2004/04/26

『アレクセイと泉のはなし』 18年前の今日の話。

先週、『アレクセイと泉のはなし』という本が映画監督の本橋成一さんから贈られて来ました。
  ぼくの名まえはアレクセイ。
  ベラルーシという国の、
  ちいさな村に住んでいる。
  家族は、父さんと母さん、
  ウマのルイシックに
  イヌのワウチョック。
  そのほかにも、仲間たちがいっぱい。
  もうずいぶんむかし、
  1986年4月26日のこと。
  ぼくたちが畑にジャガイモを植えて
  家に帰ったとき、
  何かがはじまった。
という書き出しで始まる素敵な写真絵本です。

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2004/03/15

スロービジネス講座に参加された方からの感想

3月13日スロービジネス講座に参加された方からの感想が届きましたので、一部抜粋して掲載します。

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2004/03/08

記事紹介 京都新聞

以下はサンパウロ新聞に掲載された記事です。

今回のブラジル訪問で中村氏は、ジャカランダ農場のあるミナス・ジェライス州マッシャード市の名誉市民権を授与された。

昨年五月二十二日、同市は世界で初めての「有機コーヒー・キャピタル(首都)宣言」都市として指定された。その実現に尽力し、有機無農薬コーヒー生産地である「ジャカランダ農場」を通じた日本の消費者へのフェア・トレードの実施・貢献が認められたものだ。

昨年十二月二十三日に同市議会で行われた名誉市民権授与式には、ジャカランダ農場から故・カルロス氏の三男であるルーベンス・テイシェイラ・フランコ氏と、孫にあたるACOB(ブラジル有機コーヒー協会)代表のカシオ・フランコ・モレイラ氏たちが祝福に駆け付けた。さらに、少年時代にカルロス氏の世話で教育を受け、今年から市議として活動するという青年なども姿を見せていた。

市会議長たちから記念プレートを授与され、登壇した中村氏の手には、カルロス氏のトレードマークだった帽子があった。昨年の七月に、惜しまれながらもこの世を去ったカルロス氏との思いを共有したいという強い気持ちからだった。

「本来なら名誉市民権は私ではなく、カルロスさんやジャカランダ農場の人々が受けるべきもの。カルロスさんとの出会いは、私にとって宝物のような出来事でした」と中村氏は、今回の授与が農場の人たちとの結びつきの結果であることを強調した。

その日の夜遅く農場を訪問した中村氏、ルーベンス氏たちとともに翌日、農場内を見て回った。

「ここは、小鳥が多いでしょう」―。

中村氏にそう言われ周辺を見まわすと、無数の鳥たちのさえずりが聴こえる。ミミズやクモなどの益虫をはじめ、農場には年々、動物が増えているという。コーヒー生産地の土はブラジルでは珍しい黒色。実際に歩いていて感じるのは、フカフカとした柔らかさだ。労働者たちの手で丹念に鍬入れされた豊かな土地が、標高千二百メートルの斜面に広がる。高さ二メートルほどのコーヒーの木々の枝には、緑色の実がビッシリと付いているのが見えた。

中村氏が農場を訪問した目的は、現場で汗水流して働く人たちとともに授与の喜びを分かち合うためだ。授与された記念プレートを手に、労働者たちとあいさつを交わす中村氏。「この農場で働けることが嬉しい」と語る労働者の一人、ネルソンさん(四二)の言葉に、「彼に会うと幸せな気持ちになりますよ」と思わず顔が和む。幼少の頃は病弱で、青年になっても職が無かったネルソンさんを農場に誘ったのはカルロス氏だった。

現在、農場内でリーダー的存在になっているアイルトンさん(二八)。その知的能力を発見したのは、カルロス夫人のフランシスカさんだ。カルロス氏の資金援助で、アイルトンさんを十六歳頃から農業専門学校で学ばせた。しかし、農場の仕事とキツいと学校の授業で居眠りすることが続いた。それを聞いたカルロス氏は、同じ給料のままアイルトンさんの仕事量を減らし、「学校には真面目に行け」と促した。氏の親心が、少年を立派なリーダーへと成長させた。

農場には、カルロス氏の家族の恩恵を被っている人たちが多い。しかし、「金での支配」による単なる雇用関係ではない。お互いを認め合う心有る付き合いが、スタッフたちの労働意欲につながっている。(つづく・松本浩治記者)

2004/02/23

ゴミ問題と資源循環型社会を考えるシンポジューム(2月29日)資料

2004年2月29日に行われる、「ゴミ問題と資源循環型社会を考えるシンポジューム」の資料です。

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2004/02/09

WeBelieve1月号「スロービジネス特集」より ネット・インタビュー「スロービジネス特集」

※WeBelieveは日本青年会議所の機関誌です。
スロービジネスは、いのちを大切にする仕事
本年度JCが掲げるスローソサエティはひと言でいえば、「人と人、人と自然とのつながり」を大切にする社会である。そこには食・生活だけではなく、経済社会を生み出すビジネスも存在する。それがスロービジネスだ。しかし、何をもってスロービジネスとするのか、よく分からないJCメンバーも多いのではないか。
1月号では「スロービジネス」を特集し、その提唱者、実践者であるウインドファーム代表の中村隆市氏に、ネット・インタビューでその全容をお聞きした。

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2004/02/02

中村隆市と辻信一の対談 エコロジーの風11号「カルロスさん追悼特集」より

カルロスさんと出会う前の中村隆市さんの歩みと、二人が出会った後の出来事について、2年前に明治学院大学で行われた<辻信一さんと中村さんとの対談>から抜粋したものを掲載します。

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2004/01/27

悲しいお知らせ エコロジーの風11号「カルロスさん追悼特集」より

ブラジル、ジャカランダ農場のカルロス・フランコさんが、ブラジル現地時間で7月4日朝8時頃、心臓病のため自宅で永眠されました。75歳でした。
「農薬なしにコーヒーができるはずないじゃないか」と言われていたブラジルで、有機コーヒー栽培のパイオニアとして、試行錯誤を繰り返しながら有機コーヒーの栽培を根づかせ、多くの農民と共に、ミナス・ジェライス州の南部を有機コーヒー栽培の中心地に育てました。

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2004/01/21

日本青年会議所機関誌『We Believe』 【スロービジネス特集】

2004年1月に発行された日本青年会議所の機関誌『We Believe』に、 「スローワールド(1)【スロービジネス特集】」と題され、 中村隆市へのインタビュー記事が掲載されました。 その内容をお伝えします。

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スロートーク
―スロービジネスは、いのちを大切にする仕事―

本年度JCが掲げるスローソサエティはひと言でいえば、 「人と人、人と自然とのつながり」を大切にする社会である。 そこには食・生活だけではなく、経済社会を生み出すビジネスも存在する。 それがスロービジネスだ。 しかし、何をもってスロービジネスとするのか、 よく分からないJCメンバーも多いのではないか。

1月号では「スロービジネス」を特集し、 その提唱者、実践者であるウインドファーム代表の中村隆市氏に、 ネット・インタビューでその全容をお聞きした。

環境破壊の根っこに
間違った経済がある

――最近、耳にするようになったスロービジネスですが、 誰がこの運動ともいうべき「スロービジネス」を提唱したのでしょうか。 スロービジネスがどのように生まれたのか、 その始まりを教えていただけますか。

中村 スロービジネスは、「ラブ、ピース&ライフ(いのち)」を合言葉に、 ゆっくり生きることを提唱している 「ナマケモノ倶楽部」という環境文化NGO を創った1999年頃、 文化人類学者の辻信一さんとスロソフィー(スロー哲学)と称して、 スローフードとかスローライフのように スローという言葉に現代社会で問題の大きい基本語彙をくっつける 言葉遊びをしていて生まれた言葉です。

私が知っている範囲では、これが初めて活字になったのは、 辻さんの 「スロー・イズ・ビューティフル」(平凡社) だと思います。 この本が出版されてからスロービジネスという言葉が、 メディアで広く取り上げられるようになりました。

――スロービジネスの概念は、中村さんが考えるスロービジネスとはどういうものですか。

中村 スロービジネスは、まだできたての言葉であり、 その概念はこれから創られていくものだと思いますが、 この言葉が生まれた時に私が思ったのは 「スロービジネスとはいのちを大切にする仕事」だということ。 なぜなら現代社会を方向づけている経済やビジネスの 「いのちを大切にしていない」 現状を変えたいという思いから生まれた言葉だからです。

今、私たちが棲んでいる地球は、 46億年の長い歴史の中で奇跡のようなできごとの連続によって、 大気や水や食物を生み出してきました。 そのかけがえのない地球、 宇宙の中に奇跡のように誕生した水の惑星を現代人は破壊しようとしています。 そして、人が人を殺す戦争や武力攻撃も後を絶ちません。

私は、環境破壊や戦争を生み出している根っこに、 間違った経済やビジネスの存在があると思っています。 本来、経済とは「経世済民」という言葉を略したもので、 経世済民とは 「世の中を治め、人民の苦しみを救うこと」 という意味をもっています。 世の中を治めるというのは、世の中を平和な状態にすることですから、 結局、経済とは 「世の中を平和にして、人々を幸せにすること」 といった意味です。

ところが、現代の経済はそうではありません。 当然のように、自分の会社や自分の国だけが利益を得られればいい、 という考え方です。 飛躍的な経済成長を遂げているはずなのに、 世の中はますます暴力が横行するようになっています。 環境問題を世代間の戦争だと捉えれば、これほど大規模で暴力的な時代は、 かつてなかったかもしれません。

今、経済成長といえばGDPの成長を指しています。 経済政策とは、いかにGDPを増大させるかであって、 そのための手段は問われません。 大量生産、大量消費、大量廃棄の使い捨て社会は、 さらなる森林破壊や地下資源の大量採取につながり、 GDPを成長させます。 修理や修繕をしながら3世代、4世代と使い続けるような丈夫なものを作るより、 故障して修理するより買い換えた方がいい、 といったことが当り前のようになっています。

アフガニスタンやイラクを攻撃することが軍需産業の兵器生産を増大させ、 破壊された建物の「戦後復興」が建設会社の仕事を増やし、 GDPを押し上げる。 子供や女性が数千人規模で亡くなる一方で「正義のための戦争」は、 石油や天然ガスの利権までもたらしてくれる。 経済というものの本質がますます変質している。 その変質した経済やビジネスを本来の経世済民的なものに再生するのが、 スロービジネスだと私は思っています。

また、かつて、 近江商人の言葉に「三方(さんぽう)よし」というのがありました。 「売り手よし、買い手よし、世間よし」です。 いい言葉だと思います。 誰かを犠牲にするのではなく、皆を幸せにするような商いです。 これもスロービジネスだと思います。

地球の森を守るために
コーヒー販売にご協力を

――中村さんは有機無農薬栽培コーヒーのフェアトレードにも取り組んでいますが、 これも「スロービジネス」ですね。 スロービジネス事業を興したきっかけを教えてください。

中村 コーヒーのフェアトレードに取り組む前の7年間、 私は生協で有機農産物の産直運動をしていたんですが、 その頃にチェルノブイリの原発事故が起こり、 8000キロも離れた日本にも放射能が風にのって届きました。 放射能は細胞分裂が活発な幼い子供ほど影響を受けるのに、 日本人のお母さんの母乳から放射能が検出されたんです。 これは母乳しか飲めない赤ん坊にとっては大変な問題です。 それで、生協では子供の健康を考えて、 10ベクレル以上汚染されたものは販売しない、日本政府は370ベクレル以上に汚染されたものは輸入しないと決めました。

遠い外国の一つの原発事故が及ぼすそんな影響とともに、 もう一つ私が気になったのは、 日本に輸入されなかった汚染食品はどうなるのかということでした。 調べてみたら、それは経済的に貧しい国に届いていました。 それまで、「地域で作られた旬のものを食べましょう」 という有機農産物の産直運動に取り組んでいた私が、 外国の有機コーヒーや紅茶を扱う仕事をするようになったきっかけは、 そのことです。 ふだん大量の食品を輸入している私たちが、 放射能で汚染された食品を拒絶したことで、 それが途上国にまわるという社会の構造に、 自分の中では違和感というか、 どうにも収まりがつかないような気持ちが芽生えてきて、 そのことに対して何かやれないかという思いが、 フェアトレードに関わっていくきっかけになりました。

――現在の日本のスロービジネス事情について、 何か新しい変化はありますか。

中村 人々の意識の小さな変化が、大きく社会を変えることに繋がっていきます。 私は20代の頃は、 企業とかビジネスが環境問題を引き起こしている張本人だと思っていて、 経済活動全般を毛嫌いしていました。 しかし、環境保護運動と並行して、有機農業や産直事業、 そして中南米の農民とのフェアトレードに20数年かかわってきた今は、 逆にビジネスや企業が変われば環境問題も解決していけるかもしれない という気になっています。 そのため十数社の会社設立にかかわり、 その半分ほどの会社で役員をやっています。 そうすると、会社で働く人たちの会社を選ぶ基準が変わってきたなあ、 と感じるようになってきました。

これまで多くの親が、自分の子供を大企業に就職させたいと考え、 そのために有名大学に入学させようと子供たちに受験勉強を強要してきました。 仕事の内容よりも収入の多さを重視してきたわけです。 しかし今、若い人たちの中には、収入の多さだけで仕事を決めるのではなく、 もっと自分の人生を大切に生きたい。 環境を守る仕事がしたい。 途上国の貧困にあえぐ子供たちの力になれる仕事がしたい、 もっと平和な社会をつくりたい、 といった若者たちが増えてきています。

こうした意識の変化は、徐々に社会に浸透し スロービジネスを後押ししています。 スローフードに代表されるように、 消費者の健康に配慮した食の分野、 その食材を提供する環境保全型の有機農業や水産業。 先住民や小農民、女性の地位の向上、 障害者のサポート、森林保護や経済格差の是正を目指すフェアトレード。 廃棄物を回収して再利用する静脈産業。 自然エネルギー、バイオマス産業、 あるいは、そうしたスロービジネスを後押しするエコバンクや未来バンク、 そして、地域通貨などが広がりをみせています。

また、社会的責任投資(SRI)の広がりも、 企業の社会的責任(CSR)を促しており、 部分的に企業のスロービジネス化につながっていると思います。

――中村さんのスロービジネス運動は、 どのような社会の実現を目指していますか。

中村 昨年の7月、 長年、フェアトレードで提携してきた 有機コーヒー生産者のカルロスさんが亡くなりましたが、 そのカルロスさんの言葉を今も覚えています。

「本当に豊かな生活とは、自然と共にあり、 次の世代に希望を残していくことではないでしょうか。 私たちは決して一人で生きることはできません。 すべてのいのちはつながっていて、そのつながりによって、 私たちは生かされています。 分かち合うこと、助け合うことが、 私たちにこころからの平和と豊かさをもたらしてくれます。 未来の子供たちに希望を残せるよう、 一緒に力を合わせて仕事をしていきましょう」

次の世代に希望を残せるような持続可能な社会をつくりたいですね。 そのためには、未来世代や途上国にも配慮した社会で、独り占めではなく、 もう少し皆のいのちを大切にする分かち合いの社会をつくりたいです。

カルロスさんの家族の写真

ブラジル・ジャカランダ農場のカルロスさん(右から2番目)一家とともに (右から3番目が中村氏)

――2004年度日本JCが掲げた 「大きな環と小さな環とが響き合うスローソサエティの実現へ」 について共感・共鳴できるところはありますか。

中村 私は、これまで青年会議所のことは、あまり知らなかったのですが、 米谷さんの「会頭意見書」(PDF形式, 87KB) を読んで驚きました。 スローな社会という表現もそうですが、その内容にも驚きました。 子供やお年寄り、そして若者たちに対する視線の暖かさ、 こころの内面や平和を大切にする考え方、自然や環境に対する姿勢など、 どれも共感できることばかりです。

今の社会の価値観(ものさし)、 目に見えないものの大切さ、 お金や時間の捉え方、 社会企業家という考え方、 地球の限界、 調和を大切にするナチュラル・ステップ、 フェアトレードにまで言及しておられることにますます驚きました。

「ものさしを手放す勇気、さらに言えば、手放す快感」 「消費から創造へ」 にも共感しますが、 すでに取り組んできた「もったいない、ゼロエミッション、地域通貨」 そして、分散型の小さな循環社会、スロービジネスの創出など、 本当にうれしくなりました。

縁があって、JCの機関紙にインタビューを受けることになったのですが、 「自分のやりたいことのためにJCの看板とネットワークをどう使うか」 を読んで、こう思いました。 私は、「We Believe」を読まれている数万人の読者に呼びかけたい。 今、私はとても困っています。 それは、エクアドルのインタグ地区からフェアトレードで輸入している 無農薬コーヒーのことです。

インタグコーヒーのパッケージ写真

この インタグコーヒー は、世界有数の生物多様性を誇る森林 (生物種の絶滅、減少を防ぐために最も重要だと言われている 世界の25のホットスポットのうち2つがインタグ地区にある) を鉱山開発という名の環境破壊から守るために、 森の中でコーヒーを栽培(森林農法)しています。 味もとても美味しいです。

1999年からフェアトレードでの輸入を始めて今年で6年目になりますが、 当初80世帯で始まった生産者が現在では350世帯を超えて、その分、 鉱山開発をくい止める力が強くなっているのですが、 一方で生産量が増えて、私の会社だけでは販売しきれないのです。 どうか皆さん、地球にとって重要な森を守るために このコーヒーを販売(購入)してくれそうな会社をご紹介ください。

なお、このコーヒーのことは、 昨年4月に「素敵な宇宙船地球号」というTV番組で、 森を守るコーヒーとして放送されました。 ご興味のある方は、ご連絡ください。 ビデオテープをお送りします。
(ご連絡・お問い合わせはinfo@windfarm.co.jpまで)

中村隆市氏が設立する
スロービジネススクールとは

「学校だけど、校舎はないんだ。 年間3回くらい場所を変えて合宿する。 そこにスロービジネスの本質を語れる講師にも参加してもらう。 日頃はインターネットで勉強する。 会社員、フリーター、主婦、大学生、農民、漁師、公務員、自営業者、 無職でも誰でも学生になれる。 その中には教えてくれる人もいるはずだ…」

しかも、前納制で集めた学費で、会社を設立するという。
「年間3万円。 学生の定員は100人で、300万円集まる。 これで会社を設立する。 学生たち、皆で会社を経営しながら、スロービジネスを学んでいく。 その名も『スロービジネスカンパニー』…」

なんとも不思議な学校である。入学者の発表は4月末、 開校は5月22日予定。 興味をもった方、入校希望の方はホームページ (https://www.windfarm.co.jp/sbs/) をご覧ください。

We Believe JANUALY 2004 日本青年会議所発行

2004/01/08

『エコロジーの風』11号の発行に寄せて

日頃の皆様のご愛顧に心よりお礼を申し上げます。おかげさまで、1987年にウインドファームの前身である有機農産物産直センターが設立されて以来17年目の今日まで、 農薬や化学肥料に依存しない有機農業の普及事業を継続することができました。
今回で11号となる「エコロジーの風」は、新たな編集スタッフの参加を得て、フェアトレード、スローライフをテーマとする総合情報誌として新しく生まれ変わりました。昨年亡くなられたジャカランダ農場のカルロス・フランコさんの追悼特集と2002年にインタグコーヒーの産地(エクアドル)で開催した「第3回有機コーヒー・フェアトレード国際会議」が今号の中心となっていますが、「スローライフ」や「スロービジネス」などの新たな記事も多くなっております。本誌を読まれて生産者へのメッセージや読後感想などをお寄せいただければ幸いです。

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2003/03/29

セヴァン・スズキとの対話 (2002年12月4日)

セヴァンとの対話(2002年12月4日)
(2003年3月発行 エコロジーの風)から抜粋

セヴァン・スズキ <対談> 中村隆市 (通訳・辻信一)
ブラジル、リオで12歳のセヴァンが、後に世界中で語られることになるスピーチを行ったのは1992年6月。その2ヶ月後、中村隆市は有機コーヒー農場を調査するためにブラジルを訪れ、そこでセヴァンの名前を知る。「いつか、ゆっくり話が出来ないだろうか」。そのときに抱いた想いは、10年の歳月を経て実現することになった。

中村隆市(以下、中村)
セヴァンを日本に呼ぶにあたって、ちょっとした物語があるので、そのことから話したい。10年前のリオサミットから2ヵ月後に私がブラジルに行ったとき、セヴァンのスピーチの話を聞いた。セヴァンのことを教えてくれたのは、ブラジルで有機農業を広めようと活動している人だったけど、私は12歳の少女がリオサミットで、最も人びとの心を動かすスピーチをしたという話を聞いて、いつか、その少女に会ってみたいなと思った。そう思った日から6年が過ぎた1998年に、エクアドルのある先住民が、私と辻信一さんとの出会いをもたらしてくれた。それは、私が福岡で国際有機コーヒーフォーラムを開催したときに、エクアドルから招待したアウキ・ティテュアニャという先住民の知事に辻さんが同行してきたために、私たちは出会うことができたわけです。

 その翌年、辻さんと私は一緒にカナダの先住民の重要な祭りに参加しました。これも先住民が取りもつ縁ですが、そこで私はデヴィッドという生物学者と会い、そのあと、環境団体の代表であるタラという女性活動家に会った。そして、この二人と親しい辻さんから「リオサミットで12歳でスピーチしたセヴァン・スズキは、彼らの娘」であることを聞いたわけです。驚いた私は、帰国してすぐ辻さんが翻訳したスピーチの全文と講演の様子を録画したビデオテープを見せてもらいました。それを見た私は、こころを揺さぶられ、さまざまな思いが湧きあがり、自分の人生を振り返りました。感動した私はセヴァンを日本に呼びたいと思い、それが今回のセヴァンツアーにつながったというわけです。

セヴァン
うわー、すごい。

中村
まず、セヴァンとジェフに大変ハードなスケジュールを組んでしまったことのお詫びと、ハードスケジュールにもかかわらず見事に講演ツアーをやりとげた二人に感謝の気持ちを伝えたい。私は、ツアー全体の60%位に同行したからツアーのハードさがよく分るんだけど、各地での歓迎と熱気はすごかった。セヴァンに対する期待の現れでもあったけど、それに対してセヴァンもよくそれに応えてくれたね。この3週間、本当にお疲れさま。

セヴァン
ほんとにハードなスケジュールで疲れたけど、とても充実したツアーになったから、やり遂げたという満足感があるわ。

中村
これからこのツアーを振り返りながら、いろいろと話し合いたいと思うんだけど、私が考えていたこのツアーの目的は、日本国内だけでなく世界の自然を破壊し、環境を汚染し続けている日本、未来世代のことを考えない日本の社会を変えていくキッカケにしたい。そのためには、環境運動に若い世代の参加が必要だと考え、そして、それができるのがセヴァンだと考えた。

 その後、実際にセヴァンツアーを呼びかけるために、2年前からセヴァンのリオでのスピーチを私の会社で発行している冊子やホームページに掲載したり、私自身の講演で紹介し始めると、予想を超える反響があり、この時点で、ツアーの成功を予測できたんだけど、実際に各地での受け入れ準備を進めていくにしたがって、各地の実行委員会に若者の参加がどんどん増えていって、最終的には小学生、中高生、大学生から社会人、主婦、高齢者まで、幅広い年齢層の参加がありました。また、多くのNGOも参加してくれて、NGOの中には、環境問題だけではなく、平和の問題や南北問題、教育や福祉関係の団体、あるいはチェルノブイリ原発事故被害者の支援団体など、いのちを大切にしたいと考えて活動しているNGOが多数参加しました。そして、山田養蜂場のような4300万部の新聞(日本で発行されている新聞の85.5%)に全面広告でセヴァンのスピーチを掲載するようなこれまでにない強力な支援をしてくれる企業も現れてきました。この記事に対する反響もすごかった。

 そして、今回の取り組みには、有機農業や漁業、林業などの一次産業に携わる方がたくさん参加されたのも大きな特長でした。このように、年齢も立場も違う、さまざまな人びとの参加と協力によって、ツアーが大きな成功を収めたんですが、もう一つセヴァンに伝えておきたいことは、今回の各地での取り組みがキッカケとなって、その地域での新しいネットワークができてきているということです。環境問題に留まらず、福祉や平和の問題に取り組む「いのちのネットワーク」のようなものが芽生えています。そして、地域と地域がつながったり、県境を越えたつながりも生まれていて、すでに交流が始まっています。

 そういう面でも、大きな成果があったツアーだったんだけど、この成功を次のステップにつなげていくために、ツアーの中で感じたこと、話し合われたこと、見えてきたこと、これからの課題などについて、気楽に話し合ってみたいと思います。

セヴァン
今の話を聞いて、とてもうれしいです。こういうツアーをやっても、それだけで終ってしまうんじゃ、何にもならないんで、そういうふうに次につながっていくことがうれしいです。今回のツアーで、私は非常に可能性を感じました。特にいろんなグループの間の、ネットワークのやり方とか、とてもよく組織されていて、大きな運動を作りだす可能性を秘めているように感じた。

 非常に興味深く思ったのは、私は皆さんにとって、よそ者なんですが、そういう外の者を象徴的に使う形で、ツアーをめぐってみんなが結集するという、この運動は面白いと思った。

中村
今回のツアーでは子どもたちもたくさん関わっています。子どもたちに伝えておきたいことはありますか?

セヴァン
子どもたちに言いたいのは、環境を守るためにやることはたくさんあるということ。そして、分からないときは、どんどん大人に聞いたらいい。何か必要だったら大人に助けてって言ったらいい。そうすると本当に信じられない所から助けが来たりするわ。本当に大人たちっていうのは、私たちが思うより、助けたがっているものよ。

中村
そうだね、それは、お年寄りもそうだよね。

セヴァン
ほんとにそうだと思う。いろんな与えるものがあるのに、特に子どもと祖父母の関係が、残念ながら都市化のなかで壊れているけれども、それは本来とても自然なつながり方で、精神的な大きな支えになるものだと思う。

 特に、祖父母の世代っていうと、まだ機械化されていなくて、自分たちでいろんなことができた世代でしょ。手作りすることの楽しさとか、多くのことを教えることができる。それなのに、機械化されてきて、必要とされなくなってきている。

 いのちを大切にするということでつながって、一緒に動くという話をされたけど、全くそう思うんです。私たちの活動は、「環境運動」や「平和運動」と言われるけど、本当はそういう狭い、限られたもので言い表せるものではないと思うんです。

 大事なことは、人間であるということはどういうことなのか、だと思います。私たちは、感情を持ち、他の人と共に生きる社会的動物だから、人間とのつながり、自然とのつながり、動物とのつながり、そういうなかで人間であるということはどういうことなのか、ということだと思います。

 例えば、ナマケモノ倶楽部が他のグループと違うのは、自分たちがやっていることを環境とか平和だけに限定しないで、ビジネスや文化など、いろんなところとつながっているところだと思う。そして、その真ん中にあるのは哲学ですね。その哲学をシェアして、皆つながってるんじゃないかな。哲学や思想の部分で。

中村
ツアーの途中で、幼稚園の子どもを持つお母さんからこんな話がありました。「環境運動をやってる人たちの話は、こうしないとダメだとか、こうしなければならないとか、消費を減らさないといけない、節約しないといけない、我慢しないといけない、というふうに、義務のように押しつけてくる」と。その若いお母さんは環境問題をよくしないといけないというのは分かるけれども、そういう雰囲気がすごく嫌だというんです。

 その話を聞いてて思ったんだけど、ナマケモノ倶楽部に若い人たちが集まってくるのは、やりたい人がやりたいことを、好きなようにやれるからだろうなって。そして、ナマケモノのように「ゆっくりやろうよ」というのが合言葉だから、世話人である私自身がとても楽しい。今回のツアーでは、各地に楽しんでやっている人が多かったね。

セヴァン
 ある会議で、こんな話が出ていた。ROR(セヴァンが呼びかけている自分自身に対する「責任の認識」という運動)を皆が守っているかどうか、どのようにチェックしたらいいのか、そういう話がでていた。でも大切なのは、自分が、自分に対して、どんなふうに感じることができるかだと思う。外から教えて、きちんとやっているかチェックするとういうものではないと思う。だから、ナマケモノ倶楽部の合言葉であるスローイズビューティフル(ゆっくりは美しい)という言葉が半分くらい意味を持っているって言われてるけど、RORもそうだと思う。つまり、自分の責任を認識するという、この言葉でもうほとんど半分の意味をもっている。そこで大事なのは、自分がそれを読んで署名したときに、実際に自分が世界に働きかけたり、世界を変えていくことに参加できるということを実感すること。一人だと思っていたのが、こんなにたくさんの人が、同じ流れの中にあるという、その流れを感じることだと思うの。

中村
さっきの若いお母さんといろんな話をしたあとに、最後に私はこう言ったんです。「ひとり一人が自分のペースで、自分がやりたいことや大切にしていることを大事にして、自分自身の人生を充実して生きることが大事なんじゃないかな、それが皆のいのちを大事にすることにつながるんだと思う」って。

セヴァン
まさにそうなんです。世界は要するに自分自身なんです。自然というのは自分自身なんです。自分自身を大事にできない人が、環境も何もない、まさにそういうことを私は言いたかったんです。

中村
先日、辻さんと話した「えっ、いいんですか」っていう話ね。あれ、とても大事な話だと思うんです。若い人たちが、子どものころから危険だからとか、汚れちゃうからとかで、「ああしちゃいけない、こうしちゃいけない」と言われ続けてきた結果、いろんなことを「許可なしにやってはいけない」と思っている若者が多くなっていて、私たちがやっていることを見て、「えっ、そんなことやっていいんですか?」という反応が多い。ナマケモノ倶楽部が、会社を作ったり、カフェを作ったりしていると「NGOがそんなことしていいんですか?」とか、地域通貨の「ナマケ」という紙幣や硬貨を作ったら「えっ、お金作っていいんですか?許可は取ってるんですか?」といった反応が返ってくる。何をやるにも、誰かの許可を取らなきゃいけない、と思っているわけです。

辻信一
「えっ、いいんですか」から「えっ、いけないんですか」に僕は変えようと思うんだけど。つまり、今までは「えっ、いいんですか?」だったけど、これからは、何でもやって、何か言われたら「えっ?いけないんですか?」って聞くようにしようと。

中村
若い人たちがセヴァンのように自由に伸び伸びやるようになったらいいなあ。いま、環境問題にしても、平和の問題にしても、すごく状況が厳しいということを若い世代がかなり感じているんですね。最近、高校教員の友人が、生徒たちに「これから世界はどうなっていくと思うか」という質問をしたんです。すると生徒たちの大半がとても悲観的になっていて、未来に明るい希望を持てないという結果が出た。これは我々の世代の責任でもあるんだけど、でも裏を返すと、生徒たちは、やはり平和を望んでいるし、環境をよくしたいと思っているということの現れだと思うんです。

そして、未来に希望を見出せない状況だからこそ、よけいに水筒運動のように楽しさを語っていくことが重要なんじゃないかと思うんですね。義務とか、ガマンとかじゃなくてね。若い人たちが率直に自分の思いを表現して、もっと自由に活動するようになったら、いろいろ面白いことが起こってくるんじゃないかな。

 ちょっと、まわりには不評なんだけど、この水筒に私は「ハッピースイトー」っていう名前をつけたんです。ハッピーとピースと水筒(好いとう)が一体となっているんだけど、まわりから「また、始まった」って笑われてる・・・

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【コラム:楽しく始めよう、水筒運動】
 あなたは、外出していてのどが乾いたらどうしますか?
 駅のホームで、帰り道で、店の前で、自動販売機の前に立っていませんか?
 世界中の国で、日本ほど自動販売機がそこらじゅうに並んでいる国はないんです。なんと22人に1台あるそうです。(1998年には、全国の550万台の自動販売機は、6兆9000億円を売り上げました。飲料の自動販売機は1台1ヶ月あたり、一般家庭の消費電力(平均290kwh)に匹敵する240?450kwhもの大量の電力を消費します。そして、もし、日本中の自動販売機がなくなったら、原子力発電所がひとつ必要なくなります。どんなに人のこない場所にある自動販売機でも毎日毎日24時間、誰か客がくるのを待ってあかあかと自己主張し、常にジュースを冷たく、温かく用意して立っているのです。さらに、自動販売機を作るためのエネルギー、中に入るペットボトル・カン、その中身。これらを作るエネルギーは原発何基分になるだろう。そして一人が1日1本自動販売機でジュースを飲んでいるとしたら、どれだけの空き缶が出ていることでしょう。

 「すいとう」は福岡の言葉で「I love you.」、「すいとうや?(=水筒屋)」は「Do you love me?」って意味です。それは地球からの最後のラブコール。「今でもすいとう?」ってね。それに私たちは何と答えることができるだろう?「Yes,I do.」って言えるのか。それが問われているんです。人は愛無しでは生きていけない。地球を癒すのは「地球環境汚染反対!」という憎しみではなく、愛なのだというメッセージを込めました。

 低エネルギーでエコロジカルな生活を実践するために、ひとりひとりが外出するときは水筒を持ち歩きましょう!自動販売機で飲み物を買わず、自分で作ったお茶やコーヒーを水筒で持ち歩いたら、電力やゴミを大幅に減らせるし、身体にもいいのです。自動販売機を使うのをただ我慢するのでなく、水筒を持って街に出るのがおしゃれで楽しい行動になるのを目指します。
(ナマケモノ倶楽部ホームページより)
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(セヴァン)(笑いながら)楽しさっていうのは絶対重要だと思う。楽しい世界のために私たちはやってるわけで、それに至るまでの過程が楽しくないなんてことは、あり得ない。だから、シャレとか、言葉遊びとか、どうやってしゃべるか、どういう言葉使いをするかとか、これはみんな大切なことだわ。

それから、危機の意識っていう問題で、今までのタイプだと、私たちは恵まれてる、第三世界の人たちは貧しくて、厳しい状況にあるから、危機のなかにあるから助けなきゃいけない、そういうアプローチがあった。でも危機は足元のここにある、私たちにとっての危機、それはもう限界まできているようなそんな危機のなかで生きている。その危機というものを、はっきりと見据えていくことが大事だと思う。

 危機っていう場合に、物質的な危機と精神的な危機がある。物質的な危機は確かにあふれかえっている。でも、より問題なのは、むしろ精神的な危機ではないか。例えば、北アメリカで、女の子たちの間で、拒食症や過食症が本当に大変な勢いで広がっている、伝染病みたいな勢いで。若い女性たちが、若いお母さんたちが拒食症になる。自ら選んで飢餓で死んでいく。一体こういうことが広まる社会というのは、病気でなくて何だろうか。そういう意味で危機というのは、私たちのまわりに広がっているのではないか。今までは飢餓とか貧困だとか、外の問題だったけど。

(中村)日本では、ガンで死ぬ人が増え続けている。これは病気だけじゃなくて、自殺とか地震とか、交通事故とかを含めた全ての死者のなかで、何%がガンで死んでいるかというデータだけど、1975年には、5人死んだうち一人はガンで死んでいる。10年後の85年には、4人に一人がガンで死んでいる。そして、今は3人に一人がガンで死んでいる。もう一つ日本で心配なのは、肉体的な病気だけでなく、精神面での病気がある。幼児や子どもを虐待して殺すとか、逆に親を殺してしまうといったことも増えてきている。

 こうしたことに関連して、メキシコで注目すべき調査があります。ほとんど同じような生活、文化をもっていた二つの地域で、近年、大きな違いが現れているという調査です。農業において、一方は昔ながらの農薬を使わない農業を続けていた。もう一方は、農業近代化をすすめようと農薬と化学肥料を多量に使う農業に転換していった。この2つの地域にどんな違いが現れてきたかということが調査された結果、わかったのは、農薬を多用する地域の子どもたちは、とても暴力的になった、ということです。おだやかさや精神的な落ち着きがなく、自分自身の感情を自分でコントロールできない子どもが多くなっている。精神面で、もう一つ日本で起こっている気がかりなことは、すごく自殺が増えているということです。一年間に3万人以上が自殺で死んでいて、若い世代が急激に増えている。

(辻)これは、発表がそれだけですからね、実際にはもっと多い。だいたい、自殺というのは隠せたら隠したいわけですから。
 
(中村)そんなふうに、肉体的な面だけでなく精神面でも、さっきセヴァンが言ったように、こころが満たされないといった面と、化学物質などが神経をおかしくしていく面が・・・

(セヴァン)私がイエール大学に行ってるときに住んでいたニューヘーブン、あそこは、非常に問題の多い町なんです。あそこで私は本当に鬱病だった。それは、もちろん精神的なものなんだけれども、確実にそこには化学的な問題、化学物質の問題があったと私は思っています。82年のロサンゼルスの暴動の後に、化学的な空気の汚染との関係があったという研究もあります。

(中村)辻さんともよく科学の話をするし、セヴァンのお父さんも科学者だけど、一般には、科学が日々進歩していると思われているけれども、私は今のような科学が進歩するほど、社会がおかしくなっていくと思うんだけど、セヴァンは今の科学について、どう思っていますか。

(セヴァン)20世紀の初めまでは非常に多くの科学者が、スピリチュアルな人たちで、霊性や精神性を重んじていました。例えば、アインシュタインなんかも、私たちと大地や宇宙とのつながりを強く感じていた人なのではないかと思う。中国の漢方や昔からの遺伝学にしても、科学というのは壮大な宇宙の流れのなかでゆっくりと進んできたと思います。

 それが凄く短い期間に、特に経済との結びつき、それから、軍事、戦争との結びつきによって変化していった。そして、すべてがお金に換算されるようになり、大量生産、大量消費、大量廃棄に結びついてしまって、ゆっくり進んでいく流れを見失ってしまい、非常に近視眼的なところに陥ってしまったのではないでしょうか。

 今でも「科学と宗教というのが、いかに関係が深いか」ということについて語るフリチョフ・カプラや私の父デヴィッド・スズキもそうですが、人をとりまく宇宙の壮大な流れの中に身を置ける人はいます。でも、科学がそういうことを主張したり、環境運動をしていると、批判をされるわけです。「本来、科学というのは中立でなければいけない」と。でも、これは矛盾していると思う。批判をしている科学者たちの多くは、化学会社や薬剤会社からお金をもらって研究していて、自分たち自身は完全にひもつきにされている。

(中村)今、話のなかで、科学も経済に引っ張られているという話があったけれども、セヴァン自身もRORのなかで、「GDP(国内総生産)は人間の豊かさや幸せとつながっていない」ということを言っているよね。まったく同感なんだけど、もっと言えば、日本などの工業化がある程度進んだ国では、むしろGDPが上がることの方が、人々の生活の質とか、幸せというものを逆に低下させているように思う。GDPというのは、その国で使われたお金の合計のことだから、例えばセヴァンが講演でよく話していたように「先進国」の人たちは水を買う人が増えている。水がきれいな時代は、水を買う必要はなかった。食べ物も自給していれば買わなくてよかったから、その分もGDPは低かった。それが、水が農薬やダイオキシンなどで汚染されて、水を買わなければならなくなるとGDPの数字が上がる。

(セヴァン)私が言ったのは、GDPというのは、幸せを換算できない、それを計る物差しとしては全く不適当なものだということなんです。

(中村)そうなんだ。GDPというのは、病人が増えたり、重病で医療費が高いほど数字が上がるし、夏暑くてエアコンをガンガンかけると、エネルギーをたくさん消費するからGDPが高くなる。GDPというのは、人間の幸せと全く比例しないというのは、誰でも分ることなんだけど、いまだにGDPを基準にして、それを「成長」させようとしている。
 
(辻)GDPっていうのは、もともと非常にインチキで、やりとりだから、同じ物がいったりきたりしてても数字が高くなる。

(中村)自給的に農業やってたり、自分でものをつくったり、修理してたら、GDPに全然反映しない。逆に、今までより丈夫で長持ちするものとか、修理して使い続けるものが増えるとGDPは下がる。そのため、GDPが高くなることが経済成長しているという考え方では「消費は美徳」であり、使い捨ては歓迎される。長持ちすることは良くないし、故障したら修理しない方がいいし、ファッションなどの流行がどんどん変わって、次々に新しいものが売れるのがいいことだと考える。そうした考えが未だに政策の柱になっている。もうそろそろGDP信仰から脱却する必要がある。そういうことを考えていくと、私たちがこれからやっていくことの一つは、GDPを下げることかもしれない。私たちの周りに農業の「農」に関心がある人たちが非常に増えてきている。自分で農的に暮らしたいっていう人たちが。

(セヴァン)北米も日本も流行を追っかけるから、こういうものも流行に乗っけてやっていくという方法もあるのかもしれない。マイ箸や水筒を持ち歩く運動も、大流行になりうるかもしれない。例えばパーティー、若者のパーティー、私たちもよくやるんだけど、友だちがみんな、ゴミを出さないように自分でもってきて、全部それがオーガニックだったり、自分の庭でとれたものだったり、たいがい私たちは先住民の友だちが来るから、その人たちは鮭を持ってきてくれる。これはみんな大地を全く傷つけないで、しかも私達にとっては健康によくて、そしてすっごいご馳走。これ以上の楽しさってないんじゃないかしら。小さな町に暮らしていた私の子どもの頃を思い出しても、パーティーっていうのは、文化の重要な要素だと思う。

(辻)日本の場合は特にひどい。完全にパーティーが商業化されちゃって、専門家がやらないと、自分たちでパーティーができない。

(セヴァン)日本の大学生に聞いたの。普段、何を楽しみにしてるのって。そしたら、なんか、うーんって考え込んでるから、パーティーやらないの?って聞いたら、時々レストランに行くくらいなんだって。結婚式とかクリスマスとか、そういう時しか人が集まって楽しむことがないらしいの。

 サンフランシスコの友達の結婚式に行ったんだけど、日本人はものすごくお金を使う。だから、アイディアの一つとして、運動として、私のパーティー、私のウエディング、私の誕生日会、それを私は売りに出しません。売ったり買ったりしませんというのは、どうかな。
日本の若い環境活動家に聞いたんだけど、あんまり自分が働きすぎなために、彼女にふられちゃって、ストレスで倒れそうになったりとか、やっぱり、楽しさっていうのがなきゃだめなんじゃないかしら。
 
(中村)そうだね、楽しくないとね。そういう手作りの持ちよりパーティーはいいね。
 消費を減らすっていうこと、今の過剰な消費を減らすということが重要だと思う。これだけ工業化されて、これだけモノが行き渡ると、もうあまりモノがいらなくなっているんだけども、そのことを「景気が悪い」とか「不況」だとか言ってると思うんだよね。今までみたいにどんどんモノを作っても、買う必要がないから買わない、それで売れないわけです。工業が発展してある段階までいったら、生き物でいえば、もうそろそろ身体の成長は止まっていいんだけど、それを永遠に成長させようとして、消費をあおるようなことを企業はずっとやっている。セヴァンはRORで「消費を控えて、環境への負荷を減らそう」と呼びかけているよね。

 日本では、環境保護団体が「消費を減らそう」というと、経済界とか、政治家は、消費がにぶると不況になって、不況になると仕事がなくなる。そしたら、失業率が高くなってしまう。だから、成長が必要なんだと。経済(GDP)が成長しないと社会が維持できないというわけです。しかし、私が思うには、環境を悪化させる企業はつぶれた方がいいし、失業率が増えてきたら、ワークシェアリングをしていけばいい。仕事が10%減ったのなら、皆の仕事時間を10%減らせばいい。そしたら、給料も減るけど、働く時間が少なくなって、もっとゆったりした生き方ができる。

(セヴァン)私は、この辺は非常に難しくて分からないけど、非常に大きな転換だから、ワークシェアリングだけではなくて、やっぱり、新しい仕事っていうのがかなりでてくるんじゃないかと思う。

(中村)例えば、風力発電やバイオマスなどの自然エネルギーとか。

(セヴァン)それはサラリーを取るという仕事だけに限らない。自分のうちでガーデニングして、でも私のおじいさんは給料はもらってなかったけれども、すごく一生懸命働いて、かなりのものを作っていた。そういう自給の部分を充実させていくという仕事もある。

(中村)そうそう、そういうこと言いたかったんだ。今の、失業という見方を昔の自給的に生きていた頃に当てはめると、昔はとんでもなく高い失業率になってしまう。

(セヴァン)ほんとに、そうだと思うわ。

(辻)ここでもって3日、給料もらう仕事をして、こっちで家庭菜園したりすれば、それだけ食べ物ができる。その間に、例えば陶芸をやったりとか・・・

(中村)さっき言いかけたのは、経済学者は、消費が鈍ると不況になって、不況になると失業者が増えるから、不況になってはいけないと言うけども、消費が鈍るということは、生活する者の立場から見ると、ものを買わないでよくなるということだから、お金を使わなくてよくなる。だから、仕事が減ったのなら、リストラで首を切るのでなく、少し給料は減ってもワークシェアリングで皆の仕事を減らしていけばいい。もともと、日本人は働きすぎなんだから。

 セヴァンが来日してすぐに、日本の塾の話をしたよね。日本の子どもたちは学校に行って、そのあと塾に行って、朝から夜まで机に向かっている子どもたちが多いから、自然の中でゆっくり遊ぶような時間がほとんどないという話。セヴァンはそのことを「クレージー」だと言ったけど、なぜ、大事な子どもの時期に、そんなクレイジーなことをしているかというと、例外もあるけど、多くの親が、子どもを将来、給料の多い会社に就職させたいと考えていて、そのために、就職に有利な大学に行かせたいということがある。

 大人も子どもも、皆が忙しいために、食卓を家族みんなで囲めなくて、別々に食べることも多くなっている。子どものころから長い間、受験戦争という競争社会のなかに身を置いていると、分かち合うとか、助け合うといった人間的な経験があまりできなくなる。

(セヴァン)親たちはそういう子どもたちをみて、悲しくならないの。

(中村)大人たちも、そういう競争社会で育ってきているから、その異常さに麻痺しているのかもしれない。タイムイズマネーという考えにたって、たとえそれが人間にとって大事なことであっても「非効率」だとか、「生産的でない」とかいうことで、どんどん切り捨てていく。いつも時間に追われて、イライラすることが多くて、ゆったりと過ごすことが少ない。そういう意味でも、私はもっと仕事は減っていいと思うし、その分、家族と過ごす時間を増やして、畑仕事に携わったり、手作りしたりすることが増えるといいと思う。

 それから、2005年に計画している「スロー・エキスポ」の話だけど、エコロジカルで、持続可能な様々なモノや技術、暮らし、地域、取り組みなどに光を当てようと考えている。その中で、特に重要なこととして、修繕することの意味をきちんと見直して、再評価したいと思う。修理して使い続けるためには、修理しやすくて、長く使い続けられるものに変えていく必要がある。モノを大事にするということは、いのちを大事にするということであり、それは、自然や人を大事にすることでもある。

 セヴァンがRORで、全てのいのちに思いやりをもつことや、非暴力、平和の文化をつくろうと呼びかけ、社会活動や選挙を通じて自分の声を社会に届けようと言っているけど、今の米国や日本政府の動きを見ていると、ほんとにそれが必要だと感じる。とにかく、セヴァンが呼びかけてくれたRORは、いのちを大切にする上でとても重要なことなので、これからも連絡を取り合いながら、一緒にたのしく運動をすすめていきましょう。

(セヴァン)まず、私がこのツアーに来るにあたって、中村さんからの手紙が重要な役割を果たしたということを言っておきたい。あれで、このツアーの目的だけでなく、その後ろにある哲学が分かりました。そういう意味で、中村さんと話し合うことが大切でした。こういう時間をとってくださったことをありがたく思います。これからのつながり、単に具体的なことだけではなくて、スピリチュアルなつながりを育てていく。それが、今度ここに来た目的だと思います。

 長い時間、私たちと一緒に動いてくれたことは、決定的に大事なことでした。とても感謝しています。何ごとをするにも基礎が大事なので、基礎をつくっておかないとつながりも何も、できないと思います。だから、私は自信を持って、同じ運動をやっていると言うことができます。これから、いろいろと一緒にやっていけることにとてもわくわくしています。

(この対談記録は、ツアーを終えたあとの2002年12月4日の対談をベースに、ツアー途中の対談も一部加えています。通訳は明治学院大学教授の辻信一さんです。)

『エコロジーの風』第10号 2003年3月 ウインドファーム発行より抜粋

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