マシュピ農園 <エクアドル共和国>

マシュピ農園の手づくりチョコレート

「地球を守ろう、だって地球はチョコレートがある唯一無二の星だから」

マシュピ農園の手づくりチョコレートは、「森をつくるチョコート」。EUとアメリカUSDA有機認証の2種類の有機認証を取得し、カカオの生産からチョコレートの加工まですべての工程が行われています。

マシュピ農園からのメッセージ動画

森のはなし

マシュピ農園は、「チョコ生命地域」(※チョコレートとは関係なく地名に由来)と呼ばれる地域の中にあります。チョコ生命地域とは、パナマの南東部からエクアドルの北部までを含む、18万7,400平方Kmの広大な緑の回廊です。山岳部と雲霧林から成り、亜熱帯と熱帯が混在し、湿度・温度ともに高い熱帯気候です。この地域は降水量の多さと、4,000m級の山々が連なる複雑なエコシステムで、地域固有の豊かな動植物を育んできました。貴重な生態系の多様性から、「マシュピ-ワイクヤク保護区」にも指定されている場所に、マシュピ農園はあります。

しかし、この数十年の間に地域一帯で大規模な森林伐採が行われ、急激に森林破壊が進みました。さらに、酪農とバナナ、オイル用のヤシ、サラダ用のヤシ、カカオの単一栽培がさかんになったことで森林伐採に拍車がかかり、原生林の90%が失われてしまいました。


マシュピ農園のマシュピ-ワイクヤク保護区内にある再生された森(写真提供Mashpi Chocolater?a Artesanal)

そこで、マシュピ農園のアレホさんとアグスティーナさんは、ほとんど牧草地になっていた土地56 ha(ヘクタール)を2008年に購入。翌年から、そのうちの46haを森として再生する活動をはじめしました。意識していたのは「自然遷移」という「裸地から森林が形成される過程」のこと(※森林・林業学習館ウェブサイトより)。つまり、森が人間の手を加えずに形成される過程をまねながら、森を再生する試みでした。

この地域の森が自然に再生される際、最初に生える植物(パイオニアプランツ)は、ヘリコニアでした。そこで、原生林からヘリコニアの仲間を数種類移植することから始め、森から様々な種や苗を採取して、高低差を最低4段階つけて植え、森の再生に努めました。最初は18種類ほどの樹木しか生えていませんでしたが、5年後には50種類以上に増え、さらに風や虫、鳥たちによって種が運ばれて、草類は12種類から23種類に、鳥類は54種類から156種類まで増えたのです。


マシュピ農園のアグロフォレストリー(森林農法)の森を訪れる鳥たち(写真提供Mashpi Chocolater?a Artesanal)

「毎日が学びの連続です。」と、アレホさんは言います。土を再生してくれる微生物がどうやって生まれ育っていくのか、フンコロガシが森の中でどんな働きをしているのか、緑肥につられてやってくるミツバチやスズメバチがどうやって生物的制御をしているのか、イチジク類の樹々がどれだけ鳥たちを惹きつけ呼び寄せているのか…。毎日訪れてくれるオニオオハシ、フウキンチョウ、ハチドリなどの鳥たち、10種類以上のカエルたち。そして時おり、夜に「いびき」をかくヤマネコたちに、自分たちも惹きつけられてやまないのだと。

畑のはなし

マシュピ農園のアグロフォレストリー(森林農法)の畑のカカオの実(写真提供Mashpi Chocolater?a Artesanal)

全敷地56haのうち、10haは畑として利用しています。この畑も、自然の森が再生していく様を模倣しながら森林農法を行い、カカオ栽培を始めました。

まずは、パイオニアプランツのヘリコニアを植え、次に「カカオの母」と呼ばれる豆科の植物を植えました。「カカオの母」は、枝を土に挿しただけで根を伸ばす丈夫な植物です。この木は窒素(葉を育成)、リン酸(花や実を育成)、カリウム(根の育成)を土に与えてくれます。また、葉や枝を定期的に落として土の表面を覆うことで、土壌流出を防ぐことができると同時に、土の栄養源にもなります。

パイオニアプランツ ヘリコニアの画像(写真提供Mashpi Chocolater?a Artesanal)
(パイオニアプランツ ヘリコニア)

2010年からは次の段階に進み、カカオと様々な果樹、ヤシなどを植えました。現在、農園に植わっている果樹は、パパイヤ、ボロホ、マンゴスチン、ドリアン、パンの実、ジャックフルーツなど、世界中のトロピカルフルーツが20種類以上あります。その際にも、外来種が在来種を駆逐しないよう、木々の特徴を把握して、攻撃的ではない種類を厳選して植えてあります。

マシュピ農園のカカオ畑には、「カカオポッド」と呼ばれるカカオの殻がたくさん落ちています。カカオを収穫した後は、その場で実を取り出し、殻は一定の距離をおいて畑に残しているためです。カカオポットに残る果肉につられて小さな虫が孵化し、小さな虫たちは遠くへ飛べないので、カカオの花の受粉を促す役割を果たしてくれます。

カカオがかかりやすい病気としては、「黒いカカオ豆」と、「魔女の箒」という菌による病気があります。病気が付いたカカオの豆は、落ち葉に菌が付着して白くなったところへ触れさせておきます。すると、自然界に存在する菌が病原菌を食べてくれるので、病気の蔓延を防ぐことができるのです。

こうしてマシュピ農園のカカオは、人の手だけではなく、木々や虫や菌など、すべての生き物の助けを借りて育っていくのです。

カカオのはなし

現在、世界で生産されているカカオ豆は、おおまかに分けて3種類あります。主に西アフリカで生産されている「フォラステロ種」、南米・カリブ海諸国で生産されている「クリオロ種」、その2種類のハイブリッド種である「トリニタリオ種」です。さらに「第四のカカオ」と呼ばれるのが、エクアドルでしか栽培できない「ナシオナル(アリバ)種」です。ナシオナル種は原生種に近く香り高い種ですが、病気に弱いため、生産量全体の2%程度と大変希少です。

マシュピ農園で栽培されているのは、このナシオナル種です。定説では、カカオの起源は紀元前3,000年頃のメキシコと言われていますが、近年、エクアドルの南部にある紀元前5,500?5,300年頃の遺跡で発見された陶器の中に、カカオの澱粉が見つかりました。そういった意味でも、このカカオはエクアドルのシンボル的な生産物だと言えます。


カカオの花の画像(木の幹に咲く))
(カカオの花(木の幹に咲く))色とりどりのカカオの実の画像
(色とりどりのカカオの実)

チョコレートのはなし

カカオの画像(写真提供Mashpi Chocolater?a Artesanal)

カカオマスをなめらかに練り上げる精錬工程の画像

2015年からは、農園で栽培したカカオからチョコレートを製造するまでになりました。マシュピ農園の手づくりチョコレートは、森の再生に始まり、100%オーガニックなカカオの森林農法による栽培から、チョコレートバーへ加工する最終工程まで、すべてひとつの農園で行われています。厳正に環境基準を守りつつ、純正のナシオナル種の香りと、森の木々や花、果実の香りを損なわないように、機材も地域の工房と相談して作り、カカオの加工にも細心の注意を払っています。

カカオ以外の材料も、ほとんど農園で育てられたものを使用しています。例外は、砂糖、塩、チョチョスと呼ばれる豆ですが、すべて信頼できる会社、および生産者団体から購入しており、生産・供給元のトレーサビリティを完全に確保できています。

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