2008年04月17日

カルロス・ソリージャ訪問

2007年10月にスタッフの後藤彰がインタグ地方を訪問し、カルロス・ソリージャ氏に会ってきました。

ソリージャさんはインタグコーヒーの生産組合AACRIや鉱山開発を食い止めるためにDECOINという環境団体を立ち上げたりしてきたインタグの中心人物。
今回、鉱山開発会社が撤退することになったのも、鉱山開発にまつわる問題や大規模開発の代替案としての森林農法コーヒーや女性の手工芸品、エコツアーの提案などをソリージャさんが地道にしてきたからでもあります。

訪問した時期は、「政府が鉱山開発会社の採掘権を取り上げる決定をした」というニュースがちょうど出始めた時だった。
各国からの問い合わせやインタグの人々とのやり取りの忙しい時でしたが、とても親切・丁寧に対応してくれた。
「今回は仕事での訪問かい?リラックスするための訪問かい?ま、いずれにしてもゆっくりしていきなさい」と庭の畑から摘み取ったフレッシュ・ハーブティーで迎えてくれる。ただ、ちぎったハーブにお湯を注ぐだけなのだが、優しい香りと味が全身に伝わっていく。

「鉱山開発会社に『活動停止』というシールを政府関係者が貼っている写真を送るのにほぼ一日かかってしまったよ。ヤレヤレ。ここはインターネットの環境が思うように行かないからねぇ。」とちょっと疲れた様子を見せながらも「滝まで散歩しようか?」と誘ってくれたり「明日の朝、良かったら鳥を見に散策しよう」と言ってくれたり。

早朝の森を散策するのはとても心地良く、インタグの人々が「森が好き」「自分たちにとって森はかけがえのないもの」と言う理由が頭ではなく感覚として分かるような気がしてくる。
「ほらほら、あそこに赤い鳥がいるだろう。見てごらん。あの二股に分かれている樹の左の枝の先端のところだ。分かるかい?」と双眼鏡を渡してくれてソリージャさんがガイドしてくれる。
写真でしか見たことがない、真っ赤な鳥が森の中で暮らしている。ただただ、森は荘厳で美しかった。

ソリージャさんに森林農法の大切さを聞いてみた。「そうだねぇ。まず、第一に、僕は樹が好きなんだ。だって、美しいだろ。それに、樹があることで生物多様性が保たれるんだ。果樹があれば鳥がやってくるし、鳥がいることで実をついばみ種を他所へ運び森を育ててくれる。このインタグにはランや着生植物が4000種あると言われているんだ。確か、北米では200種、日本では100種と聞いている。この多様性こそ豊かさだし、美しさだと思っているんだよ。自分の農園は出来る限り生物多様性を拡げ維持していこうと思っている。そのためには、自然から学ぶ、自然の状態を真似ることが有効だ。昔、ここはサトウキビ畑だった。全部切り倒してさまざまな樹を植えていった。背の高くなるもの、実をつけるもの、僕が好きな樹、などなど。30年たって、ご覧の通り、立派な森になったよ」と。

農園には、コーヒーはもちろん、バナナ、オレンジ、レモン、チャイニーズプラム、アボガドなどさまざまな果樹、自給用の野菜畑などがある。化学肥料も農薬も一切使わない。30年前の姿は想像できないほどの豊かな森。この森と共に生きる安心感と幸福感、そんなものがカルロス・ソリージャさんの人柄や雰囲気、しゃべり方など端々に現れている気がした。お金や地位や名誉ではなく「この豊かな森を後世にも残していきたい、自分たちの手で守り伝えていきたい」と思うことは、とても自然なことのようにも思えた。

カルロス・ソリージャさんが6月に来日します。東京や福岡にてイベントも企画されますので、ぜひインタグコーヒーの産地に住む森の哲人に会いに来てください。

投稿者 akira : 2008年04月17日 16:05