目次へ

21世紀を迎えるにあたって
〜環境汚染と環境破壊の20世紀を終えて

第二次世界大戦当時、戦争に反対することは大変難しかった。では、「第三次世界大戦」である「環境戦争」に対して、子どもたちから「なぜ、大人は環境を汚染し破壊し続けたのか!」と問われたとき、私たちはどう答えればいいのでしょう?

 ウインドファーム代表 中村隆市

 10年ほど前に、友人にさそわれて原爆の記録映画を見に行きました。その映画の中で、全身に被曝した中学生くらいの少年がこう言いました。「なぜ、大人は戦争に反対しなかったのか!」映画を見終わった会場で、そのことが話題になり、あるおばあちゃんがこう答えました。「あの時代は、戦争に反対できる時代ではなかった」と。
 5年ほど前に亡くなったドイツの作家ミヒャエル・エンデが生前、こんな内容のことを言っていました。
「第三次世界大戦はとっくに始まっている。それは今までのような同じ時代に生きる者同士の戦争ではなく、いま生きている人間たちが自分たちの利益のために、これから生れてくる世代の環境を破壊し汚染していくような戦争である」と。
 第二次世界大戦当時、戦争に反対することは大変難しかった。では、「第三次世界大戦」である環境戦争に対して、子どもたちから「なぜ、大人は環境を汚染し破壊し続けたのか!」と問われたとき、私たちはどう答えればいいのでしょう。
 チェルノブイリ原発事故の被害にあった子どもたちの医療支援のためにチェルノブイリ支援コーヒーの販売を始めて、今年で10年になります。この10年の間にウインドファームのスタッフは、毎年のように現地医療施設を訪問し、医薬品や医療器具を届けてきました。私自身が放射能汚染地を6回ほど訪問して、いつも感じてきたのは「原発に対して何の責任も無い子どもたちの世代が、なぜこんなに苦しめられなければならないのか」ということです。放射線被曝を恐れて病院の医師さえ去っていくような放射能汚染地区に未だに多くの子どもたちが移住できずに取り残されています。事故から14年たった今年の4月、ウクライナ共和国の被曝者342万7千人のうち、病気にかかっている人の割合は、10歳以上で82.7%、10歳未満で73.1%と報告されており、隣国ベラルーシにおいても同様の状態です。
 放射能だけでなく、ダイオキシン、農薬などの環境ホルモン、遺伝子組換、オゾン層の破壊、地球温暖化、森林減少・・・環境の悪化は進んでいます。エネルギーの使い過ぎ、化学物質の使い過ぎ、自然環境の破壊し過ぎであることは多くの人が感じていると思います。その思いをどうしたら政策や暮らしに生かせるのでしょう。
 わずかな希望の灯りが、北欧を中心に見えはじめています。デンマークやスウェーデン、ドイツなどでは、後世代に配慮した政策がとられはじめました。デンマークでは、スチールやアルミ缶の飲み物は法律で禁止され、飲み物はすべて再使用を前提としたビンで売られており、デポジット制によって、返却するとビン代が戻ってきます。ビン一本の平均使用回数50回、回収率99%。さらに使用不能になったものは新しいビンの原料となります。
 後世代に放射性廃棄物を残す原発を持たず風力などの自然エネルギーの普及に力を入れ、(スウェーデン、ドイツでも、近い将来、原発を全廃することを決めています)モノを作ると原料税、モノを捨てると廃棄税がかかり、リサイクルした方が安くなる経済システムを導入。環境教育も含め、社会システム全体を改革して、環境保護に国をあげて取り組んでいます。
 そうした環境先進国の政策に影響を与えたといわれている1992年のリオサミット。その国連環境会議において、最も人々のこころを動かしたといわれている伝説のスピーチを全文掲載し、21世紀をむかえるにあたってウインドファーム社自身の座右の銘としたいと思います。

目次へ
次へ→

トップページへ