第8話 「おかげさま」を大切にするフェアトレードコーヒー

 森を守り、森を育てる森林農法のコーヒーも、買い叩かれず、安定した価格で買い取ってもらうことで農民たちの暮らしも守られます。森林農法とフェアトレードの組み合わせによって、人々の暮らしが豊かに維持されているのです。

 一般的にコーヒーは巨大な多国籍企業が牛耳っている商品なのです。たった4社ほどの巨大企業の取引がコーヒー市場の実に80%ほどを占めています。生産に掛かる原価すらも支払えない価格でも、交渉力のない農民たちは、売らざるを得ないのが現状です。「全く売れないよりはまし」「売らなかったら痛い目を見るかもしれない」という抑圧の構造が存在しているのです。

 コーヒーを買い叩く窓口でもある「仲介業者」がいて、その仲介業者からコーヒーを買う大手企業がいるという構図です。この仲介業者はコーヒーなどの生産組合がある地域とない地域で提示する価格を以下のように変えています。2010年にウインドファームスタッフが現地を訪れた際に得た情報です。

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産地との直接のやり取りをするウインドファーム流フェアトレード

生産組合がない地域

(例)1kgあたり7ペソ(約70円)
 コーヒーは買い叩かれるだけ。生産者は、生産組合の利点を知らないため、コーヒーに高値が付くものとは知らない。
 これらのコーヒーの最終的な行き先は、大手の商社
 仲買業者が買い取るコーヒーは、品質は問われない。味や栽培方法などは考慮されない。

・生産組合がある地域
(例)1kgあたり25ペソ(約250円)
仲買業者は、地域の生産者組合の買い取り価格よりも、若干高い値で買い取るように提示する。
 高く買う部分は、組合の存在しない地域で買い叩いたコーヒーの安値で相殺する。
 仲介業者にとって厄介な組合活動の妨害、弱体化を狙っている。

 一般的に生産者組合の組合員は、所属する組合に必ず納品する義務は無い。そのため、組合がある地域で仲介業者が高い金額を提示すると、そちらになびいてしまう農民もいます。これは、地域で組合がなかなか発展しない原因のひとつとされています。

 トセパンの活動する地域にも、外部から仲買業者が買い付けに来ています。組合員に対して、匿名の脅迫電話なども実際にあるといいます。マネーゲームの対象になってしまっているコーヒーの国際相場価格。国際相場が上がると、仲介業者の活動も活発になるなど気が抜けない状況なのです。

 

「良い価格」と「おかげさまの関係」

 こういった状況下で、トセパンは組合員から安定的な価格で買い取ることを続けています。トセパンと組合員の農民たちにとっての良い価格とは、「高い価格」ではないのです。暮らしが成り立つための価格で、なおかつそれが安定的に持続することが大切なのです。

第8章1

 そのためには、安定的にトセパンのコーヒーを購入するフェアトレード・パートナーが必要になるのです。ウインドファームとトセパンは2003年に「森林農法」に関する国際会議で縁を得てから、フェアトレード事業を共に展開してきました。

 フェアトレードは言ってみれば国際産直。大きく見ると、トセパンとウインドファームの顔が見える関係性は、コーヒーの生産部門と販売部門と言うことも出来ます。農産物ゆえに品質が安定しないこともあるコーヒー。霜の害やハリケーンの影響など、昨今の気象の異状も栽培に影響してきます。収穫量や質が良い時もあれば、悪い時もあります。フェアトレードであれば、コーヒーの質が良くない時も、買い支えることができます。逆に国際相場が高騰しても、これまでの安定した価格に近いところで取引をすることができます。

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トセパンツアーでのひとこま。
現地スタッフと参加者が、大笑いしながら朝の太極拳。


こういった「おかげさまの関係」があるからこそ、生産者である農民も安定した生活を営んでいけるのです。コーヒーの質が悪かったら他から買うから良い、仕入れの価格が上がるならば他から買うので良い、というのであれば、仲介業者や大手商社が展開しているグローバルビジネスと何ら変わりがありません。

 もちろん、輸入先の日本でトセパンコーヒーやハチドリのひとしずくコーヒーなど産地の美味しいコーヒーを評価し、買ってくださる皆さんがいて成り立つ世界なのです。

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