第1話:インタグコーヒーを育むその風土から・・・

南米大陸の片隅にひっそりと位置するエクアドル。空から見下ろせば、そこにモザイクの如く多様な自然がひしめき合っているのが分かる。高度六〇〇 〇メートルを超えて南北に連なるアンデスの山稜。山裾には、マングローブが生い茂る海岸線が大西洋と向き合あい、その先にガラパゴスの島々が点在する。

海辺から発する湿潤な風は、聳え立つ山稜に向かって上昇しながら、雲を呼び、霧を運び、やがて山稜の中腹に豊かな熱帯雲霧林という世界有数の生物多様性を誇る森が形成される。

コタカチ郡インタグ地方の地図

インタグコーヒーを育む風土を旅するなかで、私たちはまず、この豊かな森を守るエクアドルのコタカチ郡という地域に降り立たなければならない。

インタグコーヒーの舞台 コタカチ郡、インタグ地方について

森林農法により育まれるインタグコーヒーの栽培、熱帯雲霧林を巡るエコツーリズム、森に自生する植物で作る民芸品の作成など、インタグコーヒー物語の重要な構成要素となるこれらの活動は、エクアドル、インバブラ州に属するコタカチ郡を舞台とする。

1800平方キロメートルの広さ(福岡県の約半分)と3万7000人の人口を持つその地域は、風土の違いから2つの地方に分けられる。
1つはコタカチ火山西側の麓に広がるアンデス地方。郡庁があり、行政の中心となるコタカチ市が位置している。

そして、もう1つが、インタグコーヒーの名前の由来となるインタグ地方である。

コタカチ郡の面積の3分の2を占めるインタグ地方に吹く亜熱帯の風は、霧を呼び、雲を運び、雨を降らせ、乾期でも樹木を瑞々しく保つ。霧と雲に包まれ育まれるがゆえに、雲霧林と名付けられたその森には、いのち溢れる豊かな生態系がはぐくまれていた。

水と光と風のなかで生い茂る色彩豊かな樹木の数々。その枝や幹を拠り所とする着生植物が彩りを加え、森はさらに賑やかになる。ラン類、地衣類、コケ類、 ブロメリア類など、豪華な生植物たちは樹木にまとわりつき、やがてその重みに耐えきれなくなった樹木の枝は折れ、最後は樹木ごと倒れて土に帰る。すると、 それまで枝葉で覆われていた空間は、眩い光で満たされ、また新たな息吹が生まれる。

めくるめく光と水、そして命の循環を育む熱帯雲霧林は、インタグコーヒーを育む場所として、またエコツーリズムの舞台として、この地域の持続可能な活動において重要な意味を持っている。

このインタグ地方で、どんな物語が繰り広げられているのか。旅を進めていこう。

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