カルロス・ソリージャ講演録 <その1>

08年6月14日にウインドファーム主催で行った「コーヒーが森を守った!! 森の哲人 カルロス・ソリージャさん講演&対談」の記録です。
講演と対談だけではなく、道中でソリージャさんと話したことも含めて話の要点を皆さんにお届けします。

「自ら解決策の一部にならなければ、それは直面する問題にあなた自身が加担するということだ」
by カルロス・ソリージャ

インタグの美しさ
エクアドル・コタカチ郡インタグ地方。ここは、世界に34あるホットスポットの1つです。ホットスポットとは次の3つの要素が含まれる地域を言います。

1)生物多様性が高いレベルであること。
2)その生物多様性が人間の開発などの行為によって脅かされていること。
3)絶滅危惧種が生息していること。

インタグは、世界の中でもトップクラスの生物多様性を誇るホットスポットです。
3000メートル級の山々や豊かな森が生物多様性を育んでいます。森は霧と雲が立ち込める「熱帯雲霧林」と呼ばれています。木々の間を雲が移動していくような森です。水が豊富で、植物が豊かに育つ環境としては抜群に恵まれています。


Photo by Zorrilla


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具体例を挙げましょう。
エクアドルはブラジルの国土の3%ほどしか広さがないのですが、その中に4000種類のランが棲息していると言われています。そして、驚くべきことに、毎年5つぐらいは新種のランが発見されています。


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着生植物もとても多様です。空気中から水分を得て育つエアープランツとも呼ばれますが、1本の木に100?1000もの着生植物が生息していることもあります。
私の家の周囲には26種類のハチドリが棲息しています。アメリカ合衆国には全土で17種類のハチドリがいると言われています。


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アジアにはないブロメリアという美しい花もたくさんあります。
とにかく、とても美しい自然がインタグにはあるのです。
美しい自然を脅かす鉱山開発
この自然を鉱山開発という名の「発展」が脅かしています。鉱山開発が着手されると、山は切り開かれ、森は破壊され、道が作られ、大量の残土が発生します。それは、水を汚染し、空気を汚し、ある調査によっては気候すら変わってしまうと言われています。


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さらに悪いことに、カネを地域にばら撒くことで、住民同士の対立が作り出され、豊かなコミュニティ(地域共同体)が破壊されてしまいます。また、開発に伴って住み慣れた土地を強制的に追われる人々も出ることになります。

インタグにおける鉱山開発は95年からスタートし、当初は日系企業の三菱マテリアル(ビシメタル)が入り込みました。我々の反対運動によって、三菱マテリアルは撤退したのですが、その後はカナダ系のアセンダントという会社が開発に着手しました。

この手の大規模開発には常套手段があります。コミュニティの中に開発賛成派をカネの力で作り出し、地域のつながりを破壊するのです。これまで支え合 い、お互い様といった文化を大切にしてきた地域共同体がギクシャクし始めて、混乱に陥ります。それによって抵抗への意欲を失わせ、開発を進めるというやり 方です。これは、インドネシア、フィリピン、アマゾンなどいろいろな地域で実際に起きていることです。

並行して、殺害の脅迫やさまざまな嫌がらせ、環境保護団体への根拠のない批判などが繰り広げられました。例えば、「ソリージャはとても良い車に乗っ ていて、別荘も持っており金持ちだ。開発に反対するのは自分の利益を失いたくないからだ」といった噂話も流れました。アセンダントは傭兵を使って、私の家 を襲撃するといった野蛮な行為にも出ました。間一髪で襲撃から逃れることができたのが幸いでした。一歩間違えば、私は今日ここには存在していないでしょ う。

環境の破壊も取り返しがつかない規模で進むことが考えられます。鉱山開発に伴う森林伐採は、その土地の気候をも変えてしまうほどのものです。重金属 などによる水の汚染は1000年単位で続くとの報告もあります。こう考えると、鉱山開発というのは史上最悪の環境破壊型開発だと言っても過言ではありませ ん。


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アセンダントへの活動停止がエクアドル政府から言い渡されましたが、まだまだ油断はできません。政府が率先して開発に乗り出す可能性や他の企業が活動の権利を獲得する可能性もあるからです。

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