トセパンが「ヨーロッパ・マイクロファイナンス 賞 2017」を受賞

【トセパン協同組合の金融機関(銀行)トセパントミンが
ヨーロッパ マイクロファイナンス アワード2017を受賞】

森林農法によって、森を守りながら有機コーヒー栽培を行っているトセパン協同組合(以下、トセパン)。彼らにとって森林農法による有機栽培は大変重要な活動ですが、その他にもさまざまな持続可能な地域づくりの取り組みを行っています。その代表的なものが、1999年に組合内に設けられた独自の金融機関(銀行)「トセパン・トミン」です。
今年、このトセパントミンが「ヨーロッパ マイクロファイナンス アワード2017」を受賞したとの嬉しい知らせが届きました。


       賞状を持つトセパントミン代表のアルバロ・アギラルさん

トセパンは、1999年に組合内に自分たちの「小さな銀行」をつくりました。貧困であるために、一般の銀行から融資を受けることができなかった組合員(99%以上が先住民)が、事故や病気などでお金が必要になったときに「高利貸し」からではなく、低利でお金を借りられるように、みんなで少しずつお金を出し合って自分たちの銀行をつくったのです。

今ではトセパントミンは、少額の融資を始め、預貯金、保険、送金といった金融サービスを提供すると共に組合が目標とする「生活の質の向上」のために金融以外のサービスも行っています。トセパントミンという名称は、先住民ナワット族の言葉で「みんなのお金」を意味します。組合のあらゆる活動の基本にある「連帯」「助け合い」といった意識が、このトセパントミンの活動を支えています。今回の受賞の決め手となったのは、この10年間、トセパンが取り組んできた「地域住民の住宅の質を改善するプロジェクト」でした。

●トセパントミンの住宅改善プロジェクトとは?
メキシコでは、およそ3500万人が良い住宅環境にないと言われています。新築の半分、また既成住宅の3分の2が自分で建てた家で、多くの住居は質の悪い資材を使っていたり、きちんとした建築技術もなく建てられており、問題も多くかかえています。

トセパンがあるクエツァラン市一帯でも、トウモロコシの茎とトタンで作った雨風もあまりしのぐことができないような住宅に暮らす生産者が多数いました。隙間だらけのため、雨が降ると家の中が濡れるという始末で、この地域は特に雨が多いことから多くの人たちが常に濡れた、また湿った住宅で生活していました。

その上、家庭で使用するカマドも昔からの非効率なつくりであったため、多くのマキ(木材)が必要になる他、主に女性たちがカマドから出る多量の煙を毎日吸うことで、肺の病気にかかるという状況でした。


       旧式のカマド

そこで2007年から国のサポートも受けて住宅プログラムを開始。まず、住宅のための建材を調達・製造する組合が新たにトセパン内に作られました。その組合が一括して外部から建材やその材料を仕入れることで、組合員たちに安く提供できるという利点とともに、新たな雇用も生み出しました。

こうして組合員たちは、トセパントミンから融資を受けて建材を購入し、家を建てることができるようになったのです。ただ、組合員の多くは、これまでお金を借りて何かに取り組むといった経験がありません。そこで、トセパントミンは(これが「助け合い」の精神が根付いているトセパンらしい方法なのですが)ただ融資するだけではなく、あらゆる面で組合員をサポートする方法で改築プロジェクトを進めてきました。

まず建替えが決まった時点で、トセパントミンがその予算組みから設計、施工に至るまですべての段階においてアドバイスを行い、組合員と共に建替えに向けて取り組みます。設計においては、環境にやさしい技術やリサイクルエネルギーなどの設備を取り入れたものになっています。また、施工が始まってからは、建築家や建築を勉強したトセパントミンのスタッフが、各工程でチェックに入り、きちんとした住居が予定通り建設されているかも確認します。


       改良型のカマド

そして、トセパンの「助け合い」の精神がさらに垣間見られるのは、実際に建替え工事を行うスタッフが他の組合員だということです。大工さんにすべて依頼して任せるというのではなく、皆がそれぞれ助け合おうという意識から、他のメンバーの家を建て替える時には手伝い、自分の番が来たら手伝ってもらう。こうした相互扶助でプロジェクトが進められています。

中央政府からは重視されていない地方の農村地域におけるトセパントミンの住居改善プログラムが、マイクロファイナンスの分野においてヨーロッパで高い評価を受け、今回の賞を受賞するに至りました。

この10年(2007年-2016年)に及ぶ住居改善プロジェクトによって、実際に家を建設した組合員は7,463世帯、改築を行ったのは8,770世帯。合わせて16,233世帯に及ぶ組合員がこれによってよりよい環境で生活できるようになりました。また、プロジェクトに関連して1,500名の新たな雇用も生み出す結果にもなっています。

このプロジェクトによって住居環境を改善できた組合員たちは、口をそろえて生活環境が向上したことに満足感を示し、トセパン組合に参加した意義を感じていると話してくれました。

未来を見据え、持続可能な地域づくりを組合員自らが組合員自身のために活動を続けているトセパン。森林農法のコーヒー栽培に限らず、実に多様な分野で自然や環境に寄り添いながら自分たちの生活を高めていく姿勢と理念に、改めて学びを得た受賞報告でした。
(※一部、European Microfinance Awardのホームページより情報抜粋)

メキシコ中部地震の被災者支援「仮設住宅建設プロジェクト」

そんな彼らは、これまでの経験を活かし、2017年9月におきたメキシコ中部地震で被災した人々のために地域の竹を活用した仮設住宅の建設を進めています。トセパンのある地域と同じく、行政サービスが行き届かない先住民が多く暮らす貧しい農村地域で、「助け合い」の精神で住宅建設を進めています。トセパンが資材調達から建設まですべてボランティアで行っているため、資金が不足している状況です。

そこでウインドファームでも、トセパンの支援活動を応援したいとの思いから、現在この「竹の仮設住宅建設」へのご支援を募っています。よろしければ、ご協力お願いいたします。

★詳しくはこちら → メキシコ中部地震トセパン支援プロジェクト

今年11月「しあわせの経済 世界フォーラム」や「第1回オーガニックコーヒー手煎り焙煎選手権大会」に出席するため来日したトセパンのレオナルドさんから竹の仮設住宅に関する追加情報と写真が届きました。


   左端がトセパンのレオナルド・ドゥランさん

現在、プエブラ州サンタクルス・クアウトマティトラ村で、12棟目を建設中だそうです。
また、この村の再建を担うとのことで、残り88棟、計100棟を建設する予定です。
やはり、長期的な支援が必要になります。

プエブラ州サンタクルス・クアウトマティトラ村
子どもは十分に学校にも行けず、貧しい生活をしている地域に地震の被害が集中していることが
推測されます。また、政府の支援はほとんど届いていないようです。

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