2005/09/14

アグロフォレストリーツアー2005 森のカフェへようこそ 報告

2005年6月8日、メキシコから生物学者であり、環境保護活動家でもあるパトリシア・モグエルさん、そして有機コーヒー生産者グループ「トセパン・ティタタニスケ協同組合」からアルバロ・アギラルさんが来日しました。

メキシコでは、森の中でさまざまな作物や樹木と有機コーヒーを栽培する「アグロフォレストリー(森林農法)」が多く行われています。農薬や化学肥料を使 用せず、森の自然の生態系を守りながら行うこの農法は、土や水、そしてそこに暮らすたくさんの動物たちの命を守る持続的なやり方です。また、さまざまな作 物を栽培するアグロフォレストリーにおいては、収入源を一つの作物に頼ることなく、比較的安定した経営が可能となるのです。この農法は、主に熱帯地方にお ける持続可能な農業として重要視されています。メキシコにはたくさんの先住民グループがおり、この国でのアグロフォレストリーは、伝統的にこうした先住民 の人たちによって行われてきました。

今回、来日したパトリシアさんは、メキシコにおけるアグロフォレストリー研究の第一人者で、生物多様性を守るばかりでなく、この農法が有機コーヒーを栽 培する先住民たちの文化や暮らしを守っているということを強く訴えています。また、パトリシアさんと共に来日したアルバロさんは、トセパン組合の設立当初 からの中心人物であり、アグロフォレストリーの有機コーヒー栽培を始め、非常に多様で持続可能な組合づくりを行ってきました。

来日して最初に訪問したのは熊本県熊本市にあるフェアトレードショップ「はちどりの木」。2005年5月にオープンしたばかりのこのお店で、フェアト レードや国際交流に携わっている人たちと交流した後、水俣市へ移動。水俣病患者さんたちの支援に取り組む「ガイアみなまた」、患者さんたちの 作業所でもある「ほっとはうす」を訪問し、交流を行いました。水俣病の資料館を訪れ、また患者さんたちの話を聞いた二人は、水俣病に大きな関心を抱いてい ました。特に、地元で環境運動にも熱心に取り組んでいるパトリシアさんは、この日の訪問を、自分の人生の中で特別な日になったと涙を浮かべて 話していました。この他、九州は福岡でも講演会を行ったのですが、九州各地をまわる中で彼ら二人がとても驚いていたのは、日本にたくさんの山があるという ことでした。多くの木材を東南アジアなどから輸入している国に、これほど多くの森林があるとは想像もしていなかったようです。「これだけ豊かな森林がある のに、どうして外材に頼るの?」そんな疑問から始まり、日本人が山をどう管理してきたか、そして林業の現状などを知っていくにつれ、メキシコとは全くタイ プが異なる森林の問題にとても関心を抱いていました。メキシコでは開発やプランテーション栽培によって森が失われていっています。それを、アグロフォレス トリーを守り、さらには広めていくことで守ろうとしている。一方で日本には森林が多くあるのに、経済成長や社会状況の変化から、だんだんと森に入る人が少 なくなり、管理されなく なっている。そして熱帯地域を始めとする他の国々の森を壊し、その木を輸入しています。二人は、そんな構造にはがゆさも感じたようでした。

福岡イベントのスタッフたちと
福岡イベントのスタッフたちと
講演するパトリシア
講演するパトリシアさん

京都では、主に大学生、そして市民グループの人たちへの講演を行いました。フェアトレードや開発問題など、熱心に尋ねてくる学生もいました。

SBSの学生からのインタビュー
スロービジネススクールの学生からインタビューを受けるゲスト二人

その後に訪問した名古屋では、フェアトレードショップ「風”s」を見学。オーナーの土井さんを始め、スロービジネススクールの学生さんや市民活動をして いる大学院生の方々が企画してくださったイベントで話をしました。会場いっぱいの参加者があり、パトリシアさんたちの話に興味深く聞き入っていました。

アルバロの講演
講演するアルバロさん
聴衆
話に聞き入る参加者たち(名古屋会場)
フェアトレードショップ風sの前で
フェアトレードショップ風”sの前で、オーナーの土井さんと

この他、名古屋ではスロービジネススクールの学生さんたちとの交流会、屋上緑化や風力発電、また雨水利用などを行っているエコビルディングを見学するなど、中身の濃い滞在となりました。

旅の最後となる関東地域では、大学での意見交換、ナマケモノ倶楽部世話人の辻信一さんとともに「BeGoodCafe丸の内」イベントへトークゲストとして出演、カフェスローでのトークライブなど、さまざまなイベントに参加しました。

辻さんとBeGoodCafeに出演
辻信一さんとBeGood Cafeにゲスト出演

多くの日本人にとっては聞き慣れない「アグロフォレストリー(森林農法)」という自然や文化を守る農法。パトリシアさんは、今回の滞在で、さまざまな人 たちにこのアグロフォレストリーをわかりやすく紹介し、そしてアルバロさんは、その具体例としてトセパン組合の素晴らしい取り組みを伝えることができたと 思います。その中で日本に暮らす私たちができること。それは、森や環境、そして人びとの文化や伝統、生き方を守ろうと闘っているトセパンの人たちのコー ヒーを支援すること。日常におけるちょっとした物選びを見つめ直し、フェアトレードで輸入されたコーヒーを選ぶこと。そして、メキシコの生産者や豊かな大 地に思いを馳せてみること。それが、彼らが取り組む持続可能な活動を支える大きな力になるのです。メキシコ(途上国)の生産者と、日本に暮らす私たち消費 者とのつながりと連帯感。パトリシアさんとアルバロさんの来日によって、それが少しずつ動き始めました。

ツアーの全日程を終えた6月23日。この動きが大きく広がっていくことを願いながら、二人はメキシコへと帰国していきました。

パトリシア・モグエル講演録 アグロフォレストリーとコーヒー生産

?パトリシア

皆さん、こんにちは。今日はお招きいただきまして、ありがとうございます。皆さんと一緒にこのような時間を持てることをとても嬉しく思いますし、このような場を設けてくださった皆さんにも感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

またこの京都という町に来られたことも非常に嬉しく思っています。この京都に対しては、世界で最も大切な条約といいますか取り決めの一つである京都議定書 が締結されたことで、多くの国々も参加し、この地球の温暖化という最も危機的な状況というものを食い止めるための一歩が踏み出された場所ということも私は 認識しています。

この先、地球温暖化が進行することで、どのような危機的な状況が招かれるかということは、まだまだ私たちはわかっていません。しかしながら、この状況を 食い止めるための一歩を踏み出したということがまず大切だと考えています。北の国々というのは、二酸化炭素、メタンガス、さまざまな温暖化の要素というの を出しており、一方で南の国々の危機的な状況というのは一般的に森林伐採と考えられています。

この危機的な状況を前に、さまざまな会議が開かれて、例えば南の国?発展途上国の多くが集まる国?では、森林伐採がより少なくなるように、また地球温暖 化が食い止められるような試みというのが少しずつ進められています。この南の国々から発せられている政策はいろいろありますが、その一つとして「熱帯の庭 園」という名前で呼ばれる『アグロフォレストリーシステム』というのがあります。このシステムは、主に第三世界と呼ばれる国々の先住民、または農民たちが 取る農法であって、北の国々の人たちと結びつき、そして団結力を強め、フェアトレード市場というのを築いています。

熱帯地域は、世界で7%の地域になるのですが、環境保護がなされている地域の約70%がこの少ない7%の中に含まれているという現状があります。だいた い年間1,500万ヘクタールという森林が失われてきており、それは生物多様性に満ちた地域の1%に相当する面積になっています。世界的に生物多様性の豊 かな国は、一番上からブラジル、インドネシア、コロンビアと続きますが、私たちの国メキシコは第5番目を占めています。生物多様性に満ちたこれらの地域は 文化的にも豊かな地域になっています。この地域には、だいたい6,000の先住民グループが住むと言われていて、それぞれ異なる独自の文化を保ち続けてい ます。

メキシコは先住民族が多く、約56のグループがあります。生物多様性をみていく中で、彼ら先住民の文化も見ていかなくてはいけません。彼らは、何百年、 そして何千年という時間をかけて、どこに何があるかという資源の利用方法というのを確立していますし、エコシステムの働きについても、十分に体験的な知識 を持っています。また彼らの信仰や宇宙観も相まって、自らが住む地域において生活環境が構成されていると考えられます。

マヤイズムについて例を挙げますと、やはりすべての資源を管理する、そして利用する方法を身に付けています。資源に関してもさまざまな方法での活用とい うのを身に付けており、いつも彼らの宇宙観と関わり合って生物多様性が展開されています。こうして先住民族は森を活用してきたのですが、彼らは保護すると 同時に、何百年もの時間をかけて森というのをデザインしてきました。森をデザインすることで、最終的にアグロフォレストリーの森というのがうまれてきまし た。

アグロフォレストリーの森
アグロフォレストリーの森
アグロフォレストリーのイラスト拡大版
アグロフォレストリーの森(拡大版)

この写真はアグロフォレストリーの森なんですが、先住民が築いてきた、そしてデザインしてきた森になります。さきほども申し上げたように、熱帯の農業森 林とも呼ばれるアグロフォレストリーの森が自然に満ちた場所というのがわかるかと思います。この中央にはコーヒーが植えられています。これはアグロフォレ ストリーシステムが用いられるに際して、ナワット族が近隣の森にコーヒーを導入したというかたちで作り上げられたアグロフォレストリーシステムになってい ます。ですから、天然のエコシステムに商業栽培用の作物を持ちこんでアグロフォレストリーの森がつくられたということです。この商業栽培が行われること で、森から収入を得ることができ、そして別の利用方法ができる植物も植えられ、活用されています。これからそれを見ていきたいと思います。

アグロフォレストリーシステムの中には、コーヒー、カカオ、ゴム、ヤシといった植物が、天然のジャングル、森の中に導入されて作られてきました。つま り、天然のエコシステムを活用して出来上がったものであり、同時に森の豊かさ、多様性というのを保護する場所にもなっています。この森は、一般に経済的な 面で評価を受けてきたのですが、経済面だけではなく、もう少し総合的な評価というのも必要とされています。この森は、社会的にも文化的にも、そして歴史的 にも重要な意味を持つ場所となっています。

プランテーション栽培
プランテーション栽培

この写真はプランテーション栽培です。さきほどのアグロフォレストリーの写真を比較していただくとわかるのですが、これは近代科学が作り上げた栽培方法 であって、もう後30年も経てば続かないような栽培方法と私は考えています。逆に左側は、先住民が築き上げてきた天然林、アグロフォレストリーシステムが 採用された森です。

プランテーションは、近代的な手法によってつくりあげられたコーヒー栽培であって、技術の結集、そして近代化のたまものと言える場所ですが、その反面、エコシステムというのを最大限簡略した場所にもなっています。

このプランテーションで生産する場合、商業栽培の部分だけを残して、原生種を始め、すべての樹木というのを払います。プランテーション栽培を維持するた めには、非常に集中的に農薬などを使う必要が出てきます。一方で、アグロフォレストリーシステムというのは先住民が築いてきた森ですが、森自身が再生する 力を持っています。コーヒーというのは一般的に山の斜面などを利用して栽培される作物です。近代的なプランテーション栽培も、もちろん山の斜面を活用して いるわけですが、すぐに土壌が乏しくなってきます。そして、次第に水資源や地域的な気候にも影響が出始めてきます。一般的にメキシコは、コーヒー栽培にお いてアグロフォレストリーシステムが多く採用されており、多様性が保たれています。

しかし、ここ15年を見てみますと、アグロフォレストリーの森は徐々に近代的なプランテーションに取って代わっている現状もあります。このアグロフォレ ストリーの森を失うということは、商業作物だけを残してその他の樹木がすべて失われていくことになります。そして大きな影響というのは、そこに住む人々、 その家族にも及びます。この森をみるにあたっては、森の保護や樹木の保存という観点から見るだけでは十分ではないのです。その地域や住民全体を含めてみて いく必要があります。

アグロフォレストリーの森は、さきほどお伝えしましたが、商業栽培が行われている場所でもあり、自然の生態系が保護されている場所でもあります。そして 調査の結果では、この森の92%の種が原生種、8%が外来種という結果があります。生産性に関して言いますと、適切な管理をすることで、プランテーション 栽培よりも多くの収量を得るという考え方もできます。例えば商業作物としてのコーヒーを考えますと、やはりコーヒーというのは木陰が必要な植物であって、 さまざまな樹木によってもたらされる木陰が必要になってきます。森は先住民によってつくられるわけですが、このようなかたちで多くの植物が植えられること で生産性が高まり、エコシステムが保護されるというふうにも考えられます。

森の変遷
プランテーション化する森の移り変わり
(一番上はアグロフォレストリーの森、一番下がプランテーション栽培)

この図は、どのようにして近代化によって森が変化していくかというのを示していますが、下から二番目は少ない種の栽培がされており、その森では、2種の 木がコーヒーに陰を落とすというかたちになっています。そして一番下は、すべての木陰が排除されています。そのため、アグロフォレストリーシステムが環境 に与える影響としては、自然の保護が大きく挙げられます。

メキシコのアグロフォレストリーシステムの例を挙げると、まず二つ大きく分けられます。一番上の図は粗放型とも言われるかたちで、先住民が木陰の管理、 または種の管理など一切せず、森にただコーヒーを植えるというかたちのアグロフォレストリーシステムになります。この場合は、コーヒーを単に植えただけで すので、生産性は低いアグロフォレストリーシステムになっています。

そして上から二番目の図は、熱帯の庭園とも言われる伝統的な複合栽培が行われる森になります。ここの森では、コーヒーが植えられるだけではなくて、その 他の多くの商品作物が栽培されます。例えばバナナ、柑橘類、マカダミアナッツなども植えら、多くの種が管理され、木陰の管理もされます。そのために、生産 量が基本的に伸びる結果になっています。この2つのアグロフォレストリーシステムの特徴として、一番上のシステムから生まれるコーヒーは「ナチュラルコー ヒー」と言われますが、有機認証などは得ていません。実際、先住民は農薬や化学薬品などは一切使ってはいませんが、認証を得るための知識や経済的な資源な どがありませんので、有機認証はないけれどもナチュラルコーヒーと呼ばれるコーヒーが産出されています。認証を得るか得られないかというところもあります が、もうひとつポイントとしては、メキシコというところはだいたい1960?1970年の間に多く化学薬品が用いられるようになってきましたので、それ以 前に栽培されていたコーヒーは一般的には認証はありませんが、有機栽培で育ってきたコーヒーと言えます。

この近代的な農法で栽培されるところでは栽培される種も少なくて、コーヒー、カカオなど1?2種類の栽培が限界と考えられています。この先住民によるア グロフォレストリーシステムは、この写真に見られるように、多くの作物が栽培されて、そして活用されています。メキシコのナワット族の例を挙げますと、1 ヘクタールあたり150種ほどの有用な作物が生産されています。このいくつかは、地域の市場に流れていくだけではなく、世界的な市場にも出される商品作物 になっています。

森の変遷のイラスト
アグロフォレストリーの森ができるまで
(上から下に向かって、アグロフォレストリーが出来上がっていく様子が示してある)

逆に、プランテーション栽培からアグロフォレストリーシステムというのがいかにして出来上がるのかということをお話しますと、メキシコの例ではさきほど ありましたように、天然の森にコーヒーを導入してアグロフォレストリーシステムの森というのが完成していました。もう一つの方法としては、インドネシアの 森で見られる例ですが、一般にプランテーション栽培、または牧草地だったところに先住民が20?40年という時間をかけて、森というのをデザインしていく という動きがあります。この段階を経て、少しずつ植生を変えていく動きがあるんですけども、例えば初年度は一つの作物で、次は別の樹木を植え、というよう なかたちで長い時間を経て自然というのを段階的に変化させ、最終的には森というのをかたちづくる方法をとっています。

この先住民の生産する商業作物ですが、やはりさまざまな用途を持った植物が栽培されており、エコシステムというのを十分管理しているというのがわかります。

多様な作物
アグロフォレストリーの森から得られる多様な作物
(とうもろこし、チリ、豆類など)

この写真でわかるように、とうもろこし、トマト、チリ、そしてアボガドなどいろいろな作物が生産されています。非常に有益な多様性の管理ですが、それは やはり先住民が、知識と経験を持って熱帯地域において活動してきたということがあります。これから生物的、また環境的な視点から見ていきたいと思うのです が、この調査は、メキシコを始め、南北アメリカ、アジアなどさまざまな地域で行われており、アグロフォレストリーシステムの非常に肯定的な面の影響という のをお見せできるかと思います。

まずその一つ、二酸化炭素の吸収というのが挙げられますが、気候変動が激しい地球において、この森が二酸化炭素を吸収するという機能は、地球温暖化の抑 制に役立つ部分だと思っております。そして私たちが活動しているメキシコのプエブラ州北部の地域では、1,000種類近くの鳥類が確認されていて、その多 くが絶滅の危機に立たされています。この鳥類にとっても最後の隠れ家という場所になっています。そして動物にとっても植物にとっても、とても重要な地域に なっています。

例えば、この鳥類に関してですが、やはりアグロフォレストリーシステム、特にメキシコのアグロフォレストリーシステムの森では多くの渡り鳥がカナダ、そ してアメリカからやってきて越冬しています。アメリカの消費者の間で調査をしたところ、約7,000万人の人々がバードウォッチングを楽しむという結果が あり、「鳥が棲む森で生まれるコーヒー」という付加価値というのをコーヒーに付け、さらに知識、その普及というのを深めていこうという動きも起こっていま す。

メキシコの地図(生物多様性)
生物多様性とコーヒー生産地を示したメキシコの地図

この赤い地域がコーヒーを栽培している地域で、緑色の土地が生物多様性の保護が必要とされる地域です。これからわかることは、コーヒーが栽培されている 地域は、生物多様性に富んだ場所でもあるということです。このようなことからも、生物が多く棲むところは、国定公園など保護されている地域ではなくて、 コーヒーが栽培されているところでもあるということがわかります。トセパン組合がある地域も、この赤い色の地域になります。

テラスでのアグロフォレストリー
斜面でのアグロフォレストリーシステム

これは山の斜面にあるアグロフォレストリーシステムを表しているのですが、この斜面の上部においてアグロフォレストリーシステムが行われていて、その下 の部分は他の方法によって農業が行われている場合もあります。そして一番下の方には、例えば海や川があるということも考えられますが、ここで一つ重要なの は、アグロフォレストリーシステムが標高の高いところで行われることによって、標高の低いところの地域、または人々にも恩恵がもたらされるということで す。例えば土壌の安定、環境の安定、バランスの取れた生態系がもたらされます。そして全体のバランスが非常に健全に働いているということで、住民、または 下流の川や湖なども多くの恩恵を受けることができます。

しかし、ここで問題となるのがやはり価格です。コーヒー、カカオを始めとして、ここ10年間、一般市場価格においては下落傾向が見られています。こうし た経済危機の中、森林は伐採され、若者たちは仕事を失って他の地域に働きにいくという現状も見られています。また村々には、年老いた人たちのみが暮らし続 けるという厳しい状況が強いられています。この経済的な危機は、コーヒーの生産国に対して大きな影響を与えています。コロンビア、インドネシア、メキシコ を始め、多くの生産者が住む国では、全体で500万人がコーヒー生産に携わる人たちであり、その周辺産業で働く人を含めると、2,000万人はゆうに超え るであろうと考えられています。

一方で消費国、例えばヨーロッパや日本といった地域では、一部の国々が多くの利益を独占してきたという現状になっています。他のラテンアメリカ諸国もそ うですけども、特にアメリカとカナダ、そしてメキシコの間で結ばれた自由貿易協定というものがあります。この自由貿易協定によって、結果的には非常に不平 等な条件のもとで私たちメキシコ、第三世界側が競争していかなければならないという現状が強いられています。具体的な例としては、北の国々は農民たちに補 助金などを与えて援助を続けていますが、一方で南の国々というのは補助金が農民たちに回らないようになってきてしまっています。

コーヒーの加工段階
コーヒーができるまで
(左上から時計まわりに、収穫作業、加工、コーヒーとして製品になるまでを示している)

コーヒー1キロ単位で生産者がどのような利益を得ているのかということをお話しますと、右下にある果肉のついた状態のコーヒー豆を1キロ販売しますと、 生産者に渡る収入は、約2ドルになると考えられています。一方で、生豆の状態(果肉を取った状態)ですと、2,5ドルの収入があると考えられています。そ して最終的に焙煎した状態のコーヒーになりますと、1キロあたり5ドルの収入が生産者に回ると考えられます。そしてこの1キロのコーヒー豆でどれくらいの コーヒーが飲めるかといいますと、一般的なコーヒー価格に換算しますと100杯になります。そして、この1杯は、平均1ドルで販売されているのが現状に なっています。

メキシコでは、サパティスタ解放戦線というゲリラ活動があります。これは、自由主義が北から持ち込まれることに対しての抵抗活動と考えられています。北 から押し付けられる政策というのは非常に不平等なものとなっています。この厳しい現状を前にして、生産者というのは組織づくりをしてきました。この組織づ くりをしていくことで、北とは直接競争できない分野で競争していこうという流れになっていて、一つのオルタナティブな考えになっています。実際、北の国々 からの多くの助けを得て、この商品はフェアトレード市場で販売され、そして利益をあげるようになっています。このようなかたちで北との連携を築くことで、 持続可能な生産というのを南北で築いていこうという動きが生まれています。

先住民が取ってきた農法が、人間的な部分を忘れずに近代的な農法と結びつくことで、フェアトレード市場に参入できるような流れが出てきつつあります。このような流れを確立することで、最終的に持続可能な栽培というのが可能になるかと思います。

メキシコは、有機栽培のコーヒーにおいては第一位の生産量を誇る国であり、その生産者組織の数も一番多いと考えられています。オルタナティブな市場の中 で、生産者が認証を得えようとする動きがありますが、この認証にもさまざまあり、例えば「木陰で生まれたコーヒー」としての認証があります。そして、最終 的には「持続可能なコーヒー」という名がつけられ、広まっていくことになります。認証印というのは環境、または生産を助長するだけではなくて、フェアト レードの市場にくい込むためにも役立っています。トセパンの場合、コーヒーは、日本で中村さんの企業(ウインドファーム)において、フェアトレードの方法 で販売されています。

反対運動の人
環境破壊、貧困などの社会問題に抗議する人びと

最後にこの写真を見ておわかりかと思いますが、このような反対運動というのは日々、多くなっていると私は考えています。と言いますのも、グローバル経済 において不平等な世の中が助長されることにより、苦しむ人々の数が増えているからです。例えば、世界の人口のうち、たった350人の人が、世界中の富の半 分以上を独占するという現状があるのです。

54%の飲料水というのが人間の活動によって使われていて、25%の鳥類が絶滅しました。そして全体では、毎日700種の動物が絶滅していっているとい う現状があります。ですから、皆さんに意識していただきたいのは、この地球環境を守ること、もしくは貧困にあえぐ人びとをいかにして助けられるかというこ となのです。実際には、貧困に苦しむ人びとは30億人を数えると考えられています。ですから、こうしたグローバル化が続けられていくのかどうか、深く考え ていただきたいと思います。

ガンジーの言葉に、「地球は人々の欲望のために存在するのではない」という言葉があります。その意識と思いを持って皆さんにメッセ?ジを伝えることで、今日は終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

2005/09/13

アルバロ・アギラル講演録 トセパン・ティタタニスケ協同組合の持続可能な取り組み

アルバロ

こんにちは。今回このような場を設けてくださって、ありがとうございます。

私たちアルバロ・アギラルとパトリシア・モグエルは、皆様に私たちの活動を紹介するためにメキシコから来ました。私たちは、今あるものとは違うオルタナ ティブなかたちで、この社会の発展を推進していこうという取り組みを行っています。そのオルタナティブなかたちとして、「団結」ということがあげられま す。これは、個人主義とは対極のところにある考え方です。ここでは、知識、技術を活かすということが、人びとへより良いサービス、そして空間をもたらすも のであって、個人に利益が与えられるものではありません。そして、このような知識、技術というのを用いて環境保護が行われており、次の世代、さらにはその 次の世代へと環境が守られていくことになります。また生産活動も、汚染または自然破壊をもたらさないかたちで行われます。

今日は、このオルタナティブな発展について、メキシコの例を用いて皆様に一つ一つご紹介したいと考えて思います。私たちが活動を行っている組合は、トセ パン・ティタタニスケという名前で、メキシコのプエブラ州北部のシエラノルテというところにあり、組合員は皆、ナワット族という先住民です。

トセパン組合が設立されたのは、今から約28年前です。組合名「トセパン」は、「団結すること。それが、皆が幸せになる道である」という意味を含んでい ます。現在トセパン組合には、小規模農家、約5,000世帯が参加しています。この5,000世帯というのは、だいたい6つの地域に分かれて住んでいま す。

トセパン組合のロゴ
トセパン組合のロゴマーク(団結を示している)

この中央にありますトセパンのシンボルマークなんですけども、握りこぶしは「団結」を意味します。そして二つの農具は、マチェテと言われる山刀と鍬です。

私たちは、活動を多様化させ、さまざまなかたちでプロジェクトを行っています。他のどの組織でも見られるように、組織の一番上には、組合員による理事会 が設けられています。そして、代表会議会の下に、助言を与えるアドバイザーたちがグループをつくるところがあります。そしてその下に、それぞれ異なる活動 をしているグループがあります。そして、ここでは持続可能な農法が行われています。化学肥料などは使わず、有機栽培で作物が栽培されています。その代表的 な作物の中にコーヒーがあり、その栽培方法はアグロフォレストリーシステムと呼ばれています。そして、コーヒーの他にオールスパイスという香辛料も栽培し ており、これは輸出作物として外国へも出荷されています。

メキシコでは、女性は全人口の約51%を占めています。私たちの組合では、女性の活動グループがあり、独自の生産活動を行っています。そして、エコツー リズム、観光も行われており、私たちの活動を知ってもらうためにエコツアーを実践しています。また、組合員自身が持続可能な材質や設計がなされた家屋を建 設し、そこに住んでいます。こうした活動を行っていくためには資金が必要になりますが、私たちは融資などを行う独自の金融機関も設けています。

この他、私たちの中心的な活動として、研修センターを設置し、そこでいろいろな知識や体験を積むという活動を行っています。

コーヒーの栽培から加工まで(イラスト)
コーヒー栽培の過程を示した図
(左上から右に向かって栽培・加工手順が示してある)

これは、アグロフォレストリーシステムによるコーヒー栽培を表したものです。中央にコーヒー栽培地がありますが、周辺に他の樹木も植えられています。図 全体では、コーヒーの収穫、さらにその利用方法などを紹介しています。一般的には、収穫の次に消費があります。しかし消費と言っても、コーヒーの場合はさ まざまな加工が必要となってきます。そして、右の方の図ですが、これは、コーヒーの加工から焙煎を経て、どのように食卓に届くかということが右から左へ、 中央に沿って紹介してあります。この図から、いかにして現地ですべての加工・処理がされているのかということがわかるかと思います。

皆さんは多くのコーヒー消費者のお一人だと思うんですけども、このような流れがあるということ、このような過程があるということを、コーヒーを飲むとき に考えていただきたいと思っております。しかし、やはり一般的にはコーヒーの裏側にどのような手が加えられているか、どのような作業があるか知られていな いと思います。

コーヒーの栽培においては、栽培に対する労働だけではなく、それにまつわる周辺の環境、例えば森からさまざまなコーヒー以外の作物が生み出されています。

アグロフォレストリーの場合、コーヒー以外にも、さまざまな大きさの木や収穫をもたらしてくれる果樹、作物が植えられ、多様な植生が共存しています。こ こから多様な産物が得られるのです。また、この森は、二酸化炭素や温暖化に大きな影響を与えるガスの吸収を行っています。この他、鳥を始め、さまざまな動 物などが住んでいます。また一方で、資源の活用において、水、そして土壌の活用においても均衡が崩れないよう心がけています。これらを環境の恩恵、そして この機能というのを一般に環境サービスと呼んでいます。

森からは、商業作物としてコーヒーだけが生み出されるわけではありません。そのコーヒー以外にも、さまざまな果物、フルーツなどが生産されていまして、 地域の市場だけではなく、その他の外国の市場にももたらされています。また、ハチミツも収穫できますが、この一帯の蜜蜂は一般的なヨーロッパ種ではなく、 メキシコの原生種になります。蝶と同様に、受粉に役立っています。そして薬草や鑑賞用の多くの植物も見られます。

こうしたことから、この森というのは生物多様性に富んでおり、私たちは非常に有用な森と考えております。ここで言う「有用」とは、この地域に住む人々だけではなくて、ここから生まれてくる作物を消費する皆さまにとっても有用な森という意味です。

アグロフォレストリーからの産物
アグロフォレストリーの森がもらたらす多様な産物
(コーヒー、オールスパイス、シナモン、蜂蜜、バナナなど)

この図の中央にアグロフォレストリーの森が描かれていますが、この一番下の小さい木、これがコーヒーの木になります。そして中央上の写真がコーヒーの実 です。同じコーヒー畑にはさまざまな木が植えられていて、中には20メートルほどの高さになるオールスパイス(香辛料)の木などもあります。コーヒーや オールスパイスの栽培が、組合員たちに収入をもたらす商品作物になります。

その他にも、マカダミアナッツを始め、シナモンなどさまざまな商品作物が栽培されています。もちろん市場に出すこともできる作物もありますし、自給用に も役立っているものもあります。このようなかたちで、私たちの森は生物多様性に富んでいて、私たちは「家族の生活にも役立つ森」というふうに表現していま す。

私たちの森で栽培される輸出作物は、コーヒーとオールスパイスの二つです。原材料として市場などに下ろすだけではなくて、最終的に加工して、最終消費者に届けるというかたちも取っています。

トセパン-ラベル
(左) トセパンコーヒーのラベル
(右) トセパンの生産物のラベルには、すべてこのイラストが使われている

コーヒーのパッケージは、女性が花束を抱えている様子をイラストにしたものです。これはこの地域に住む先住民の姿で、抱えている花束の花というも、この 地域の在来種です。この図は、この地域の文化的な活動を結びつけていこうということを表しています。また私たちのコーヒーは、農薬や化学肥料などは一切使 わず、の自然環境を守り、生活環境を守るという意味合いを含んでいます。この他にも、メキシコの原生の蜜蜂をつかって、ハチミツの生産もされています。栄 養素に富んでおり、医薬品や化粧品などにも役立てられています。 こうした生物多様性の豊かな森で、これを守りながら生産者をいかに保護するかということ が必要になってきます。

また私たちは、コーヒー栽培において出た廃棄物、そして、それらを利用してできた商品になります。以前は、コーヒー栽培地において、コーヒーの果肉など はそれを除去した後、川などに捨てられ、それが汚染源になっていたという現状がありました。私たちのトセパンでは、その廃棄物を活かして、それをもうひと つ別のかたち、つまり資源として活かしています。これを通し、私たちはキノコ、有機肥料、アルコール、そして油などを生産しています。

トセパンではさまざまなプロジェクトを行っていますが、その一つとしてまず苗床をつくる活動があります。私たちには、一年間で百万本の苗木を栽培する能 力があります。この苗床で生まれる木々は、異なる方法で用いられています。一つはコーヒーの木々を新しいものに更新していくということ、二つめは、栽培物 一般を多様化させるために、さまざまな苗木を植えています。そして、もうひとつが、時を経るにつれて原生種がなくなっているのですが、それを再生するため にも使われています。もちろん、この原生種を再生させるという事業は大切なことですが、森にやって来る鳥たちにとっても、食料として大切なものになってい ます。

そして、もう一つのプロジェクトとして、女性の活動を挙げてみたいと思います。持続可能な活動というのを実現させるために、女性の参加というものに重み を置いています。男性というのは一般的に、コーヒー畑など土地を耕して生活をしています。そしてその畑から生まれてきた産物を家庭の収入源にしています。 このトセパンという組織は、やはり女性も収入源というのをもって家族の生活の足しになるように活動を広げていけるように心がけています。今現在、20のグ ループがあり、それぞれ生産的な活動を行っています。グループ全体で480人の女性が参加しています。さまざまな研修活動を経て、家族に収入をもたらして います。

研修センター8
環境教育の研修センター「カルタイクスペタニロヤン」

私たちは、この生産活動を行う中で、研修活動または知識の向上を大切にしています。その目的のために、研修センターを設けています。このセンターの名前 は「カルタイクスペタニロヤン」と言い、ナワット語で「魂が開かれる場所、精神を高めるところ」という意味を持っています。この研修施設なんですけども、 生産活動ができるそれぞれの場所を備えています。また、研修活動を推進するために、小さな図書館やコンピュータールームを設けています。

この研修施設、研修活動を通じ、活動というのが実質的に持続可能になることを考えています。この研修センターの目的は、能力を高め、またはさまざまなプ ロジェクトを実施するための能力や知識づけというのが行われています。この研修事業が進むことで、この地域のおいて持続可能な活動が行われています。そし てこれらの中に研修施設や宿泊施設が設けられています研修施設では、そこで食べられる食料も作られています。また一方で、施設内ではさまざまなサービスが 提供されており、宿泊施設などを設け、組合員が来た時には宿泊できるようにしています。

持続可能、そして生活環境の保護について話をしておりますけども、この中で注目すべきは環境教育というものの実践です。環境教育を通じて、先住民このナ ワット族の文化・知識が継承されていくようにしています。その環境教育の実践の場として、コーヒー畑の中に小さなスペースを設けています。

コーヒー畑での環境教育
コーヒー畑での環境教育

組合員の多くが仕事の場としているところで環境教育を行うということが、実際に生物多様性というものを間近に見る機会にもなります。実際このコーヒーが 栽培される畑では、コーヒー以外にも約150種の植物が栽培、または生育しています。私たちの地域全体では、コーヒーが栽培されている地域では、約200 種類の鳥類が確認されています。さまざまな植物の利用方法、そして多くの鳥類が棲む場所というのを忘れないようにするために、その研修の場としてコーヒー 畑の真ん中に建物をつくりました。この地域では、実際の森が教育のために役立てられています。

次に、エコツーリズムについて簡単に説明したいと思います。エコツーリズムは、環境ばかりでなく、文化の多様性を保護する役割も果たしています。観光客 にとって環境教育の場であるということで、非常に重要な役割を果たしています。森があったり、文化遺産があったり、先住民がどのように生活しているかとい うことを知ることができます。

研修センター
環境教育センターの建物内
(地元の竹など出来るだけ自然素材を利用して建てられている)

エコツーリズムの宿泊施設や研修施設には、建材として主に竹を使っていて、窓枠、柱すべてが作られています。この地域にはさまざまな文化遺産があり、非常に観光資源には恵まれた場所となっています。

エコツア-1
エコツアーでの訪問場所
エコツア-2
エコツアーでの訪問場所

また、エコツアーを通じてたくさんの方にここを訪れていただくことで、コーヒーを始め、この周辺地域で何が起きているのかということを知ってもらいたい という目的も持っています。そして、このエコツアーを通じて、コーヒーの栽培とその加工にはどのような作業が必要なのか。そういったことを私たちがお伝え することができると思います。こうした方法で、直接、消費者の皆さんがこの地に足を運んでくれましたら、「コーヒー」というものの本来の意味が分かってい ただけるかと思います。そして、このコーヒー栽培の周辺環境をご理解していただくことで、消費者の皆さんの認識や理解も高まり、これが安定した価格への動 きにもつながってくると思います。

トセパントミン
組合内の金融機関トセパン・トミン

これまでご紹介してきたように、私たちはさまざまなプロジェクトに取り組んでいます。取り組むにあたって、やはり融資というものが必要になってきます。 一般的なメキシコの銀行のことをお話しますと、やはり農村に対して融資をしてくれるという機関は見当たりません。私たちも、敢えてそのような金融機関に融 資をお願いするということはしていません。やはり農村地帯というのは、金銭という面で非常に困難に直面しています。一般的な銀行というのは、集めたお金は 農村に投資せず、近代的な工業の方に投資します。例えば、持続可能な活動を模索する農村の人々たちは、地域にある資源や資金を独自に活用するという考えが あります。私たちの資金は非常に少なく、活用はしていますが、困難に直面しています。そのようなことから、地域内のお金が、その地域で最大限活用されるよ うに活動を推進しています。そこで、私たちは独自の金融機関というのを設置するに至りました。この金融機関は、組合員によって運営されています。ここで活 用されるお金は、同じ組合員から集められたお金です。そしてその貯蓄は、組合員たちに融資されます。この金融機関の名前は「トセパン・トミン」と言いま す。

トセパントミンのロゴ
トセパントミンのロゴマーク

ナワット語で「皆のためのお金」という意味です。

貯蓄額を年代順に見ていくと、1998年から順に多くなっています。一方で、年を追うごとに融資額も増えていっています。2004年になると、当初の額 よりもはるかに大きな貯蓄額になっています。1998年から2004年の額を見ると、その貯蓄額と融資額は10倍になっています。トセパントミンでは、よ りよいサービスを提供するために3つの支店を設けています。そして、さまざまな商業活動を支援しています。融資をする際には、一般的には担保が必要です が、トセパントミンでは必要としません。代わりに「言葉」、つまり借り手の言葉を信用して行われています。今までこの金融機関がうまれてから、現在にいた るまで、融資のこげつきというのは一切ありません。

持続可能な家屋(イラスト)
持続可能な家屋や居住環境を示したもの

このイラストは、組合内の持続可能な家屋を表しています。この家屋は、暮らす人が威厳ある生活が送れる場所であると同時に、その周囲にある資源を活用し たつくりになっています。まず最初に挙げられるのは、雨水の利用です。そしてもうひとつは、太陽光の利用です。太陽光パネルを利用して、太陽光を最大限、 そして有効に活用しています。また、周囲にある空き地を利用して食料生産なども行っています。家や農場から出る廃棄物を利用して有機肥料もつくられていま す。

養蜂の壷
巣箱ではなく、壷を利用した養蜂

これは蜂蜜を取るための壷です。これはさきほども申し上げましたが、この蜂蜜には、医療効果や美容効果があります。これが、蜜蜂の巣がある壷なんですけ ども、ここからハチミツが採取されます。一般的にはハチミツは巣箱から採取されるものだとお考えだと思います。この蜂の特徴というのは、人を刺すようなこ ともなく、一般的な蜜蜂とは異なります。巣箱を使うことはなく、壷を使って蜂蜜を採取しています。

コーヒー、そしてハチミツを始め、これらの産物は、フェアトレード市場において皆さまにお届けできる商品になると思います。トセパンという生産者組合が 持続可能な活動というのを展開し、これらの活動を持続していくために、組合員自身による団体なんですけども、研修、知識の継承というものを専門的に行うグ ループがあります。このようなかたちで生産者組合自身が彼らの知識または経験というのを継承していくための活動を推進していく団体というのを設けていま す。このような活動を続けることで、さらに持続可能なかたちが作り上げられていっているのです。地域というのが持続可能であるためには、まず組織というの が持続可能でなくてはいけません。このような動きを、私たちはトセパンという生産者組合を通じて模索しています。

2005/05/07

アグロフォレストリーツアー

★2005年6月9日~?6月20日アグロフォレストリーツアー2005 開催★

『森のカフェへようこそ!-アグロフォレストリーの森が育むいのちと文化-
メキシコの持続可能な地域づくりと森を守るコーヒー栽培』

世界で最初に有機コーヒーを栽培した国と言われるメキシコ。 この国では、20部族にも及ぶ先住民族たちが、昔から、森の中で「アグロ フォレストリー(森林農法)」によって、コーヒーを育ててきました。

「アグロフォレストリー」とは、森を残したまま、コーヒーと一緒に さまざまな果樹や作物を植える栽培方法のことです。この方法は、 コーヒーが分散していて作業も収穫も手間がかかりますが、土壌を豊か にし、農薬や化学肥料を使用せずに作物を栽培することができます。 また、多品目栽培なので、コーヒーが不作の場合でも他の作物で 生活していける可能性が高く、比較的安定した経営を行うことができる のです。場所によってはアグロフォレストリーシステムをとっている ところの方が、一般的な森林よりも生物多様性が豊かな場合もあります。 アグロフォレストリーは、森を守るという点で、地球温暖化防止の面から も非常に注目されている優れた農法なのです。

アグロフォレストリーのコーヒー畑
アグロフォレストリーのコーヒー園

今回、メキシコから、アグロフォレストリーの専門家パトリシア・モグエル さんと、有機コーヒー生産者グループ「トセパン」のメンバー、アルバロ・ アギラルさんをお招きし、お話をうかがいます。
トセパンの人たちは、熱帯雲霧林という生物多様性豊かな森で、アグロフォレ ストリーによってコーヒーを栽培してきました。その暮らしの中で、彼らは 自分たちの文化や伝統を守り伝えてきたのです。トセパンの人たちにとって、 アグロフォレストリーは単なる栽培方法ではなく、生き方そのものであると 言えます。

お二人には今回、アグロフォレストリーの重要性、森と共に生きること、 美味しいコーヒーの秘密、そして、日本に暮らす私たちとコーヒーの森との つながりなど、たくさんの素敵なお話をしていただきます。

お近くの会場で、皆さまをお待ちしています。

メキシココーヒー物語 第1話 メキシコにおけるコーヒー栽培

北米大陸、アメリカの南に位置するメキシコ。この国は、世界で最初に コーヒーの有機栽培に取り組んだ国の一つだと言われている。生産量と しては、世界で第5位を誇る。


メキシコの先住民によるコーヒー栽培(堆肥散布)

メキシコにおけるコーヒー栽培の特徴として挙げられるのは、まず、その 生産に携わる先住民族の比率が高いということである。コーヒーの生産も 販売も含め、この分野に関わっている人の数は約300万人で、そのうち60% 近くがメキシコで知られている56の先住民族のうちの30の民族に属している。 彼らは、18世紀末、ヨーロッパを通じてメキシコにコーヒーが導入されて以来、 アグロフォレストリー(森林農法)と呼ばれる伝統的な栽培方法によって、 森の中で、さまざまな樹木や作物と共にコーヒーを育ててきた。

また、2つめの特徴としては、コーヒー生産地域の分布が非常に広いという ことである。そして、これらのコーヒー生産地帯は偶然にも、メキシコに おける生物の宝庫と呼ばれる地域と、ほぼ完全に一致する。つまり、コーヒー 栽培地域は、豊かな生物多様性を誇るばかりでなく、さまざまな先住民族が 織りなす多様な文化や伝統が息づいている場所なのである。

つまり、メキシコにおいて、アグロフォレストリーによる持続可能な コーヒー生産を守り、伝えていくことは、この地に暮らすさまざまな動植物 を守るだけでなく、それぞれの先住民族が、コーヒー栽培を通して築いてきた 文化、伝統、知恵を守り伝えていくという点でも非常に重要なのものなのである。

2005/04/28

アグロフォレストリーツアーゲスト紹介

●パトリシア・モグエル

(生物学者、環境活動家、ラテンアメリカン大学教授)
パトリシア1
パトリシア・モグエル

貧しい人の依頼は無償で引き受けるという社会派の弁護士であった父の 影響から、幼い頃より社会問題や環境問題に触れながら育つ。
高校卒業後、中東やヨーロッパを旅し、地元の人々や自然に触れ、各国の 社会状況を目の当たりにする。帰国後は大学へ進学し、生物学を専攻。 その後、アグロフォレストリーに基づく有機コーヒー栽培や先住民族の 研究に取り組む。

メキシコにおけるアグロフォレストリー研究の第一人者であり、国内は もとより、国外でも積極的に講演を行いながら、アグロフォレストリーの 環境や地域文化に対する重要性を広く訴えている。

「研究は、あたまでなく、心でする」と言う彼女は、常にフィールドを歩き、 理論に限らない、現場に直結したアドバイスや情報を生産者に提供している。 現在は、先住民ナワット族の有機コーヒー生産者組合「トセパン」とともに、 モデルプロジェクトとなるべく、持続可能な取り組みを行っている。 私生活では、二児の母でもある。

●アルバロ・アギラル=アヨン

(トセパン・ティタタニスケ地域農業共同組合 組合員)
アルバロ(赤いTシャツ)
アルバロ・アギラル=アヨン

大学院で農学や農村開発を学んだ後、メキシコ各地で農村開発に携わる。 社会的に厳しい状況に置かれている先住民族たちを救いたいという強い思い から、1980年からトセパン組合の設立に中心的に関わり、現在まで技術 アドバイザーとして組合で持続可能な取り組みを行ってきた。

ナワット族ではないが、組合運営の中心的な役割を果たしており、組合の 代表者と同じく、メンバーたちから非常に厚い信頼と尊敬を得ている。

●有機コーヒー生産者グループ「トセパン・ティタタニスケ」

トセパンのロゴ
トセパンのロゴマーク 「団結」と「わかちあい」を表したトセパンのロゴ
トセパンメンバーとアルバロ(赤いTシャツ)
トセパンメンバーとアルバロ(赤いTシャツ)

1977年、メキシコ・プエブラ州で結成された先住民ナワット族による生産 者組合。
組合名であるトセパン・ティタタニスケは、ナワット語で「団結と協力が 幸せへの道である」ということを意味する。5,800世帯にも及ぶ組合員は、 組合本部があるケツァーランの町を中心とした7地域66のコミュニティに 暮らしている。

この一帯には、熱帯雲霧林と呼ばれる生物多様性の豊かな森が広がり、 伝統的に「アグロフォレストリー」によって有機コーヒーや果樹が育て られてきた。

組合が結成されて以来、トセパンはコーヒー栽培をベースに、香辛料、 キノコ、ナッツ、果樹等の作物栽培や畜産なども行っている。特徴的なのは、 これらの活動が、地域内で資源をすべて循環させて行われているということ である。また、トセパンでは、組合設立当初から女性たちが組合の活動に 活発に参加してきた。組合内での作物栽培や畜産に従事するだけでなく、 女性が主体となって、パン屋、トルティーヤ(とうもろこしの粉を使った メキシコの主食)製造、日用品店が運営されており、女性の自立を目指した 多様な活動が積極的に行われている。

また、組合独自の共同金融機関「トセパントミン」を設立。地域内に43の 支店を設け、組合員に貯金や低利子ローンなどの金融サービスを行っている。

トセパンの組合員主体の多様で持続可能なコミュニティづくりはメキシコ 国内でも高く評価されており、1995年に「フォーレスト賞1995」を、2001年 には「環境賞2001」をメキシコ政府から受賞している。

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コーヒーの樹とトセパンの生産者

ナワット族に受け継がれてきた「連帯」、「協力」、「分かち合い」と いう考えのもと、近年は、これまでの活動に加え、環境教育やエコツアー など新しいプロジェクトにも取り組んでいる。

アグロフォレストリー ツアースケジュール

6/9(木) 14:00?16:00 <熊本県熊本市>
講演会

【会場】:フェアトレードショップ 『はちどりの木』
(熊本市河原町2番地 河原町商店街内)
【参加費】:500円(有機コーヒー付き)
【定員】:20名 (◆要予約)
【問い合わせ/予約】:『はちどりの木』
TEL/FAX:096-352-9822
E-mail:hachidorinoki@dj.pdx.ne.jp

午後 <熊本県水俣市>
ガイアみなまた 訪問 (交流会)
6/10(金) 午後 <熊本県水俣市>
ほっとはうす 訪問 (交流会)
6/11(土) 13:00?16:30
(12:30開場)
<福岡県福岡市>
『ようこそ森のカフェへ』

?いのちと文化を守るコーヒー栽培?
メキシコからパトリシア・モグエルを迎えて
チラシ表3

☆一日だけオープンする森のカフェには、フェアトレードや国際協力、自然食品のブースもあります。ゆったりとコーヒーを飲みながら、素敵な人たちに出会える。そんなカフェに遊びに来ませんか?☆

【会場】:ベイサイドプレイス博多埠頭(小ホール)
(福岡市博多区築港本町13-6)
【ゲスト】:パトリシア・モグエル、 アルバロ・アギラル=アヨン
【コーディネーター】:中村隆市(ウインドファーム代表)
【参加費】:700円 (有機無農薬のコーヒー付き!)
【内容】
パトリシアさんとアルバロさんに、森でのコーヒー栽培、私たちが飲むコーヒーとメキシコや途上国とのつながり、そしてトセパンの持続可能な取り組みなどについて、わかりやすく話してもらいます。
その後、コーディネーターに中村さんを迎え、会場も交えての意見交換を行います。
【共催】:(株)ウインドファーム、ナマケモノ倶楽部
【協力】
ピースボート、ワールド・エコロジー・ネットワーク、チェルノブイリ支援運動・九州、NGO福岡ネットワーク、債務と貧困を考えるジュビリー九州、マナキッチン
【後援】:メキシコ大使館、グリーンコープ連合
【助成】:福岡国際交流協会
【問い合わせ】:ウインドファーム(担当:岩見知代子)
Tel:093-201-8382/Fax:093-201-8398
E-mail:info@windfarm.co.jp

6/14(火) 16:30?18:30 <京都府京都市>
公開講座

【会場】:京都精華大学 清風館 C-101教室
【参加費】:無料
【問い合わせ】:細川研究室
Tel/Fax:075-702-5213 E-mail:k22m@mac.com
詳しくはこちら

6/15(水) 13:00?14:30 <京都府京都市>
公開講座

【会場】:京都精華大学 黎明館 L-201教室
【参加費】:無料
【問い合わせ】:細川研究室
Tel/Fax:075-702-5213 E-mail:k22m@mac.com
詳しくはこちら

18:00?21:00 <京都府京都市>
講演会
講座『言葉をつむぐ』

【会場】:京都 YWCA(京都市上京区室町通出水上る近衛町44)
【参加費】:1,000円
【問い合わせ】:論楽社  Tel/Fax:075-711-0334

6/16(木) 18:30?20:30 <愛知県>
『森のカフェへようこそ!』

?アグロフォレストリーの森が育むいのちと文化?
メキシコの持続可能な地域づくりと森を守るコーヒー栽培

【会場】:ウィルあいち
【内容】:アグロフォレストリーの現場の話
森を守ることができる1杯のコーヒーの物語。
「私は私ができることをする….」始めの一歩の講座です。
【参加費】:1,000円(当日1,500円)
※マイカップ持参ください。 ティータイム(森がはぐくんだコーヒー)あり。
【定員】:50名(◆要予約)
【問い合わせ・予約】:ウィルあいち1Fフェア・トレードショップ風”s内
GAIAの会 土井ゆきこまで
Tel/Fax:052-962-2638
E-mail:renraku@gaianokai.org / huzu@huzu.jp

6/18(土) 午前 <東京都>
大地を守る会にて講演会 (非公開)
6/19(日) 18:00?20:30
(17:30開場)
<東京都>
イベント
『夜の森』

-中米メキシコより、パトリシア・モグエル氏を迎えて-
×100万人のキャンドルナイトプレイベント

森と自分の暮らしにキャンドルを灯してそこから見えるであろう世界。 採取→生産→消費→廃棄のなかの、表面化しない「採取」で起きている。 それに対して「できること」としての、森栽培というオルタナティブの可能性、森林栽培のような、「森とつながる暮らし」の提案 +キャンドル点灯式(キャンドルナイトのお話)。

【ゲスト】:パトリシア・モグエル、アルバロ・アギラル・アヨン
【聞き手】:中村隆市さん
【参加費】予約:1,800円/当日:2,000円 300Nまで使用可能
エクアドルコーヒー飲み放題
【会場】:カフェスロー(府中市栄町1-20-17) www.cafeslow.com
【問い合わせ/予約】:カフェスロー
Tel:042-314-2833 E-mail:cafeslow@h4.dion.ne.jp
【主催】:ナマケモノ倶楽部、スローウォーターカフェ
【共催】:カフェスロー、ウインドファーム、ワールドエコロジーネットワーク
【後援】:メキシコ大使館

 

パトリシアからのメッセージ

*日本の消費者のみなさんへ
世界で最初に有機栽培のコーヒーを生産したのはメキシコです。この有機栽培とい う生産システムは、地域レベルで見ても国際レベルで見ても、環境に対して多くの利 益をもたらしています。例えば、生物多様性の保全、土壌の保全、気候の改善、地球 温暖化の影響の削減、洪水、火災といった自然災害の軽減といったことです。

また、 メキシコでは、有機栽培に基づくコーヒー生産は、毎年300万に近い雇用を生 み出 しています。例えば、有機栽培でコーヒーを生産する場合、慣行栽培よりも多くの 土 地を耕作する必要が出てきます。平均して1ヘクタール当たり160日間の雇用が必 要となるのです。
パトリシア2
笑顔のパトリシア
 しかし、私が日本の消費者のみなさんにお願いしたいのは、メキシコでのコーヒー の有機栽培(これは、伝統的に日陰樹を利用した栽培方法を取り合わせたもの、アグ ロフォレストリシステムを含む)を、単に環境にやさしいとか、お金や雇用を生み出 すものとしてだけ見ていただきたくないということです。

これはどういうことかと言 いますと、コーヒーの有機栽培には、さまざまな文化や信念、 そして知恵や知識が凝 縮されており、社会や文化面から見てもその利益、恩恵は 計り知れないということで す。

メキシコでは、約32族もの先住民がコーヒー生産に従事しており、彼らはそれ ぞれに伝統や慣習、代々受け継がれてきた人生観などを持っています。つまり、コー ヒー生産の周辺地域では、それぞれの先住民族が織りなす文化の多様性を見ることが できるのです。

こうしたことから、先住民族が伝統的に行ってきたアグロフォレスト リを維持し、その 生産物であるコーヒーをフェアに取引するということは、単に生物多様性や環境を 保全しているというだけでなく、先住民族が現在まで守り続けてきた 文化の多様性を保護することにもつながるということです。

そして、この文化の中に は、「分かち合い」、「協力」、「尊敬と連帯」といった言葉に 代表される先住民の 考え方や姿勢も含まれています。近頃、メキシコでは、 生物多様性の保全に関してそ の重要性を指摘する研究者は多くいます。
しかし、こうした文化の多様性に目を向け ている研究者はいないのではないでしょうか。 重要なのは、生物だけでなく、先住民 族たちの文化の多様性をいかにして守り続けて いくかということなのです。

そして、これができるのは、フェア・トレードやこれと似たような取引―自由貿易に 取って代わる貿易―を通してだけだと私は思うのです。このためには、生産者と消費 者の連帯を築いていくことが必要となってくるでしょう。

生産者と消費者がお互いの 立場を理解し、ともに協力しあっていくことが大事なのです。 私は今回、中村さんと 一緒に2つの生産者グループを訪ねました。彼らは、常に「協力し、 分かち合う」と いう姿勢を大切にしていました。彼らのこうした姿勢は、フェア・トレードに 取り組む上で、また、さまざまな社会問題と闘っていく上で、とても大切な考え方だと思っ ています。

最後に、もう1つ聞いていただきたいことがあります。私が今まで述べてきたコー ヒーは、単なる”オーガニック(有機栽培の)コーヒー”ではありません。確かに生産 方法としては有機栽培です。しかし、前にお話しましたように、この生産方法には生 態系や環境だけでなく、先住民族の文化や信念をも持続的に守り続けていこうという 姿勢が含まれています。

そこで私は、このコーヒーを確信を持ってこう呼びたいと思 っています。
“サステイナブル(持続可能な)コーヒー” と。これには、次に述べる 4つの要素が含まれています。まず環境の豊かさ、2つめが生活や人生の豊かさ、そ して3つめが生産物の質の高さ、4つめが精神的な豊かさです。この”サステイナブ ル”という考え方は、とても大切なことなので、ぜひ皆さんに知っておいていただき たいと思うのです。

今後は、研究のみならず、消費者の立場にある中村さんとともに、協力しあい、同 じ経験を分かちあいながら、メキシコの生産者と日本の消費者のみなさんとの連帯を 築いていきたいと思っています。それが、私の夢なのです。

メキシコ有機コーヒー栽培の現場を訪ねて

世界で最初に有機コーヒー栽培に取り組んだ国、メキシコ。この国では、 20部族以上もの先住民族が、伝統的にコーヒーを栽培してきたと言われている。
彼らは、豊かな森でコーヒーを育てながら、独自の文化や伝統を築いてきた。 しかし、コーヒーの国際市場価格の低迷や大企業による買い叩き、それに加え、 貧困などの社会問題によって、こうした伝統的な栽培方法や文化は失われ つつある。
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プエブラ州の雲霧林
 そんな中、コーヒー生産者たちとともに豊かないのちの森を守ろうと闘う 一人の女性がいる。彼女の名前は、パトリシア・モグエル。生物学者でもあり、 環境活動家でもある彼女は、メキシコの「アグロフォレストリー(森林農法)」 (※注1参照)研究の第一人者であり、現在は、メキシコのプエブラ州ケツァ ーランにあるトセパン・ティタタニスケ共同組合と共に、持続可能なコミュ ニティづくり向けて活動している。

私は、パトリシアに案内され、このトセパン組合を訪れた。
(文/岩見知代子:ウインドファームスタッフ)

説明するパトリシア.jpg
パトリシア
トセパンは、5,300世帯もの生産者からなる組合で、メンバーは皆ナワット 族である。彼らは、ケツァーランの町を中心とした7地域66のコミュニティに 暮らし、アグロフォレストリーによる有機コーヒー生産をベースに、コショウ、 ナッツ、キノコの栽培や畜産にも取り組んでいる。

特徴的なのは、これらの活動が、地域内で資源をすべて循環させて行わ れているということだ。また、トセパンでは、組合設立当初から女性たちが 組合の活動に積極的に参加してきた。女性グループによるパン屋、雑貨店運営や トルティーヤ(とうもろこしの粉からつくられたメキシコの主食)販売が行われており、 女性の自立を目指した多様な取り組みが活発に行われている。この他に環境教育や エコツアーの取り組みも数年前から始めている。

トセパンが設立されたのは、今から約20年前。自分たちの作ったコーヒーを 仲介業者に買い叩かれる現状に対抗するためだった。そして、この設立の時から トセパンに深く関わり、技術面だけでなく、組合運営全体のアドバイザーを行っ ている人物がアルバロ・アギラルである。アルバロは、ナワットの人たちを救い たいという強い思いからこの地へ移り住み、組合をここまで引っ張ってきた。彼 は、組合で唯一ナワット族ではないのだが、組合の代表と並ぶほどメンバーの信 頼と尊敬を集めている。
コーヒーの樹と生産者.jpg
コーヒーの樹と生産者
そして今では、トセパンは、メキシコにおける有機コーヒー生産者グループの モデル的存在にまでなっており、実際、その多様で持続可能な取り組みは、メキ シコ政府からも高い評価を受け、1995年には、「フォーレスト賞1995」を、2000 年には「環境賞2001」を受賞している。

組合名「トセパン・ティタタニスケ」は、ナワット語で、「団結すること。 それが、皆が幸せになる唯一の道である」ということを意味する。その名の通り、 トセパンをここまで団結させてきたのは、良きアドバイザー、アルバロの指導力 と愛情に満ちた人間性ばかりでなく、ナワットの人たちが昔から大切にしてきた 「協力」、「分かち合い」という考え方、生き方なのである。

ケツァーラン一帯は、生物多様性が非常に豊かな熱帯雲霧林に属しており、 いつも湿度が高い。雨が降ると、雲が低く降り、それと同時に、森からは深い緑 の香りが立ち上る。私がケツァーランで過ごした4日間、霧がかからない日はな かった。さまざまな植物や動物が暮らし、豊かな土壌が広がるこの森は、コーヒー に豊かなコクと香りをもたらし、ナワットの人たちの文化と伝統を育んできた。

滞在中、アルバロと共にトセパンを案内し、コーヒーの森のことを話してくれた パトリシアは、森を守りながらコーヒーを栽培するアグロフォレストリーによっ て、この地に住む生物だけでなく、そこで育まれてきたナワット族の生活や生き 方そのものが守られてきたのだと教えてくれた。アグロフォレストリーの重要性 を指摘する研究者たちは、生物多様性を守るということを強く訴えても、それが、 この地で生きてきた人たちの文化の多様性をも守っているということにはあまり 注目しない。けれど、それがとても大切なのだとパトリシアは言う。

そして、それを守るため、彼女は生産者たちと闘っている。「研究は頭だけでなく、 心でするもの」。そう言い切るパトリシアが、単なる研究者ではなく、自ら現場で行動 する活動家である所以はそこにある。

パトリシアの父親は、貧しい人たちのためには、無償で弁護を引き受けていた という社会派の弁護士だった。その影響から、幼い頃より社会問題や環境問題に 触れてきた。「分かち合うという気持ちを持つこと。そして、社会に矛盾や疑問 を感じたら、それをはっきりと訴え、行動することが大切だ」という父親の教え を、彼女はいつも心の中に置き、大切にしてきた。

「今、世界で起こっている環境問題はとても深刻で、どうしようもないところ まで来ているのかもしれない。それを考えると悲観的になってしまうこともあり ました。でも、今は違います。私は、ずっと先の世代のために自然や文化を残し たいと闘っているメキシコの生産者たちと、日本の人たちとの強い絆をつくって いきたいのです。持続可能な社会を目指し、私は大きな希望を持ってこれに取り 組んでいきたいと思っています。これからもつながっていきましょう。その夢に 向かって。」

私がメキシコを去る日、彼女が笑顔で語ったその言葉を今でもよく覚えている。 そのとき、私は初めて「一杯のコーヒーから始まる物語」の原点を見たような気 がした。
そしてこの6月、その夢をたくさんの人と分かち合うため、パトリシアとアル バロが来日する。私が彼らやトセパンとの出会いで感じたつながりを、コーヒー を飲んでくださる皆さんにもぜひ感じてもらえたらと心から思う。豊かないのち の森から始まるこのコーヒー物語は、きっとあたたかさとやさしさに満ちている はずだから。

ナワット族の女性たち.jpg
ナワット族の女性たち

2005/02/21

サンパウロ新聞より 「有機コーヒー・キャピタル宣言(終) 心も体も豊かな生活づくり・大事にしたい新潮流「スロービジネス」」

以下はサンパウロ新聞に掲載された記事です。


中村氏は、ジャカランダ農場とのフェアトレードの活動をもとに、新たな動きを進めている。

中村氏たちがこのほど、日本で発刊した「スロービジネス」という書籍がある。市民運動が取り組んでいるような環境保護や平和の取り組みをビジネスという形で、日常的に実行していくものだという。

大手フランチャイズ・チェーン店などに代表されるハンバーガーなど、お手軽なファスト・フードに対して昨今、「スロー・フード」という手をかけた人間本来の食事が見直されている。

それらと同じように、「ゆっくり急がず、自分たちでできることを愉(たの)しみながら確実に進めていく」というのがスロービジネスの基本姿勢だ。

環境運動というと、悲愴で堅苦しいイメージがつきまといがちだが、中村氏は「いくら環境運動が大切だと言っても、愉しくなくては続かない」と強調する。 自分自身のペースで愉しんでやることが、自然に人々の共感を得ることにつながり、その輪が広がっていく。その場ですぐに結果が表れなくても、長い目で見た プロセス(過程)が重要になる。

中村氏は言う。「『スロー』という哲学は量ではなく、質を大切にするということ。単に遅いものではなく、時間を大切にし、自分のペースでできることを優先する。自分が大切にしていることを大事にすると、良い出会いがある」と。

現代は何事も競争社会に重きが置かれ、失敗が許されない状況となっている。そのため、自分自身のことや周りのことをじっくりと考えている余裕がない。中村氏は自給的な暮らしに戻ることで、精神的にも肉体的にも豊かな生活をつくり、学ぶことに重点を置いている。

「私自身、自給的な暮らしをしていましたが、一人で自給自足の生活はできない。逆に他人とのつながりが必要となり、助け合うことの愉しさが生まれてくる」

持ちつ持たれつのシェア(分かち合い)な関係が、さらなる人間関係を深める。

中村氏は昨年五月から「スロービジネス・スクール」という新しい動きを始めた。参加者が払う学費により、実際に会社をつくってスロービジネスを展開していくもので、同時に社会を良い方向に変えていく運動でもあるという。

応募して集まったのは若者のみならず、中年や五、六十歳代の人もいた。若い世代は、大学で勉強して知識や思いを身に付けても、それらを活かす職場がない。中年の人の中には、自分たちが行なってきた仕事に疑問を持っていたようだ。

中村氏は同スクールの実施により、学問とビジネスの要素を融合し、暮らしを愉しんだり、仕事を愉しむことを重要視している。

中村氏はこれらの活動のヒントを、カルロス氏をはじめとする様々な人々とのふれあいの中から生み出し、実践している。

「カルロスさんとは、取引というような関係ではなく、とにかくこの人と一緒に何かをやりたいという気持ちでした」と」振り返る中村氏。カルロス氏が実践し遺した熱い思いを胸に、今後も新たな活動を広げていく考えだ。

なお、「スロービジネス」など詳細については(株)ウインドファームのホームページで紹介されている。アドレスは、http://www.windfarm.co.jp/(おわり・松本浩治記者)

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