは、二酸化炭素、メタンガス、さまざまな温暖化の要素というの を出しており、一方で南の国々の危機的な状況というのは一般的に森林伐採と考えられています。

この危機的な状況を前に、さまざまな会議が開かれて、例えば南の国…発展途上国の多くが集まる国では、森林伐採がより少なくなるように、また地球温暖化が食い止められるような試みというのが少しずつ進められています。この南の国々から発せられている政策はいろいろありますが、その一つとして「熱帯の庭園」という名前で呼ばれる『アグロフォレストリーシステム』というのがあります。このシステムは、主に第三世界と呼ばれる国々の先住民、または農民たちが取る農法であって、北の国々の人たちと結びつき、そして団結力を強め、フェアトレード市場というのを築いています。

熱帯地域は、世界で7%の地域になるのですが、環境保護がなされている地域の約70%がこの少ない7%の中に含まれているという現状があります。だいた い年間1,500万ヘクタールという森林が失われてきており、それは生物多様性に満ちた地域の1%に相当する面積になっています。世界的に生物多様性の豊かな国は、一番上からブラジル、インドネシア、コロンビアと続きますが、私たちの国メキシコは第5番目を占めています。生物多様性に満ちたこれらの地域は 文化的にも豊かな地域になっています。この地域には、だいたい6,000の先住民グループが住むと言われていて、それぞれ異なる独自の文化を保ち続けています。

メキシコは先住民族が多く、約56のグループがあります。生物多様性をみていく中で、彼ら先住民の文化も見ていかなくてはいけません。彼らは、何百年、そして何千年という時間をかけて、どこに何があるかという資源の利用方法というのを確立していますし、エコシステムの働きについても、十分に体験的な知識を持っています。また彼らの信仰や宇宙観も相まって、自らが住む地域において生活環境が構成されていると考えられます。

マヤイズムについて例を挙げますと、やはりすべての資源を管理する、そして利用する方法を身に付けています。資源に関してもさまざまな方法での活用というのを身に付けており、いつも彼らの宇宙観と関わり合って生物多様性が展開されています。こうして先住民族は森を活用してきたのですが、彼らは保護すると同時に、何百年もの時間をかけて森というのをデザインしてきました。森をデザインすることで、最終的にアグロフォレストリーの森というのが生まれてきました。

アグロフォレストリーの森
  アグロフォレストリーの森

アグロフォレストリーのイラスト拡大版
アグロフォレストリーの森

この写真はアグロフォレストリーの森なんですが、先住民が築いてきた、そしてデザインしてきた森になります。さきほども申し上げたように、熱帯の農業森林とも呼ばれるアグロフォレストリーの森が自然に満ちた場所というのがわかるかと思います。この中央にはコーヒーが植えられています。これはアグロフォレストリーシステムが用いられるに際して、ナワット族が近隣の森にコーヒーを導入したというかたちで作り上げられたアグロフォレストリーシステムになっています。ですから、天然のエコシステムに商業栽培用の作物を持ちこんでアグロフォレストリーの森がつくられたということです。この商業栽培が行われることで、森から収入を得ることができ、そして別の利用方法ができる植物も植えられ、活用されています。これからそれを見ていきたいと思います。

アグロフォレストリーシステムの中には、コーヒー、カカオ、ゴム、ヤシといった植物が、天然のジャングル、森の中に導入されて作られてきました。つまり、天然のエコシステムを活用して出来上がったものであり、同時に森の豊かさ、多様性というのを保護する場所にもなっています。この森は、一般に経済的な面で評価を受けてきたのですが、経済面だけではなく、もう少し総合的な評価というのも必要とされています。この森は、社会的にも文化的にも、そして歴史的にも重要な意味を持つ場所となっています。

プランテーション栽培
  プランテーション栽培

この写真はプランテーション栽培です。さきほどのアグロフォレストリーの写真を比較していただくとわかるのですが、これは近代科学が作り上げた栽培方法であって、もう後30年も経てば続かないような栽培方法と私は考えています。逆に左側は、先住民が築き上げてきた天然林、アグロフォレストリーシステムが採用された森です。

プランテーションは、近代的な手法によってつくりあげられたコーヒー栽培であって、技術の結集、そして近代化のたまものと言える場所ですが、その反面、エコシステムというのを最大限簡略した場所にもなっています。

このプランテーションで生産する場合、商業栽培の部分だけを残して、原生種を始め、すべての樹木を伐採します。プランテーション栽培を維持するためには、非常に集中的に農薬などを使う必要が出てきます。一方で、アグロフォレストリーシステムというのは先住民が築いてきた森ですが、森自身が再生する力を持っています。コーヒーというのは一般的に山の斜面などを利用して栽培される作物です。近代的なプランテーション栽培も、もちろん山の斜面を活用しているわけですが、すぐに土壌が乏しくなってきます。そして、次第に水資源や地域的な気候にも影響が出始めてきます。一般的にメキシコは、コーヒー栽培においてアグロフォレストリーシステムが多く採用されており、多様性が保たれています。

しかし、ここ15年を見てみますと、アグロフォレストリーの森は徐々に近代的なプランテーションに取って代わっている現状もあります。このアグロフォレストリーの森を失うということは、商業作物だけを残してその他の樹木がすべて失われていくことになります。そして大きな影響というのは、そこに住む人々、 その家族にも及びます。この森をみるにあたっては、森の保護や樹木の保存という観点から見るだけでは十分ではないのです。その地域や住民全体を含めてみていく必要があります。

アグロフォレストリーの森は、さきほどお伝えしましたが、商業栽培が行われている場所でもあり、自然の生態系が保護されている場所でもあります。そして 調査の結果では、この森の92%の種が原生種、8%が外来種という結果があります。生産性に関して言いますと、適切な管理をすることで、プランテーション栽培よりも多くの収量を得るという考え方もできます。例えば商業作物としてのコーヒーを考えますと、やはりコーヒーというのは木陰が必要な植物であって、さまざまな樹木によってもたらされる木陰が必要になってきます。森は先住民によってつくられるわけですが、このようなかたちで多くの植物が植えられることで生産性が高まり、エコシステムが保護されるというふうにも考えられます。

森の変遷
プランテーション化する森の移り変わり
(一番上はアグロフォレストリーの森、一番下がプランテーション栽培)

この図は、どのようにして近代化によって森が変化していくかというのを示していますが、下から二番目は少ない種の栽培がされており、その森では、2種の木がコーヒーに陰を落とすというかたちになっています。そして一番下は、すべての木陰が排除されています。そのため、アグロフォレストリーシステムが環境に与える影響としては、自然の保護が大きく挙げられます。

メキシコのアグロフォレストリーシステムの例を挙げると、まず二つ大きく分けられます。一番上の図は粗放型とも言われるかたちで、先住民が木陰の管理、 または種の管理など一切せず、森にただコーヒーを植えるというかたちのアグロフォレストリーシステムになります。この場合は、コーヒーを単に植えただけで すので、生産性は低いアグロフォレストリーシステムになっています。

そして上から二番目の図は、熱帯の庭園とも言われる伝統的な複合栽培が行われる森になります。ここの森では、コーヒーが植えられるだけではなくて、その 他の多くの商品作物が栽培されます。例えばバナナ、柑橘類、マカダミアナッツなども植えら、多くの種が管理され、木陰の管理もされます。そのために、生産 量が基本的に伸びる結果になっています。この2つのアグロフォレストリーシステムの特徴として、一番上のシステムから生まれるコーヒーは「ナチュラルコーヒー」と言われますが、有機認証などは得ていません。実際、先住民は農薬や化学薬品などは一切使ってはいませんが、認証を得るための知識や経済的な資源な どがありませんので、有機認証はないけれどもナチュラルコーヒーと呼ばれるコーヒーが産出されています。認証を得るか得られないかというところもありますが、もうひとつポイントとしては、メキシコというところはだいたい1960~1970年の間に多く化学薬品が用いられるようになってきましたので、それ以 前に栽培されていたコーヒーは一般的には認証はありませんが、有機栽培で育ってきたコーヒーと言えます。

この近代的な農法で栽培されるところでは栽培される種も少なくて、コーヒー、カカオなど1~2種類の栽培が限界と考えられています。この先住民によるアグロフォレストリーシステムは、この写真に見られるように、多くの作物が栽培されて、そして活用されています。メキシコのナワット族の例を挙げますと、1ヘクタールあたり150種ほどの有用な作物が生産されています。このいくつかは、地域の市場に流れていくだけではなく、世界的な市場にも出される作物になっています。

森の変遷のイラスト
アグロフォレストリーの森ができるまで
(上から下に向かって、アグロフォレストリーが出来上がっていく様子が示してある)

逆に、プランテーション栽培からアグロフォレストリーシステムというのがいかにして出来上がるのかということをお話しますと、メキシコの例ではさきほど ありましたように、天然の森にコーヒーを導入してアグロフォレストリーシステムの森というのが完成していました。もう一つの方法としては、インドネシアの 森で見られる例ですが、一般にプランテーション栽培、または牧草地だったところに先住民が20~40年という時間をかけて、森をデザインしていく という動きがあります。この段階を経て、少しずつ植生を変えていく動きがあるんですけども、例えば初年度は一つの作物で、次は別の樹木を植え、というよう なかたちで長い時間を経て自然というのを段階的に変化させ、最終的には森というのをかたちづくる方法をとっています。

この先住民の生産する商業作物ですが、やはりさまざまな用途を持った植物が栽培されており、エコシステムというのを十分管理しているというのがわかります。

多様な作物
アグロフォレストリーの森から得られる多様な作物
(とうもろこし、チリ、豆類など)

この写真でわかるように、とうもろこし、トマト、チリ、そしてアボガドなどいろいろな作物が生産されています。非常に有益な多様性の管理ですが、それは やはり先住民が、知識と経験を持って熱帯地域において活動してきたということがあります。これから生物的、また環境的な視点から見ていきたいと思うのですが、この調査は、メキシコを始め、南北アメリカ、アジアなどさまざまな地域で行われており、アグロフォレストリーシステムの非常に肯定的な面の影響というのをお見せできるかと思います。

まずその一つ、二酸化炭素の吸収というのが挙げられますが、気候変動が激しい地球において、この森が二酸化炭素を吸収するという機能は、地球温暖化の抑制に役立つ部分だと思っております。そして私たちが活動しているメキシコのプエブラ州北部の地域では、1,000種類近くの鳥類が確認されていて、その多くが絶滅の危機に立たされています。この鳥類にとっても最後の隠れ家という場所になっています。そして動物にとっても植物にとっても、とても重要な地域になっています。

例えば、この鳥類に関してですが、やはりアグロフォレストリーシステム、特にメキシコのアグロフォレストリーシステムの森では多くの渡り鳥がカナダ、そ してアメリカからやってきて越冬しています。アメリカの消費者の間で調査をしたところ、約7,000万人の人々がバードウォッチングを楽しむという結果があり、「鳥が棲む森で生まれるコーヒー」という付加価値というのをコーヒーに付け、さらに知識、その普及というのを深めていこうという動きも起こっていま す。

メキシコの地図(生物多様性)
生物多様性とコーヒー生産地を示したメキシコの地図

この赤い地域がコーヒーを栽培している地域で、緑色の土地が生物多様性の保護が必要とされる地域です。これからわかることは、コーヒーが栽培されている地域は、生物多様性に富んだ場所でもあるということです。このようなことからも、生物が多く棲むところは、国定公園など保護されている地域ではなくて、コーヒーが栽培されているところでもあるということがわかります。トセパン組合がある地域も、この赤い色の地域になります。

テラスでのアグロフォレストリー
斜面でのアグロフォレストリーシステム

これは山の斜面にあるアグロフォレストリーシステムを表しているのですが、この斜面の上部においてアグロフォレストリーシステムが行われていて、その下の部分は他の方法によって農業が行われている場合もあります。そして一番下の方には、例えば海や川があるということも考えられますが、ここで一つ重要なのは、アグロフォレストリーシステムが標高の高いところで行われることによって、標高の低いところの地域、または人々にも恩恵がもたらされるということです。例えば土壌の安定、環境の安定、バランスの取れた生態系がもたらされます。そして全体のバランスが非常に健全に働いているということで、住民、または下流の川や湖なども多くの恩恵を受けることができます。

しかし、ここで問題となるのがやはり価格です。コーヒー、カカオを始めとして、ここ10年間、一般市場価格においては下落傾向が見られています。こうした経済危機の中、森林は伐採され、若者たちは仕事を失って他の地域に働きにいくという現状も見られています。また村々には、年老いた人たちのみが暮らし続けるという厳しい状況が強いられています。この経済的な危機は、コーヒーの生産国に対して大きな影響を与えています。コロンビア、インドネシア、メキシコを始め、多くの生産者が住む国では、全体で500万人がコーヒー生産に携わる人たちであり、その周辺産業で働く人を含めると、2,000万人はゆうに超えるであろうと考えられています。

一方で消費国、例えばヨーロッパや日本といった地域では、一部の国々が多くの利益を独占してきたという現状になっています。他のラテンアメリカ諸国もそうですけども、特にアメリカとカナダ、そしてメキシコの間で結ばれた自由貿易協定というものがあります。この自由貿易協定によって、結果的には非常に不平等な条件のもとで私たちメキシコ、第三世界側が競争していかなければならないという現状が強いられています。具体的な例としては、北の国々は農民たちに補助金などを与えて援助を続けていますが、一方で南の国々というのは補助金が農民たちに回らないようになってきてしまっています。

コーヒーの加工段階
コーヒーができるまで
(左上から時計まわりに、収穫作業、加工、コーヒーとして製品になるまでを示している)

コーヒー1キロ単位で生産者がどのような利益を得ているのかということをお話しますと、右下にある果肉のついた状態のコーヒー豆を1キロ販売しますと、生産者に渡る収入は、約2ドルになると考えられています。一方で、生豆の状態(果肉を取った状態)ですと、2,5ドルの収入があると考えられています。そして最終的に焙煎した状態のコーヒーになりますと、1キロあたり5ドルの収入が生産者に回ると考えられます。そしてこの1キロのコーヒー豆でどれくらいのコーヒーが飲めるかといいますと、一般的なコーヒー価格に換算しますと100杯になります。そして、この1杯は、平均1ドルで販売されているのが現状になっています。

メキシコでは、サパティスタ解放戦線というゲリラ活動があります。これは、自由主義が北から持ち込まれることに対しての抵抗活動と考えられています。北から押し付けられる政策というのは非常に不平等なものとなっています。この厳しい現状を前にして、生産者というのは組織づくりをしてきました。この組織づくりをしていくことで、北とは直接競争できない分野で競争していこうという流れになっていて、一つのオルタナティブな考えになっています。実際、北の国々からの多くの助けを得て、この商品はフェアトレード市場で販売され、そして利益をあげるようになっています。このようなかたちで北との連携を築くことで、 持続可能な生産というのを南北で築いていこうという動きが生まれています。

先住民が取ってきた農法が、人間的な部分を忘れずに近代的な農法と結びつくことで、フェアトレード市場に参入できるような流れが出てきつつあります。このような流れを確立することで、最終的に持続可能な栽培というのが可能になるかと思います。

メキシコは、有機栽培のコーヒーにおいては第一位の生産量を誇る国であり、その生産者組織の数も一番多いと考えられています。オルタナティブな市場の中で、生産者が認証を得えようとする動きがありますが、この認証にもさまざまあり、例えば「木陰で生まれたコーヒー」としての認証があります。そして、最終的には「持続可能なコーヒー」という名がつけられ、広まっていくことになります。認証印というのは環境、または生産を助長するだけではなくて、フェアトレードの市場にくい込むためにも役立っています。トセパンの場合、コーヒーは、日本で中村さんの企業(ウインドファーム)において、フェアトレードの方法で販売されています。

反対運動の人
環境破壊、貧困などの社会問題に抗議する人びと

最後にこの写真を見ておわかりかと思いますが、このような反対運動というのは日々、多くなっていると私は考えています。と言いますのも、グローバル経済において不平等な世の中が助長されることにより、苦しむ人々の数が増えているからです。例えば、世界の人口のうち、たった350人の人が、世界中の富の半分以上を独占するという現状があるのです。

54%の飲料水というのが人間の活動によって使われていて、25%の鳥類が絶滅しました。そして全体では、毎日100種以上の生物が絶滅していっているという現状があります。ですから、皆さんに意識していただきたいのは、この地球環境を守ること、もしくは貧困にあえぐ人びとをいかにして助けられるかということなのです。実際には、貧困に苦しむ人びとは30億人を数えると考えられています。ですから、こうしたグローバル化が続けられていくのかどうか、深く考えていただきたいと思います。

ガンジーの言葉に、「地球は人々の欲望のために存在するのではない」という言葉があります。その意識と思いを持って皆さんにメッセージを伝えることで、今日は終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

2005/09/13

アルバロ・アギラル講演録 トセパン・ティタタニスケ協同組合の持続可能な取り組み

アルバロ

こんにちは。今回このような場を設けてくださって、ありがとうございます。

私たちアルバロ・アギラルとパトリシア・モグエルは、皆様に私たちの活動を紹介するためにメキシコから来ました。私たちは、今あるものとは違うオルタナ ティブなかたちで、この社会の発展を推進していこうという取り組みを行っています。そのオルタナティブなかたちとして、「団結」ということがあげられま す。これは、個人主義とは対極のところにある考え方です。ここでは、知識、技術を活かすということが、人びとへより良いサービス、そして空間をもたらすも のであって、個人に利益が与えられるものではありません。そして、このような知識、技術というのを用いて環境保護が行われており、次の世代、さらにはその 次の世代へと環境が守られていくことになります。また生産活動も、汚染または自然破壊をもたらさないかたちで行われます。

今日は、このオルタナティブな発展について、メキシコの例を用いて皆様に一つ一つご紹介したいと考えて思います。私たちが活動を行っている組合は、トセ パン・ティタタニスケという名前で、メキシコのプエブラ州北部のシエラノルテというところにあり、組合員は皆、ナワット族という先住民です。

トセパン組合が設立されたのは、今から約28年前です。組合名「トセパン」は、「団結すること。それが、皆が幸せになる道である」という意味を含んでい ます。現在トセパン組合には、小規模農家、約5,000世帯が参加しています。この5,000世帯というのは、だいたい6つの地域に分かれて住んでいま す。

トセパン組合のロゴ
トセパン組合のロゴマーク(団結を示している)

この中央にありますトセパンのシンボルマークなんですけども、握りこぶしは「団結」を意味します。そして二つの農具は、マチェテと言われる山刀と鍬です。

私たちは、活動を多様化させ、さまざまなかたちでプロジェクトを行っています。他のどの組織でも見られるように、組織の一番上には、組合員による理事会 が設けられています。そして、代表会議会の下に、助言を与えるアドバイザーたちがグループをつくるところがあります。そしてその下に、それぞれ異なる活動 をしているグループがあります。そして、ここでは持続可能な農法が行われています。化学肥料などは使わず、有機栽培で作物が栽培されています。その代表的 な作物の中にコーヒーがあり、その栽培方法はアグロフォレストリーシステムと呼ばれています。そして、コーヒーの他にオールスパイスという香辛料も栽培し ており、これは輸出作物として外国へも出荷されています。

メキシコでは、女性は全人口の約51%を占めています。私たちの組合では、女性の活動グループがあり、独自の生産活動を行っています。そして、エコツー リズム、観光も行われており、私たちの活動を知ってもらうためにエコツアーを実践しています。また、組合員自身が持続可能な材質や設計がなされた家屋を建 設し、そこに住んでいます。こうした活動を行っていくためには資金が必要になりますが、私たちは融資などを行う独自の金融機関も設けています。

この他、私たちの中心的な活動として、研修センターを設置し、そこでいろいろな知識や体験を積むという活動を行っています。

コーヒーの栽培から加工まで(イラスト)
コーヒー栽培の過程を示した図
(左上から右に向かって栽培・加工手順が示してある)

これは、アグロフォレストリーシステムによるコーヒー栽培を表したものです。中央にコーヒー栽培地がありますが、周辺に他の樹木も植えられています。図 全体では、コーヒーの収穫、さらにその利用方法などを紹介しています。一般的には、収穫の次に消費があります。しかし消費と言っても、コーヒーの場合はさ まざまな加工が必要となってきます。そして、右の方の図ですが、これは、コーヒーの加工から焙煎を経て、どのように食卓に届くかということが右から左へ、 中央に沿って紹介してあります。この図から、いかにして現地ですべての加工・処理がされているのかということがわかるかと思います。

皆さんは多くのコーヒー消費者のお一人だと思うんですけども、このような流れがあるということ、このような過程があるということを、コーヒーを飲むとき に考えていただきたいと思っております。しかし、やはり一般的にはコーヒーの裏側にどのような手が加えられているか、どのような作業があるか知られていな いと思います。

コーヒーの栽培においては、栽培に対する労働だけではなく、それにまつわる周辺の環境、例えば森からさまざまなコーヒー以外の作物が生み出されています。

アグロフォレストリーの場合、コーヒー以外にも、さまざまな大きさの木や収穫をもたらしてくれる果樹、作物が植えられ、多様な植生が共存しています。こ こから多様な産物が得られるのです。また、この森は、二酸化炭素や温暖化に大きな影響を与えるガスの吸収を行っています。この他、鳥を始め、さまざまな動 物などが住んでいます。また一方で、資源の活用において、水、そして土壌の活用においても均衡が崩れないよう心がけています。これらを環境の恩恵、そして この機能というのを一般に環境サービスと呼んでいます。

森からは、商業作物としてコーヒーだけが生み出されるわけではありません。そのコーヒー以外にも、さまざまな果物、フルーツなどが生産されていまして、 地域の市場だけではなく、その他の外国の市場にももたらされています。また、ハチミツも収穫できますが、この一帯の蜜蜂は一般的なヨーロッパ種ではなく、 メキシコの原生種になります。蝶と同様に、受粉に役立っています。そして薬草や鑑賞用の多くの植物も見られます。

こうしたことから、この森というのは生物多様性に富んでおり、私たちは非常に有用な森と考えております。ここで言う「有用」とは、この地域に住む人々だけではなくて、ここから生まれてくる作物を消費する皆さまにとっても有用な森という意味です。

アグロフォレストリーからの産物
アグロフォレストリーの森がもらたらす多様な産物
(コーヒー、オールスパイス、シナモン、蜂蜜、バナナなど)

この図の中央にアグロフォレストリーの森が描かれていますが、この一番下の小さい木、これがコーヒーの木になります。そして中央上の写真がコーヒーの実 です。同じコーヒー畑にはさまざまな木が植えられていて、中には20メートルほどの高さになるオールスパイス(香辛料)の木などもあります。コーヒーや オールスパイスの栽培が、組合員たちに収入をもたらす商品作物になります。

その他にも、マカダミアナッツを始め、シナモンなどさまざまな商品作物が栽培されています。もちろん市場に出すこともできる作物もありますし、自給用に も役立っているものもあります。このようなかたちで、私たちの森は生物多様性に富んでいて、私たちは「家族の生活にも役立つ森」というふうに表現していま す。

私たちの森で栽培される輸出作物は、コーヒーとオールスパイスの二つです。原材料として市場などに下ろすだけではなくて、最終的に加工して、最終消費者に届けるというかたちも取っています。

トセパン-ラベル
(左) トセパンコーヒーのラベル
(右) トセパンの生産物のラベルには、すべてこのイラストが使われている

コーヒーのパッケージは、女性が花束を抱えている様子をイラストにしたものです。これはこの地域に住む先住民の姿で、抱えている花束の花というも、この 地域の在来種です。この図は、この地域の文化的な活動を結びつけていこうということを表しています。また私たちのコーヒーは、農薬や化学肥料などは一切使 わず、の自然環境を守り、生活環境を守るという意味合いを含んでいます。この他にも、メキシコの原生の蜜蜂をつかって、ハチミツの生産もされています。栄 養素に富んでおり、医薬品や化粧品などにも役立てられています。 こうした生物多様性の豊かな森で、これを守りながら生産者をいかに保護するかということ が必要になってきます。

また私たちは、コーヒー栽培において出た廃棄物、そして、それらを利用してできた商品になります。以前は、コーヒー栽培地において、コーヒーの果肉など はそれを除去した後、川などに捨てられ、それが汚染源になっていたという現状がありました。私たちのトセパンでは、その廃棄物を活かして、それをもうひと つ別のかたち、つまり資源として活かしています。これを通し、私たちはキノコ、有機肥料、アルコール、そして油などを生産しています。

トセパンではさまざまなプロジェクトを行っていますが、その一つとしてまず苗床をつくる活動があります。私たちには、一年間で百万本の苗木を栽培する能 力があります。この苗床で生まれる木々は、異なる方法で用いられています。一つはコーヒーの木々を新しいものに更新していくということ、二つめは、栽培物 一般を多様化させるために、さまざまな苗木を植えています。そして、もうひとつが、時を経るにつれて原生種がなくなっているのですが、それを再生するため にも使われています。もちろん、この原生種を再生させるという事業は大切なことですが、森にやって来る鳥たちにとっても、食料として大切なものになってい ます。

そして、もう一つのプロジェクトとして、女性の活動を挙げてみたいと思います。持続可能な活動というのを実現させるために、女性の参加というものに重み を置いています。男性というのは一般的に、コーヒー畑など土地を耕して生活をしています。そしてその畑から生まれてきた産物を家庭の収入源にしています。 このトセパンという組織は、やはり女性も収入源というのをもって家族の生活の足しになるように活動を広げていけるように心がけています。今現在、20のグ ループがあり、それぞれ生産的な活動を行っています。グループ全体で480人の女性が参加しています。さまざまな研修活動を経て、家族に収入をもたらして います。

研修センター8
環境教育の研修センター「カルタイクスペタニロヤン」

私たちは、この生産活動を行う中で、研修活動または知識の向上を大切にしています。その目的のために、研修センターを設けています。このセンターの名前 は「カルタイクスペタニロヤン」と言い、ナワット語で「魂が開かれる場所、精神を高めるところ」という意味を持っています。この研修施設なんですけども、 生産活動ができるそれぞれの場所を備えています。また、研修活動を推進するために、小さな図書館やコンピュータールームを設けています。

この研修施設、研修活動を通じ、活動というのが実質的に持続可能になることを考えています。この研修センターの目的は、能力を高め、またはさまざまなプ ロジェクトを実施するための能力や知識づけというのが行われています。この研修事業が進むことで、この地域のおいて持続可能な活動が行われています。そし てこれらの中に研修施設や宿泊施設が設けられています研修施設では、そこで食べられる食料も作られています。また一方で、施設内ではさまざまなサービスが 提供されており、宿泊施設などを設け、組合員が来た時には宿泊できるようにしています。

持続可能、そして生活環境の保護について話をしておりますけども、この中で注目すべきは環境教育というものの実践です。環境教育を通じて、先住民このナ ワット族の文化・知識が継承されていくようにしています。その環境教育の実践の場として、コーヒー畑の中に小さなスペースを設けています。

コーヒー畑での環境教育
コーヒー畑での環境教育

組合員の多くが仕事の場としているところで環境教育を行うということが、実際に生物多様性というものを間近に見る機会にもなります。実際このコーヒーが 栽培される畑では、コーヒー以外にも約150種の植物が栽培、または生育しています。私たちの地域全体では、コーヒーが栽培されている地域では、約200 種類の鳥類が確認されています。さまざまな植物の利用方法、そして多くの鳥類が棲む場所というのを忘れないようにするために、その研修の場としてコーヒー 畑の真ん中に建物をつくりました。この地域では、実際の森が教育のために役立てられています。

次に、エコツーリズムについて簡単に説明したいと思います。エコツーリズムは、環境ばかりでなく、文化の多様性を保護する役割も果たしています。観光客 にとって環境教育の場であるということで、非常に重要な役割を果たしています。森があったり、文化遺産があったり、先住民がどのように生活しているかとい うことを知ることができます。

研修センター
環境教育センターの建物内
(地元の竹など出来るだけ自然素材を利用して建てられている)

エコツーリズムの宿泊施設や研修施設には、建材として主に竹を使っていて、窓枠、柱すべてが作られています。この地域にはさまざまな文化遺産があり、非常に観光資源には恵まれた場所となっています。

エコツア-1
エコツアーでの訪問場所
エコツア-2
エコツアーでの訪問場所

また、エコツアーを通じてたくさんの方にここを訪れていただくことで、コーヒーを始め、この周辺地域で何が起きているのかということを知ってもらいたい という目的も持っています。そして、このエコツアーを通じて、コーヒーの栽培とその加工にはどのような作業が必要なのか。そういったことを私たちがお伝え することができると思います。こうした方法で、直接、消費者の皆さんがこの地に足を運んでくれましたら、「コーヒー」というものの本来の意味が分かってい ただけるかと思います。そして、このコーヒー栽培の周辺環境をご理解していただくことで、消費者の皆さんの認識や理解も高まり、これが安定した価格への動 きにもつながってくると思います。

トセパントミン
組合内の金融機関トセパン・トミン

これまでご紹介してきたように、私たちはさまざまなプロジェクトに取り組んでいます。取り組むにあたって、やはり融資というものが必要になってきます。 一般的なメキシコの銀行のことをお話しますと、やはり農村に対して融資をしてくれるという機関は見当たりません。私たちも、敢えてそのような金融機関に融 資をお願いするということはしていません。やはり農村地帯というのは、金銭という面で非常に困難に直面しています。一般的な銀行というのは、集めたお金は 農村に投資せず、近代的な工業の方に投資します。例えば、持続可能な活動を模索する農村の人々たちは、地域にある資源や資金を独自に活用するという考えが あります。私たちの資金は非常に少なく、活用はしていますが、困難に直面しています。そのようなことから、地域内のお金が、その地域で最大限活用されるよ うに活動を推進しています。そこで、私たちは独自の金融機関というのを設置するに至りました。この金融機関は、組合員によって運営されています。ここで活 用されるお金は、同じ組合員から集められたお金です。そしてその貯蓄は、組合員たちに融資されます。この金融機関の名前は「トセパン・トミン」と言いま す。

トセパントミンのロゴ
トセパントミンのロゴマーク

ナワット語で「皆のためのお金」という意味です。

貯蓄額を年代順に見ていくと、1998年から順に多くなっています。一方で、年を追うごとに融資額も増えていっています。2004年になると、当初の額 よりもはるかに大きな貯蓄額になっています。1998年から2004年の額を見ると、その貯蓄額と融資額は10倍になっています。トセパントミンでは、よ りよいサービスを提供するために3つの支店を設けています。そして、さまざまな商業活動を支援しています。融資をする際には、一般的には担保が必要です が、トセパントミンでは必要としません。代わりに「言葉」、つまり借り手の言葉を信用して行われています。今までこの金融機関がうまれてから、現在にいた るまで、融資のこげつきというのは一切ありません。

持続可能な家屋(イラスト)
持続可能な家屋や居住環境を示したもの

このイラストは、組合内の持続可能な家屋を表しています。この家屋は、暮らす人が威厳ある生活が送れる場所であると同時に、その周囲にある資源を活用し たつくりになっています。まず最初に挙げられるのは、雨水の利用です。そしてもうひとつは、太陽光の利用です。太陽光パネルを利用して、太陽光を最大限、 そして有効に活用しています。また、周囲にある空き地を利用して食料生産なども行っています。家や農場から出る廃棄物を利用して有機肥料もつくられていま す。

養蜂の壷
巣箱ではなく、壷を利用した養蜂

これは蜂蜜を取るための壷です。これはさきほども申し上げましたが、この蜂蜜には、医療効果や美容効果があります。これが、蜜蜂の巣がある壷なんですけ ども、ここからハチミツが採取されます。一般的にはハチミツは巣箱から採取されるものだとお考えだと思います。この蜂の特徴というのは、人を刺すようなこ ともなく、一般的な蜜蜂とは異なります。巣箱を使うことはなく、壷を使って蜂蜜を採取しています。

コーヒー、そしてハチミツを始め、これらの産物は、フェアトレード市場において皆さまにお届けできる商品になると思います。トセパンという生産者組合が 持続可能な活動というのを展開し、これらの活動を持続していくために、組合員自身による団体なんですけども、研修、知識の継承というものを専門的に行うグ ループがあります。このようなかたちで生産者組合自身が彼らの知識または経験というのを継承していくための活動を推進していく団体というのを設けていま す。このような活動を続けることで、さらに持続可能なかたちが作り上げられていっているのです。地域というのが持続可能であるためには、まず組織というの が持続可能でなくてはいけません。このような動きを、私たちはトセパンという生産者組合を通じて模索しています。

2005/05/07

アグロフォレストリーツアー

★2005年6月9日~?6月20日アグロフォレストリーツアー2005 開催★

『森のカフェへようこそ!-アグロフォレストリーの森が育むいのちと文化-
メキシコの持続可能な地域づくりと森を守るコーヒー栽培』

世界で最初に有機コーヒーを栽培した国と言われるメキシコ。 この国では、20部族にも及ぶ先住民族たちが、昔から、森の中で「アグロ フォレストリー(森林農法)」によって、コーヒーを育ててきました。

「アグロフォレストリー」とは、森を残したまま、コーヒーと一緒に さまざまな果樹や作物を植える栽培方法のことです。この方法は、 コーヒーが分散していて作業も収穫も手間がかかりますが、土壌を豊か にし、農薬や化学肥料を使用せずに作物を栽培することができます。 また、多品目栽培なので、コーヒーが不作の場合でも他の作物で 生活していける可能性が高く、比較的安定した経営を行うことができる のです。場所によってはアグロフォレストリーシステムをとっている ところの方が、一般的な森林よりも生物多様性が豊かな場合もあります。 アグロフォレストリーは、森を守るという点で、地球温暖化防止の面から も非常に注目されている優れた農法なのです。

アグロフォレストリーのコーヒー畑
アグロフォレストリーのコーヒー園

今回、メキシコから、アグロフォレストリーの専門家パトリシア・モグエル さんと、有機コーヒー生産者グループ「トセパン」のメンバー、アルバロ・ アギラルさんをお招きし、お話をうかがいます。
トセパンの人たちは、熱帯雲霧林という生物多様性豊かな森で、アグロフォレ ストリーによってコーヒーを栽培してきました。その暮らしの中で、彼らは 自分たちの文化や伝統を守り伝えてきたのです。トセパンの人たちにとって、 アグロフォレストリーは単なる栽培方法ではなく、生き方そのものであると 言えます。

お二人には今回、アグロフォレストリーの重要性、森と共に生きること、 美味しいコーヒーの秘密、そして、日本に暮らす私たちとコーヒーの森との つながりなど、たくさんの素敵なお話をしていただきます。

お近くの会場で、皆さまをお待ちしています。

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